この話は、永斗の過去編第一話。このシリーズを通して、永斗の秘密を解き明かしていきたいと思います。
一つだけ注意を。
ただでさえラブライブ要素が少ない作品でございますが、このシリーズではそれがゼロになります!もうクロスオーバー作品としていいのか!?
あと、同時更新されたもう一本を読んでいない方は、そっちの方を先に読んだ方がよかったり、そうでもなかったり…
目が覚める。僕は白い部屋にいた。
目が覚めたという表現は正しいのだろうか。夢の中にいるような気もするし、なんだか頭がフワフワしている。
最後の記憶は、地球の本棚。“僕の本”から出てきた獣が、僕を飲み込んだ。
アラシや皆は脱出に成功したのだろうか。僕の体はどうなっているのだろうか。
そもそも、今の状況もこの場所も、何一つ分からない。
でも、何故かは分からないが…この場所にいて、いい気分はしない。
「やぁ、目が覚めたかい?」
何もない場所から声がする。
瞬きをすると、そこの人の姿が現れた。
僕だ。目の前に現れたのは、僕だった。
何を言っているのか自分でもわからないが、本当に僕が目の前にいる。
「ここは何処?どうやったら出れる?」
「冷静だね。もっと驚いたりしないんだ」
「普段から超常的なもの扱ってるからね」
確かに驚きはするが、パニックになっては意味がない。
目の前にいる自分は置いておいて、まずはココから出ないと。覚えてる限りでは、変身してナーブと交戦中だったはずだ。
ていうか、同じ声だと誰がしゃべってるのか自分でも分からなくなるんだけど。
「ここは、そうだな…“監獄”とでも言おうか。
君はココから出られない。償いきれない罪を、永遠にココで背負い続ける」
何を言っているのかさっぱり分からない。
すると、見透かしたように目の前の僕は続ける。
「わけがわからないような顔をしているね。もしかして、忘れたのかな?
思い出してごらん。君の意識じゃなくて、体が、ココに来る前に何を聞いたのか」
体?確か、僕の体は凛ちゃんと一緒にいて…
その時、僕の頭に声がフラシュバックした。
声の主はカオス・ドーパント。アサルトとかいうエージェントだ。
「思い出した………僕は……」
「そう。君は……」
「「怠惰」」
そうだ。アサルトは、僕をこう呼んでいた。“怠惰”と。
七幹部と言う言葉と、朱月の二つ名である“傲慢”。そこから推測するに。七幹部とは、キリスト教の“七つの大罪”を冠している。そして、“怠惰”はその一つ。つまり…
「君は組織の最高幹部の一人。七幹部の“怠惰”」
信じ難い事実だ。でも、不思議と驚きはしなかった。
僕が組織の人間であったということ、それは違和感という壁をすり抜け、僕の記憶に抜け落ちたパズルのピースのようにはまった。
アサルトはこうも言っていた。
3年前の惨殺事件の犯人も、僕であると。
“白い悪夢”。よくそう呼ばれるあの事件は、メモリ犯罪が世に広く知れ渡ったきっかけの事件であり、メモリ犯罪の中でも、最も凄惨な被害をもたらした事件だ。
生存者はごくわずかで、彼らは口々に、白い化け物を見たと証言している。
世に放たれた白い化け物は、災害の如く、一晩で町一つの被害を出したともいわれている。
僕はこの事件の日に、くーさんに拾われた。つまり、この事件以前の記憶は、僕にはない。
僕が…この事件の犯人……?
「……違う」
僕は絞り出すように言った。
「僕は知らない…!そんな証拠…どこにも!…」
その時、見てしまった。
僕の掌に刻まれた、生体コネクタを。
生体コネクタは、メモリを起動してなければすぐに消える。今もこうして残っているということは、僕がオリジンメモリを使ったという事。
なにより、僕がメモリを使ってドーパントになったという何よりの証拠だ。
「やっと分かったみたいだね」
目の前にいる僕は、そう言ってパチンと指を鳴らす。
すると、記憶が頭に流れ込んできた。
僕はドーパントになって、スラッシュと戦っている。
そして、その姿は…
“白”
事件の証言と一致。しかも、僕と適合したのはファング。“牙の記憶”。
被害者はほとんどが、刃物のような物で切られ、刺され、死亡していたという。
つまり、本当に…
「違う!例えそうだとしても、それは僕じゃない!!
僕は探偵、士門永斗だ!七幹部でも怠惰でもない!」
僕があの事件の犯人?そんなわけない!
仮にそうでも、それをしたのは記憶を失う前の僕。怠惰だ。“僕”は誰も殺してない!
そんな僕を見て、目の前にいる僕はクスクスと笑い、その顔を僕に近づけてくる。
「つくづく面白いね。君という人間は、本当に怠惰だ。
いや、
その言葉の真意を考える暇も与えず、目の前の僕は、僕の頭に掌を乗せた。
その瞬間、意識が繋がったのが分かる。
地球の本棚に近い感覚が、僕の意識を包み込んだ。
「知るといい。君が犯した罪を………」
___________________
時は遡ること3年前。組織の研究施設にて。
地球の記憶を再現し、人間の身体を変異させ、異常進化させる装置。ガイアメモリ。
それを開発、生産するのがここだ。
組織が集めた有能な科学者たちが揃い、日夜研究が行われている。
その中でも、ロックが施された一室で、少年は大量の資料に埋もれた状態で目を覚ました。
「ん…寝てたか。2時間」
士門永斗 12歳。
研究員最年少にして、“地球の本棚”にアクセスし、ガイアメモリを新たに生み出すことができる唯一の存在。
最高幹部の一人、“怠惰”である。
___________________
ー永斗sideー
時刻は…今何時だろうか。僕にとってはそんなことはどうでもいい。
僕の仕事は、本棚から地球の記憶を引っ張り出し、ガイアメモリにすること。一本だけ作れば、後は他の人が量産してくれる。
僕は物心ついたころにはこの仕事をしていた。
組織の最高幹部は、“憤怒”、“強欲”、“色欲”、“嫉妬”、“暴食”、“憂鬱”、“傲慢”、そしてこの僕、“怠惰”の8人で構成され、八幹部と呼ばれる。
最近は傲慢が、新たに加入した“朱月組”の組長になったという話を聞く。近年、幹部の入れ替わりが激しく、今の八幹部の半数以上が若い世代だ。
幹部の称号には条件があるが、その中でも“怠惰”は異質。
代々、怠惰を継承するのは“地球の本棚”にアクセスできる人間。
そして、“地球の本棚”に干渉できるようになる方法はただ一つだけである。
“ガイアゲート”。この施設の根幹ともいえる存在で、ここの地下に存在する。
地球の意思の分身であるオリジンメモリが外に出たときに生じたと推測されるもので、組織の技術を持ってそれを維持している。まるで井戸のような風貌で、その奥は地球の意思と直接繋がっているとも言われる。
別名“地球の扉”。
早い話、そこに落ち、地球の意思と繋がった者が、地球の本棚にアクセスできるようになる。
ただ、ほとんどの確率で、中に落ちた生命は、データとなって地球の意思の一部になる。再びデータが肉体として再構成される確率は、それこそ万に一つだ。
“怠惰”の称号を持つものが死ぬと、特殊な教育を受けた組織の施設の子供が、そのガイアゲートに落とされる。そういう風に、組織は“怠惰”を所有し続けている。
そして、数多くの子供が犠牲になる中、唯一生還したのが、この僕…らしい。
長々と説明したが、要するに僕は組織にとって、メモリを生産する道具。
まぁ、それについて特に思うことは無いが。
「さて、次は何を作るか…」
僕は本棚の検索結果をメモした資料に目を通しながら考える。
動物といったメジャーなものは、僕より前の“怠惰”が既に作りきっている。最近のマイブームは、メモリにするにはマイナーなモノ。最近だと、“
そうだ。“
「決まりだね。じゃあ、配列はこんな感じかな……」
テーマが決まり、紙に適当な設計図を書いていく。この時間は嫌いじゃない。
イニシャルを象ったメモリの記号をデザインするのも僕の仕事だ。今回はドラキュラ、Dだから、吸血鬼の牙の生やした口を大文字のDに見立てよう。
子供が工作をする感覚で、僕はメモリを作る。
ここで作るメモリは、昔から多くを軍事兵器、暗殺道具として、様々な国家に売られている。
この装置は人間という定義を破壊する装置。一本で戦況は一変。強力なメモリなら、都市一つをパンデミックに陥れることも、ジャングルを一瞬で砂漠にすることも、湖を焦土と化すこともできる。
近頃の代になり、メモリは徐々に一般販売されているとも聞く。
地球の記憶を体に取り入れ、人ならざる能力を手にする。それが麻薬と同じように、一般社会に広がりつつある。“ドーパント”とはよく言ったものだ。
世の人間からすると、メモリは悪魔の道具で、それを作っている僕は悪魔そのものなのだろう。
だが、それは全くの見当違いだ。考えても見て欲しい、拳銃を作った人間は、犯罪者ではない。
“死の商人”と揶揄された科学者、アルフレッド・ノーベルも、元々戦争のためにダイナマイトを発明したわけではない。悪いのはそれを悪用する人間だ。
僕は生まれた時からメモリを作ることを義務付けられた。逆に言えば、それ以外の生き方は知らない。それなら、僕はいままで通り時間を過ごすだけだ。
理由もなく悪魔の道具を生み出し、それから先のことに目を向けない。
それ故の“怠惰”なのだから。
___________________________
「じゃあ、明日までに試作品作っといて」
「……はい」
ドラキュラメモリの設計図を完成させ、担当の者。いわゆる部下に設計図を渡す。
部下といっても、当然、自分の何倍も生きている大人が相手だ。
設計図を受け取る手に力が入っており、手にした途端に紙が少し潰れる。
僕は仕事を終えたので、さっさと部屋に戻るとしよう。
「……」
少し体に違和感を覚える。若干、体に力が入らない。
すぐにその違和感の正体は分かった。単純に空腹、体のエネルギー切れだ。
最後に補給をしたのはいつだっただろうか、そういえば、最近はまとまった睡眠もとっていない気がする。
僕の生活は常にこんな感じだ。メモリ開発を常時義務付けられているため、なるべく継続的に作業を行った方がいい。人間、酸素は3分、水は3日、食べ物は3週間補給できなければ死ぬらしい。
逆に言えば、3週間なら何も食べなくてもいいということだ。睡眠だって、3日寝てないぐらいなら死ぬことも無い。
部屋に戻る前に、施設の所々にある冷蔵ボックスに立ち寄る。世で言う自動販売機みたいなものだろうか。そこに入っているのは、生活に必要な栄養分が含まれる、パックに入ったゼリー状の物体。手を汚さず、短時間で、簡単に食べることができる、研究者御用達の代物だ。
これは施設内の研究者なら誰でも使える。僕も、エネルギー補給はほとんどこれで済ませている。これさえあれば、研究活動に支障は出ない。
冷蔵ボックスを開け、パックを一つ取り、ボックスを閉める。
その時、さっき設計図を渡しに行った部屋から、ガン!という音が聞こえた。
特に驚きはしない、さっきの研究者がゴミ箱でも蹴ったのだろう。
ここにいる研究者は優秀な人員が揃っている。博士号を持っていたり、大学を飛び級する者だっているだろう。
だが、彼らは全員、僕より劣っている。
能力があるということは、努力をすると同時に、周りからもてはやされ、優越感に浸りっぱなしの人生を歩んできたということ。全員、自尊心の塊みたいな人間だ。
努力もせず、気付けば人知を超えた能力を持っていた、自分よりもはるかに優れる人間に指図されるのは、さぞ気分が悪いだろう。しかも、ソイツは自分よりも年下どころか、年で言うと中学一年生の子供だ。
ここで生活をしていれば、至る所で僕に対する愚痴や陰口を聞く。もう慣れた。それに、階級は圧倒的に上とはいえ、子供相手に言いたいことも言わず、才能を妬むだけの愚図の言うことに、聞く耳は持たないようにしている。
「…退屈だ」
僕は気付けば、そう口にしていた。
思わず、手首に付いた腕輪に目を落とす。
これがある限り、僕は施設の外に出られない。これは僕が覚えている限り、外れたことは無い。
つまり、僕は生まれてから一度も、この施設から出たことは無い。
人間以外の生物はデータで知るのみ。触ったことも無ければ、直接見たことも無い。
部屋にこもり、メモリを開発し、年上に指図し、妬まれる。今日起こったことだけで、僕の今までの人生は説明できる。このループをおよそ9年間、時間に直せば、80000時間以上を続け、生きてきた。そこに意味なんてない、運命づけられた職務を繰り返すだけの無為、いや…無意な時間。
部屋の前に立ち、腕を伸ばして扉に備え付けられた画面に指を置く。
指紋認証が完了し、扉が開いた。視界に床に散乱した資料が入って来る。
さて、次は何を作ろうか。
また新たにループが始まる。きっと、僕は一生このまま繰り返す。
とはいっても、今更それに不満は感じない。決まりきった、苦も楽も感情も無い人生も悪くない。
「それじゃあ、また検索でもするか…」
地球の本棚の鍵となる、“白い本”を探す僕。常に持ち歩いているが、思い出せば、さっきまで持っていた記憶が無い。さっきの冷蔵ボックスに置き忘れたか。
仕方がない。面倒くさいけど、取りに行こう。
僕が扉を開けようとした瞬間、勝手に扉が開いた。
と思うと、今度は眼前に資料の山が現れ、僕に激突。資料は飛び散り、ただでさえ紙が積もっていた床に、更に積み重なる。
当然、質量の小さい僕は、その勢いで積もった紙の上に倒れる。
「いたた…あっ!すいません!」
聞こえたのは、若い女性の声。
体勢を戻し、目を開けると、白衣姿の…セミショートと言ったっけか?そのくらいの髪の長さの女性が、腰の角度90度でこちらに頭を下げている。
「今日付けでアシスタントに配属されました!
その女性は顔を上げ、自己紹介をするなり、僕の姿を見て驚いた。
アシスタントは名義上は僕の補佐だが、実際は僕の作業を手伝える人材はおらず、施設内の役立たずが最終的に回されてくる場所になっている。実際、今までも何人もアシスタントがいたが、そのほとんど全てが何もしないまま姿を見せなくなり、研究施設からもいなくなった。多分、クビになったのだろう。
今回の彼女だが、僕のことを知らなかったということは、ここに来たのはつい最近なのだろう。
それでここに回されてきたということは…この
容姿は…あまり女性を見たことが無いからよくわからないが、世間でいうスタイルがいいというやつに入るのだろうか、脚はスラっとしていて、顔も容姿端麗な部類に入るだろう。ひとつ言うとすれば、女性とは思えないほど、胸囲が小さいということだけだ。それ以外に興味を示すものは見当たらない。
「えっ…と…とりあえず、一生懸命頑張りますので、宜しくお願いします!」
再び腰を90度で曲げ、頭を下げる彼女。
感情豊かで忙しい人だ。怠惰である僕とは対照的に感じる。
こんな人が傍にいれば、うるさくて案外退屈がまぎれるかもしれない。
だがきっと、彼女もすぐにいなくなるだろう。結局は僕の人生にはなんの影響も及ぼさない。
僕は彼女から目を離し、無視するように扉を出る。
これからも僕の人生は変わらない。道具として生まれ、言われるままに生き、そのうち死ぬだろう。
あくびがでるような毎日の先には、何も待っていない。
さぁ、再開だ。
無意で怠惰な人生を続けよう。
予定したより短くなりました。
こんな感じで細かく更新していきます。