静岡にいる時からの、瞬樹の相棒。性別不詳。通称「クロ」。人の苦しむさまを見るのが好きな、生粋のサディスト。男として考えるなら背は低く160にも満たず、声も高い。麻酔針やナイフをなぜか持ち歩いており、変装やハッキングといった技術に長けており、諜報活動を得意とする。表情は基本真顔のままで、声のトーンもあまり変化しない。
名前の由来は仮面ライダーゴーストの変身音である「レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!」から「烈」、死を意味する英単語の「ネクロ」を並び替え、「黒音」。
特技:変装、声真似、以下自主規制
好きなもの:舞台、映画、もつ、以下自主規制
嫌いなもの:瞬樹、ワサビ
…だが私は誤らない。いや、嘘です。謝ります。こんなに間が空いて申し訳ございませんでした!
コラボが決まり、やる気入ったと思えばテストが多いし部活の大会多いし!
マジでバンバン進めていきたいと思ったら、半話で終わらせるつもりのこの話に一話を使ってしまうという…F編どんだけ長くなるんだろうか。
永斗メインエピソードとか言って、今回全く永斗登場しません。それと、今回登場する設定は最後まで悩んだんですが、最終的に加えることにしました。賛否あるでしょうがご了承ください。
よし、じゃあ本編いこうか!(投げやり)
「いやー。存外上手くいったっスね~。
流石ジブン、No3にして参謀はやっぱり伊達じゃないっスわ~!」
とある建物の中、白衣を着た眼帯の男 ハイドは、回転椅子に乗ってクルクルと回りながら自慢するかのように言う。
「アサルトが介入してきたのは予想外だったけど、念のために“怠惰”の正体や作戦の詳細は伏せといて正解だったっスね~」
隣には椅子に座って監視カメラの映像を確認する青年。髪は茶色で、服装こそ少々ラフではあるが、見た感じは普通の男。
彼は、ハイドの話をウンザリしたような顔で、それでも一応聞いている。
「やっぱ、こういうところに気が付く人が出世するべきだと思うんスよ!
って、“ビジョン”聞いてるっスか?」
「聞いてますよ!何回も何回も同じ話しやがって、暇かこのヤブ医者とか言いたいですけど我慢して聞いてますよ!」
「言ってるじゃないっスか」
「我慢の限界ですよ!!一応上位だから話くらい聞いてやろうって思ってましたけど!
大体、あそこから彼を運んだのオレなんですよ?仕事終わったと思ったらこんなの押し付けられるし!イジメですか!?」
「あ!今、すっごい失礼なこと言ったっスね!?
ていうか、君の能力なら運ぶなんて一瞬じゃないっスか」
「こんな離れたところまで転送するには、かなり高いとこまで上がらなきゃいけないんですよ!“マス目”を増やすのも疲れるし、視力強化だって疲れるんですよ!?」
ビジョンと呼ばれた青年と、ハイドの言い合いは続く。
だが、先にビジョンがため息をついて、作業に戻った。
「…もういいです。時間の無駄です。ていうか、監視なんて今絶対いらないじゃん。この人の相手押し付けられたな、チクショウ。
あ、そうだ。そういえば、あのへ……じゃなかった。ファーストも呼んでるんですよね?いつ頃合流の予定ですか?」
「坊ちゃんはもう少しかかるそうっス。
さっきから数分おきに電話しても出てくれないんスよ。昔馴染みなのに釣れないっスね」
それ絶対面倒がられてるじゃん。
もう反応するのも面倒だったビジョンは、その言葉をそっと飲み込んだ。
ビジョンはふと窓から外を見る。
日が沈み始め、空が紅く染まりつつある。
今頃、彼女らは友達が消えた悲しみと悔しさに明け暮れているだろう。
そんなことを考えると、少しだけ胸が苦しくなる。
「ゴメンね…でも、オレ達も
________________________
㏘6:00 切風探偵事務所
「今すぐ作戦開始だ。作戦は速攻で俺が作る。
お前らは出撃の準備をしろ」
永斗が奪われ、奪還作戦を遂行することになったμ’s。
各々がメモリガジェットを用意したりする中、アラシは作戦の大筋を説明する。
「時間がない。一度しか言わないから、特に瞬樹と穂乃果はよく聞いとけ。
今、永斗の場所を見つける手掛かりはほぼない。発信機の類は全部外されてたし、ドライバーで意志を繋がらせるのも、相手に気づかれるリスクがある。諜報活動担当の烈も意識が戻らない。
そこで、唯一の手掛かりになりうるのがコイツだ」
アラシが取り出したのは、サイクロンメモリ。
ダブルに変身する際、転送されてくるが、毎回アラシが持って帰り、永斗に届けている。
「俺たちが持ってるメモリのうち、ヒート、ルナ、メタル、トリガーは空助が作った戦闘用ギジメモリだ」
「俺のユニコーンやフェニックスと同様か」
「多分。ただ、サイクロンは空助が元々持っていたらしい。恐らくはサイクロンが“C”のオリジンメモリ。オリジンメモリを使えるのは適合者か、そのメモリに力を継承された別の適合者だけだ」
「力の継承…あの時、私から青い光が出たのは…」
「アレが継承だったんだろうな。海未とにこ、あと絵里の時、俺達は“O”、“R”、“L”から力を授かった。今だから説明するが、継承の条件は3つ。継承元と継承先の両方が適合者であること。継承元が継承先に心を許し、強い思いを託したこと。継承先が、継承元に適合したメモリが司る“感情”を示し、メモリに認められたこと。この条件が満たされて初めて、オリジンメモリが力の一部を託し、継承先がそのメモリを使えるようになるっていうシステムだ」
長々と説明したが、珍しく瞬樹も穂乃果も分かっているようだ。
自分の身に起こりうる現象だ。何より、自分に適合したメモリをアラシたちに継承できれば、仮面ライダーは更なる力を手にすることができるかもしれない。
「つっても、自分の意志じゃどうしようもないんだがな。ほぼ自然現象みたいなもんだ。
そんで話を戻すが、永斗がサイクロンを使えてるってことは、経緯は不明だが、“C”のメモリが永斗に力を継承したということ。それなら、サイクロンメモリから永斗の存在を追える可能性はある」
「根拠はあるんでしょうね?」
今度はにこが何かを探しながら、そんなことを聞く。
「無い。強いて言えば、適合者と適合したメモリは引き合うってとこか。
手元にメモリが無くても、強い感情でメモリが飛んでくることもある。継承者でも同様というのは俺で検証済みだ。事実、オーシャンとリズムの時はメモリが飛んできた。
逆にメモリが適合者に反応するかは分からんが、これしか方法が無い」
とは言いつつも、状況はかなり厳しいことは分かっていた。
例え反応があったとしても、敵のアジトがどこにあるかがわかる可能性はかなり低い。遠くに言ってないという考えもあるが、メモリを使えば不可能は一転し、可能に変わってしまう。
何か少しだけでいい。あと少しだけ、手がかりがあれば……
「アニキィィィ!!」
その時、事務所の扉を勢いよく開き、数名の男が駆け込んできた。
そう、アラシを“アニキ”と呼ぶ彼らは、ダークネスの事件の被害者たち。不良だった奴らだが、どういうわけかアラシに改心させられ、今はみんなでダンスをやってるとかいないとか。
「アニキ!大変っす!助けてください!!」
「悪い。時間が無いから事情を簡潔に説明してくれ」
「取り込み中でしたか!すいません!!」
「「「すいませんでした!!」」」
「そういうのいいから、さっさと要件言ってくれないか!?
探偵って言う立場上、無視できねぇんだよ!」
「本当にすいません!」
「「「すいませんでした!!」」」
「人の話聞いてたか!?」
男達はもう一度だけ「すいませんでした!」というと、一人の男が代表して話し出す。
「何日か前、アニキに会う前に制圧した族のアジトを気が向いたんで見に行ったんすよ。
そんで皆で、あの時はバカやってたな〜とか、あの時お前が頭の頭を鉄パイプでブン殴ってなかったらヤバかったな〜とか、思い出に浸ってたんすけど…」
「何だその血生臭い思い出は」
「そしたら突然変わった奴らが入ってきて、出て行けって言うもんだから正当防衛ってことでシメようとしたら…」
アラシは再びチラッと男達を見る。
全員が体や腕に包帯を巻いていることから、こっぴどくやられたことは容易に想像できた。
「…マジで何やってんだよ」
「いや、メチャクチャ強かったんすよ!
特に白衣で眼帯の奴なんか、弱そうだったのに近づいたら急に体が動かなくなるし…」
その言葉に、希、海未、そして凛が反応した。
この間、永斗と共に行動し、ホルモンに遭遇したグループだ。
「海未ちゃん、それってウチらが会った…」
「えぇ、そして恐らくは…」
「その人、多分ドーパントだよ!口癖が同じだったから間違いないにゃ!」
アラシは驚きよりも先に、思考を展開していた。
凛達が出会ったドーパント、ホルモンではなく、変身前からメモリの力を使えるほど適合率が高く、メモリを制御できる使い手…
「そいつがお前らの言ってた“ハイド”か」
3人は大きく頷く。
話によると、組織のエージェントの、ファースト、アサルトに次ぐNo3。
「そいつで間違いないか?写真とかねぇのか」
「待って、凛が似顔絵描くから」
ことりに紙とペンをパスされ、似顔絵を描くこと数分。
一瞬満足したような表情を見せ、紙を全員に見せた。
「…アニキ、こいつじゃないっす」
「だろうな」
広げられた紙に誇らしげに描かれていたのは、白衣とかそういうのではなく、何とも形容しがたい異形。
強いて言うならば、“人のようではあるが、少なくとも人ではない何か”。
「花陽、清書」
「は…はい」
凛は涙目で何かを訴えてくるが、アラシ及び一同はスルー。
凛の壊滅的絵心に構っている暇はない。
しばらくすると、花陽が似顔絵の書き直しを終えた。さすがは幼馴染。ちゃんとした絵になっている。
「アニキ、こいつです!こいつが俺たちが会った眼帯野郎っす!」
海未や希も何かを言おうとはしていない。
ビンゴだ。アジトを奪った奴らというのは、組織のエージェント達。
話を詳しく聞くと、結構大きめの廃ビルらしい。拠点にするにはもってこいだ。恐らく、永斗はそこに捕らえられている。
どうやら運命は、今回ばかりはアラシ達に味方したらしい。
「決まりだな。案内してくれ、そこが奴らの拠点だ。
移動中に作戦は伝える。目標は今日中に拠点に乗り込み、永斗を奪還する!」
全員が準備はできている。唯一の戦力の瞬樹の顔も、友の仇を討たんとばかりに鋭い。
ただ、真姫だけは、その白衣の男の似顔絵を眺め、
驚いたような、不可解な表情を浮かべていた。
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数時間後、廃ビル最上階。
「なぁ、来ると思うか?」
「来ないでしょ。最低でもあと3日はかかると思うけど」
待ち構えているのは、刈り上げに剃り込みを入れた若い男と、ポニーテールでピアスをした若い女。
エージェントのNo11とNo12。コードネーム“リキッド”と“ソリッド”だ。
この2人はほぼ同時期にコードネームを与えられ、ランクは低いながらも、コンビネーションにおいてはラピッド、ルーズレスにも引けを取らない実力者だ。
「それにしても超暇じゃね?かれこれ半日は待ってるって」
「体内時計故障してるわよ単細胞。私たちにはここを任される程度の実力しかないんだから、黙って待ってなさいよ」
「いや、でも最上階だぜ?」
「下には私たちより上位が大勢いるのよ?ここに来れるわけがないじゃない。
大体、ここには怠惰はいないんだし、ただの見張り役だと思うけど」
「えぇ!?ハイドさん、重要な任務って言ってたのに!」
なんてしばらく話していると、沈黙が流れる。
すると、数秒も経たないうちにリキッドが
「暇だし指スマでもしようぜ!」
リキッドは沈黙が苦手で、数秒と黙らない。よく行動を共にするソリッドは、常に悩まされていた。
任務のどさくさに始末してやろうかと何度考えたかわからない。
ドガッ!!
その音は、ソリッドの制裁の音ではなかった。
それに続くように同じような轟音が鳴り響き、そして……
白銀の竜騎士、仮面ライダーエデンが、天井を突き破って現れた!
「なっ…!」
「オイ!3日は来ないんじゃねぇのかよ!」
「私だってそう思ってたけど!いいから戦闘態勢よ!」
ソリッドは青いメモリを、リキッドも遅れて同じ色のメモリを取り出す。
《ダイヤモンド!》
《ウォーター!》
そして、それぞれ右腕、左腕にメモリを装填し、輝く鉱石の身体を持つダイヤモンド・ドーパント、流線的な模様で魚人の意匠も見られる姿のウォーター・ドーパントに姿を変えた。
それと同時にエデンは床に降り立ち、槍を構える。
「竜騎士、天より推参!」
そのセリフにソリッド対応に困り、沈黙が流れたため、思わずリキッドが
「ここにはお前に仲間はいねぇぞ!残念だったな!」
「なんで言うのよ、バカぁぁぁぁ!!」
ダイヤモンドの固い一撃が炸裂した。
まさかこんなにも早く、それどころか屋上から攻めてくるとは思いもしなかった。
本来ならここで食い止めておくのが役目。だが、ここにいないと知られてしまった以上、あちらに留まる理由はない。
逃げられる…そう思い、行く手を阻もうとするが、エデンが逃げ出そうとする様子はない。
「俺は友の仇を取りに来た。
一つは攫われた永斗を奪い返すため。だがもう一つは、我が友、烈を傷つけた報いを与えるため!」
エデンは怒りを込め、ダイヤモンドに向けて鋭い突きを繰り出した。
ダイヤモンドは腕のダイヤのシールドで攻撃を防ぐ。だが、その一撃は絶対的防御力を持つダイヤモンドに、僅かながらヒビを与えた。
「何!?」
「覚悟しろ。我が友を攫い、傷つけた貴様らの罪、
騎士の名の下に、貴様らを一人残らず裁く!!」
________________________
同刻、監視室。ハイドとビジョン。
「大変ですよ!最上階に仮面ライダーが攻めてきました!」
「ん?あー、結構早かったっスね」
「のんきかこの上司は!」
暇すぎて椅子でうとうとしていたハイドを叩き起こすビジョン。
監視カメラの映像にはダイヤモンド、ウォーターと交戦するエデンの姿が。
「遅かれ早かれ来るとは思ってたんスけどね。
いい感じの拠点が見つかったと思えば、研究機材運ぶ前に引っ越しっスか…」
「んなこと言ってる場合じゃないですって!
とりあえず、最上階に増援を送りますよ。今の戦力は奴だけ、一気に畳みかければ恐れる相手じゃありません」
「そんなに単純だといいんスけどね」
ハイドの言葉は気にせず、ビジョンは増援の通達を出そうとするが、今度は一階の監視カメラの映像に異変が起こった。
『しゃぁぁぁぁ!カチコミじゃぁぁぁ!!』
『出てこいやぁぁぁ!眼帯野郎!!』
『俺達のアニキが相手してやるぜ!!』
『他力本願かお前らは!』
そこそこの人数が、正面から鉄パイプなんかを持って突入してきている。
この間のここに集まっていた輩どもだということはすぐに分かった。
だが、何故か奴らは全員、マントや覆面を付けていた。
「全く…なんでこんな時に限って」
一般人程度なら一回の見張りをさせている、メモリを持ってない下位メンバーでも対応できるはず。放っておいても問題はないだろう。そう思ったビジョンだが
「妙っスね。明らかに素性が割れ、隠す必要もないのに覆面…
それにこのタイミングに加え、前よりも人数が多い…」
一階では突入してきた奴らを、数人がかりで対応している。
通達により、何人かは最上階に増援に行った。
すると、突入してきた時から何人かが減っていることに気づいた。
「なるほど…そういう事っスか」
_______________________
数十分前、アラシの子分(?)の車の中。
アラシはメンバーに急遽立てた作戦の説明をしていた。
「目標は永斗の奪還。敵を殲滅する必要はないし、できない。
戦力が実質瞬樹だけだ。瞬樹をどう使うかが肝だが…
瞬樹は屋上を突き破って、最上階に直接攻め込んでくれ」
「そこに永斗がいなかったらどうする」
「いるなんて思ってない。いくら何でも安直だからな。
お前にやってほしいのは、幹部たちの足止めだ。お前が大暴れすれば、少なからず増援が行くはず。警備が手薄になったところを侵入し、永斗を奪い返す」
「了解した。竜騎士シュバルツが全員まとめて葬ってくれよう!」
「アンタが言うと急に不安ね」
「俺も不本意だが、にこに同意だ」
「頼んでおいて!?」
瞬樹の役目はとりあえずそれでいい。
次はアラシ自身の役目だ。
「俺はこいつらと一緒に正面から攻め込む。仲間も呼んでもらってな」
「「「分かりました!アニキ!!」」」
「…息ピッタリか。そんで、さっきドンキで買った変装グッズで適当に変装する。
そこで、お前ら9人には俺達の変装に混ざってもらい、騒ぎの間に上の階に行ってもらう」
μ’sの9人は、すぐにアラシの言葉の真意を理解した。
アラシが足止めをする。つまり…
「お前らだけで、建物内を散策してほしい」
___________________
計画通り、混乱に乗じて侵入に成功。
異なるルートでいくつかのグループに分けて散策をしている。
まずはグループ1。絵里、希、ことり。
侵入したは良いが、監視カメラは依然生きたまま。当然、追手はやって来る。
「こっちよ、ことり!」
「はい!」
角や物を上手く使い、3人はうまい具合に追手を巻いていく。
運動神経は良い方の3人組だ。体力的には問題はないが、早く手を打たないと他のメンバーも捕まってしまうし、なによりこのままでは捜索なんかできたものではない。
そんな中、絵里はポケットから何かを取り出す。
それは、“L”と刻まれたターコイズブルーのメモリ。ライトニングメモリだった。
激しい鼓動を必死に抑えながら、絵里はアラシの言葉を思い出す。
『絵里、海未、にこ。お前らにはこれを渡しておく』
渡されたのは、それぞれライトニング、オーシャン、リズムのメモリ。
それぞれに適合したオリジンメモリだ。
『ドライバーを使っていない状態なら、適合者はドーパントや仮面ライダーにならなくても、ある程度はメモリの能力を使えるはずだ。実際見たことはないから分かんねぇが、ボタンを押せば体のどこかに生体コネクタが現れる。その状態なら能力を使えるらしい。
だが、間違っても挿したりはするな。絵里は分かってるだろうが、そうすれば最後…』
ドーパントになり、自分の制御なんて効かなくなる。
かつて、自分の知らない間にドーパントになり、不安定な感情により暴走を続けていた絵里は誰よりも分かっていた。
あの時、永斗が救い出してくれなければ、自分はきっとここにはいない。
アラシには、メモリを使って“ある事”を頼まれている。
だが、恐怖で踏み出せない。ボタンを押せば、再び飲み込まれるかもしれない。
怖い。今度こそ戻って来れない。
あの時の怪物となった自分の腕が頭に過り、その度に恐怖で頭がおかしくなりそうだ。
だが、このままでは状況は悪化するばかり。どうすれば…
「誰!?」
その時、希が何かに反応し、反射的に振り返る。
だが、そこには誰もいない。
「希先輩…?」
「誰もいないわよ?」
「いや、確かにおった。いや…そこにおる!」
希が指さす方向には、やはり誰もいない。
だが、そこから何者かの笑い声が響いた。
「ハハハハハッ!勘のいいJKもいたもんだ!
それとも…メモリの加護の妨害が入ったのかな?」
誰もいなかった場所に突然、怪物が現れる。
全身が精密機械の様で、右肩にはアンテナが。左腕を中心に各所にテレビ画面が備わっており、全体的な印象は最近出くわしたサイバー・ドーパントに近い。
「紳士な私は自己紹介をしてやろう!私はNo10“ジャミング”。
使うメモリは“ブロードキャスト”。私は一定範囲の人間に、同時に同じ情報を送ることができる」
さっきまで姿が見えなかったのは、ブロードキャストが発信した間違った映像を、3人が視覚情報として受け取っていたから。想像以上に厄介。というより、幹部クラスがここに残っていたことが予想外だった。
「ともかく!貴様らはもう終わりだ。
“電波の支配者”と呼ばれる、私が来たのだからな!」
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「呼んでねぇよ」
「ねぇっスよ」
ビジョンとハイドの息の合った突っ込みが入る。
結構な人数が増援に行ってしまったが、今集められる限りの上位メンバーは、μ’sの確保に回っている。
これは余裕だろう。そう思い、ビジョンは3階の監視カメラの映像に目を向けた。
そこには、海未、花陽。
そして対峙するのは、ガタイのいい着物の中年男性。
「“ドランク”っスか。これは数秒持たないかもっスね」
_______________________
3階。永斗を探すため、ここまで上がってきた海未と花陽。
だが、和服の男が行く手を阻む。
「お嬢ちゃんたちまだ高校生だよね?
俺はここの最年長でNo8のドランクって言うんだけどさ。あんまり若い子を傷つけたくないわけよ。
てなわけで…いますぐ帰ってくんないかな?」
口調はまだ穏やかだが、意味は要するに脅迫だ。
痛い目見たくなければ立ち去れ。それでも、2人は一歩たりとも後ろには下がらない。
前に進まなければ、友は救えないと知っているから。
「…聞いちゃくれないか。
それじゃ、
《サケ!》
ドランクは青いメモリを取り出しボタンを押す。
突然の日本語のメモリに驚く2人だが、そんなことをしている場合ではない。
ドランクは厚い胸板に刻まれた生体コネクタにメモリを挿入。
全身が和のテイストで、着物を着ているようにも見え、背中には酒が入ったと思しき大きな徳利。全体的に見れば青い鬼のような姿をしており、大きな牙が恐怖心を煽る。
次の瞬間、2人の体に異変が起こった。
「海未…先輩……」
「これは……」
それは今日2回目の感覚。あの時、永斗が攫われる直前の意識が薄れる感覚。
頭がふらつき、平衡感覚が保てない、強烈な眠気も襲ってくる。
「このあたり一帯に揮発性の特殊なアルコールを充満させた。
そいつを吸えば一瞬で“酔い”が回り、脳機能が急速マヒし始め、判断力、平衡感覚、集中力、最後には意識をも奪う。大酒飲みならまだしも、アルコールが飲めない未成年には効果覿面で、意識を奪うまで数秒と掛からない…はずなんだけどね」
ドランクの目の前、海未と花陽は口を抑え、消えゆく意識を叩き起こす様に依然として立っていた。
「普通は一回酔えば一日は酔いの冷めない代物なんだが…さっきといい、適合者ってぇのはメモリの能力にかなりの抵抗力があるみたいで。致し方ない。大人げないが…」
サケ・ドーパントは徳利の口に手を近づけると、そこに日本刀が出現する。
「お嬢ちゃんたち、見たところかなり限界みたいだ。
そんな状態で、いったいどれくらいもつかな?」
花陽、海未の手元には、スタッグフォンとヒートメモリとメタルメモリ。
そして、海未に適合したメモリである、オーシャンメモリ。
これだけで、この強敵をやり切るしかない。
2人は意識を振り絞り、サケへと向き直った。
_______________________
2階、ジャミングことブロードキャスト・ドーパントと絵里、ことり、希。
ブロードキャストは目の前から再び消え、声だけが不気味に響く。
その声すらも誤った情報かもしれない。ともかく、捕まったら負けだ。
どうすればいい?手元にはバットショットとルナメモリ。
ルナの神秘の力を使えば、ブロードキャストの位置が分かるかもしれない。しかし、位置が分かったところで普通の勝負となれば、アラシならともかく、ドーパント対人間で勝ち目はほとんどない。
そんな中、絵里だけが対抗しうる力を持っていた。
そう、アラシから渡されたライトニングメモリ。
これを押せば、状況は打開できるかもしれない。だが、もし再び暴走してしまったらどうする?
そう考えてしまうと、怖くて仕方がない。
ブロードキャストの声は、3人を追い詰めるように響く。
恐怖はあらゆる方向から絵里を襲っていた。
(怖い…怖い…怖い……!)
絵里の心の中で悲痛な叫びが木霊する。
その時…
『お前は何に怖がっている』
そんな声が聞こえた気がした。
ことりでも、希の声でもない。聞こえたのは自分だけ。
だが、絵里はその声、その問いかけに真摯に向き合ってみることにした。
何が怖いのか…自分が死ぬこと?確かに、あちらの都合があるにしても、100%命に危険が無いとは言い切れない。しかし、そんなことは分かっていたことで、命が惜しいならこんな場所には来ていない。
ならば、何が怖いのか…すぐに分かった。
自分の命じゃない。こんな自分を仲間だと認めてくれた、彼女たちが死んでしまうのが怖い。
暴走すれば、なりふり構わず周囲のものを破壊するだろう。そうなれば当然、近くにいる2人が無事でいられるはずがない。
けれど、このまま何もしなければ、他の皆にも危険が及ぶ、さらに、自分を救い出してくれた恩人を救うことができない。
ならば、迷っている暇はないはずだ。仲間を救うためにもやるべきことはただ一つ。
だが、本当にできるのか?その時、絵里は思い出した。
彼はあの時言った『プライドなんて、都合のいいように捨てればいい。必要になれば、また拾えばいいんだから』と。
μ’sに入るため、絵里は閉じこもっていたプライドを捨てた。
それを拾うときは今だ。こんどは生徒会長の使命感ではなく、こんな素晴らしい仲間がいるμ’sの一員であるという“誇り”を持って…
「私は…この力を乗りこなす!!」
絵里は正面に向け、右手を伸ばし、左手にライトニングメモリを構えた。
「希、ことり、伏せて!」
《ライトニング!》
背中に生体コネクタが現れたことが感覚で分かる。
電流が集まる右腕は、怪物の手ではない。あの時、穂乃果が差し出してくれた手を取った、誇らしい右手のままだ。
“L”のオリジンメモリ。地球から分離した26の意志の一つにして、“誇り”の意志。
メモリは絵里の感情に呼応し、その雷を放った。
絵里の右手から放たれた高圧電流は周囲一帯に放電。
しかし、自分と希、ことりにはその電流は一切及んでいない。力がコントロール出来ている証拠だ。
放たれた高圧電流はそのフロアに設置された監視カメラを破壊。
それにとどまらず、電流は連鎖的に広がっていき、建物全体の監視カメラを破壊した。
「ぐあぁぁっ!!」
電流を受け、ブロードキャストが姿を現す。
ブロードキャストは体が精密機械であるため、電流を受ければ、その機能は支障をきたす。
更に、メモリの産物であるドーパントに対し、始祖のメモリであるオリジンメモリの力はあまりに有効だった。
「今よ!」
絵里の言葉の意味を察知した希はルナメモリをことりに渡す。
ことりはバットショットにメモリを装填。
《ルナ!》
「バットちゃん、おねがい!」
ことりはバットショットを放ち。バットショットはルナの能力で、激しい光を放出した。
ブロードキャストはその光に怯み、動きが止まる。
光がやんだ時、ブロードキャストの眼前には絵里の姿が。
「まさか……!」
絵里はライトニングの力で両手に電撃を纏わせる。
そして、その両手をブロードキャストの胴体に突きつけ、纏った電流を一斉放電した。
_______________________
一階、アラシとその子分たち。
予想以上の数の構成員。だが、アラシたちは問題なく対処していた。
ていうか、ほとんどアラシが片付けている。それほどまでに圧倒的だった。
「流石アニキ!」
「俺たちが敵わなかった奴らをこんな簡単に…」
「そこにシビれる!あこがれるゥ!」
「お前らからぶっ飛ばしてやろうか!?」
アラシが半ギレになる中、監視カメラが破壊されたのを確認した。
「絵里…やったか!」
それなら、こんな奴らに構っている暇はない。さっさと片付けて、一刻も早くアイツらと合流しなくては。そう思い、アラシは一層力を込め、蹴りを放った。
だが、その一撃は完璧に防がれた。
「お前は…」
今までの構成員なら一撃で倒している感覚だった。それを防ぐとなると、真っ先に浮かぶのはラピッドの姿。だが、そこにいたのは女。それも見覚えのある。
「アタシとやり合うのは初めてだっけ?半分の方」
ラピッドとコンビを組んでいたNo5のエージェント。ルーズレスだ。
「切風アラシだ。お前の担当は瞬樹の方だろうが」
「竜騎士の方はリッパーが行ったって連絡があった。アタシよか強いけど、またやり合いたいし、やられてほしくはないな~」
ルーズレスは獣の様な動きでアラシの目の前から消え、拳を繰り出す。
アラシは直感的にその攻撃を防ぐが、その攻撃は驚くほど重い。
「…ラピッドはどうした、一緒じゃねぇのか?」
「ラピッドは今病院にいる」
「何?」
ルーズレスは攻撃を続けながら答え、アラシも避けたり反撃しながら反応する。
「アサルトにやられたみたいでさ、右足の骨が折れてた。しばらくは戦えないって。
ラピッドって、小さい時から戦争に出てて、戦う事しかできなかった。それでも世界を変えるため、戦いから解放されてもアタシと一緒に戦うことを選んでくれた。それなのに……!」
ルーズレスの攻撃が、感情を伴い、重くなっていく。
「ヤツがいるってことは、アサルトは必ず来る。
だから…アタシがアサルトをぶっ殺す!」
そのためにお前は邪魔だと言わんばかりに、ルーズレスは鋭い一撃で勝負を終わらせようとする。
しかし、アラシは片手でその攻撃を受け止めた。
「お前の戦う理由はよく分かった。でも、俺達も負けっぱなしは性に合わねぇんだよ。
すっこんでろ。永斗を救い、アイツを倒すのは…俺達だ!」
_________________________
同刻。
「やっと見つけたぜ…怠惰!」
《カオス!》
風景の奥にある廃ビルを睨みつけ、右目の下にメモリを挿入。
カオス・ドーパントに変身した。
激しい熱気と冷気で、辺りの植物が凍り、干からびて朽ち果てるものもある。
憤怒とμ’sの戦いは激化する。
絶望まで…あと1時間。
とにかくキャラが増えましたね。エージェントたちのメモリはコンセレ版のガイアメモリセットに入ってるやつをメインにしました。高くて買えなかったんですけどね。
オーズドライバーもメッチャほしいんですけど、変神パッド買ったり映画見に行ったりしたんで、マジで財布が枯渇中でして…
さて、次回はついに役者が出そろい、絶望のカウントダウンがゼロになります。
冬休み入ったら本格的に休めないから今のうちに書いとかないとな~
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!