はい、一か月ぶりです。恐らく人生最大の多忙時期で本当に死にかけました。
前回執筆に時間がかかると言っておきながら、これ書いたのは一週間だけですね。あとはずっとゲーmゲフンゲフン!勉強してました。
新しい作品を書きたいが、どう考えても時間がない。
もしドラゴンボールを七つ揃えたら、一日を48時間にするか、作業能率を倍にします。
さて、何言ってるかわかんなくなったところで、本編どうぞ!
今回は過去最大文字数の23000字でございます!!
ーアラシsideー
『『『えぇっ!?生徒会長に!?』』』
「うん、海未ちゃんがダンスを教わろうって」
電話越しの穂乃果の提案に、声を上げて驚く一年生三人組。
俺は穂乃果、海未、ことりと穂むらに。
瞬樹もいるにはいるが、部屋の隅でグッタリしている。
先ほどの雷獣の広範囲の雷。瞬樹は身代わりになって俺たちを守ってくれた。
エデンのドラゴンメモリには、デフォルトとして雷や炎の耐性がついているらしいが、それでも応えたらしく、体に相当な負担がかかっているように見えた。
俺は家で休んでおくように言ったのだが、
『女子高生の部屋という楽園のためならば、この身が滅びようとも悔いはない!』
とか言ってきた。
本当に滅ぼしてやろうかとも思ったが、助けてもらった身では声を大にして叱ることもできないので、仕方なく連れてきてやったのだが、結局このザマである。
永斗は変身解除した後、戻ってきてない。烈も連絡がつかない。
後のメンバーはどこにいるかは知らないが、穂乃果たちと電話で話している。
そこで出された提案こそが、生徒会長にダンスを教わるということだ。
「あの人のバレエを見て思ったんです。私たちはまだまだって…」
『話があるって、そんなこと?』
今度は海未が会話を代わり、にこが反応する。
それを受け、今度は花陽と凛も続く。
『でも、生徒会長、私たちのことを…』
『嫌ってるよねー。絶対!』
『つーか嫉妬してんのよ、嫉妬!』
「私もそう思ってました。でも、あんなに踊れる人が私たちを見たら、素人みたいって言う気持ちもわかるのです…」
俺も海未にその動画を見せてもらった。
確かにレベルは段違いだ。調べると、ロシアのコンクールの多くに絢瀬絵里の名前があった。実力は折り紙付きということか。
『私は反対。潰されかねないわ』
そこで、今まで黙っていた真姫が口を開いた。
それに続いて後の3人も。
『そうね。3年生は私がいれば十分だし』
『生徒会長…ちょっと怖い…』
『凛も楽しいのがいいなー』
もはや年齢以外に3年生要素が見当たらないにこが、先輩面しているのがムカつくが、まぁ3人が言うことも最もだと思う。だが…
「私はいいと思うけどなー」
やっぱり。こういう時はいつも穂乃果だ。
その言葉に一同の反感を買うが、そこで俺が会話を変わる。
「俺も賛成だな。元々、μ’sには経験者がいないのが弱点でもあったし、パフォーマンス力を底上げするいい機会だ。それに…せっかくトップパフォーマーが近くにいるんだ。見とかねぇと損だろ」
『確かに…生徒会長の踊りは見てみたいです!』
『かよちんがそう言うなら、凛も!』
『アラシ先輩が言うなら…』
アイドル好きの花陽が賛同したことで、後の2人も賛同してくれた。
さて、残りはにこだけだが…
『……どうなっても知らないわよ』
「賛成するなら素直に言えや。かわいくねぇな」
『うるっっさいわね!!』
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ー永斗sideー
「あーはいはい。了解でーす」
アラシから話の全容を聞いた僕は、電話を切る。
会長さんにダンスを教わるか…面倒な臭いがプンプンするが、これはこれで利用できそうなイベントだ。
そして、天金から聞いた”オリジンメモリ”の真実。
これが本当なら、今回の騒動はあと少しの確証で全てが繋がる。
「皆には悪いけど、今回は利用させてもらうよ」
攻略までの道は見えた。さて、少し本気を出しますか…
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ーアラシsideー
「私にダンスを?」
「はい、教えていただけないでしょうか。私たち、上手くなりたいんです!」
生徒会室の前、俺含めた2年生組が生徒会長に頭を下げる。
その時、生徒会長が海未。あと、曲がり角に隠れている永斗を一瞥したような気がしたが…
「わかったわ。貴方達の活動は理解できないけど、人気があるのは間違いないようだし、引き受けましょう」
「本当ですか!」
予想以上にすんなりいき、少々驚くが、時間もないし好都合だ。
「ただし、やるからには私が許せる水準まで頑張ってもらうわよ!」
そういうわけで屋上。こうして、生徒会長のダンスレッスンが始まったわけだが…
「柔軟性を上げることはすべてに繋がるわ。少なくとも全員、足を開いた状態でお腹がつけるようにして」
先ほどダンスを披露したところ、緊張していたのかミスを連発。
散々ダメ出しと説教を受けたうえで、柔軟の基本から練習をしている。
凛は運動神経はいいが、体は固く、生徒会長に背中を押された状態で、痛みで表情が歪んでいる。
ことりは問題なくクリア。後の奴らはそこそこといったところか。
「つーか、なんで俺まで…」
そう、なぜか俺や瞬樹も同じ練習を行っている。
ちなみに言っておくが、このくらいは余裕だ。戦闘において柔軟性は重要だからな。
「貴方はマネージャーにしては体が柔らかいのね」
「そりゃどーも。それにしても、率直にほめてくれるとは意外だな」
「褒めてないわ。アレに比べたらってことよ」
生徒会長の視線の先には、永斗が。
正確には、足を開いて掌だけ地面につき、体が足に垂直のまま固まってる永斗がいた。
「すいません。どうやってもこれ以上曲がる気がしないんですが」
お前はそれでも仮面ライダーか。
「ダンスで人を魅了したいんでしょ!このくらいはできて当たり前!!」
その後は、片足立ちだとか、筋トレだとかを一通り。
筋力もダンスをするうえで必要不可欠だ。性格は気に入らないが、この練習自体はかなり理にかなっている。
このくらいは俺が日課で行っているレベルだ。
だが、永斗は察しの通りまるでダメ。腕立て伏せ3回で撃沈していたところを見て、軽く絶望した。
7人はなんとかメニューをこなすが、休む間もなく2セット目。
そして、片足立ち6分が経過したころ…
花陽に限界が来たのか、バランスを崩して転倒してしまう。
「かよちん!」
急いで花陽のもとへ駆け寄る凛。
だが、そこに生徒会長の無慈悲な一言が。
「もういいわ。今日はここまで」
その言葉に、全員が悔しそうな、そんな表情を浮かべる。
たった一言。でも、その言葉の意味はこの場の全員が理解していた。
「ちょっ…なにそれ!」
にこが生徒会長につっかかるが、生徒会長はそれを冷たく返す。
「私は冷静に判断しただけよ。今度のオープンキャンパスには学校の存続がかかっているの。無理なら早めに言って、時間がもったいないから」
そう言って、背を向ける生徒会長。
彼女を呼び止めたのは…
「ちょっと待って。会長さん」
永斗だった。
「確かに、今のμ’sのレベルは低い。素人もいいとこだ。
でも僕は、あの時の発言を撤回するつもりはない。それに…
彼女達、まだ言う事があるみたいだよ」
永斗がそう言うと、7人は一列に並び。
「ありがとうございました!明日も練習お願いします!!」
「「「「「「お願いします!!」」」」」」
穂乃果の先導で、全員が一斉に礼をする。
その光景に、生徒会長はただ驚いたような表情を浮かべて目を見開いている。
「そっちこそ逃げないでくださいよ。明日」
そう言って、永斗はニヤリと笑みを浮かべた。
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「オイ、本当にどうしたんだ?変なものでも食ったのか?」
練習を終え、俺と永斗、あと瞬樹は音ノ木坂中学まで来ていた。
なぜかというと、永斗が聞き込み調査を行いたいと言ってきたのだ。
コイツと会ってしばらくになるが、こんなことは初めてだ。今までは俺に行かせて、自分はゴロゴロしてたからな…
嬉しいのは嬉しいのだが、ここまで急に変わると、逆に心配になる。
「失礼だな。僕だって働くときは働くよ。」
本当にどうしたのだろうか。
俺は永斗を木こりの泉にぶち込んだ記憶はない。昨日の数時間、コイツをニートから転生させるようなイベントがあろうとは…
俺がそんなことを考えていると、校門から1人の少女が出てきた。
永斗はその少女に声を掛ける。
「や、ありちゃん」
「こんにちは永斗さん。あと、瞬樹さんにアラシさん」
少女はそう言って、礼儀正しく俺たちに礼をする。
この少女の正体が気になったところで、俺たちは永斗の説明を受ける。
「生徒会長の妹…ねぇ…」
そう、この少女は絢瀬亜里沙。生徒会長の絢瀬絵里の実の妹だ。
だが、性格は見た感じだとあまり似てない。こっちの方が自由に生きている感じがする。
「それで、話とは何ですか?」
そうだった。ここには聞き込み調査に来たのだった。
とは言っても、何を聞きたいかだとか詳しいことは、永斗は話さなかった。
俺が永斗に注意を向けていると、永斗は一つ咳ばらいをし、
「じゃあまずは…ありちゃんは会長さんと一緒にお風呂とか入る?」
「瞬樹、確保」
質問を言い終わる前に、瞬樹によって関節技で体をガッチリロックされた。
「痛い痛い!なにすんのさ」
「今回は妙にやる気があると思ったらそういう事か。テメェがいつニートから変態にジョブチェンジしたのか知らんが、白昼堂々と女子中学生にセクハラとはいい度胸だ。瞬樹、もっと強く締めろ」
「承知した」
「あぁぁぁぁぁ!!痛いから!本当にシャレになんないからぁぁぁぁぁ!!」
公衆の面前で絶叫する永斗を見ていられなかったのか、亜里沙はさっきの質問に答えてくれた。
「えっと…中学一年生までは入ってたんですが、最近は入ってないですね。
でも、それを知って一体何を…」
「いや、これには深い事情が…って、その冷たい目線で見ないでくれません?僕のライフもうゼロなんですけど…」
とりあえず一度永斗を開放し、永斗は体の各所を痛そうに抑える。
そして、亜里沙に向き直り、再び質問をした。
「じゃあ、もう一つだけ。最近、家の中の時計の調子はどう?」
その時、俺は永斗が何を知りたいのか、それがなんとなくだが分かった気がした。
瞬樹は分かっていないようだが…
いや、でもそんなことあり得るのか?
「そういえば…お姉ちゃんの部屋の時計とかが遅れてたような…あと、リビングのも…」
「OK。それだけ聞ければ十分だよ」
永斗がそれだけ言うと、俺たちは音ノ木坂中学を後にした。
事務所までの帰り道。
俺は永斗に気になっていたことを質問した。
「なぁ、永斗。お前まさか、さっきの質問…」
「多分、アラシの思ってる通りだよ。今回で確証を得たことで、全部が繋がった。
後はほのちゃん達が上手くやってくれれば、会長さんを攻略できる」
永斗は歩みを止めて、そう話すが、イマイチ何を言っているのかがわからない。
瞬樹に関しては、顔に?マークが浮かんでいるのが見えるようだ。
そんな俺たちを見て、永斗は小さくため息をつく。
そして、真剣な表情で言った。
「アラシと瞬樹には言っておく必要があるね……」
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翌日。
「おはよー!」
「おはよ♪」
「おはようございます」
μ’sの休日練。ことりと海未がいる屋上に、穂乃果が元気よく出てきた。
だが、いつもなら誰よりも早く来ているアラシの姿が見当たらない。
「アラシ君は?」
「永斗君ならさっき来たんだけど…
『会長さんの事は頼んだよ』
って言ってどこかに行っちゃって…」
ことりの言葉に首を傾げる穂乃果。
そんな光景を扉の裏から、絵里は浮かない顔で見ていた。
「覗き見ですか?」
そんな彼女に対し、階段から声が聞こえる。真姫だ。
真姫に続いて凛と花陽、にこの姿もある。だが、瞬樹はいないようだ。
絵里の姿に気づいた凛は、階段を駆け上がり、
「え…ちょ…!」
戸惑う絵里に構わず、テンション高めに背中を押して屋上へと出て行った。
「おはようございます!」
「まずは柔軟ですよね!」
現れた絵里に大きな声で挨拶をする穂乃果と、当然のようにメニューを確認することり。
そんな2人に、絵里が厳しい表情で一言だけ呟いた。
「辛くないの?」
その一言に、全員が思わず驚きの声を上げる。
「昨日あんなにやって出来なかったのよ?
第一、上手くなるかどうかもわからないのに…」
”上手くなるかどうかもわからない”そんなのは何の理由にもならないことは分かっている。
絵里自身、廃校という生徒ではどうしようもないような問題に立ち向かっている。
それも、一人で成し遂げようとしているのだ。
絵里が本当に聞きたいことは、そうではなかった。
何故、廃校というバッドエンドを目の前にしている状態。いわば首の皮一枚の時に、
”自分たちを目の敵にしている人間に、運命を委ねることができる”のか。
「やりたいからです!」
そんな疑問にこたえるかのように、穂乃果が声を上げた。
「確かに練習は厳しいです!身体中痛いです!
でも、廃校を阻止したいという気持ちは生徒会長にも負けません!
だから、練習を続けて下さい!お願いします!」
「「「「「「お願いします!」」」」」」
他の6人も穂乃果に続いて頭を下げる。
やりたいから?それだけで、プライドを捨ててまで敵に教えを乞う?
絵里は理解ができなかった。
そんなに簡単にプライドを捨てられるのなら、自分だって……
「生徒会長!」
絵里は何も言わず、メンバーに背を向け、屋上から出て行ってしまった。
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『逃げないでくださいね。明日』
『これがお姉ちゃんのやりたいこと?』
『やりたいからです!』
絵里は項垂れながら、一人廊下を歩いていた。
歩みを進める度に、かけられた言葉が脳裏をよぎる。
私が何をした。私は彼女達とは違う。
ただ、学校のために、願いを託した祖母のために、自分の力でここまでやってきた。
それなのに…どうして……私の意志の邪魔をする…!
「うちなぁ」
そんな時、背後から声が聞こえた。
生徒副会長であり、絵里の無二の友人、東條希だ。
「えりちと友達になって、生徒会やってきて、ずっと思ってたんよ。
えりちは本当は何がしたいんやろうって」
「えっ…?」
「一緒にいると分かるんよ。えりちが頑張るのは、いつも誰かの為ばっかりで…
だから、いつも何かを我慢してるようで、全然自分の事は考えてなくて…」
絵里はその空気に耐え切れず、逃げ出そうとしてしまう。
だが、希は絵里を呼び止めるように、強い口調で続けた。
「学校を存続させようって気持ちも、生徒会長としての義務感なんやろ!?
だから理事長は、えりちの事、認めなかったんとちがう!?」
絵里は希に気圧され、何も言うことができない。
うるさい…分かっている…そんなこと、言われなくたって!
「…えりちの、えりちの本当にやりたい事は!?」
その時だった、屋上から彼女たちの練習をする声が聞こえる。
その声が絵里の心をひどく動かす。
責任、義務、誇り、期待…
そんなものに縛られず、ただ全てを心から楽しんでいる彼女たちの声は、
絵里には、嫌に羨ましくも、妬ましくも聞こえた。
「何よ…なんとかしなくちゃいけないんだから、しょうがないじゃない!!」
今まで沈黙を守ってきた絵里が口を開き、
これまでため込んできた本音が言い放たれた。
「私だって、好きなことだけやって!
それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよっ!」
廊下でそう叫ぶ彼女の目からは、涙があふれていた。
「自分が不器用なのは分かってる!でも!
……今更アイドルを始めようなんて…私が言えると思う……?」
絵里は諭す様に、もしくは己を嘆くようにそう言うと、
廊下を走り去っていってしまった。
「えりちっ!」
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角を曲がり、希の視界からは完全に外れたころ。
絵里は自分の体の変化に気づいた。
体が全身しびれるような感覚が駆け巡っている。
でも、不思議と痛みなどは伴っていない。
そして、彼女の右腕…
それは、体毛に覆われ、雷を纏った獣の腕のようなものになっていた。
絵里の口から思わず悲鳴がこぼれる。
自分の身に何が起こっているのか、さっぱり分からない。
だが、変化した右腕を見るにつれ、頭に妙な記憶がよみがえってくる。
夜の空を飛び回る光景、自分の目の前に現れた2体の怪物。
そして…2人の仮面ライダー…
その瞬間、雷獣という都市伝説を思い出した。
この時、絵里の頭の中で、絶望的な真実が組み立てられていく。
最近記憶が抜け落ちていることが多いが、その間いったい何をしていた?
雷獣の都市伝説、かなり有名でテレビにも映るほどなのに、なぜ実物を見たことがない?
家で壊れたいくつかの時計。あれが自分の体に帯電した電流によるものだとしたら…?
気付いたときはすでに遅い。
見ると、既に左腕も変化している。
ここはまずい…!
薄れゆく意識の中、絵里は咄嗟に廊下の窓を開け、飛び出した。
その瞬間、絵里の意識はどこか遠くへと消えていく。
このまま終わってしまうのだろうか。
あそこまで自分を貫き通し、自分を殺し続けたのに…
結局、何もできないまま…何も言えないまま…
誰か……
助けて……!
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後者から飛び出した、光る物体。
それは学校から少し離れた広場に着地した。
雷獣はあたりを見渡す。そこにいたのは…
既に変身した2人の仮面ライダー。ダブルとエデンだった。
「本当にここに来るとは…これも我が神魔眼の力か…!」
「違う。永斗のプロファイリングだ。
にしても、よくわかったな」
『雷獣に少しでも会長さんの意志が残ってるのなら、校舎内での変身は避けたいはず。
あと、意識が保つギリギリで人がいない場所と言ったら、ここくらいだからね』
だが、雷獣には既に絵里の意識はない。
ただ2人に牙を向け、唸っているのみだ。
「よし、手筈通りに行くぞ。雷獣は動きはバカ速い。
一斉に追い詰めて背後に…」
そう言い終わる前、上空から2つの陰が飛来した。
土煙で姿が隠れているが、もう正体は見なくてもわかる。
「案外早かったじゃねぇか…」
そこに現れたのはラピッド、ヴァイパー・ドーパント。
そして、ルーズレス、ティラコスミルス・ドーパント。
「ヴァイパーの能力があれば、標的が現れ次第感知が可能だ。
それにしても、”リッパー”の報告通り、学生が適合者とは…新入りもなかなか使えるらしい」
「そだねー。じゃ、そっちは任せるよ。アタシは…楽しみの続きをやるからさぁ!」
ティラコスミルスがそう言うと、こちらに飛び掛かり、
エデン同時に槍を構え、それを迎撃した。
「今こそ決着の時だ、猫女!」
「アハハッ!いいね!やっぱアタシ達気が合うよ!!」
2人は雷獣そっちのけで、またしても戦いを始めている。
ヴァイパーはすでに諦めたのか、2人に構わず、雷獣に襲い掛かった。
だが、雷獣に放たれた蹴りはダブルが身代わりとなって防がれた。
序盤でまだアクセルがかかりきっていないのか、前回よりも弱い気がするが、
それでも威力は十分に高い。
「知り合いか?だとしたら、諦めたほうがいい。
オリジンメモリに呑まれた者は、エネルギーを使い切るまで戻ることはない」
ヴァイパーの言うことは既にアラシ達も知っていた。
だが、それは少しでも意識が残っている状態の話。完全に意識を呑まれた今は、自分のエネルギーの消費にすら気がつかない。つまり、死ぬまで暴走を続けるということだ。
それを避けるための算段はある。だが、その為にはどう考えても隙がない。
ヴァイパーが二撃目を放とうと、脚を構える。
その時、背後にいた雷獣が眼前のダブル突き飛ばし、ヴァイパーに襲いかかった。
ヴァイパーはその対応に少しの隙を見せる。雷獣もヴァイパーにしか気が入ってないようだ。
期せずしてチャンス到来だ。
ダブルは戦っている雷獣の所まで一気に駆け寄り…
右の掌を、背中の生体コネクタに押し付けた。
「ーーーーッ!!」
雷獣は抵抗するように、全身から雷撃を放つ。だが、ダブルは掌を離さない。
ダブルの右側、永斗は地球の本棚を開く要領で、雷獣の意識内
絵里の意識の中へとダイブした。
その瞬間、雷撃は止み、ダブルの中から永斗の意識が消える。
普段の戦闘において、永斗は戦闘中に地球の本棚を開くことはない。理由は大きく2つ。
1つは白い本の存在。
永斗が検索の際に用いる白い本。あれは本棚の本を開く為の媒体となっている。言い換えるなら、永斗は閲覧者。地球の本棚はインターネット。白い本はそれを表示する為のコンピュータといったところだ。
あれが無くては、本を読むことは愚か、触ることも叶わない。
だが、今回の場合は心象世界の絵里と対話するだけ。この場合は本は必要ない。
「今、何をした?」
雷獣の動きが止まったのを見て、ヴァイパーが問う。
ダブルは雷獣から離れ、ヴァイパーに向き直った。
もう一つの理由。
永斗が地球の本棚を開いた場合、その意識は完全にダブルから無くなる。
その時でも変身は持続するが、ダブルは元々2人用のシステム。体がアラシの物だとしても、変身した状態で支障無く動かせるわけではない。その上、永斗抜きでは右半分のソウルメモリの能力を使えないのだ。
すなわち、事実上は戦闘力は半減、もしくはそれ以下になるということ。
アラシに残された道は一つだけ。
半分の能力が機能しない状態でヴァイパーを雷獣から退け、永斗が戻るまで持ちこたえる。
「何でもねぇよ。ちょっと相棒に急用が出来ただけだ。
つーわけで、ちょっとばかしタイマン付き合えよ!」
追い詰められた状況下。アラシは仮面の下で笑うのだった。
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「ハァッ!!」
「ラァッ!!」
エデンとティラコスミルスの戦いは、またしても激化。場所もかなり離れた所まで来ていた。
エデンはグリフォンのマキシマムオーバーを発動し、空中を縦横無尽に駆け回り、ティラコスミルスを翻弄している。
だが、ティラコスミルスもアクロバティックな動きで対応。
戦いは互角。いや、エデンの方が僅かに劣勢だった。
「…ッ!しま…」
マキシマムオーバー発動から3分。ウィガルエッジが光の粒子になって消えてしまう。
その瞬間から、飛ぶ術を持たないエデンは自由落下を始める。
言わば完全無防備状態。ティラコスミルスはエデンの上に跳び上がり、エデンを殴り落とした。
地面に叩きつけられるエデン。
ティラコスミルスも側に着地し、見下すように言う。
「それで終わり?アタシ、弱い者いじめの趣味は無いんだよ」
ティラコスミルスとの戦闘は3回目、だが、戦う度に強さが増している気がする。
恐らく、エデンの力量を図りながらの戦いだったのだろう。一戦目は5割。二戦目は7割。今回は10割…いや、まだ余力を残しているような感じもする。
これが、組織のNo.5エージェント。その強さを、エデンも深く実感していた。
だが、エデンもこんな所で負けられない。傷ついた体を持ち上げ、立ち上がる。
「弱い者か…俺は弱い自分が嫌いだった。
だから竜騎士になった。己の信念を貫く、強さの象徴に憧れた!
それは今も変わらない…俺は、強くある為にここにいる!!」
エデンはドライバーからドラゴンメモリを引き抜く。
「強さの為に…俺はいつだって限界を超える!!」
そして、腰部のオーバースロットのグリフォンメモリを抜き、ドラゴンメモリを装填!
その瞬間、変身槍エデンドライバーがデータとなって、オーバースロットに吸い込まれる。
《ガイアリンク》
《ドラゴン!マキシマムオーバー!!》
オーバースロットから全身に銀のラインが伸び、エデンの両腕、両足に武装が展開される。
それは白銀に輝く竜の爪。それに合わせ、エデンの筋肉も隆起する。
「そうこなくっちゃ!!」
突撃するティラコスミルス。エデンは片足を上げ、地面を踏みつけた。
すると、エデンを中心に同心円状に地面が割れていく。
割れる地面に足を取られたティラコスミルスの動きが一瞬鈍る。
その瞬間にエデンは飛びかかり、右腕の爪でティラコスミルスを突き刺した。
「がぁぁぁぁぁっ!!」
ティラコスミルスは悲鳴をあげるが、筋肉が硬く、貫くには至らない。
エデンの爪を弾き、一端距離をとるティラコスミルス。
だが、エデンは即座に追いつき、さらに一撃。
吹っ飛んだところをさらにもう一撃。ティラコスミルスは凄まじい風圧と共に吹っ飛んでいく。
飛んでいく自分の体を、足の爪でブレーキをかけ、なんとか勢いが止まる。
すると、エデンは少しだけ攻撃態勢を緩める。
「全力を出せ。それで完全に下してこその騎士道だ」
エデンは戦いの中、ティラコスミルスの余力を確かに感じ取っていた。
すると、ティラコスミルスが少し笑ったかと思うと、全身の力を抜く。
「アタシのコードネーム”ルーズレス”。この由来がわかる?」
「分からん」
「あ、そ…ま、いいや。ルーズレスは日本語で”無慈悲”。
全力の際、相手を容赦なく叩きのめす様子から、ゼロが名付けたんだ。
本気出せば、アタシでも制御できない。後悔したって無駄だよ…?」
「上等だ。ならば、こちらも全力を持って、貴様を下すのみ!」
瞬間、双方の殺気が一気に膨れ上がった。
双方ともに臨戦態勢に入り、力を高めている。
すると、ティラコスミルスの体が肥大化し、より獣に近く
否、獲物を狩る獣そのものの姿。ビッグ・ティラコスミルスへと変貌した。
「我と契約せし白亜の竜よ。神々の力と我が魂が命ず。
我が信念を糧とし、我と一つになれ。我が身を光輝の神竜と成せ!!」
《ドラゴン!マキシマムオーバードライブ!!》
エデンの全身が光に包まれ、姿が変貌していく。
腕と足だけでなく、全身に装甲が装備され、竜の翼と尾が現れる。
ヘルムも大きく変化しており、全身の風貌は、神々しき神獣のよう。
「ガアァァァァァァァ!!!!」
「アァァァァァァァァ!!!!」
2体の獣が咆哮し、次の瞬間、凄まじい衝撃がぶつかり合った。
突撃したティラコスミルスのスピードは今までと比較にならない。
だが、エデンはスピードで劣りはしたものの、それを右腕の爪で正面から迎え撃った。
その一撃は、ティラコスミルスの牙を粉々に粉砕。
だが、ティラコスミルスは怯むことなく、もう一度突撃。
エデンは再び迎え撃とうとするが、眼前でティラコスミルスは飛び上がり、一瞬でエデンの視界から消える。
一撃を加えようと、上空からエデンを狙うが、次の瞬間にはティラコスミルスの視界からエデンが消えた。
エデンが現れたのはティラコスミルスの真上。
自分の上空の殺気に気づき、右腕を構える。エデンも同様だ。
双方の攻撃が見事に入り、エデンは上へ、ティラコスミルスは下に吹っ飛んだ。
そんな互角の戦いが繰り広げられること、数十秒。
エデンがティラコスミルスから距離をとる。
ドラゴンのマキシマムオーバーは他と比べ強力である代わりに、持続時間は極端に短い。
100%の力を出すとなると、下手すれば20秒と持たない場合もある。
つまり、いつ解除されてもおかしくない状況なのだ。
「竜の牙は総てを穿ち、竜の翼は虚空を切り裂く。我が覚悟は罪を砕き、我が魂は滅びぬ槍。
罪を背負いし者に問う。汝の覚悟は牙にも成れた。汝の魂は翼に変われた…」
詠唱を始めたエデン。その力は突き上げた右腕に収束していく。
それに気づいたティラコスミルスも構えをとる。どちらも次で決めるつもりだ。
「帰らぬ時間を嘆くなかれ、明日の世界に願いを託せ。
罪の魂に罰を与えよ、悔いる心に光あれ!!」
エデンの右腕の爪からエネルギーが刃となって放出される。
それは巨大な光の剣。
「
それと同時に、ティラコスミルスも地面を蹴り、大地を削りながらエデンへ突っ込んでいく。
威力、スピードともに、今までとは段違いだ。
ティラコスミルスのスピードが最高潮に達し、目で追えなくなった瞬間。
エデンは光の剣を振り下ろした!
辺り一帯が光に包まれ、激しい爆風と衝撃波が大地に響き渡る。
それら全てが落ち着き、空間に静寂が戻ったころ。
砕けたメモリが地面に落下する音のみが鮮明に響き、
大きなクレーターの中心で、気を失ったルーズレスが横たわっていた。
_______________________________________
永斗が目を開けると、そこには真っ白な空間が広がっていた。
それは、本棚を展開する前の”地球の本棚”と似た空間。
どうやら”L”のメモリの心象世界に入ることに成功したようだ。
「さて、会長さんを探すか…」
地球の本棚と違うところは、永斗の体が宙に浮いているということ。
白い本が無いため、シンクロが不完全なのだろうか。幽霊にでもなった気分だった。
永斗は空間内を泳ぐように移動し、先を進む。
すると、目の前に四角い画面のようなものが表示される。
砂嵐が吹く画面をタッチすると、永斗の頭の中に映像が流れ込んできた。
7年前、絵里が11歳になる少し前で、まだロシアにいた頃。
絵里は物心ついたころから続けているバレエに没頭していた。
いわゆる天才というやつだった。これまでのコンクールで、表彰台に上がらなかったことは無かった。
人々からは”無敗の神童”と呼ばれ、ロシアのバレエで彼女を知らない者はいない程だった。
いつものように練習に励んでいた、ある日。
彼女は、自分と同年代の一人の少年と出会った。
初めて会ったとき、少年はひどくみずほらしい格好をしていた。
服は汚れ、ボロボロ。体中に傷がついて、何日も何も食べていないような様子だった。
絵里は彼を家へと連れていき、少年は食べ物や服を与えられた。
だが、少年の表情だけは変わらず、死んだような顔をしているだけだった。
まるで、何かに絶望したかのように。
あんな状態で見つかった少年を、安直に警察に預けるわけにもいかず、しばらく絵里の家で保護することになった。だが、数日たっても、彼の顔が変わることは無かった。
ある日、絵里はいつも通り、バレエの練習をしていると、そこに少年が迷い込んできた。
絵里は驚いた。少年が現れたことではない。
彼女の踊りを見た少年が、初めて表情を明るく変えたのだ。
その日以来、絵里は少年に自分の踊りを、練習がてら見せるようになった。
少年の顔はだんだんと明るくなっていき、数か月後には笑顔を見せながら話すほどになった。
それからというもの、絵里は毎日の練習が、前以上に楽しみになった。
笑顔で彼と話すのが、とても楽しかった。
「上手になった」と彼が褒めてくれるのが、たまらなく嬉しかった。
絵里はそんな彼に、だんだんと惹かれていった。
絵里が少年と会って半年が過ぎた頃、
少年は、保護者と名乗る人物に引き取られ、絵里の家を去っていった。
だが、特に2人の関係に変化はなかった。
彼は前と同じように練習を見に来てくれた。
雨の日も、雪の日も毎日欠かすことなく。嵐の日に、びしょ濡れになって来てくれたこともあった。
そんな交流が続くこと半年。2人が会ってから一年以上が過ぎた頃。
当時、絵里は小学6年生。小学生としての最後の大会が迫っていた。
その大会は、これまでで一番大きな大会。当然、緊張していた。
そんな時、少年は「絶対見に行って、応援する」と言ってくれた。
特に他意のない言葉だったのかもしれない。
他のみんなが言ってくれる言葉と、そう変わらないのかもしれない。
それでも、その言葉は絵里を勇気づけてくれた。
迎えた大会当日。
彼は_____________
来なかった。
その大会で、絵里は初の敗北を喫した。
そして、それ以来、少年が絵里の前に姿を現すことは無かった。
許せなかった。
少年が来なかったことではない。少年が来なかっただけで負けてしまった自分が許せなかった。
傷ついてしまった自分が許せなかった。
いつから私はこんなに弱くなった?
彼と出会い、弱くなり、裏切られ、そして傷つくくらいなら、最初から会わなければよかった。
他人なんか信じるんじゃなかった。人を好きになるんじゃなかった。
結局、信じられるのは自分だけ。
もう誰にも頼らない。”無敗の神童”と呼ばれた、あの頃の誇りを取り戻すため。
絵里は戒めとして、バレエをやめた_____________
「なるほどね…これが会長さんの核の記憶」
永斗は絵里の記憶を閲覧し、理解した。
これが、絵里の人格を作る最も中心にある記憶。彼女が一人で全てを背負う理由。
強かった自分の”誇り”。
それからしばらく先へ進むと、そこに人影が。
空間の片隅で泣いているようにうずくまっているのは、紛れもなく絵里だ。
「…何しに来たの?」
こちらに気づいた絵里が、小さくそう呟く。
絵里はすぐ近くにいる。だが、2人の心の間には、厚い壁があることを感じざるを得なかった。
だが、それを気にすることもなく、永斗はハッキリと言った。
「決まってるよ。約束通り、会長さんを引きずり下ろしに来た」
その言葉を受けても、絵里は顔を下げたまま。
だが、永斗は構わず続ける。
「まず、プロセス1。最初にはっきりさせておきたいのは、会長さんは天才なんかじゃない。
ただ、人一倍踊れて、人一倍努力しただけの、ただの女の子だ。
まぁ、天才の僕から言わせればだけどね」
絵里は相変わらず反応をしない。聞いていないのだろうか。
「そして、会長さんは強くなんてない。今も昔も弱いままだ」
その言葉を聞き、初めて絵里が少しの反応を見せる。
「理由だけ取り繕ったって、本質は変わりはしない。
誰も信頼できない?違う、誰かを信じて、また裏切られるのが怖いだけだ。
戒めとしてバレエを止めた?これも違うね、傷つけられたことを思い出したくない、それか、負けるのが怖いんだ」
「違……」
「違わないよ。あの時、大会で負けたのもそうだ。
会長さんは弱くなったんじゃない。最初から弱かった。
負けたのを出会ったせいにしたのは、負けたという現実から逃げたかっただけなんだよ」
絵里は何かを言いたそうな様子だが、何も言わず、ただ唇を悔しそうに噛んでいる。
「言い返せないね。心象世界は正直だ。
君は天才でもなければ、強くもない。ただ、プライドに踊らされただけの、愚かな普通の人間だ」
しばらく沈黙が流れる。絵里は今にも泣きだしそうだ。
「でも、それの何が悪い?」
その一言で、絵里が驚いたような表情を浮かべる。
すると、永斗は口元に笑みを浮かべ、どこか楽しそうに話をつづけた。
「プライドなんて誰もが持ってて、誰もがそれに踊らされている。
それが悪いわけがない。でも、僕がそれを悲観する理由はただ一つ。
たった一度の人生を、たかが一感情に踊らされて生きるなんて、面白くないでしょ?」
それを聞いても、絵里はよく分かっていないような様子だ。
「さぁ、ここからプロセス2。会長さんの固定観念をぶっ壊す。
会長さんは真面目すぎたんだよ。融通が利かない性格のせいで、自分のプライドに従順を貫き通し、時には自分を殺した。でも、そうじゃない。プライドだって、自分の一部なんだ。
適当でいいんだよ。都合のいい時にプライドを持って、邪魔な時は捨てて、また必要なら拾えばいい。
会長さんはもっとだらけて、自分のやりたいことやればいいんだよ」
その言葉を聞いた絵里の顔が、少し晴れたような気がした。
心象世界に小さなひびが入る。
「μ’sに、入りたいんでしょ?」
その言葉で、絵里の目から涙があふれる。
絵里は振り絞るように、こう呟いた。
「どうして…?私、貴方達にひどいこと言ったのに…あんな態度とったのに…
なんで私のために、ここまで……」
「それも同じだよ。
僕はただ、アイドルを馬鹿にした君を、アイドルファンとして許せなかっただけ。
それにさ、アンチをアイドルの道に引きずり込むなんて、そんなオタク冥利に尽きる展開、そうはないでしょ?」
そう言って、永斗は絵里に笑いかけた。
絵里も涙を拭き、それに応えるように笑顔を見せる。
それはかつて、少年と一緒にいた頃のような、屈託のない笑顔だった。
「最終プロセス。最後は会長さんが選ぶんだ。
君はたった今、自分の人生を全否定され、考えを壊され、僕に完敗した。
さぁ、弱い自分にコンテニューする?
それとも、弱いままでも、仲間と強くてニューゲームを始める?」
永斗は絵里に手を差し出す。
絵里の顔に迷いはない。
「私は______」
空間のひびが広がる。
心象世界が、崩れていく________
______________________________________
「どうした?ずいぶんと不調だな」
「ぐっ…!」
ダブルVSヴァイパー。その戦況は誰から見ても一目瞭然。
圧倒的にダブルが劣勢だった。
前回も優勢だったというわけではないが、あそこまで戦えたのは、右側があってこそ。
永斗がいない今、体を満足に動かすことができない。
その上、サイクロンの風吸収によるスタミナ回復が見込めない。
ヴァイパーの攻撃を避け続けるうち、神経も体力も限界に近づいていた。
やはり強い。純粋な格闘のみなら、ファーストよりも上だろう。
その戦いからは、強い信念のような、執念のようなものが感じられる。
それ故に、アラシは疑問を抱いていた。
「アンタ、そんなに強いのに、なんでそんな事してるんだ?」
「何……?」
アラシの言葉にヴァイパーの攻撃の手が止まる。
「ファーストもそうだったけど、戦ったらわかるんだよ。
アンタは、ただの悪人には思えない。本当はそんなこと望んで…」
アラシが言い終わる前に、ヴァイパーの蹴りが直撃。
うずくまるダブルに、ヴァイパーは見下す様に言った。
「油断、戦闘中の雑念、不要な同情。
あまり俺をなめるな。俺は自分の意志でここにいる。
では、俺からも一つ聞かせてもらおう」
ヴァイパーは足元のダブルを蹴り飛ばす。
ダブルは腹部を抑えながらも、立ち上がった。
「何故、貴様らは組織に歯向かう。
子供が何人集まったってどうにかなる相手じゃないことくらい、馬鹿でもわかるだろう」
ダブルはその質問には答えない。いや、答える余裕がないといった方が正確か。
ヴァイパーへと殴り掛かるが、難なく避けられてしまう。
「諦めなければ何とかなるとでも思っているのか?
だとしたら、そんな虫唾が走るような空論は捨てるべきだ。
どれだけ強くなっても、どれだけ強く思いを持っていても、”力”は”強さ”と違う。
ろくに強くもない奴が上でふんぞり返り、下の奴らが必死に生きるのを笑っている。
世界には、絶対に届かない力ってものがあるんだ……!」
ヴァイパーの言葉は段々と強くなり、激しい憤りを感じる。
「非情、理不尽、不平等…俺はこのゴミのような世界が嫌いだ!
だから、正義も悪も等しく殺して、この世界に復讐する!!」
ヴァイパーの足に銀色の棘が現れる。
腕についているのと同じ毒針。
ヴァイパーは力を込め、毒針の生えた足でダブルを……
その瞬間、ダブルの右側に力が戻る。
風の補助でスピードアップ。ヴァイパーの攻撃を回避。
回避にジャンプを用いたため、体に風が取り入れられ、体力が回復した。
アラシは自分の身に何が起こったかわかっていた。
ホッと安心したように息を吐くと、笑いを含んだ声で
「遅ぇんだよ。相棒」
『僕なりに飛ばしてきたんだけどね。
それと…お土産』
雷獣がいた方向から、ターコイズカラーの光球が飛翔。
ヴァイパーに激突し、牽制すると、ダブルの手元に収まった。
それは”L”と刻まれたガイアメモリ。
「上手くいったみたいだな」
『僕としてはもう功労賞だと思うけど、仕方ない。後ひと踏ん張りだ』
ダブルはドライバーのサイクロンメモリを引き抜き、メモリのボタンを押す。
《ライトニング!》
”L”ライトニングメモリをドライバーに装填し、再び展開!
《ライトニングジョーカー!!》
ドライバーの前に”L"と”J"の文字が浮かび上がり、ダブルの姿が変わっていく。
右側はターコイズカラーに、全身には稲妻を彷彿とさせるディティールが施されている。
「まさか…”L”のメモリ…!」
「アンタは言ったよな。この世界にはどうしても届かないものがあるって。
でもそれって、アンタが勝手に諦めてるだけじゃないのか?
ウチの相棒はたった今、不可能を可能にしてきたぜ。今度は俺たちがアンタを倒して、人は何処までも登れるって証明してやる!!」
「『さぁ、お前の罪を数えろ!!』」
姿が変わった瞬間、アラシと永斗の頭に情報が流れ込んでくる。
オーシャンやリズムの時もあった感覚。メモリの大まかな能力の詳細が自然に理解できた。
ヴァイパーは蹴りを構え、超速で蹴りを放つ。
だが、蹴りは地面に突き刺さり、ダブルには当たらなかった。
「ッ…!」
空気の振動と温度センサーでダブルの位置を把握。背後だ。
ヴァイパーは再び蹴りを放つが、またしても当たらない。
次の一瞬でダブルは懐に。鋭い拳が、初めてヴァイパーに直撃した。
ライトニングメモリの能力。それは”超高速移動”。
厳密に言えば、体に局所的な電流を流し、瞬間的に筋組織を激しく活性化させ、高速移動を可能にしている。そのスピードは、現時点最速だったサイクロンリズムさえも比較にはならない。
そのスピードを持ってすれば、ヴァイパーの攻撃をかわすことも容易い。
音速攻撃を攻略した今、ダブルの方が能力面では圧倒的に分があった。
だが、この能力は所謂、電流によるドーピング。
筋組織には尋常ならざる負担がかかるのだ。
アラシの回復力を持ってしても、戦闘中に回復することは不可能。
今の消耗具合から考え、持続時間はおよそ……10秒。
(それだけあれば十分だ!)
ダブルは高速移動でヴァイパーを翻弄。
隙を見せた瞬間に攻撃を加え続け、確実に追い詰めていく。
高速移動を開始して7秒。
勝負を決めるべく、ダブルはマキシマムスロットにライトニングメモリを…
ドスッ!
鈍い音と共に、ダブルの背中に何かが突き刺さった。
それはヴァイパーの足。背中に突き刺さっているのは毒針だ。
状況は瞬時に理解できた。
ヴァイパーは足を地面に突き刺して、足を延ばしてダブルの背後まで掘り進めたのだ。
一瞬で猛毒が回り、意識が朦朧とする。
一瞬でも考えを止めたら負ける。
一瞬でも動きを止めれば、死に直結する。
残り2秒。決められなければ確実に終わる。
冷静に、かつ迅速に、勝利の一手を探し出せ!
「飛ぶぞ!!」
残り1秒。ダブルは全ての力を足に集注させ、上空へと飛び上がった。
その高さ、約100メートル以上。
飛び上がったと同時に能力が切れ、全身から力が抜けていく。
《トリガー!》
《ライトニングトリガー!!》
ダブルはジョーカーをトリガーと交換し、ドライバーを展開。
左半身が青く変わり、胸元にトリガーマグナムが現れる。
ヴァイパーの攻撃に射程は、これまでの戦いから察するに、およそ40メートル弱。
ダブルは飛び上がったが、飛ぶ術は持たず、自由落下をするしかない。
敵の射程に入れば、直撃は必至だ。
ならば、射程に入るまでに仕留める!
ダブルはトリガーマグナムにライトニングメモリを装填し、マキシマム待機状態に変形。
トリガーによる超視力が、ヴァイパーの姿を捕捉する。
照準を合わせ、引き金に指をかける。
落下しながらの狙撃。狙いが定まらない。おまけに、毒のせいで視界が歪む。
永斗は自由落下による体の移動、角度、視界の歪みを考慮し、瞬時に計算。
ヴァイパーに攻撃が直撃するポイントを割り出した。
アラシは永斗の計算に全てを委ね、ヴァイパーに向かって引き金を引いた!
《ライトニング!マキシマムドライブ!!》
「『ライトニングアクイラ!!』」
ヴァイパーも同様にダブルの座標を捕捉。
攻撃を感知したヴァイパーは、叩き落すために攻撃を構える。
だが、それは
ヴァイパーの蹴りは、推測で音速を超える。それは数値に直して、秒速343メートル以上。
対して、雷の落ちる速度は秒速約150キロメートル。一秒で東京から静岡に行ける速さ。
雷撃を前に、音速はあまりに遅すぎる。
ヴァイパーの蹴りは放たれることなく、銃口から放たれた落雷がヴァイパーを貫く。
衝撃に耐えられなくなったヴァイパーの体は、木っ端みじんに爆散した。
____________________________________
ーアラシsideー
マキシマムがヴァイパーに当たったのを確認すると、俺たちは着地。
念のため変身を持続したまま、力の入らない体を引きずって、爆発の方に向かっていく。
あれほどのエネルギーの攻撃が炸裂したんだ。確実にメモリブレイクはしたはずだ。
「あらら~。ラピッドくんもやられちゃったか~」
爆煙の中から声が聞こえる。
この声、聞き覚えがある。一度だけだがひどく印象に残り、軽い口調の中に恐ろしさを感じる。
「どォもどォも。また会ったね、探偵くん。
変身した姿は初めましてかな?」
組織の幹部。しかも、大型暴力団”朱月組”の組長。朱月王我。
詳しいことは不明だが、異世界の怪物を呼び出す能力を持っている。
「何しにきやがった。仲間の敵討ちか?」
「いやいや、ボロボロの相手倒しても面白くないでしょ?
ちょっと気まぐれで来てみたんだけど、いろいろといいものが見れた。
そしたら、ルーズレスちゃんとラピッドくんが負けてるからさ~」
朱月の足元には、気絶したラピッドだけでなく、ルーズレスもいる。
どうやら、瞬樹は勝ったようだ。まぁ、当然か。
「”L”のメモリも手に入れたみたいだね。大分、両方とも強くなったみたいだし…
これなら、オレの遊び相手くらいにはなるかな?」
突然、声が低く変わり、俺は思わず戦慄を覚える。
さっきから黙っている永斗も同様なようだ。
本能が言っている。コイツは…恐ろしく強い…!
「なんてね。でも、その調子で
朱月組組長。七幹部”傲慢” 朱月王我が相手になろう」
そんなことを言い残し、朱月と気絶した2人はワームホールに包まれ、消えていった。
七幹部…初めて聞いたワードだ。
つまり、組織の幹部の中でも別格……。
「なるほど…こいつは潰し甲斐のある運命だ…」
組織の目的が明らかになり、構成や戦力も明らかになりつつある。
待っていろ…お前達は、俺たちが必ず叩き潰す!
______________________________________
一時間ほど後。
音ノ木坂学院、保健室にて。
「ここは……」
メモリから解放され、気を失っていた絵里が目を覚ました。
辺りを見渡し、絵里は驚いたような顔をする。
部屋には希、それとμ’sのメンバーが俺たちを含めて全員そろっていた。
「おかえり、えりち」
希は絵里に優しく言葉をかける。
事情は既に全員に説明した。絵里がどうなっていたか、それを全員が受け入れてここにいる。
大体、コイツ等はどいつもこいつも怪物にも物怖じしない、化け物みたいな根性の奴らばっかだ。そんなことくらいで怖気づいたりもしないだろう。
既に生体コネクタがなくなっているのも確認している。
オリジンメモリのドーパントは、人間態にも怪人態にも、同じ場所に消えることなく生体コネクタが残り続ける。あの時、永斗が亜里沙にあんなことを聞いたのはそのためだ。背中じゃ、自分ではまず気付かないだろうからな。
ちなみに言っておくが、背中を確認したのは希で、男子組は退場していたのであしからず。
「さて、会長さん。僕の話、覚えてるよね?」
永斗がそう言うと、絵里は黙って頷く。
何の話かは知らないが、精神世界での対話の事だろう。
絵里はしばらくバツが悪そうに黙っていたが、しばらくすると、意を決したように深呼吸をし、真剣な表情で穂乃果たちに向き直った。
「貴方達にお願いがあるの。勝手なことだってわかってる。貴方達が許さないのも覚悟の上。
でも、これを言わなきゃ確実に後悔する。だから、聞くだけでも聞いてほしい。
私を、スクールアイドルとしてμ’sに入れて!」
その言葉の後、部屋がシンと静まり返る。
だが、少し経つと穂乃果が前に出て、笑顔を見せながら手を差し出した。
「こちらからもお願いします。生徒会長、いや、絵里先輩!
μ’sで一緒に踊ってください!」
それを聞いた絵里の顔は、嬉しそうでもあるが戸惑っているような複雑な表情だった。
「ほ…本当にいいの…?」
「なんだよ。さっきから覚悟の上だとか、聞くだけ聞いてほしいだとか。
やりたいのかやりたくないのかどっちだよ」
「そりゃ、やりたいけど…」
少し恥ずかしそうに答える絵里に、俺は
「じゃあ、それで十分だ。何かをするのに、やりたい以外に理由なんていらないだろ」
「本当にやりたいことって、そんな感じに始まるんやない?」
乱入してきた希に驚いていると、希は俺にウインクを飛ばしてくる。
コイツ…おいしい場面取っていきやがった…
「それじゃ、穂乃果。代表頼むぜ」
俺が穂乃果を呼ぶと、穂乃果は絵里に向かって強く手を差し出す。
絵里はその手を取り、立ち上がった。
よほど嬉しかったのか、目を潤ませながら。
その瞬間、他のメンバーからも歓喜の声が上がる。
先輩の威厳が減るとか言って渋っていたにこも、なんだかんだ嬉しそうだ。
「これで8人…μ’sもだいぶ大きくなったもんだ…」
「いや、9人や。ウチを入れて」
そうそう、これで9人…って…
「「「「「「「「「「えぇぇっ!!」」」」」」」」」」
希の思いがけなさすぎる一言に、一同が驚きの声を上げた。
永斗だけは読んでいたか興味がないのか知らないが、驚いていなかった。
「占いで出てたんや。このグループは歌い手が9人になったとき、未来が開けるって。
だから付けたん。9人の歌の女神”μ’s”って」
またしても全員の驚きの声が上がる。
なるほど、最初から希の思惑通りだったってわけか。
いや、それは少し違うか。
今の俺たちは、紛れもなくμ’sがつかみ取った未来。
幾度と運命を乗り越えた結果、届いた未来だ。
それでも、きっかけをくれたのは希に違いはない。
「本当にいけ好かねぇ奴」
「それはお互いさまやろ?」
希はそう、俺に笑いかける。
やっぱ苦手だ。でも、本当に大した奴だよ…
「さてと、絵里も無事に加わり、予想外の奴も加わったところで…
お前たちに伝えておかなきゃいけないことがある」
急に真面目な雰囲気になった俺に、全員が息をのむ。
偶然か必然か、あの時の9人は全員μ’sに加入した。
俺たちも、マネージャー兼仮面ライダーでいる以上、これを話さないでおくわけにはいかない。
これは、彼女達の人生に大きく関係することだ。
「瞬樹と俺が永斗から聞いた話だ。話さないでおこうとも思ったが、やっぱり避けて通ることはできない。落ち着いて聞いてくれ。凛が前に組織に狙われた理由。海未とにこから謎の光が現れた理由。
そして、絵里がドーパントになった理由。それらを、一気に教える」
俺は語った。
俺たちが聞いた、地球の真相を……
今から46億年前。地球が誕生した。
大地が生まれ、海が生まれ、空が生まれた。
それと同時に、地球には”意思”が生まれた。
「石?地球に石もできたの?」
「よし、ちょっと黙ってろ穂乃果。話が進まん」
だが、地球に意思が生まれたといっても、それはシステムや本能に近い物。
地球は自分に起こっていることに干渉することなく、ただ自分に起こった事象のみを記憶し続けた。
それが、地球の本棚の基となっている。
記憶し続けること数十億年。最近になって、地球に人類が生まれた。
人類は”自我”を明確に持つ、唯一の生物。
地球はそのことを事象の一つとして記憶。だが、人類はとめどなく生まれる。
すると必然的に、地球にも”自我”が芽生え始めた。
自我が生まれたまではよかったのだ。ただ、人類はそれから急速に進化、発展し、それに伴って”感情”を持つようになった。
すると当然、地球も”感情”を学習する。
だが、それにとどまることなく、人類はより複雑な感情をそれぞれが持つようになった。
元々システムだった地球は、それら全てを。
地球上に存在する数多の人格をすべて記憶しようとした。
だが、”苦しみ”という感情も学習した地球にとって、それはあまりに酷だった。
地球は苦しみから逃れるため、自分の中の感情を分け、外に出そうと考えた。
その時分けられた人格や感情は、大きく分けて26。
分かれた地球の意思は、自分たちと同じ数存在する「アルファベット」の記憶を形として、地球の表面に現れた。
それが”オリジンメモリ”_________
「オリジンメモリは自らが司る感情に呼応し、適合者を選ぶ。
そして、適合者はある程度の加護をメモリから受けることになる。
お前らにはいってなかったが、ファーストライブの時、プリディクションっていう予知のドーパントがいた。そいつの予知によると、お前らのライブは誰も来ず、お前らは諦める運命だったらしい。
だが、お前らは諦めなかった。そして、ここにいる全員が、ライブを見に来た。
その理由は推測だが、俺が予知を破ったことでプリディクションの自信が消え、能力に揺らぎが生じる。それによって、オリジンメモリの加護が、プリディクションに打ち勝ったんだ」
プリディクションは永斗の検索によると、厳密には予知ではない。
状況から最も起こりうる可能性が高い事象を割り出し、あとは周囲の人間にその行動をさせるよう、弱い洗脳を施すのだ。これなら、さっきの説明が成立する。
「つまり結論から言って、ここの全員が適合者。
そして、組織の目的は、オリジンメモリを26本すべて揃えること。お前らはどうやっても、俺たちの戦いから逃げることはできない」
こんな近辺にここまで多くの適合者がいるのは変だが不自然ではない。
代を重ねるごとに、適合者がいる範囲が狭まっているらしい。そのうえ、適合者同士は引き寄せ合うという性質を持つ。まるで、再び集まらんとしているかのように。
結局、その後は話が纏まることは無く、自然解散となった。
あの単細胞な穂乃果でさえ、流石に考えることがあったらしく、最後まで黙っていた。
翌日、7/10
いつものように何とか授業をやりすごし、アイドル研究部部室へと向かう。
今日は結局、まだ穂乃果達とは会話していない。珍しく、朝練も休みだった。
瞬樹には咎められたし、やはり言うべきではなかったか…
部室に到着し、扉を開けようとする。
その時、部室の扉の横に立てかけてあった、ある物が俺の目に入った。
「オイ、これはどういうことだぁ!!」
ソレを見た俺は大声で叫びながら、部室に勢いよく入る。
中には、一年生以外の6人が揃っていた。
突然叫んだ俺に、穂乃果は落ち着いて、
「あ、アラシ君やっと来た!」
「あぁ、うん。遅れて悪かった…って、そんなことはどーでもいいんだよ!!
まずはコレの説明をしてもらおうか!」
俺は立てかけてあった物を穂乃果に突き出す。
それは、”探偵部”とマジックで書いてある、木の板だった。
「探偵部の看板だけど?」
「だけど?じゃねぇよ!なんで音ノ木坂に探偵部があるんだ!?」
「あー、それなら、昨日の夜に皆で話し合ったんだよ。
アラシ君が事務所に依頼が来ないだとか、学生になって事務所の事どうすればいいかわかんないとか言ってたから、学校に探偵部作ったら、同級生がいっぱい来て問題解決かなって」
なんでまたそんな話に…いや、確かに依頼は来ないが、最近は理事長との交換条件で家計は何とか助かっている。今回だって、エージェント2人倒した分の報酬をもらったところだ。
だが、確かに利点は大きい。
依頼は多いに越したことは無いし、学校に拠点を置くことで、この学校にいると思われるメモリセールスの正体も追いやすい。
「いや、部員はどうすんだ?俺と永斗、瞬樹を入れても3人しか…」
「それなら簡単だよ。μ’sが全員兼部するんだよ!」
「はぁぁぁ!!??」
コイツは何を言い出すんだ!?
だが、他の奴らの反応を見ると既に了承済みのようだ。正気か?
「でも、そんなの許可が通るわけ…」
「生徒会長の私がいるのよ?通るに決まってるじゃない」
「そういうのを職権乱用っていうんだぞ、絵里!!」
どいつもこいつも…なんでってこんな…
「分かってるのか?お前たちは組織に狙われるんだ。その上、探偵部なんて作れば、事件に嫌でもかかわることになる。そうすれば、もう引き返せないんだぞ!?」
「だからだよ。昨日の話で考えたんだ。私たちの運命がそうだって言うなら、中途半端に逃げたくない。アラシ君達が戦うなら、私たちだって戦いたい!」
「穂乃果…いや、でも…」
「何を迷っているんです。”何があっても私たちを守り抜く”って言ったの、もう忘れたんですか?」
「アンタが言ったんでしょ?”自分で抱え込まず、仲間を頼れ”って」
海未…にこ…そういえば、そんなこともいったっけな…
全く…組織より何より、コイツ等が一番厄介な相手だ…
「分かった。でも条件が3つある。
1つ。お前らはアイドル第一だ。そっちが本業であるのを忘れんな。
2つ。勝手な行動はするな。必要な時はこっちから指示を出す。
そして、3つ…」
俺はいったん区切り、声を強くしていった。
「いつ何時も、俺たちを信じろ。命に代えてでも、お前たちは必ず守る」
さぁ、運命に選ばれた役者は揃い、舞台は整った。
見せてやろうじゃねぇか。俺たちが運命を変える物語を!!
「大変です!!」
その時、勢いよく扉が開き、花陽が駆け込んでくる。
えらく既視感を覚える光景だが、その後に他の一年生も入ってきた。
なぜか、酷く絶望した様子で…
「オープンキャンパス…出られなくなりました……」
どうやら運命は俺たちを見放したらしい。
今回はSOURさん考案のオリジナルメモリ”ライトニングメモリ”を登場させていただきました!
ライダーシリーズ定番の10秒スピードアップってやつですね。
さて。色々明らかになったと同時に、謎も増えました。
朱月の二つ名。あれは幹部の格を分けるために設けたものです。
モデルは…皆さんご察しの通りです。
次回はオープンキャンパス前の一休み。
花陽の言葉の真意とは一体!?ネタバレしますと、瞬樹の隠された二つ名が明らかになります。
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!