否、夏休みと書いて戦争!課題、部活、テスト、補習の集中砲火じゃぁぁぁぁ!!
唐突にすみません。気付けば遊ばないまま夏休みが終わってた146です。
だいぶ間が開いたのでいくつかあります。
①風都探偵
第1話の感想は、マジでダブルの続編だぁぁぁ!って読みながら興奮してました。
青年誌ならではのダークな展開にも期待しつつ…と思ったら、クソ田舎のコンビニにはビッグコミックスピリッツが無い!2話が読めない!だが、俺は諦めない!
②仮面ライダーエグゼイド
最終回を迎えました仮面ライダーエグゼイド。実はそれより前に映画見に行ってて、時系列の事分かってたんですよ。ネタバレくらって楽しめるか不安だったけど…いや、最終回最高でした!!
ラストバトルのレベル2は興奮ヤバかったし、それぞれのその後みたいなのも本当にこれまでの物語が繋がってて良かったし、最終回じゃないけど、ポッピーが社長に語り掛けるシーンはマジで涙腺が(ボキャブラリーの無さがモロバレするので割愛)
とにかく、最後まで最高でした!エグゼイドのキャストの皆様、本当にありがとうございました!!あ、もちろんVシネも楽しみっす。
③Twitter
ガチな余談ですが、Twitter始めました。といっても、ガンバライジングのキャンペーン用に作ったやつで、たまに下らない事とガルパについてツイートするくらいですが…
④お気に入り登録
新たにお気に入り登録をしてくださった、
髭アンパンさん、黒っぽい猫さん、ナンジュさん、ギャルラホルンさん
ありがとうございます!
今回ばっかはマジで人数が合わないんで、絶対間違えてます。ご指摘お願いします、あとスイマセンm(__)m
ーアラシsideー
「よし。情報をまとめるぞ」
捜査一日目が終了。犯人の使用するメモリ、そして関係者も割り出せた。
一日でこの成果は上々といったところだ。
「えりちと海未ちゃん、瞬樹くんがおらんけど…」
「あぁ。電話も繋がらない。瞬樹がバカやらかしたか、それとも…」
そんな話をしていると、事務所の扉が開き、
絵里と海未に肩を貸してもらった状態の瞬樹が、傷だらけで帰ってきた。
「竜騎士…帰還……」
「なるほどな。ドーパントに出くわしたか。
花陽、手当てしてやれ」
「は…はい!」
「私も手伝うわ」
花陽と真姫は救急箱を持ってきて、手際よく瞬樹の上着を脱がせ、手当てをしている。
真姫は流石は医者志望。手順なんかはよく分かっている。
それにしても、瞬樹があそこまでの重傷を負うとは、幹部クラスか…
一方、花陽に手当てをしてもらっている瞬樹は幸せそうだ。
なんとなく安心する。
「瞬樹は2人に任せて、引き続き今日のまとめだ。
今日の成果は犯人の情報、事件の全容。明日からは…」
「アラシ、ちょっと」
「どうした?永斗」
手を挙げた永斗は、右手の人差し指で
「凛ちゃんが死にそう」
震える右手で、こぼしながら水を飲む凛を指さした。
緊張しているのは誰から見ても明らかだ。
「…何もそこまで緊張しなくても」
こうなった原因は決まっている。
それは永斗とランスこと楯銛赤里との勝負について。
数時間前、今回の事件の犯人”ネットの悪魔”と繋がりがある楯銛赤里とコンタクトをとった際の事。色々あって、永斗は楯銛のゲーム勝負を受けることにした。
勝負は明後日。勝負内容は前回と同じ電子ゲーム。ソフトは当日にあちらが用意することになっている。圧倒的にあっちが有利な条件だ。その代わりとして、永斗は一つの条件を提案した。
それが、「凛をパートナーとしてゲームに参加させる」だ。
「りりり、凛が…え永斗くんと…」
「そんなに嫌?僕のパートナー」
「嫌じゃないよ!でも、∞とランスのトップゲーマー2人の間に凛なんかが…」
「緊張することないって。絶対に足は引っ張らせないから。
気になるのは相手なんだよね…仮にもプロゲーマーのランスがチートを…
一時期ゲーム界から姿を消してたのも気になるし…って、凛ちゃん聞いてないね」
平常心を保とうとして再び水を飲むが、ほとんどが口からこぼれ、床に落ちている。
凛はこう見えて、海未や花陽に続く自信なしだ。
とにかく、こぼした水は後で掃除させよう。
「永斗も大丈夫なんだろうな?この戦いに勝てば、楯銛から情報を聞き出せるかもしれな…」
「あー、そのことなんだけど。明日、調べてほしいことがあるんだよね。
本棚で調べたけど、”錠”がかかってた。これによっては…
この勝負で、サイバーを捕まえられる」
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翌日。
昨日永斗に言われたことを各自で調査。ただし、メンバーは調査は午前中のみ。午後は練習だ。オープンキャンパスはもう数日後に迫っているからな。
永斗は事務所でイメトレ…の口実でゲーム漬け。絶対これが狙いだなアイツ…
そして俺は永斗に頼まれた、とある条件を満たした人物を探しているのだが……
「ソロモン王に仕えし…」
「お前には反省の二文字がねぇのか!?」
俺は瞬樹にドロップキックをかまし、地面に書かれた魔法陣をホースの水で消す。
「あぁ~!魔法陣が…」
「昨日の一件の後、ウチに苦情が来たんだからな!
落書きの上にデスソースぶちまけて放置とか、頭ぶっ壊れてんのか!!」
「ちゃんと召喚できたのだぞ!我が魔力がなければ、召喚など…」
「アレは海未が偶然、サイバーの仕掛けた罠にかかっただけだ!
テメェの訳の分からん儀式は関係ないんだよ!」
そう言って俺は水圧を強め、涙目の瞬樹を片目に魔法陣を完全に消した。
俺が瞬樹と一緒にいる理由。それは単純だ。海未と絵里がコイツの世話を拒否した。
そりゃそうだ。俺もこんな痛いバカと一緒にいるのはゴメンだ。
「仕方ない…こうなれば奥の手のレジャーシートタイプを…」
「削除」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
懲りずに魔法陣の書かれたレジャーシートを取り出したので、持っていたライターで焼却処分。魔法陣は灰になって消えた。
「何をする!悪魔に対抗するには悪魔が最も有効なのだぞ!」
「ふっざけんな!民衆の目が痛いってレベルじゃねぇんだよ!
悪魔には悪魔って、何バカなことを…」
いや、待て…悪魔には悪魔…
「そうだ…アイツなら!!」
俺は瞬樹を置いて、強い足取りで駆け出した!
「ソロモン…」
やっぱ不安なので、瞬樹を回収した。
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一方、捜査中のメンバー。
永斗からの依頼。それは、楯銛赤里の過去。
ただ彼女は昔からほとんど学校には行ってなかったらしく、知り合いは皆無に等しい。
何せ、音ノ木坂の同級生でも知らないことが多いくらいだ。
実家は金持ちで父親は社長なので連絡も取れない。
というわけで、ダメ元で穂乃果、海未、絵里、凛が図書館で資料を漁っている。
もしかしたら地元の写真集や、昔の記録なんかに情報が残っているかもしれない。だが……
「あ〜!全然分かんないよ〜!!」
捜査は難航していた。
「穂乃果、うるさいですよ。図書館では静かに」
「だって全然分かんないんだもん!もうすぐ時間になっちゃうよ〜!」
今はすでに昼前。アラシとの約束の正午まで時間がないのだ。
すると、絵里は本棚から数冊の本を持ってきて、呟く。
「それにしても凄いわね。今までこれを2人でやってきたなんて…」
「永斗くんが"なんとかの本棚"が使えるから楽って言ってたけど、
永斗くんは家から出ないから、アラシ先輩1人にゃ!」
戻ってきた凛の一言に、今度は感心したような驚いたような顔で「1人で…」と呟く。
穂乃果と海未は本を取って、情報を確認する。穂乃果はいかにもウンザリした様子だが、手は止めない。
すると海未が。
「あの2人…私たちに会う前はどんな人生を送っていたのでしょう…?」
その一言に穂乃果の手も思わず止まる。
「私は入ったばっかりだから知らないと思ってたけど…貴方達も知らないの?」
「凛は少しだけ聞いたことあります。
永斗くんは記憶喪失で、アラシ先輩と初めて会ったのは割と最近だって…」
正確に言えば何度か聞いたことはある。だが、アラシ達は話してくれない。
そう言われると、自分たちはあの2人のことをよく知らないことに気づく。
探偵をやっていること、学校に通ってなかったこと、既に亡くなった親代りがいること
そして…仮面ライダーであること。
しかし、探偵をやっている理由、学校に通ってなかった理由、恩人を亡くした事件、仮面ライダーになったきっかけ。他にも知らないことは山程ある。
アラシ達は紛れもなく、μ'sの柱。
しかし、自分たちはアラシ達を支えられているのだろうか。
ふと、そんな疑問がよぎる。
「2人の口から言ってくれるのを待つしかないよ」
暗い気持ちを吹き飛ばすように、穂乃果が立ち上がり、力強く言った。
「穂乃果…」
「アラシ君たちが話してくれるくらい、私たちが2人を支えられるくらい
私たちも…頼もしくならなきゃ!」
気合を入れて机を強く叩く穂乃果。
だが、その衝撃で机から本が一冊落ちてしまう。
「あぁっ!本が…」
「何をやっているのですか…」
隣にいた海未が本を拾おうとする。
本は落ちた衝撃であるページを開いたまま転がっている。
海未はその本を拾い上げ、そのページに目を通した。
その瞬間、海未は言葉を失った。
「どうしたの?海未」
「絵里先輩、穂乃果、凛。これを…」
その本は幼い子供を撮った写真集。
海未が指差す写真には、幼稚園児の幼い少女が。
幼いといえど、その顔立ちは紛れもなく楯銛赤里だった。だが、それだけではない。
「赤里ちゃんが…2人…?」
その写真には、その楯銛赤里と思しき少女に瓜二つの少女も。
全く同じ顔の2人の幼い少女が、屈託のない笑顔を見せ、写っていた。
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翌日。勝負当日。
会場は前回と同じ新聞部部室。
前回同様、新聞部部長の鈴島貴志音の猛プッシュでここに決まった。
観客はゲーム研究会の連中。あとは捜査に出ていないμ’sメンバーだ。
本当はネット回線での対戦だったが、永斗の要望で直接顔を合わせて戦うことになった。
既に永斗、楯銛、凛はゲーム機を持ってスタンバイ完了。
楯銛は前回と同じようにマスクをしている。
「はわわ……」
「凛ちゃんリラックス」
凛は相変わらず緊張しているようだ。
「ギャラリーは少ないようだけど、そっちのほうがいいね。吐かれる二酸化炭素が多いと気分が悪い」
「そっちも相変わらずだね。その潔癖キャラ」
キャラという単語に少し反応したようだったが、すぐに調子を戻す。
「御託はもういい。早く始めよう。
勝負内容は"バンバンシューティング"」
「聞いたことないね。その妙にダサいネーミングは幻夢製だろうけど…」
さしずめ開発途中、もしくは販売直前のゲームなのだろう。
サイバーの能力でゲームのデータだけを手に入れたと推測できる。
永斗はその意図を察知する。発売前のゲームなら、ある程度のチートは仕様で説明がつく。
そこまでして勝ちたい理由。それは昨日だけではわからなかった。
今、アラシとメンバー数人が調査している。
「ボクが勝ったら”∞”はゲーム世界から永久追放。そういう約束だよね?」
「こっちの要求はまだ決まってないんだよね。
自他ともに認める天才ゲーマーの釣り合うものってそうはないだろうし。
てなわけで、思いつき次第言うよ」
今回の試合、全体を通してサイバーを捕らえるための作戦だ。
そのためには楯銛の過去を知る必要があった。他の手はずは整っている。
(間に合うといいけど…)
永斗、凛、楯銛はゲームを起動した。
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〈∞&リンside〉
バンバンシューティングは敵を討ち取って領土を広げる、近未来シューティングゲーム。
今回は対戦モード。武器は様々な性能を持つ銃。敵のヒットポイントをゼロにしたら勝利となる。
永斗は凛とタッグでの勝負。装備は永斗が2人分のを決めた。初見ゲームでも難なく対応できるあたり流石はトップゲーマー。
ゲームを起動し、それぞれのアバターが表示される。舞台はビル街。
楯銛のアバターは見えないが、永斗が使用する武器は小型の片手銃と、背中に背負った大型ビーム銃。バンバンシューティングは銃弾も変えられる使用だ。永斗の銃弾は任意の回数の跳弾で爆発するバウンド弾と、通常の銃弾。
凛は大型のライフル銃を使用。命中率に特化した作りになっている。サイレンサー付きだ。
銃弾は通常の銃弾。正直スキルの低い凛はこちらの方が使いやすいだろう。
「凛ならできる…凛ならできる…逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…」
「初号機にでも乗ってるんすかね?」
画面にゲームスタートの文字が表示される。
と同時に辺りに複数の敵兵が。これは全プレイヤー共通の敵。こいつ等からの攻撃でもヒットポイントは減ってしまう。
「へぇ。今回のゲームは中々の難易度と見た。
凛ちゃん援護よろしく」
永斗は通常弾をセットした片手銃を構え、敵兵に突っ込んでいく。
敵兵は永斗めがけて銃弾を放つ。だが、銃口の向きでこれを予測した永斗は難なく回避。
他の銃撃も回避、もしくは自分の弾で撃ち落としていく。
「さてと」
永斗はうまい具合にフィールドを利用して高く飛び上がる。
それと同時に銃弾をバウンド弾に変更。
「一発目3バウンド。二発目5。三発目3」
跳弾回数を設定し、異なる三方向に銃弾を放つ。
放たれた銃弾は建物の壁、地面を反射し、完全な死角から敵兵に命中した。
敵兵のヒットポイントは低く設定してあるのだろう。一撃食らっただけで倒れてしまった。
「すごい…よし!凛も!」
道の先にはまだ多くの敵兵が残っている。
凛は今度こそ活躍しようと、敵兵の方へ駆け出すが…
道の石につまずき、転倒。流石は幻夢製。事象が一々リアルだ。
丁寧にヒットポイントまで減っている。
「にゃあ…」
「……」
〈ランスside〉
一方ランスこと楯銛は建物の中。
周囲にマップに存在する敵兵は、既にすべて死体だ。
「頼むよ。ネットの悪魔」
楯銛は自身の武器である、特殊な形状の中型レーザー銃を構える。
その瞬間、サイバーの加護により敵の座標が画面に表示された。
「負けちゃいけないんだ。一番でなきゃ、”ボク”は…」
〈∞&リンside〉
「こんなもんかな」
こちらも周辺の敵はすべて排除。ターゲットである、楯銛を探している。
必ず何かしらのチートは使ってくる。
今回、その審判として観客を設けているが、あまり期待しない方がいいだろう。
あちらもバレるようなチートは使ってこない。それに、発売前ゲームだとプレイ経験のある人物がいない。チートか否かの判断が極めて難しいのだ。使用者が強ければ強いほどなおさらだ。
チートを使われても勝つしかない。そのためにも、まずは相手の一手を見極める必要があった。
その時、少し遠くにある5階建ての建物からガラスの割れる音が聞こえた。
すると、建物の最上階の窓から光線が伸び、こちらに来るように曲がりながら接近してくる。
永斗はその攻撃を避け、状況を分析。
さっきの攻撃は恐らくあちらの武器によるもの。武器一覧の中に任意で軌道を曲げられるレーザー銃があったのを覚えていた。
しかし、敵の座標がわからない仕様のこのゲームにおいて、この武器の扱いづらさは群を抜く。
あちらはチートで場所が割れているのだろう。正確に狙ってくる。
そんなことを考えていると、今度は二発目が。
このレーザーは他と比べて弾速はそこまで速くない。遠いと避けやすさも増す。
永斗は再びその攻撃を引き付けて回避するが…
「ッ…!」
何故か攻撃はヒットし、ヒットポイントが減ってしまった。
(当たり判定の操作か…)
永斗はゲーム界において”チート狩り”として名を知られている。
それ即ち、チートを使った相手ですら下すことができるということ。むしろ、そうじゃないと力が釣り合わない。
しかし、元々実力がトップ同士のゲーマーがチートを使った場合、話は全く異なる。
他のプレイヤーのようにチートで力任せに攻めてくるのではなく、チートを自身の武器として扱い、巧みに攻めてくる。チートの扱いにおいても、ゲーマー”ランス”はトップクラスだった。
「ゲームとはいえど、これは流石に…」
永斗は銃を構え、現実世界ではコントローラーを操作していない左手でペンをとり、用意してあった紙に書くことで凛に指示を出した。
味方同士での連絡も可能な仕様だが、傍受される可能性が高い。これはその対策だ。
敵の居場所はあの建物で間違いない。まずは接近することが必要だ。
「面倒くさいなぁ…」
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昨日の穂乃果たちが手に入れた情報。”2人の楯銛赤里”。
これについて調べたところ、一つの事実が明らかになった。
楯銛赤里には一卵性双生児の双子の姉がいた。名前は”楯銛青葉”。
父親の方針で、小学校から兄弟全く別の場所に通っていたらしい。双子の情報が出ないわけだ。
顔こそ瓜二つだが性格は似ても似つかず、姉の方は真面目で優しく、優等生だったらしい。
双子揃って学業は優秀を極めた。違ったところは、妹はその能力をゲームに行使し続けた結果、父親から見放されたこと。その代わりとして、姉の青葉には英才教育を施したという。
そして1年半前。双子で留守番中の出来事。
原因不明の火災により、自宅は全焼。
楯銛青葉は死亡した。
しかし、それ以降も楯銛赤里の性格は変わることもなく、むしろ今まで以上にゲームに没頭するようになった。
この一件は間違いなく彼女の過去における分岐点。
彼女の異様なまでの勝利への執着は、ここに鍵があるはず。
アラシは個人的に頼れると感じた真姫、海未、絵里。コミュニケーション能力が評価できるにこ。なんだかんだいろいろとハイスペックな希と様々な手段で調査を行っている。
「つっても、何も出てこねぇな…」
捜査を始めて早数時間。さっきまで一緒にいた希も、一瞬ニヤついたと思うと急用があると言ってどこかに行ってしまった。今は真姫とアラシの2人だけ。
そして、一方の真姫はというと。
(ア…アラシ先輩と2人っきり…って、何考えてんのよ私は!)
何やら落ち着かない様子だ。
真姫はアラシに命を助けられており、色々と相談に乗ってもらったこともある。
そして例の問題発言(13話参照)もあり、恋愛感情を抱くのも自然だ。服選びの時は誰よりも真剣だった。
しかし、気持ちがガッツリ表に出ているにもかかわらず、本人は無自覚。
本心と理性が葛藤状態にあるのだ。それに加え…
(さっきからどうしたんだアイツは。トイレでも我慢してるのか?)
この男、極度に鈍感である。
この2人の関係を誰よりも早く察知していた希は、チャンスとばかりに2人きり空間を生み出すことに成功。
「真姫。なんか分かったか?」
「えっ!い、いや、何も…」
しばらくの沈黙を破り、アラシが声を掛ける。
だが、あの状態の真姫が調査が進んでいるわけもなく。
「オッケ。分かったら言ってくれ。あと、トイレならいつでも…」
「行かないわよ!」
この男、デリカシーも人並み以下である。
真姫がいろいろと落ち着きがない中、アラシも思いつめていた。
環境が特殊なゆえか、調べてもこれといった情報が出てこない。分かったのは、楯銛青葉は世間一般で言う優等生にドンピシャリな人物。良くも悪くも普通に優秀なのだ。
対して楯銛赤里は数回受けたテストはどれも満点。こちらは異端児と言ったところだろうか。
アラシは探偵としての長年の勘でうすうす気づいていた。
この事件、これ以上調べても進展する望みは薄い。稀にあるのだ、こういうケースが。
犯人であるサイバーの正体を特定するのも一手だが、できればオープンキャンパスまでに肩を付けたい。そのためには、この作戦でサイバーをとらえるのが手っ取り早い。
何にせよ、こういうケースで頼れるのは勘のみ。
「なぁ、真姫。一輝のことどう思ってる?」
「どうしたんですか急に」
「いや、兄弟がいる奴の心境を知りたいと思ってな」
まずはその人物の心境を理解する。探偵は時に依頼者の心に寄り添う、または犯人を理解する必要のある仕事。この能力は探偵の必須スキルの一つ。
アラシはその割にいろいろと欠落しているのが玉に傷だが。
「…嫌いです」
「シスコンなところか?」
「いや、そこもですけど。
……一輝が中学生の頃は、私よりずっと優秀で、勉強もできてスポーツもできた。
正直に言って憧れてました。何でもできる兄に」
真姫の本心を聞いてアラシは驚く。
あんなに嫌いを表に出していた真姫がこんなことを思っていたとは、かなり意外だった。
「でも1年前くらいから急に学校もやめて、今みたいな感じに。性格は前からですが…
病院も継がないって言いだすし、父もそれを承諾。
だから嫌いなんです。何でもできるくせに、何にもしようとしないところが」
「なるほど…」
兄妹ともに優秀。これは楯銛姉妹と共通する。
楯銛赤里も、姉に憧れの感情を持っていたのだろうか。
「ありがとな。やっぱお前に聞いて正解だった」
その一言に、真姫は照れを隠せない。顔が赤くなり、それを隠す様にそっぽを向いている。
「あ、そうだ。その前に…」
そう言うと、アラシは真姫の方に歩み寄る。
距離が一気に近くなり、真姫の顔が一層赤くなる。
それにとどまらず、アラシは真姫の顔に自分の顔を近づけていき、真姫は自然と目を閉じてしまう。
そして…
真姫の服の襟についていた何かを取った。
「オイ、聞いてんだろ希。盗聴ならもっと上手くやれ」
そう言って、そのUSBメモリより一回り小さいくらいの何かを握りつぶした。
状況が把握できない真姫。アラシは淡々と説明する。
「これは希が仕掛けた盗聴器だ。さっき襟を直すとか言って仕込んだんだろう。
目的はよく分からんが、これを作れるとすれば…」
ふと真姫の方を見ると、怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にした真姫が。
「トマトみてぇだな」
次の瞬間、アラシは部屋を追い出された。
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〈ランスside〉
放たれる追尾弾をかわし、いや、何発かは当たったものの、何とかその攻撃が放たれる建物の近くまでたどり着いた永斗。建物に入れば逃げ場はなくなる。場所がわかり、更に任意で軌道を曲げれる銃があるあちらが圧倒的有利だ。
だが、永斗はためらうことなく建物に入る。
その建物はまぁまぁの大きさの廃病院。敵がいるのは最上階の5階。
エレベーターもあるが階段もある。特に割れた窓は無いようだ。
逆転の条件は整っていた。
「一発目43、二発目52、三発目39」
跳弾回数を設定。異なる方向に三発の銃弾を放った。
〈ランスside〉
かれこれしばらく永斗を狙っているが、ギリギリでかわされる。
当たり判定操作も目立ちすぎるとリスクが高い。
だが、永斗はこの建物内に逃げ込んだ。普通の銃なら狙うことはできないが、こちらは弾道を操作できる。
「逃げ場はない。ボクの勝ちだ」
楯銛は銃を構え、敵の座標を捕捉する。
その瞬間、サイバーの攻撃感知の通知が現れる。
階段の方向から三発。壁で跳弾しながら異なる軌道で向かってくる。
その軌道の先は間違いなく自分。ギリギリでかわすと、その銃弾は全て天井に。爆発した。
(あり得ない!奴がいるのは一階、マップはあちらも見えてるにせよ、跳弾銃でここまでの正確さ。しかも、ボクに当たるタイミングで爆発するようになってる!)
そんなことを考えていると、次の攻撃が迫る。今度は五発。
「あっちの方がよっぽどチートじゃんか!」
避けきれないと判断した楯銛は二丁拳銃に装備を切り替える。
自分に当たるタイミングで爆発ということは、その直前に撃ち落とせば問題ない。
迫る五発、そして続く攻撃を撃ち落とし、時にはかわす。
かわした攻撃の中にはさらに跳弾するものもあったが、楯銛には当たらず天井に当たった。
サイバーのアシストもあり、弾幕を処理していく。このままでは劣勢は覆らない。どうすれば…
刹那、どこからか飛んできた銃弾が、楯銛の肩に命中した。
一階からの攻撃とは明らかに別方向。警戒してない場所からの一撃。
一瞬でも気を緩めれば跳弾の弾幕の餌食となる。落ち着いて弾幕の処理を…
「ッ……!」
まただ。今度は銃弾が頬をかすめた。
手を止めずに楯銛は考察する。銃弾は上から飛んできた。だが、跳弾したにしては方向があり得ない。
別の武器?チート?
だが、その時楯銛は思い出した。
ついでの様に出された条件、素人だと全く警戒していなかった。
そして、ゲーム開始以降目立った動きをせず、いつの間にか消えていた。
「星空凛……!」
状況を把握。星空凛はここより高い場所から狙撃を行っている。
跳弾による爆発が天井に偏った理由。爆発で天井に穴をあけることで、狙撃可能なポイントを作り出していたのだ。
傍受したゲーム内の会話にはそんな指示はなかった。差し詰め、口頭か紙での指示か。
なんにせよ、このままではマズイ。
弾幕もだが、何より凛の狙撃が厄介だ。攻撃に対応している間に頭でも打ち抜かれようものなら終わりだ。
嫌だ。まだ負けられない。
勝たなきゃいけない。でなければ…
”楯銛赤里”は消えてしまう。
「サイバー。身体ステータスを底上げして。
∞は…今ここでボクが討ち取る」
〈リンside〉
永斗の指示通り高いところに上り、そこから言われたポイントを狙撃。
シューティングゲームの経験は浅い凛だったが、前日の永斗との特訓で、元の動体視力の良さと反射神経もあり、かなり精密な遠距離射撃が可能になった。
「本当に天井に穴が開くなんて…流石だにゃ…」
凛は明かに実力は稚拙。正直なところ、この直前まで足を引っ張らないか不安だった。
だが、今はこうして自分の手で敵を追い詰め、永斗の力になれている。
永斗は所謂、この世界のプロだ。
そんな人物が自分を頼りにしてくれている。これが嬉しくないわけがない。
(永斗くんが作ってくれたチャンス。絶対に凛が決める!
凛だって戦えるんだ!)
気を引き締め、再び照準を合わせる。
だが、そこには敵の姿は無かった。
スコープの視点を移動させると、窓ガラスが割れている。
とある可能性が頭をよぎり、慌てて視点を下にずらす。しかし、気付くのが遅すぎた。
そこには窓ガラスを突き破って飛び降りた、楯銛。
そして、こちらに銃口を向け…
パァン!
銃声音とほぼ同時に、凛のゲーム画面は暗転した。
【リンGAMEOVER】
___________________________________
ーアラシsideー
「痛ってぇ…なにも追い出すこたねぇじゃねぇか…」
真姫に部屋から閉め出された俺。
盗聴器を取ってやったら追い出された。全くもって意味が分からん。
それにしてもさっきの盗聴器。仕掛けたのは間違いなく希だろう。
襟のところに隠すと外から見たらバレやすいが、仕掛けるときは全く気付かなかった。
さらにあのサイズを作るのにはかなりの技術が必要だ。流石にこれを作れるのは永斗だろう。
用途はよく分からなかったが、変なところで行動力のあるやつだ。
盗聴器を隠す手際と言い、察せさせない態度と言い、希は隠密活動に向いているのかもしれない。
そう言われると、他の奴らも今まで見えなかった長所が見える。
にこはバカだが人の間に入っていく才能がある。天性のコミュニケーション能力という奴だろうか。
海未や絵里は集中力があり、目星の付け方もいい。地道な情報収集なら持って来いだろう。
ことりは人との接し方が上手い。接客業なんかで重宝される技術だ。聞き込みなら右に出る者はいない。
花陽は誰よりも優しい。人の心に寄り添えるのも、立派な強みだ。
凛の運動神経の良さも必ず役に立つ。真姫は頭がよく、勘も鋭い。事実を見極めることに長けている、ジャストな探偵タイプ。
穂乃果は…やはりカリスマ性という奴だろう。特に目立った長所は無くとも、一度決めたことはやり通すリーダーの才覚。穂乃果がいるから、他の奴らも俺たちも力を常に最大限発揮できる。
アイツ等はきっと、その力に自分では気づいていない。
人と接することで気づき、学ぶことができる”強さ”もある。昔のままじゃ、絶対に見えなかっただろう。
「長所ってのは多種多様で、そいつは外からじゃないと見えない。
俺もアイツ等から見たら、頼もしく見えてんのかね?」
いや、待てよ。もしかして…
俺はスタッグフォンを取り出し、とある番号に電話を掛ける。
真姫に教えてもらった電話番号。
もうお分かりだろう。ヤツの携帯番号だ。
『もしもし。西木野病院の長男にして最高傑作の俺ですが』
「…初対面だったらどうすんだ。戸惑うわ」
『なんだ貴様か。家に真姫がいない。
今、真姫と一緒なら今すぐ死ね。一緒じゃなかったら、その後穏やかに死ね』
「死亡ルートしか見えませんが!?」
どうしよう、もう既に電話を切ってスタッグフォンを床に叩きつけたい衝動に駆られている。
「真姫は今一緒じゃない。超絶不本意だが、アンタに捜査協力を頼みたい」
『全力で断る。そのまま進展せず一生困ってろ、バーカバーカ!』
器が小せぇ上にうぜぇ。本当にダメな兄貴だな全く…
「調査には真姫も加わってる。この調査協力で真姫に感謝されることも…」
『いいだろう。超絶不本意だが頼まれてやる!』
チョロいな。まぁ楽だからいいが。
「まず一つ質問。真姫って一輝から見て優秀か?」
『何を当たり前のことを聞いている。神のごとし、いや神をも凌駕する美しさを持ち、学業、運動、音楽もでき、ツンデレ属性も併せ持つ真姫が優秀じゃないわけないだろう。頭湧いてるのか貴様』
「……!よし、オーケーだ。怒りが収まった。
じゃ、もう一つ。一輝は自分が真姫から憧れられてると思うか?」
その質問の後、一輝はしばらく黙り込む。
すると、さっきまでの調子が打って変わって、弱い口調で、それでいてハッキリと言った。
『いや、それは無いな。アイツはずっと真面目で、家のこと考えてて、自分より他人を大事にするやつだ。俺じゃアイツに敵わない。だから真姫の兄として恥ずかしくないように、結果をとり続けた。だが…』
「だが?」
『俺のせいで真姫は病院を継がなきゃいけなくなった。
真姫は病院を継ぐのが責任だと思ってる。でも違うんだ。真姫はもっと自由に生きていい。
だからアイドルを始めたと聞いたときは嬉しかった』
一輝は口調を改め、受話器の向こう側で言った。
『切風アラシ。真姫をアイドルに誘ってくれたこと、兄として礼を言う』
その言葉は真っすぐで、普段の一輝からは想像もつかない。
これが一輝の本心なのだろうか。
妹の、真姫の幸せを誰よりも考えている。それが一輝だ。
一周回って愛情が変な方向に向いてるが、それも一輝の良さなのかもしれない。
「お互いを尊敬しあう関係か…いい兄妹じゃねぇか」
人の良さは外からじゃないとわからない。だから人は人を羨み、妬み、憧れる。自分にある良さを知らないから。それを人が認めてるって知らないから。
いや、これって楯銛姉妹にも言えるんじゃないか?
姉は優等生、妹は引きこもり。妹が姉に憧れていたとしたら…
いや、そうじゃない。それじゃ、あの異様なまでの勝利への執着は説明できない。
あれはまるで責任感。自分のためじゃなく、人に向けられたような…
何に対する責任だ?死んだ姉?いや…
双子ならお互いの良さはよく知っているはず。
死因は火災事故。何故、妹だけが助かった?その後、生き残った妹が何も変化がないのはあまりにも不自然だ。
考えろ、姉が死んだとき、妹は何を思った。別れの直前、何かを託されたのか?
人の死は、人を最も大きく変える。それは身をもって知っている。
”楯銛姉妹は一卵性双生児”
”チートを使うプロゲーマー”
”一時期姿をくらませたランス”
”異常な責任感と執着心”
”人は自分にない良さに憧れる”
集めたピースが頭の中で嚙み合っていく。
そうか、変わってないわけがない。変わったんだ、ゲーマー”ランス”は劇的に。
「…相変わらず証拠のない妄想推理。我ながら探偵失格だな」
でもこれしかない。
俺は一輝との通話を切り、急いで観客席で永斗のプレーを見ている花陽の番号を打ち込んだ。
「大逆転は任せたぜ、永斗!」
_______________________________
〈∞side〉
永斗のマップから凛の反応が消えた。
即ち、凛がゲームオーバーしたことを意味している。
永斗は攻撃の手を止め、敵の攻撃を警戒する。
敵はチートを使っている。多少のあり得ない動きは想定内。
凛が撃たれるとするなら、天井に空いた穴からの逆狙撃。これは警戒していたため、そうさせる隙を作らないようにしていた。
とすると、ゲーム経験の浅い凛に弱いのは、予想外の行動。
凛を仕留められたということは、永斗の攻撃から逃れているということ。
なおかつ、敵は永斗を仕留めに来るはずだ。そうするなら…
(窓、一択)
永斗は背負ったレーザー銃を構え、窓の方向を向く。
飛び降りなら外にいる凛を仕留められ、素早く一番まで降りることが可能、なおかつ虚もつける。
数秒後、予想通り飛び降りてきた楯銛の姿が。
だが、その手には銃は構えられておらず…
かわりに手榴弾が握られていた。
「マズい!」
永斗は咄嗟に回避行動をとる。
それと同時に、投げられた手榴弾は窓ガラスを破り、地面に着弾。
大爆発を起こし、ステージは煙に覆われた。
「ッ…危ない危ない」
間一髪建物から退避していた永斗。
煙の中からは楯銛も現れた。
「邪魔者はもういない。決着だ、∞」
楯銛は永斗に銃を向け、永斗もそれに反応して、片手銃を構える
その時だった。
「永斗くん!!」
現実世界、観客席にいた花陽の声が聞こえた。
花陽は大きめな紙飛行機を飛ばし、永斗はそれをキャッチ。
紙を広げ、一瞬でその内容を把握した。
「ギリギリ間に合ったみたいだね」
永斗はその紙をポケットにしまい、今度はゲーム内ではなく、現実で楯銛赤里に話しかけた。
「ずっと不思議だったんだ。今のランスのプレースタイルは、一見すると前と同じように見える。でも、君と対戦した時、コンボの決め方が少しだけ違っていた。そしてチート。僕の知る限り、以前のランスは勝てない相手に安易にチートを使うようなプレイヤーではなかったはず。
でもこれで合点がいった。君は、
「……どういう意味?」
「証拠が残るはずもない。一卵性双生児のDNAはほぼ一致し、焼死体からは指紋はわからない。
それにランスが一時期姿を消してた頃、それは君の家の火災事故の直後だった。その間、死に物狂いでゲームの練習、研究をしてたんだろう?前のランスに追いつくために。
だよね。楯銛青葉ちゃん」
__________________________________
ある大企業の社長と、病弱な一般女性の間に2人の娘が生まれた。
一人は姉である私、楯銛青葉。
もう一人は妹の楯銛赤里。一卵性双生児の双子だった。
赤里は性同一障害だった。女性の体で男性の心を持つらしい。
だが、2人は幼稚園まで同じように通い、小学校からは違う学校に通うことになった。
これは父の方針だ。私たちは父の方針に従った。
小学校に入っても私たちの見た目は瓜二つのまま。
違うとすれば、私は髪を長くして、赤里は短くしていた。
ただ、中身はまるで違う。私は女の、赤里は男の心を持っている。
私はそれを嘆くようなことは絶対にしなかった。赤里がどうあろうが、赤里は赤里。
大好きな私の妹に変わりはない。
だが、小学校に入って少したったの頃。赤里は学校に行かなくなった。
赤里はそれから、部屋に引きこもるようになった。理由は分からない。
父の叱責を受けながらも、赤里は引きこもり続けた。理由も言わずに。
部屋の外から聞こえる音から、部屋でゲームをしていることは分かった。
私は学校に通い続け、小学校高学年になってしばらくした日、
私は意を決して赤里に尋ねた。
「赤里は学校に行かないの?」
すると、赤里は初めて私を部屋に入れてくれた。
部屋にあったのは大量のゲーム機。
そして、大量の分厚い本。教科書じゃない、とても小学生が読まないような、プログラムの技術書だった。他にも、多数の高校生用の参考書も転がっている。
「姉ちゃんは夢ってある?」
赤里は唐突にそんなことを聞いてきた。私は首を横に振った。
そんなこと考えてなかった。ただ、父の会社を継ぐことしかできないとばかり思っていた。
「ボクはやりたいことでこの世界に名前を残したい。
父さんは会社を継ぐことが全てみたいに言ってるけど、そうじゃないと思う。きっと、親や色んなものに縛られてやりたいことをできない人は大勢いる。だから、ボクが証明する。
まずはプロゲーマーになって有名になる。次にプログラマーになって、社会に大きく貢献するプログラムを構築する。それでインタビューの時言ってやるんだ。”ゲーマーの経験が役に立ちました”って。あと、他人を縛り付けてる連中に、”ザマぁ見ろ”ってね」
子供じみた、壮大な計画。でも赤里は頭がいい、それで昔から効率主義だ。
その赤里が言うのだ。本気に違いない。
「そのためには学校で漢字やら筆算なんか習ってる暇ない。
この夢を実現するために、時間も労力も少しも無駄にできない」
そう言って、赤里は部屋から私を追い出した。
話によると、赤里は既に簡単なプログラムは構築できるようになっていた。
これが独学と言うんだから天才と言って相違ないだろう。
私は毎日学校に通い、テストでは常に100点をとっている。自分でも頭のいい方だと思う。
世間から見れば優等生は私の方。
でも、社会に出れば私はありふれたその他大勢の一人。
社会で何かをなすのは、きっと赤里のような人間だ。
私のような空っぽな人間は、赤里が目が眩むほどにまぶしく見えた。
私なんかは妹を邪魔しちゃいけない。
せめてものの手助けとして、空っぽらしく、父の機嫌を取り続けるため”優等生”でい続けた。
そうして私たちが中学生になり、15になった年が終わるころ。
家が燃え上がった。
原因は分からない。親はいない。消防署はここから遠い。消防車を待っている暇なんてない。
私はいつでも逃げられる場所にいた。
でも、赤里はいつもの部屋の中。
「赤里!!」
裸足のままで燃える階段を駆け上がる。
赤里の部屋は2階の奥の方。無駄に広い家がこの上なく憎い。
2階に上がって部屋に向かっていると、向こうからこっちに走って来る赤里がいた。
よかった!無事だ!
そんな束の間の喜びに囚われ、私は気付いていなかった。
私の上で燃えて崩れ落ちる天井に。
その時、赤里は向かってくる私を突き飛ばした。
「ッ…!赤里!!!」
必然的に赤里は崩れた天井の下敷きに。
そして私たちの間を別つように、炎が急激に大きくなる。
「姉…ちゃん…」
赤里はこちらに手を伸ばそうともせず、口を開いた。そして…
崩れるモノに赤里は完全に埋もれてしまった。
最期の言葉も炎と轟音にかき消され、誰にも届かない。
私のせいだ。
私のせいで赤里の人生は終わった。赤里の夢をここで壊した。
そんなことがあっていいはずない。楯銛赤里は歴史に名を刻むはずだった名前だ。私なんかが奪っていいはずがない。
頭の中は苦悩で満ち、後悔と自分への憎悪を燃やしながら、
自分にできる償いを探していた。
あるじゃないか。自分にしかできないことが。
幸い見た目は変わらない。他人の事に興味のない父が気付くはずもない。
私は台所にある包丁で自分の髪を切り落した。
数分後、予想通り期待外れの消防車が到着。
その中から出てきた消防士の一人が、外にいる少女に名前を聞いた。
そして私は。いや、
「楯銛…赤里……」
そこから先は悩んでる暇なんてなかった。
まずはプロゲーマーとして名を轟かせる。赤里が使っていたユーザー名とは別のものを使い、しばらくは鍛錬を重ねた。
その後、中学3年生はほとんど学校に行かず、赤里に追いつくように勉強を続けた
自分は独学でプログラムを学びきれるとは思えない。環境的な問題でも、大学に行く必要がある。
そのためには高校に行かなくては。
出席日数や内申の問題はあったが関係ない。入試満点でねじ伏せるのみ。
そして、音ノ木坂学院に入学。ゲームの実力も付き、”ランス”の名を使うようにした。
だが、越えられない壁があった。それが”∞”。
夢を実現するため、一番でなければ意味がない。
コイツが邪魔だ。消し去ってやりたい。
そんな時、気まぐれで行った部活動で、その”∞”に出会った。
勝てなかった。その間には圧倒的な差があった。
このままではいけない。こんなところで立ち止まっていては、生きる価値も資格もない。
そんなある日、画面から”悪魔”のささやきが聞こえた。
_______________________________
「何を言っている…ボクは…!
楯銛赤里だ!」
楯銛は永斗に向けて引き金を引く。
だが、動揺した心が放った銃弾は止まっている永斗にかすりもしない。
「精神面に影響されやすい。経験の浅い証拠だ」
さらに攻撃を続けるが、中々命中しない。
そんななかでも、永斗は攻撃のそぶりを見せなかった。
「君は妹が大好きだった。そして、妹を尊敬していた。
その上、死んだ妹の意志を継ぐ。これって自己満足だと思わない?」
「黙れ!!」
楯銛は激昂し、再び銃口を向ける。
すると永斗も楯銛に銃口を向け、素早く一発を撃ち込む。
銃弾は楯銛の手に向かっていき、持っている銃だけを弾き飛ばした。
「君は妹のことを一番に思ってる。でも、それに捕らわれすぎて
一瞬でも、赤里ちゃんの本当の思いを考えられなかったんじゃないの?」
その言葉で、楯銛の手が止まった。
「赤里の…思い…?」
「君は赤里ちゃんが大好きだった。そして、憧れていた。さっきも言ったね。
じゃあ、赤里ちゃんから見て、君はどう見えたと思う?
ここからは想像なんだけど…子供ってのは自分と違うモノをよってたかって非難する生き物だ。つまり…」
楯銛も気づいたようだ。ゲーム画面から目を離し、真っ直ぐ信じられないような目で永斗を見る。
「いじめられてたんじゃないかな?学校に行ってた時期。
それが引きこもりの原因だったのかもしれない」
考えたこともなかった。赤里が強いと信じ込んでいたから、そんな素振りは見せなかったから。
赤里は性同一障害。その上、異常なまでに優秀。
考えたこともなかったんだ。妹が自分と同じ弱い人間だなんて。
知らないうちに、自分の憧れを押し付けてた…
「赤里ちゃんからは君が眩しく見えただろうね。
自分が逃げ出した世界で、精一杯生き続ける君が」
赤里がゲーム世界に引きこもったのも、ただ現実から逃れたかったのがきっかけ。
あの壮大な夢は、くだらない理由で自分を狭い世界に縛り付けた同級生を見返すため。
それを私に語ったのは、私に認めてもらいたかったから…
似ていたんだ。私たちは。
当然だよ。双子なんだから。なのに…
「どうして…私は……」
ゲーム画面に涙が落ちる。
やっとわかった。あの時、赤里は”生きて”と言ったんだ
私が赤里の夢を継ごうとしたのと同じだった。
責任感に縛られ、託されたと思い込んだ夢を追って。
望まれてもいない罪滅ぼしを続け、気付こうともしなかった。
「赤里…私は、どうすればいい…?」
ゲームみたいにリセットはできない。こうして悩んでいる間も時は流れ続ける。
意識の中で、赤里が”思い出して”と言った気がした。
ふと無意識に横を向く。そこには、ゲーム研究会の皆がいた。
高校の入学式のあの日、入学式をサボっていた私に声を掛けたのは、灰間先輩だった。
ゲームのスキルアップにと入ったゲーム研究会。
そこには色んな人がいて、見たことのないような景色を見せてくれた。
使命感という殻に覆われながらも、心の奥ではこの時間を楽しみにしていたんだ。
この時間は、唯一”楯銛青葉”の心が生きていた時間だった。
罪滅ぼしのうち、ゲームが、ゲーム研究会の皆が好きになってしまった。
これが本当の私になってしまった。そんなこと許されないとはわかりながら。
”姉ちゃんはどうしたい?”意識の中、赤里がそう聞いてきた気がした。
今、応援してくれる大好きな仲間たち。目の前には”越えなければいけない”、いや…
”越えたい”好敵手。
我儘な姉ちゃんでごめん。
でも、赤里が許してくれるなら。私が私として生きていいのなら…!
「サイバー。掛かってる全部のチートを解除する」
画面の中で、サイバーが激しく反対する。
だが、構わずすべてのツールアシストを解除した。
「私は……∞、君に勝ちたい!」
「受けて立つよ。ゲーマー”ランス”。
銃を拾いなよ。ここからが勝負だ」
青葉は弾かれた銃を拾い、背負ったビーム銃を捨てた。
そして、永斗は手持ちの手榴弾を上空に投げ上げた。
手榴弾は上空で爆発。
それを合図に、銃撃戦の火ぶたが切って落とされた。
青葉は片手銃で銃撃。だが、永斗は建物に隠れてこれを回避。
建物の陰から跳弾数を設定し、永斗は3発の銃弾を放つ。
銃弾は壁や地面を反射して青葉へ向かっていく。
だが、青葉は真っすぐ永斗のいる方向に駆けていった。
しかし、銃弾は青葉には当たらない。
(一発目の銃弾の着弾を見て、マップから考えて当てに来るポイントを逆算したのか。
非常に高い空間認識能力と同時処理能力に計算能力。
なにより失敗によるダメージを恐れない無鉄砲さ。慎重だった以前のランスとは大違いだ)
「これは、また面倒な感じに覚醒してくれちゃって…!」
正直この行動を予測していなかった永斗は反応が遅れる。
急いで逃避行動をとり、マップを確認。プランを立てる。
永斗の姿をとらえた青葉は、二丁拳銃で永斗めがけて発砲。
一瞬では数えきれない発砲音が響き、多数の銃弾が永斗に向かってくる。
永斗は落ち着いて避け、跳弾を巧みに使って弾く。
顔の前に来た最後の一発を弾いたと思ったその瞬間、その真後ろから、ほぼ同時に発砲されたブラインド弾が姿を現し、永斗の頬をかすめた。
永斗は苦し紛れのように一発の弾丸を撃つ。しかし、その弾丸は明後日の方向に。
それに青葉は一瞬気をとられる。
その隙に、永斗は隠し持っていたもう一つの片手銃を取り出す。
既に銃弾、跳弾数は設定してある。
成功する確率はかなり低い。でもこれが最善手だ。
永斗は両手の銃で、これまで以上の量の銃弾を発射した。
普通に見れば、この跳弾する弾丸は避けられる量じゃない。
だが、瞬時に計算して攻撃を回避できるポイントを割り出す青葉。
さらにこの弾幕には隙間がある。絶好の狙撃ポイントだ。
青葉は迷わず、隙間を通るように銃弾を放った。
銃弾は何にも遮られることなく、永斗の足に命中した。
「足を撃ち抜いた。もう満足に動けないはず。
私の…勝ちだ」
だが、永斗はまだ諦めていない。それどころか、勝ちを確信したような口調で言い放った。
「問題ない。ここから一歩も動かずに、君を倒せる」
青葉の脳裏にさっきの明後日の方向に飛んで行った一発の記憶がよぎる。
あれは注意をそらすものだと思っていた。違うとするなら…
「物理ダメージでもヒットポイントが減るのは、凛ちゃんがこけたときに実証済みだ。
もし、君の頭上に工事用の鉄骨があって、さっきの銃弾はそのワイヤーを切るためだったとしたら?」
間違いなくゲームオーバー。青葉は慌てて上を向く。
だが、そこには鉄骨なんてなかった。
視線を戻すとそこには永斗の姿は無い。
「残念。君はさっきの一瞬で迷わず僕を撃つべきだった」
「しまっ…」
そう、足を撃ち抜いた。それは満足に動けなくなるだけで、完全に動けなくなるわけではない。
片足撃たれたくらいなら、視界から消えることはたやすい。
全ては誘導だった。青葉の経験の浅さから来る僅かな油断を見越した、見事なまでの。
「完敗だ…」
青葉の死角から放たれた銃弾が、青葉の頭を撃ち抜いた。
【ランスGAMEOVER】
【WINNER∞】
ゲームが終了し、青葉はゲーム機を机に置く。
だが、その顔は清々しい。あの勝利への執着は無くなったらしい。
最後の数プレーは、紛れもなく楯銛青葉としてのプレーだった。
永斗もゲーム機を置き、青葉に歩み寄る。
「勝負に勝った報酬。じゃあ、一つだけお願いを聞いてもらおうかな。
明日から学校に来なよ。クラスに友達は多い方が、気楽でいい。それに、君がいてくれると学校も幾分かは楽しくなりそうだ」
そして、表情を変えずに永斗は手を差し出した。
「またやろう。いつでも待ってる」
前は取らなかった手。青葉は笑顔でその手を強く握った。
「次は負けない!」
__________________________________
「あのガキ!負けやがった!!」
電脳空間内。自らをデータにして、バンバンシューティングに干渉していたサイバー・ドーパントは、楯銛青葉の敗北を受け、憤慨した。
この戦いで明らかになった真実なんて、サイバーからすればどうでもいいことだった。
まぁいい。まずはいったん立て直しだ。
今じゃなくても目的は果たせる。なにより、復讐の大本命なのだから、それこそ盛大にやらなければ意味がない。
そうなると、用意していたルートで一度退避を…
「何…?」
おかしい。退避ルートが見当たらない。
電脳空間は幾つもに枝分かれする道のような構造になっている。
こちらから、あっちの位置情報も把握できる。だが、用意していたルートは何故か塞がれていた。
通信障害やケーブルや機材の故障でこういう事は起こりうる。
落ち着いて別の場所を探そう。
数分後。
「おかしい…!なぜ道がない!」
探せど探せど逃げ道がない。
おかしい、停電でも起きているのか?でないとするならば…
狙われている。それが結論だった。
早くしないと逃げ場が完全にふさがれる。どこか無いか?どこか…
あった。音ノ木坂から数キロ離れた場所のノートパソコン!
サイバーは迷わずそこに飛び込む。
画面を抜けた先には現実世界。そこは作業がストップしている建設現場。
そして、切風アラシと津島瞬樹の蹴りが、サイバーに炸裂した。
「ぐおっ!」
ノートパソコンはサイバーに下敷きになり、破壊。
これでもう完全に逃げ道は無い。
「バカな…なぜお前らがここに!」
「バカはテメェだ。勝負にすればお前は必ずサポートに来る。
後は逃げ出すタイミングで逃げ道をふさいで誘導するだけ。こんなアホみたいな手に引っかかってくれるとは思わなかったよ」
「あり得ん!逃げ道を誘導なんて、そんな芸当!」
「できるんだよ、これが。偶然知り合いに凄腕ハッカーがいてな。それも2人。
サイバーが回線を通るとき、通信速度が遅くなる。それで場所を把握しつつ、ここら近辺のネット接続を切断していってもらった」
___________________________
西木野邸、同刻。
大きな見るからにハイテクなコンピューターを前にする人物が2人。
一人は黒音烈。情報収集のプロフェッショナルだ。ハッキングにも精通している。
「流石は病院経営の西木野家。こんな高性能なコンピューターがあるとは驚きましたね。
あと、まさかハッキング技術を持つ高校生がいるとは思いませんでした」
「驚きはこちらもさ。悪魔に対抗するために、ネットで同じく”悪魔”と揶揄される私の力を借りようとは…前回の停学中に暇つぶしでハッキングを覚えた甲斐があるというものさ」
そう、ゲーム研究会の会長、灰間彩だ。
「停学中にわざわざ来るなんて、受験生は結構暇なんですね」
「かわいい顔で中々の棘を吐くじゃないか。なに、停学中の外出は慣れっこだよ。
それに、私の大切な後輩をそそのかす輩がいると聞いては黙ってはおけないだろう?
私の後輩を2人も巻き込んだ罪は重い。残りの人生をブタ箱で謳歌してもらうことにしよう」
「気が合いそうですね、ボク達」
________________________________
「さて、アンタの素性も割れてんだぜ、サイバー・ドーパント。
いや、西野五郎!」
本名を言い当てられ、動揺するサイバー。
それにバトンタッチするように瞬樹が前に出て、ポケットからカンペを取り出した。
「フッ…竜騎士シュバルツが貴様の罪状を宣告してやろう。
貴様の犯行の被害者には共通点は無かった。だが、穂乃果たちが調べたところ、逮捕された貴様の共犯者には共通点があった!まず、貴様は虎谷咲の父親に取引を断られている。さらに、共犯者には貴様と同期で貴様より成績がいい者、職場の上司、貴様に詐欺を行った相手、さらには学生時代に貴様を振った女までいた。そして、貴様は楯銛赤里の父親の会社に働き、クビになっている。ここまでの共通点に当てはまるのは偶然とは言えないな!」
「オイ、カッコつけてるけどお前何もしてないからな」
これらの事実は、全てμ’sのメンバーが聞き込みやインターネットで調べたことだ。
ゲームの最中、サイバーの注意を引くことができる。とはいえ、この短時間に真相にたどり着くとは、アラシも感心せざるを得なかった。
「…そうさ、俺はこの力で復讐を果たすんだ!どいつもこいつも俺を見下し、俺のコケにしやがって!俺の人生に泥を塗ったやつは全員破滅すればいいんだ!」
「なるほどな、やっとわかった。テメェは悪魔なんて高等なもんじゃねぇ、
逆恨みで人の人生を狂わす、ただの社会の害虫だ!!」
「己の罪も見えない愚者よ、貴様に許しの二文字は無い!!」
アラシ、瞬樹はそれぞれジョーカーとドラゴンのメモリを取り出す。
そしてアラシはダブルドライバーを腰に装着。瞬樹は背負ったエデンドライバーを構えた。
《ジョーカー!》
《ドラゴン!》
「永斗、いけるか?」
(大勝負の後で結構疲れてんだけどね。ま、しょうがないから付き合うよ)
ドライバーに永斗のサイクロンメモリが転送されてくる。
アラシはそれを押し込み、ジョーカーメモリを装填。
瞬樹はドラゴンメモリをドライバーに装填し、顔の前でドライバーを構えた。
「「変身!!」」
《サイクロンジョーカー!!》
《ドラゴン!》
アラシはドライバーを展開、瞬樹はトリガーを引き、仮面ライダーダブル、仮面ライダーエデンへと変身した!
「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」
「騎士の名のもとに、貴様を裁く!」
その時、目の前にワームホールが出現。
その中からは前回瞬樹を破った、キャンサー・ゾディアーツが現れた。
キャンサーはハサミをカチカチ鳴らしながら、エデンに歩み寄っていく。
「おおっと、また会ったね。これも何かの縁だ。
良かったらあたしの第二演目見ていかない?」
「望むところだ。その喧しい舌を引っこ抜いてやる」
『瞬樹はまた外に敵作ってるね。じゃ、僕らは』
「コイツだな。さっさと終わらせようぜ。覚悟しな、害虫野郎!」
「なめるなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
__________________________
エデンVSキャンサー・ゾディアーツ
「ハアッ!」
「無駄無駄無駄ぁ!ってね」
エデンの攻撃は相変わらず全く通らない。
そのくせキャンサーの攻撃は鋭く、確実にエデンを削っていく。
「ほれ、これでも食らいなっ!と」
キャンサーの斬撃がエデンに向かっていく。
エデンは槍でこれを弾く。そして勢いを付けてキャンサーに一撃を叩き込んだ。
「効かないねぇ。今のアンタは臆病なワニ。口だけは立派です。ってね」
このままでは前と同じだ。
そんな中、瞬樹は今朝の烈との会話を思い出していた。
数時間前。
烈に呼び出された瞬樹。その前には一つの小箱が置かれている。
瞬樹がそれを開けると、その中には一本の赤紫色のメモリ。
「ハイドラ…ヒュドラの記憶か」
「昨日、”X”から届いたプロトタイプです」
”X”とは、瞬樹及び烈の協力者。定期的に新装備を提供し、時には情報を寄こすこともある。エデンドライバーを瞬樹に渡したのも、この”X”だ。だが、その素顔も素性も明らかではない。
「これを使うことで、蛇の頭を模した、九つの浮遊式レーザー砲ユニットが装着されるらしいです。九のユニットはそれぞれ個別に操作可能。ただし、相応の技術が必要となります。戦闘でその機動性と戦闘での性能を検証してほしいとのことです。ただし、一つ注意が」
「注意?」
「発射されるレーザーは高密度エネルギーの光線で、凄まじい破壊力を持ちます。ですが、レーザーを使えるのはユニット一つにつき一度のみ。よく考えて使ってください」
マキシマムオーバーシステムは、一度使えばしばらくは使用不可となる。
当然、練習はできない。これを有効に操作するのは難しい。それは流石の瞬樹でもわかっていた。
更に、ドライバーにサイバーのウイルスが残留し、まだマキシマムが使えない。
甲羅を突破する火力があるとするなら、このハイドラメモリだ。
だとするなら、使うのは今じゃない。
《ユニコーン!》
《ユニコーン!マキシマムオーバー!!》
エデンはユニコーンメモリをオーバースロットに装填。
胴体に紫の鎧、”モノケロスギア”が装着される。
「そんなのでキャンサーの甲羅を破ろうってのかい?笑わせるねぇ!」
エデンはまず、槍の腹でキャンサーを殴りつける。
ユニコーンにより強化された腕力により、キャンサーは勢いよく吹っ飛んでいった。
甲羅を割らずとも、距離をとることに成功した。
エデンは槍を吹っ飛んだキャンサーに向け、突きの構えをとる。
「猫女、貴様の技を借りるぞ!」
普段は腕にしか使わないユニコーンの能力を高め、足にも行き渡らせる。
そして、爆発的に上がった脚力で踏み込み、
一瞬にしてキャンサーの間近に。突進の勢いをそのまま突きの力に変え、キャンサーの甲羅に炸裂した。
「お見事。臆病なワニでも牙はあったてことかい。
でも残念。あとちょっとだけ足りなかったみたいだねぇ」
エデンドライバーの先端はキャンサーの甲羅を貫き、突き刺さっている。
だが、それは先端だけ。とても有効打とはいえない。
「フッ…カニ芸人よ、貴様のコントもここまでだ」
「コントじゃなくて落語…ってどうしたの、面白くない冗談言っちゃって」
エデンはユニコーンメモリをスロットから引き抜く。そして
《ハイドラ!》
《ハイドラ!マキシマムオーバー!!》
ハイドラメモリを起動し、スロットに挿す。
スロットからエデンの胴体、そして背中に赤紫のラインが伸び、赤紫の鎧と九つの蛇の首のようなバックパックが装着される。
「都合により詠唱省略。喰らえ、
九本の首から同時に高密度レーザーを発射。
その光線は突き刺さったエデンドライバーに集まり、ドライバーを通してキャンサーの内部へ!
「そ…そんな馬鹿な…!」
「どうした?自慢の舌の動きが悪いぞ?」
九本のレーザーは内部で収束。
一本の剣のようになり、キャンサーの甲羅を完膚無きまでに貫通、粉砕。
キャンサーは断末魔も上げることなく、内部のエネルギーに耐え切れず、跡形もなく爆散した。
___________________________________
ダブルVSサイバー
ダブルはサイクロンジョーカーのままサイバーと戦闘を続けている。
サイバーは無数に円盤を生成し、投げつける。
だが、全てパンチやキックで叩き落され、ダブルには届かない。
サイバーは能力が極めて特殊で、強力。
だが、一方で戦闘における能力値は低く、正直に言って戦闘向きとは言い難い性能だ。
この戦い、ダブルが圧倒的に優勢だった。
「こんなところでやられてたまるか!俺はこの力でこの世界を支配するんだ!」
『黙っててよ、小悪党。聞いてるこっちが恥ずかしい』
「信念もないような奴は何もなせるわけがない。テメェみたいな奴は一生はいつくばって生きてやがれ!!」
ダブルの拳がサイバー腹部に直撃。その勢いで上に上がったサイバー。
そして落ちてくるタイミングでキックを放ち、サイバーは吹っ飛んで廃材の山に激突した。
「行くぞ永斗。10秒で決める」
『オッケー、アレだね』
《ライトニング!》
《メタル!》
ダブルは2本のメモリを取り出し、ドライバーのメモリと入れ替えて再び展開。
《ライトニングメタル!!》
ダブルの右半分はターコイズに。左半分は銀色になり、背中にメタルシャフトが現れる。
ライトニングメタルは一見するとサイクロンメタル同様にバランスが悪く見えるかもしれない。
だが、ライトニング程のスピードがあれば関係ない。防御、パワー、スピードを併せ持つ戦士の完成だ。その上、金属と電気という属性の特性上、相性がいいのだ。
「行くぜ…!」
ライトニングの能力を発動し、超加速を始める。
電流を帯びたメタルシャフトでサイバーに一撃。
吹っ飛ぶ前にもう一撃、もう一撃と、連続で攻撃を叩き込んでいく。
ダブルの攻撃が止まり、サイバーが時間差で吹っ飛んでいく。
だが、まだ10秒立っていない。ダブルは吹っ飛ぶサイバーに追いつき、メタルシャフトにライトニングメモリを装填した。
《ライトニング!マキシマムドライブ!!》
「『ライトニングハルバード!!』」
電流、いや、雷を纏ったシャフトで、サイバーを地面に叩きつける。
振り下ろされた棍棒は、さながら斧のよう。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!」
雷が落ちたような轟音と閃光と共に、サイバーは爆発。
地面に転がっている気絶した男の顎から、水色のメモリが飛び出し、破裂した。
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「よかったの?せっかく駒を貸したげたのに」
戦いから少し離れた建物の屋上。
サイバーが負けたのを見て、朱月王我は呟く。
すると、”暴食”は相変わらずフードをかぶって顔を隠し、不機嫌そうな声で返した。
「アレはとんだ期待外れね。適合率が高かったけど、メモリを進化させるには精神面がまるでダメ。
まぁ、心配ないわ。芽生えた悪意はまだまだあるんだから」
「世の中には悪人だけは掃いて捨てるほどいる。ホントにその通りだよねぇ」
見下ろすと、暗くなる街を照らす無数の明かり。
この光一つ一つは人々の善意か、それとも悪意か。
そんな風景を片目に、少なくとも2つの明確な”悪意”は、ワームホールの中に消えていった。
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7/28 活動報告書
なんだかこれを書くのも久しぶりな気がする。
探偵部としての初めての活動報告だ。これは理事長に提出することになっている。締まっていこう。
まず、サイバーの件について。
一連の事件の犯人、西野五郎は逮捕。
自分勝手な恨みだけでなく、関係のない者まで巻き込んだ罪は重い。
虎谷の父親の件についても自白し、虎谷の父親は会社内での地位を取り戻したという。
虎谷からは報酬金。その上、虎谷の父親から国産黒毛和牛が届いたっていうんだから驚きだ。
高級食材なんて無縁の俺たちにとって、かなりありがたい。今度、直接会って礼を言おう。
ほかの被害者も皆が無罪というわけにはいかなかった。
事実、悪魔のささやきに傾かなかったのは虎谷の父親くらいで、他の奴らは黒幕がいるにしても、欲望のために自分の意志で犯行を行っている。罪を償わないわけにはいかない。
誰の心にも悪意は潜んでいる。
今回の事件の真の黒幕は、それを利用した西野か、それともその悪意に身を任せた人々か。
俺たち探偵はその命題に向き合っていく必要がある。
そして、楯銛青葉の件。
彼女は今日、学校に来ていた。永斗との契約らしい。
話によると事情が事情なので、すぐに”楯銛青葉”として生きることはできず、しばらくは”楯銛赤里”の名前で生活することになるという。これから少しずつ周りの人たちに明かしていくつもりらしい。
時期が来れば父親にも話すと言っていた。許してさえくれるなら、自分の事をネットに打ち明け、妹の存在を、かなえたかった夢を多くの人に知ってもらいたいという。
最後に、今回の事件で驚いたことと言えば、やはり穂乃果たちだ。
俺は別の調査で、永斗も試合中で本棚が使えなかったにもかかわらず、あの短時間で犯人を暴いて見せた。情報収集能力の高い奴、頭がいい奴、鋭い奴、リーダー格。
間違いなくコイツ等は頼れる探偵仲間になる。
才能ってのは意外なところで発掘されるもんだ。俺たちも負けちゃいられない。
「さてと、こんなもんか」
報告書を書き終わり、俺はノートパソコンを閉じる。
部室には俺だけ。他の奴らは練習に行ってしまった。
そんなアイツ等も、本業はアイドル。
そして、もうすぐ大舞台だ。
廃校の命運を賭けたオープンキャンパスまで、あと2日…
長かった…まさか自分でも2万5000も書くとは思ってなかった。
さて、やっとゲーム研究会編もひと段落。次回はようやくオープンキャンパスです!
もうすぐこの小説も一周年(だったらもっと進め)!
というわけで、次回は今までのキャラをできる限り出しつつ、振り返りとしたいと思います!
おなじみのあのキャラ、こんな奴いたっけ?ってキャラ、まさかのあのキャラ。
次回も頑張って書きます!
あと、最近他の作品の感想欄に顔出してないので、今度一気に感想投稿します。もうしばらくお待ちくださいm(__)m
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!