ヒカルは相変わらず、うつむいたまま。
ちょっと空気が重いなぁ。
「・・・質問に答えてよ?」
「・・・話すことはない」
・・・さっきから、この一点張り。
このままじゃ、らちが明かないなぁ。
「ヒカル、らしくないよ?」
「ッ・・・」
顔が、少し歪んだ。
「確かに、まだヒカルのこと、知らないことの方が多いけどさ・・・今日はわかる。らしくない」
「何が、わかるんだ」
「わかるよ。だって、仲間だもん」
ヒカルの手を取る。
「辛いんなら、話してよ。楽になると思うし」
ヒカルは、無言で立ち上がる。
「迷惑は、掛けられない」
―――私は、クラスメイトの事情は把握してる。
でも、転入生のヒカルのことは、やっぱり知らないことの方が多くて。
“お父さんと、少々問題がある”ってくらいしか、正直知らない。
そんな自分が、恥ずかしい。
わかってあげられない自分が、もどかしい。
信頼してもらえない自分が、憎い。
「迷惑なんかじゃないよ!」
私も立ち上がって叫ぶ。
「ヒカルは仲間じゃん!大切な仲間!何を焦ってるの?何を悩んでるの?私には言えない?」
悔しくって、涙があふれる。
「私だって、いろいろ抱えてる!でも、そのうち言ってもいいことだけを、ヒカル達に言ってる。そしたら、楽になれる」
「ミク」
「ヒカル、いつでもいいから、言えるようになったら言ってよ。私、迷惑なんかじゃない!むしろ嬉しい!信頼してもらえるんだって・・・!」
―――そして、私はいつかヒカルがしてくれたように、ヒカルを抱きしめる。
男の子を抱きしめるなんて、お兄ちゃんたち以外、恥ずかしくってできなかった。
もちろん今でも、恥ずかしい。
でも、助けてあげたい。
「“辛かったら泣けばいい。僕は君を応援するから。そして、君の仲間だから”―――前、こう言ってくれたよね?その言葉、そのまま返すよ。
辛かったら、泣けばいいじゃん。
私は、ヒカルを応援するから。支えるから。
だって、ヒカルの仲間だから・・・!」
ヒカルの体の力が、少し抜けた気がした。
気になって、顔を見る。
「ちょ、ヒカ・・・!?」
―――ヒカルは、眠ってしまっていた。
どうしよう。
ヒカルは細いけど、私だけじゃ・・・。
「誰だ?・・・ミク・・・と、ヒカルか?」
「げ、ゲンドウ・・・!」
後ろから聞きなれた声。―――ゲンドウだ。
「手伝って!」
「わかっている」
ゲンドウは冷静に、ヒカルを抱きあげた。・・・さすが。
ゲンドウは、忘れものしてたみたい。
・・・本当かなぁ?
「・・・ねぇ、ゲンドウ。ヒカル、どう思う?」
隣を歩きながら、尋ねる。
「焦っていたな」
「だよね。なんか、本当に・・・らしくなかった。でも、支えてあげられないみたい」
ゲンドウは、いたって冷静に、優しそうに言った。
「アラタとヒカル、両方第1小隊に必要だ。確かにアラタは面白い。素質があるだろう。それは、ヒカルが一番わかっているだろう」
「・・・そうだね」
「ヒカルには、ヒカルの役割があるだろう。ミクや俺に、役割があるように」
「・・・うん」
ダック荘まで、その言葉を最後に、私たちは話をしなかった。
―――人にはそれぞれ、役割がある、か。
私もその言葉、嫌いだったなぁ・・・。