ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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受験生って、本当に時間ないんですね。これは色々とマズいかも。146です。
お久しぶりです。過去最高で時間が空いたかもしれない。

もう本当にヤバい。早いことファング編終わらせないと、本当にヤバい!



第35話 Eという少年/諦めることを

「どういうつもりですか…岸戸先生…?」

 

 

とある廃病院、対峙するは瞬樹を含めたμ’sのメンバー。そして、組織のエージェント集団“憤怒”のNo3、コードネーム“ハイド”。

 

真姫はハイドの事を、「岸戸先生」と呼ぶ。

ここに来る前、メンバー一同は真姫からハイドについての話を聞いていた。

 

本名 岸戸(きしど)能晴(あたる)。名前の読み方には一同驚かされたが、それはまた別の話。

彼は、数年前まで西木野総合病院に勤務していた外科医。脳神経外科においては、数十年に一人の逸材とまで言われた天才医だった。しかし、手術中に執刀医に対し暴行を働き、医師免許を剥奪されたとされている。

 

凛が書いた(花陽の清書)似顔絵を見て、真姫はすぐに思い当たった。にわかには信じられなかったが、もし彼が組織にいるならば…そう思い、真姫たちは西木野家にあるデータを片っ端から集め、当時の知り合いや、院長である真姫の父親にも聞き込みをした。

その結果、この診療所にたどり着いたのだ。

 

 

「どういうつもりはこっちのセリフっスよ。せっかく逃がしてあげたのに、ノコノコやって来るなんて」

 

「貴方がなぜそうなったかは、事の真相を凛から聞きました。

それでも、私は納得できません!患者想いだった貴方が、どうして…」

 

「岸戸能晴はもう死んだ。今のジブンは“ハイド”っス。

それより、ジブンの身の上話なんかより、大事な本題があるんじゃないっスか?

まぁもっとも、彼のことだろうっスけど」

 

 

ファングの一件の時、ファーストはこう言っていた。

“力が弱まっている一週間以内に、総攻撃を仕掛ける”と。

 

あの時、エージェント達は完全に、オリジンメモリ適合者の永斗を殺す気だった。

もし総攻撃されれば、ファング・ドーパントである永斗が殺されてしまう可能性がある。

 

 

「…はい。永斗への総攻撃を、ギリギリまで延ばしてください」

 

 

少なくとも、アラシが帰って来るまで、永斗を守らなくてはいけない。

そして、それができるのは、岸戸能晴と関わりを持つ、真姫だけだった。

 

しかし、ハイドは驚いた様子もなく、ただ吐き捨てるように言った。

 

 

「駄目っス。総攻撃は今日の正午きっかりに遂行される。ジブン等も、子供の我儘聞くほど暇じゃないんスよ」

 

「そんな…何故ですか!?一週間のタイムリミットまでは、まだ時間があるはずです!」

 

「ファーストの封印は、刻一刻と弱まっていってるっス。体制が整い次第、最高戦力で叩くのが必定なんスよ」

 

 

ハイドは席から立ち、右手でクルクルとペンを回しながら、歩き回り、ペン先を真姫に向けて言った。

 

 

「仮にこの作戦が失敗すれば、ファングは無差別殺人鬼になるっス。真姫ちゃんも、君たちも、君たちの家族も皆死ぬ。それを止める方法は士門永斗を殺すしかないんスよ」

 

「ッ…!ふざけるな!永斗を見捨てろと…」

 

 

ハイドの言葉に激昂する瞬樹。だが、真姫は右腕で瞬樹を制止させる。

 

その目は、「ここは任せて」そう言っているようだった。

 

 

「私たちは死にたくないです。スクールアイドルとして、μ’sの仲間とラブライブに出場する。それが今の私の夢だから…」

 

「そうっス。なら分かるっスよね?夢が叶うかは別として、君たちが未来を迎えるためには、士門永斗を殺すしか…」

 

「私の夢は、μ’sの仲間とラブライブに出場すること。

……永斗も、みんなでμ’sの仲間です!」

 

 

ハイドは真姫の言葉の真意を読み取り、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。もしくは、顔の周りを悪臭の煙が回っているような。そんな表情。

 

 

「つまり、こう言いたいんスね。

自分達の命も、彼の命も、断固として諦めるつもりはないと。論外っス。そんなもの、子供の我儘に過ぎない」

 

 

ハイドの口調が強くなる。激しい口論が始まった。

 

 

「失敗すれば、あの未曾有の悲劇が繰り返される。勝機を逃せば終わりなんスよ!“集”を生かすために“個”を殺す。それが大人の常識っス」

 

「あの白い怪物は必ず、アラシ先輩が止めてくれます。それまで待って欲しいと言ってるんです!」

 

「こっちも、現実見てものを言えって言ってるんスよ!止める?どうやって!?アレが今の彼の人格。結局は殺すしかないってことが分かんないんスか!?」

 

「永斗の昔のことは知りません…でも、私たちに見せていたあの顔は、絶対に嘘じゃなかった。実際、あんな激闘の中でも、私たちには傷一つついていません!それって、まだ私たちの知る永斗の心が残ってるってことなんじゃないんですか!?」

 

「そんなのは偶然っス!もしくはファーストが君たちに危害が出ないように戦っていたか。なんにせよ、君の言うことには何の確証もない。ただの絵空事っス!」

 

「それでも私は…永斗とアラシ先輩を…あの二人で一人の仮面ライダーを信じています!だからお願いします!総攻撃を中止してください!」

 

「話にならない!!この世の中、何も諦めずに何かを得ようなんて、愚かしいこと極まりないっス!得ることとは、即ち、妥協し、諦めること。身の丈に合わないものを望んだところで、手に入るのは後悔だけ。そんな望み、持つこと自体が“間違い”なんだ!!」

 

 

口調が変わるほど、ハイドの感情は高ぶっていた。

真姫は感じていた。その言葉が自分に向けられたものではないと。

 

その言葉の先にいたのは、誰でも無い、ハイド自身だ。

 

 

「それは…あの事件のことを言ってるんですか…?」

 

 

ハイドは思わず口走ってしまったことに気づき、しまったという顔をする。が、一度歯ぎしりをすると、開き直るように言った。

 

 

「…あぁ、そうっスよ!あの時、手術をさせて貰えないと…彼女は助からないと薄々気づいてた!それでも、僅かでも可能性があると信じた結果、あの事件を呼んだ…そのせいで、命が尽きるその瞬間まで、ジブンは彼女に何もしてやれなかった!!残された時間を一緒に過ごすことも…できなかった…!」

 

 

ハイドの声が震える。爪が手の皮膚を破りそうなほど強く握られた拳は、彼の自分への激しい怒りが込められていた。

 

 

「岸戸先生、貴方はあの時、彼女の命を諦めるべきだった…そう言いたいんですか?」

 

「そうに決まってるじゃないっスか!だから諦めるべきなんスよ!士門永斗を確実に殺し、君たちは明日を手に入れられる。君たちまで…全部を失うことはないんだ…!」

 

 

ハイドに__岸戸にとって、彼女の存在は全てだった。

そして、彼女を失うと同時に、免許も、地位も全て奪われた。

 

そんな中、彼を引き留めたのが、西木野兄妹。一医者に過ぎない彼を、院長の子息である二人は慕い、まるで兄弟のように接してくれた。あの事件の後も、彼がそんなことをするはずが無い、引き戻してくれと、父親である院長に頼み込んでいたと聞く。

 

だから彼は真姫に感謝していた。立場上、敵対せざるを得ないが、それでも彼女には不幸になって欲しくはなかった。

 

そのためにも、士門永斗を殺すのが確実で最善。可能性は低いと言わざるを得ないが、それでも仕留めるには今しかない。それは誰の目からも明らか。それなのに…

 

何故わからない…何故諦めない…何故、そんな目で見るんだ…

 

ハイドはそれが分からないまま、真姫は口を開いた。

 

 

「安心しました。やっぱり貴方は、私たちの知る優しい先生のままです。でも…昔の貴方はそんなことを言う人じゃなかった」

 

 

その言葉に、ハイドの胸がズキズキと痛む。

変わった。そうだ。名前も捨て、悪の道に進んだ。自分は変わったんだ。分かっている…分かっているはずなのに…

 

 

「昔の貴方は、患者の命は絶対に諦めない、そのための努力は惜しまない。そんな医者だった。私と一輝はその姿に憧れました。それなのに…患者の命を諦めるのが正しかったっていうんですか!」

 

「黙れ…!救えなかったら意味なんて無い、出来ないことは諦める、それが大人の社会っス!人間は出来もしないことを望み、手に入ればその次と望み続け、墜ちていく!ジブンはこれ以上、子供が間違いの果てに大人になるのを、見たくはない!」

 

「大人になるってことは!諦めることじゃないはずです!!」

 

 

ハイドの記憶がフラッシュバックする。

思い出すのが辛くて、封じ込めていた彼女との記憶だった。

 

真姫はまだ何かを言おうとしていたが、その前にハイドの手が動く。無意識にその手はポケットに入り、メモリを持っていた。

 

 

《ナーブ!》

 

 

「話は…お終いっス!」

 

 

手の甲にメモリを挿入し、神経繊維のエフェクトと共に、その姿をナーブ・ドーパントへと変える。

 

そして右腕を真姫たちに向けると、その腕は夥しい数の神経繊維に分解される。

 

身構える瞬樹。しかし、それより前にナーブの神経繊維が、洪水のごとく壁を粉砕し、彼女らを病院の外に押し出した。

 

 

 

 

気づけば、全員が診療所の敷地外に放り出されており、その診療所はナーブの神経繊維で作られた、ドームのようなもので囲まれていた。

 

ナーブの能力で作られた、中範囲防壁“神経虫籠”。触れれば電流が流れ、大型トラックの衝突にも耐えうる強度を持つ。生身での進入は不可能である。

 

 

 

「交渉失敗じゃないのよ!」

 

 

空気を読まずに真姫に怒鳴りつけるのは、矢澤にこである。

 

 

「仕方ないでしょう!?あんな理屈にもなってない屁理屈、通る方がおかしいわよ!」

 

「何開き直ってんのよ!どーすんの、完っ全に怒らせちゃったじゃないの!」

 

 

反ギレで言い合う、にこと真姫。さっきまでの切迫した口論とは何だったのかと思うほど、喧しいだけの口論が続いた。

 

 

「でも…真姫ちゃんの気持ちは、ちゃんと伝えられたんじゃないのかな♪」

 

 

見かねたように口を開いたのは、ことりだった。

 

この作戦は失敗してしまったのかもしれない。でも、伝えたいことは伝えられた。

 

真姫は、いつかアラシが書いた活動報告書にあった言葉を口ずさんでいた。

 

 

「想いを伝えることは、きっと無駄じゃない…」

 

 

それは、アラシと真姫が初めて出会った時のこと。音丿木坂の清掃員だった小森が、ダークネス・ドーパントとなり若者を襲っていた事件。アラシの心境に大きな変化をもたらした事件だ。

 

結局、アラシの言葉が彼に届くことはなかった。でも、きっと伝えたことで何かが変わったはずだ。真姫もそう信じていたからこそ、今回ハイドに胸の内を語るに至った。そして、そこにはきっと意味があるはずだ。

 

 

「せやね…最初のアプローチにしては上々なんやない?

それはそうと、“μ'sの仲間とラブライブに出ることが私の夢”やったっけ?それについて詳しく聞かせて貰おうか?」

 

「ゔぇえ!?ち…違うわよ!あれはあの時仕方なく言っただけで、本当はそんなこと思って…」

 

「とか言っちゃって~本当は本音なんでしょ~?」

 

「私は嬉しいな♪真姫ちゃんがそんなこと思ってくれてて」

 

 

希だけでなく、穂乃果とことりまで乗っかってくる。

真姫は心の中で「しまった」と叫んだ。確かに言った。しかも図星も図星、本心である。だが、真姫は無自覚であるため、内心パニック状態に陥っている。

 

ニヤニヤしながら詰め寄ってくる、穂乃果や希に、そんな真姫は思わず。

 

 

「本当に違うわよ!ただ…アラシ先輩の期待には、どうしても応えたくて…」

 

 

自分の言ったことを理解した真姫は、その場から全力で逃げ出したい衝動に駆られ、顔を真っ赤に染める。またも無自覚な本心である。

 

「おーっと?それはどういう意味かな?ウチに詳しく教えてくれる?」

 

「いや…だから…私はアラシ先輩が…って、あぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

何を言おうとしたのかは分からないが、半狂乱になる真姫と、それを面白がって弄り続ける希。

そんな二人を尻目に、海未は依然として冷静に述べる。

 

 

「確かに、上手くいったとは言えませんね。もう中には入れませんし、日を改めるか、別の方法を考えましょう」

 

「そうね。上手くいくと思ったんだけど…って、どうしたの瞬樹、珍しく静かで」

 

「人を蝉みたいに言うな、絵里。ただ…」

 

「ただ…?」

 

 

そう言ったっきり、それっぽい表情で何も言わない瞬樹に、若干のいらつきを感じる絵里。

 

 

「…まぁいいわ。まずは一旦帰りましょう。今後の方針はそこで」

 

 

絵里の言葉で、真姫弄りから手を引く希。他のメンバーもそれに従う。

 

その時、希が何かを聞いたかのように反応。

一人歩みを止め、安心したように柔らかな微笑みを見せる。

 

 

 

「よかった…ちゃんと、伝わったみたい」

 

 

 

___________

 

 

 

 

「……」

 

 

μ'sの気配が無くなったのを確認し、“神経虫籠”を解除し、ハイドはメモリを体内から取り出し、変身を解除する。

 

壁の穴をふさいでいたものが無くなり、部屋から外の景色が一望できる状態に。

 

 

「これは…やり過ぎたっスかねぇ…」

 

 

この修理費、経費で落ちるかな…などと考えるが、ビジョンに怒鳴られる未来を想像し、軽くため息をつく。

 

何はともあれ、邪魔者はいなくなった。既に時間も正午が近い。ハイドは電話を取りだし、アドレス帳からゼロの名前を見つける。

 

電話をかける寸前、真姫の言葉が頭に蘇る。

 

 

『大人になるってことは!諦めることじゃないはずです!!』

 

 

「ッ…!」

 

 

ハイドは少し動きを止めるが、迷いを振り払い、ゼロの連絡先をタップ。即座に電話が繋がった。

 

 

「あ、もしもし。ジブンっスけど。ファング殲滅作戦の実行について…

 

 

 

 

実は、さっき騎士の仮面ライダーと交戦して、結構な深手を負っちゃったんスよ。はい…大丈夫っス、医者っスから。数日あれば。作戦のほうなんスけど…タクトとジブンが万全じゃないのは厳しいんじゃないっスか?自分で言うのもなんスけど。えぇ…はい…分かりました。回復に専念するっス」

 

 

電話を切り、複雑な表情で天井を眺めるハイド。

これバレたら怒鳴られるじゃすまないだろうな…と考えると、さっきよりも大きなため息が自然と出てくる。

 

 

「ホント、最近の子は油断ならないっスね…真姫ちゃんも見ないうちに立派になったもんス。騎士の子には、さっきの攻撃に敵意がないのバレてたっぽいし。おまけに、こんなものまで…」

 

 

ハイドは机の裏側に手を回し、そこに付いていた小さな装置を取り外す。さっきの口論の隙に、希が取り付けたものだ。先ほどの電話も聞かれていただろう。

 

掌にのせ、それを粉々に握りつぶした。

実際、ほんのさっきまで気がつかなかった。大したもんだと、ハイドは内心では感心していた。

 

 

さっきの行動、自分は何をやってるんだという気持ちはあるが、後悔はしていない。真姫の言葉を聞いたとき、フラッシュバックしたのは、十数年前の彼女との記憶。

 

 

 

『宇宙飛行士?』

 

『そう!私、宇宙飛行士になるんだ!それで火星に行くの!』

 

 

岸戸能晴 高校生。病院の庭で自分の夢を楽しそうに語るのは、能晴の同級生で幼馴染みの女子だ。

 

 

『また大層な夢だね。じゃあ、その前に赤点くらいは回避できるようにしよっか』

 

 

彼女は思い切りのいい性格で、しばしばスケールの大きい夢を持つ。幼稚園での大金持ちから始まり、最近ではノーベル賞受賞まで来た。年齢を重ねるごとに夢が大きくなるのは、端から見れば稀有であろうが、能晴はこんな突拍子も無いような展開に慣れてしまっていた。

 

 

『うぅ…あっくんはいいよね~頭いいし。やっぱり大学は医学部?』

 

『うん。医者になれば、体の弱いお前に何かあっても、俺が助けられるだろ?未来の宇宙飛行士さん』

 

 

いつも通りの対応で返す能晴を、彼女はいつにない目つきで彼を見つめる。

 

 

『な…どうしたんだよ』

 

『あっくんってさ、いっつも軽く返すけど、馬鹿にしたりはしないよね。それが不思議だな~って。成績も悪くて、体も弱いお前に出来るわけがない。現実を見ろ、大人になれって、先生やお父さんには言われるのに、あっくんだけはちゃんと聞いてくれる』

 

『…そんなに不思議かな?俺は別に、お前ならなれるとか信じてるわけじゃないし…ただ、お前は昔から、痛いほど真っ直ぐなのは知ってる。だから、冗談や適当に言ってるわけじゃないってのは知ってる…だけなんだが…』

 

 

その言葉を聞いた彼女は、しばらく能晴の顔をじっと見つめる。能晴は照れくさそうな、気だるそうな感じで、顔を少し赤くしながら肩をかく。そんな能晴を見て、彼女は思わず吹き出した。

 

 

『な…なんだよ!』

 

『アハハ…!いや、別に…やっぱり、あっくんは優しいや』

 

 

彼女は暫く笑った後、遠い目をして、先程とはまた違う様子で、別の未来を語った。

 

 

『あっくんがそう言ってくれて、いつも本当に嬉しいんだよ。私が将来何になれるのかは分からないし、こんな体だから大人になれるかも分からないけど…どんな未来になったとしても、誰かの夢や希望、目標に対して、それがどんなに難しくても、“諦めるな”って教えられる。私はそんな大人になりたい。大人になるってことはきっと、諦めを知ることじゃないはずだから…』

 

『そりゃまた、大層な夢だ。でも、きっとなれるよ』

 

 

 

 

 

 

あの時彼女の頭に置いた右手を見つめる。

 

結果として、あの言葉は嘘になってしまった。彼女を救うことは出来なかった。幾度となく自分を責めた。何度も自分を殺した。数え切れないほど、自分を否定し続けた。それでも…

 

 

「誰より真っ直ぐで、一生懸命生きてたお前を…否定なんてできないよ…」

 

 

眼帯で覆った右目から、不意に涙がこぼれ落ちた。

 

 

「おっと…いけない。“憤怒”のNo3が柄にもないっスね。さてと…壁でも直すっスかね…」

 

 

ハイドは涙をぬぐい、診療所のどこかにあったと思しき工具を探しに行くのだった。

 

 

_______________

 

 

 

ーアラシsideー

 

 

 

前回までのあらすじ。

空助の遺した言葉に従い、仙台まで“仙人”という人物に会いに行った俺。しかし、そこで出会ったのは、人の心を読むような言動をする女 山神未来。空助と知り合いだったという彼女は、俺に神奈川に行って来いと告げた。

 

そんな感じだ。あれからバイクで結構な距離と長さを走って、指定された住所に到着した。空助の地図よか数段わかりやすかったため、そこまで苦労しなかったが、単純に疲れた。

 

仙台の山奥から出発し、神奈川の山奥に到着。どこからどこまで山奥。風景はどちらも同じようなものだが、こちらは立ち入り禁止のテープが蜘蛛の巣にように張り巡らされており、中には相当大きな建物が倒壊した跡が。

 

住所を見たときはピンと来なかったが、ここに来るまでの道のりで確信した。

 

ここは3年前、俺と空助が侵入した、組織の最高科学施設。偶然にも、俺はここでジョーカーメモリ…オリジンメモリの“J”を手に入れた。

 

 

「組織の施設…確かに、例のパーツがあるのもなんとなく納得できるが…」

 

 

取りあえず、立ち入り禁止のテープをくぐり中に入ってみる。それにしても妙なのは、3年前まで確かに機能していたはずの施設が、こんな短期間で残骸と化していること。そして、倒壊してしばらくたった様子なのに、誰かがここに入った痕跡がほぼ無いということだ。普通なら、解体工事でもしていてもおかしくないのに。

 

 

まずは手当たり次第、その“緑色に光るパーツ”を探す。それさえ見つければゲームクリアだ。

捜し物には自信があった。しかし、これが中々見つからない。

 

代わりに妙なことに気づいた。建物の瓦礫の中には、高度な機材の残骸もあり、何より妙なのは、建物の瓦礫が綺麗すぎるのだ。そう、まるで、建物全体が切り刻まれたかのように、瓦礫の断面は鮮やかだった。

 

切り刻まれたような…否が応でも、その言葉はファングの事を思い出させた。

この規模から考え、ファングが暴れた跡だとすれば自然である。そうなれば、永斗の過去にも関わってくるはずだ。あの女は心が読めていた。それを承知で俺をここにけしかけたのか?などと考えながら、俺は未来から言われた緑色の光を探しながら歩き回り、瓦礫の中を探っていく。

 

 

 

痛い。俺の手が傷だらけになり、何度目か分からない深いため息をついたとき、辺りは既に暗くなっており、太陽が沈むまで秒読みの状況であった。あの女に騙されたのではないか、こんなことに意味があるのか。そんな疑念は太陽の光が弱まっていくにつれて大きくなっていく。

 

____そうはいくか。

疲れた、辛い、そうだろうな。もう何時間も探し回っている。でも、そんなことは知ってるんだ。それが、ここで退く理由になるか。ただ“辛い”だけで、諦めるわけにはいかない。

 

 

太陽が沈んだ。途端に辺りは曇り始める。月の光の進路は雲に阻まれ、地面には届かない。

昨日の夜もそうだった。永斗がファングになったあの日に昇った満月から、月は一度も空に姿を見せない。

 

その時だった。

空間を覆った暗がりは、今まで見ることができなかったそれを、はっきりと鮮明化させた。

瓦礫の隙間を抜け、仄かに輝く緑色の光。

 

 

俺は何も考えず、その光に駆けだした。

そこは、先程確認した場所。再度瓦礫をどかして確認しても、やはり何もない。だが、俺の心は確かに歓喜している。

 

そこにあったのは、四角く淵を取るように地下から輝く、緑の光だった。

 

 

 

___________________

 

 

 

「まさか、地下室があったとはな。こりゃ気付かねぇわ」

 

 

地下室と地上は四角いパネルのようなもので隔てられていた。中には階段と機材が。地下だったためか、地上に比べて比較的原型が残っている。まだ使える機械なんかもあるのではないだろうか。

 

進むにつれ、緑色と光が強くなっていく。間違いない。この先にある。

 

しばらく進むと、曲がり角が。さらに機械の扉まで。しかし、どういうわけか既に開いている。壊れているのか?なんにしても、この先に例の石とかがあるはずだ。俺は思わず駆け足になり、曲がり角を曲がった。

 

 

そこにあったのは、緑の光を放つ石や機械の残骸。

そして、それをせっせと集めている、中年の男だった。

 

 

「ッ!お前…仮面ライダー!なぜここに!」

 

 

こちらを見て腰を抜かす男。コイツは…確か、海未たちの報告でチラッと見た、ホルモン・ドーパントの変身者。変身前で会ってないのに俺がダブルだって知ってるってことは、組織から教えられたのか。でも何故だ。それ以外にも、コイツとはどこかで……

 

 

「来るな!俺を捕まえに来たのか!?」

 

 

男は、何もしていないのに勝手にビビり始めた。なるほど、コイツは俺が変身できないことを知らない。しかも、コイツがここにいて、その石を集めえているということは、多少はこの施設に詳しいということだ。これは願っても無い好機!

 

 

「あぁ。偶然ここに入るのを見かけてな。観念して縄に附け。そうすれば、手荒な真似はしない」

 

 

俺はありもしないドライバーを構える仕草をする。男は完全に戦意が無いようだ。

 

 

「警察に突き出す前に、質問に答えてもらおうか。断れば、この地下室ごと生け埋めだ。悪いが、もう手段を選んでる暇はない」

 

 

無論、ハッタリである。そんなことできるか。今の俺は生身だぞ。

しかし、案の定ちょろいというか、すんなり男は頷いた。

 

 

「よし…じゃあまず。この施設に何があった」

 

「…白い化け物が、全部やった。ここの研究者で、生き残ったのは俺だけ。後は全員死んだよ。探せば白骨死体が出てくるはずだ」

 

「その緑色の石は」

 

「これは、“地球の遺産(ガイアパーツ)”と呼ばれる物だ。地球の意思と直接つながるための空間、地球の扉…ガイアゲートの近くでその波動を受け続けた物体は、こう変異することがあるらしい…って言っても、お前には分かんねぇだろうがな」

 

 

地球の扉…スラッシュの餞別が、ここで繋がった。つまり、ここにはそのガイアゲートが存在したということか。

そして、白い化け物…やはりファングで間違いない。問題は…

 

 

「白い怪物が現れた原因はなんだ。白い怪物の正体はなんだ!」

 

「……当時、この施設の権力者だった俺は、邪魔な施設の最高責任者を殺そうと画策した。ガイアゲートに落とし、殺害は成功したはずだった。だが奴は、何故か蘇り、ある研究員と脱走を図った。その途中で奴はオリジンメモリに適合し……あの惨劇が起きた」

 

「…その、最高責任者の名前は」

 

「士門永斗。アイツはまた俺の前に現れた!今度こそ殺すつもりだ…!だから、一部から高値で売れるこの石を売り、海外に逃げるつもりだった!」

 

 

俺の思考が真っ暗になった。

オリジンメモリに適合し、ドーパントになった永斗。でも、暴走すれば普通は、まともに会話もできなくなる。絵里がその前例だ。しかし、あの時の永斗は明確な自我があった。つまり…

 

永斗は3年前、自分の意思で大量虐殺を行った……

 

確かに、そんなこと考えなかったわけではない。俺たちの潜入作戦の少しあと、あの事件が起きた。空助は何故か捜査しようとはしなかった。そして、その直後に空助が記憶喪失の永斗を連れてきた。驚くほど噛み合っている。

 

これは永斗の記憶を失う前の人格が、殺人鬼であることの証明だ。

 

 

その後も、男から多くの情報を引き出した。

地球の本棚とは、ガイアゲートに落ち、地球の意思とつながることで手に入る能力。永斗は幼少期に一度、そこに落ちて生還したことで、地球の本棚にアクセスできるようになったらしい。そして、“F”のメモリはこの施設で保管されていたらしい。何でも、ガイアパーツがメモリと呼応したため、組織は“F”のメモリの場所を特定できたらしい。

 

謎は残る。だが、それよりも俺の中では、行き場のない怒りが渦巻いていた。

原因は依然として不明。聞く限りでは、士門永斗という人間が元々怪物だったとしか考えられない。

それがたまたま記憶を失ったことで、人格が変わった。そして先日それが表に現れた…他にないのか!?それが真相なのか!考えろ!どこかに答えが…!

 

 

 

 

____駄目だ。全く見えない…

 

頭では分かっていたはずだった。俺は永斗を理解し、救い出そうと誓った。

でも、心のどこかで、ファングの言葉は嘘で、永斗は無実で、ただ体を乗っ取られただけだ…そんな甘い答えを望んでいた…現実が目の前まで来たとき、思考と体は動きを止めた。振出しに戻った気分だった。滑稽だな…永斗の過去を探りに来たのに、望んだ答えが無いだけで、こんなにも心が折れそうになる。

 

仮に元の人格が戻ったとして…俺は、お前にどんな顔をすればいい……?

 

 

 

 

「…イ……オイ!聞こえてんのか!」

 

 

男の怒号が、俺を現実の世界に引き戻した。

いつの間にか、男は立ち上がり、メモリを構えていた。

 

 

「さっきから偉そうにしやがって…俺はな!上から目線のガキが一番嫌いなんだよ!」

 

 

《ホルモン!》

 

 

男はメモリを使い、ホルモン・ドーパントへと変身した。

 

ホルモンは腕の注射器を、躊躇なく俺に向けて突き出してくる。

俺は無意識に回避した。永斗が居なければ、敵の能力が分からない。だが、なんとなくアレは喰らったらヤバイのは分かる。

 

攻撃は絶え間がない。使用者のレベルが低いため、生身でもなんとか回避できているが、ここまでの疲労が俺の足をふらつかせる。

 

ホルモンの一撃が、俺の服をかすめた。

マズイ…このままでは時間の問題だ。なんとか打開策を…

 

頭が働かない…さっきまで俺を動かしていた原動力は、もう俺の中にはない。希望は全て…水泡に消えてしまった。

 

もう、ここまでか……

俺はホルモンの攻撃を避けた反動で、バランスを崩し、尻から倒れこんでしまう。

 

 

「やっと力尽きたか…これで終わりだ!」

 

 

ホルモンは腕の注射器を振り上げた。俺は全てを悟った。俺は…ここで死ぬ____

 

 

 

倒れた反動で、俺の服のポケットから何かが落ち、戦意を失った俺の手に落ちた。

それは、凛が作った…俺の分のフェルト人形____

 

 

 

《ジョーカー!》

 

 

 

ジョーカーメモリを作動。首に生体コネクタが出現し、俺は爆発的に飛躍した身体能力で、ホルモンの攻撃を避け、さらにホルモンの腹部に一撃を叩き込んだ。

 

俺は拳を握り固め、自分の顔をぶん殴った。

 

 

「痛ッッ!!」

 

 

ジョーカーで強化されてんの忘れてた…首が飛ぶかと思った。

でも、おかげで目が覚めた。何を勝手に諦めてんだ俺は!ちょっと疲れただけで弱気になってんじゃねぇぞ!俺は、アイツ等の思いも背負って、ここに来た。これは俺だけの戦いじゃない。永斗は…μ’sの全員にとってかけがえのない存在だ。無論、俺にとっても…

 

再び誓え!切風アラシ!!俺とアイツはいつだって、二人で一人の仮面ライダーだ!

永斗が己の罪を数えるならば、俺もその罪を背負う。例え、そこに俺たちが知る永斗がいなくても…俺はお前の名前を呼ぶ。どんなに離れていても、何が阻んだとしても、大きな声で叫び続ければ、いつかは届く!そう信じて!!

 

 

『また軽い決意か?いい加減理解しろ。ここで諦める、それが運命だ』

 

 

お前は誰だなんて聞かない。どうだっていい。俺に必要なのは、その問いの答えを声を大にして宣言することだけ。俺は戦う。諦めるのが運命ならば、俺は運命をぶっ壊して前に進む!

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

俺の拳は、ホルモンがガードに使った自信の腕の注射器を粉砕。胴体まで到達し、拳がメリメリと食い込む。攻撃が深くまで突き刺さった感触が俺の腕に伝わる。その瞬間、ホルモンの体は凄まじい衝撃波と共に吹き飛び、壁に激突。衝撃波はとどまらず、壁をも粉砕した。

 

ホルモンの変身が解け、男は気を失う寸前、俺を見て憎しみに満ちた表情を浮かべた。

 

 

「お前…あの時の…!」

 

 

俺はただただ自分の身に起こった事態に驚いていた。

確かに、変身以外でメモリを使うのは初めてだった。だが、変身前でこんなパワーが出るなんて普通にあり得ない。

 

しかし、どうやらそれを考える暇はなさそうだった。

 

さっきの衝撃で、元々危うかった地下室が崩れ始めた。マズい…早くここから逃げないと!

と、その時、気絶したホルモンの男が目に入る。

 

 

「あー!しゃあねぇ!!」

 

 

 

_________________

 

 

 

 

数分後、俺は男を担ぎ、何とか脱出に成功した。

例のガイアパーツとやらは、地下室と共に土の中に消えてしまったが、問題はない。

この男が集めていた分が入ったケースが、コイツの服から出てきた。命救ったんだから、このくらいは頂戴しても問題ねぇだろ。オイ、誰だお前のせいだろって言ったやつ。

 

ホルモンメモリは依頼にも合った通り、きっちり破壊しておいた。

さてと…そんなに重症でもないし、放置しといても風邪は引くかもしれねぇけど死にはしないだろう。この辺に投げとこう。

 

 

辺りはすっかり暗くなっている。何はともあれミッションはクリア。心も新たに入れ替えた。もう一遍の迷いも甘えも無い。さて、アイツのとこに戻るとするか…

 

 

「にしても…こんな石ころのために、ここまで苦労するとはな…」

 

 

地球の意思と繋がる物体…興味が無いわけではない。

まぁ、持つくらいなら…そんな気持ちで男が持っていたケースを開け、掌に緑色に輝く石を出した。

 

歩きながら近くで見てみるが、光っている以外に特異な点は見当たらない。

 

 

「よくわかんねぇな。まぁ、持っていけばドライバーが完成するし、それでいいとし…」

 

 

俺が石を持ったまま、とあるポイントに足を踏み入れた瞬間。その刹那だった。

俺の首元に残っていた生体コネクタが輝く。そして、俺の視界は真っ白になった。

 

 

不思議な感覚だ。眠っている時と、現実との間のような__意識が自分の体から抜け出て、上に上がっていく感覚。そして、俺の頭を膨大な量の何かが通り抜けていく。文字列のようにも、無数の写真のようにも、映像のようにも感じる。だが、はっきりとわかる。それらは何かの記憶。長い長い時間を経て記録された、“この場所”の記憶。

 

その時、一瞬だけ。無数の情報はピタリと止まり、俺にある場面を見せた。

場所は異常に散らかった狭い部屋。そこにあったのは、チェスをしている女の後ろ姿。そして、少し小さい永斗の姿。笑ってこそいなかったが、俺には分かる。俺の知っている永斗よりもずっと不器用みたいで、顔に上手く感情が表せない。それでも、あの顔は、心の底から楽しんでいる顔だ。

 

それからも、永斗が過ごした時間、感情が流れ込んでくる。

最後に、永斗が大切な誰かに向けた、()()()()が、俺の意識を満たした。それはとても…とても温かく_______

 

 

 

 

いつの間にか、意識は元に戻っていた。それと同時に、俺の目から涙がこぼれ落ちる。

 

 

永斗の感情を知り、理解した。記憶を失う前のアイツも、仲間に恵まれたんだ。他とは違う自分を理解し、向き合ってくれる、大切な人がいたんだな……そして、最後に感じたあの感情。そこまで来れば確信できる。俺の知る永斗と、過去の永斗は何ら違わない。昔の永斗は…人を平気で何人も殺すような奴だとは思えない。

 

何か大きなきっかけが無ければ、あんな事件が起こることはあり得ない。

得た情報から現実を見ろ、記憶をたどれ、希望的観測を捨てて推理しろ!

 

きっかけは何だ?その大切な人がいなくなった…もしくは死んだとか…でも、誰かに殺されたとしても、無関係な人間を手にかける理由にはならない。読み取った永斗の過去や感情から考えて、それで永斗が何かを失うことはあっても、何かを奪うとは考えにくい。動機としては突飛すぎだ。

 

スラッシュがわざわざ俺に残した手がかり“地球の扉”、永斗が見せた異常な再生能力。そして、あの時。ファングとの闘いでの、ファング、ゼロやスラッシュの言葉の違和感…ファングの化け物じみた強さ…最後に、さっき俺に問いかけてきた“声”と、俺に宿った力…

 

 

 

『レベル2…』

 

『よくもここまで集まってくれたもんだ。下等生物が…』

 

『物語の登場人物は、創造主である作者には絶対に逆らえない』

 

『手に入れたものに対して、失ったものはあまりに大きすぎる』

 

『やはりオリジンメモリ…強さの底が知れない』

 

『ガイアゲートの近くでその波動を受け続けた物体は、こう変異することがあるらしい』

 

『ガイアゲートに落とし、殺害は成功したはずだった』

 

 

 

「そうか…アイツは永斗で……永斗じゃなかったんだ」

 

 

 

たどり着いた真相。もし、これが真実ならば____

 

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

数時間後。俺は再び神奈川から仙台まで。本当にこの短期間で何週すればいいのだろうか。

そして、またしても山奥。地図は空助のだし、道中に目印らしきものも無いから、またしても迷ってしまう。

余計に時間がかかるのが苛立って仕方がない。

 

やっとの思いで見つけた廃洋館。ドアノブは取れたまま修理してない。

慎重に扉を開け、鳥もちが無いかを確認。いつ抜けるか分からない床を進んでいき、階段も出来る限りのいたわりを尽くして昇っていく。

 

やっと着いた、山神未来の部屋だ。ドアは外れているため、すぐにあの女の姿が目に入り…

 

 

 

「あぁ~タカさん可愛いぃぃぃ~」

 

 

 

大きめの猛禽類と戯れる未来を見て、俺は無意識の殺意と共にメモリを構えた。

 

 

「って帰ってたの!?ちょ!待って待って!休憩だから!いったん落ち着こ?」

 

「……それで、持ってきましたよ。例のパーツ」

 

 

俺は心を落ち着かせ、ガイアパーツの入ったケースを渡した。

未来は鳥を逃がし、パーツをじろじろと見つめる。

 

 

「お疲れさ~ん。じゃあ、早速取り付けるね~」

 

「待ってください。その前に、話をしてもいいですか」

「気付いたんでしょ?彼の正体」

 

 

…少し予想はしていた。だが、やはり驚いてしまう。本当にどこまでもこの人は、俺の思考を読んでくる。

 

 

「キミならたどり着くって信じてた。でも、それはまだスタートラインだよ」

 

 

そう言って、未来は俺に近づき、掌を俺の頭部にかぶせてくる。

その瞬間、さっきの、場所の記憶を読み取る感覚と似た感覚が、俺の中に走った。

 

 

今度は、俺の意識だけでなく体も、どこか分からない白い空間の中にいた。

 

体がフワフワする。力も上手く入らない。すべての事象が現実と少し異なるような、そんな空間。

 

 

『そこは、意識空間。いわゆる、地球の本棚と似た空間だよ』

 

 

未来の声が聞こえるが、姿は見えない。それより、これが地球の本棚の空間…この能力、やっぱり彼女は…

 

 

「それで、なんで俺をこんなところに!」

 

『詳しい事情は後で☆何にしても、キミはヤツと戦わなければならない、それには今のキミじゃ力不足なんだ。だから、未来お姉さんが開発の片手間で特訓してあげようってわけ』

 

 

空間が歪み、俺以外の存在が意識空間に現れた。鈍色の肉体に鋼の皮膚、赤い目。

俺たちが初めて仮面ライダーとして戦った敵。メタル・ドーパントだ。

 

 

『キミの記憶から生まれたドーパントと戦ってもらう。その空間は時間が圧縮されてるから、時間のことは気にしなくてもいいよ。体力の限界も、死の概念も、その空間にはない。何時間でも敵を倒すまで戦える、出来るまでやるを実践可能な、理想的教育空間だよ☆』

 

 

懐をまさぐると、ジョーカーメモリはあった。つまり、これで戦えということだろう。

言ってることは相当鬼畜だが、今となってはありがたい。丁度、己の力不足は感じていた。

 

 

「あぁ、分かった。じゃ、遠慮なく特訓させてもらうぜ!」

 

 

誓ったからな。どんな道だろうが、俺はもうお前を諦めない!!

 

 

 

《ジョーカー!》

 

 

 

 

 




はい~もうね。頭悪いから要約ができない。長くなっちゃうの。すいません!
一応、Eという少年は次でラスト!のはずです…過去編も次回ラストなんで、もう少し頑張ります。

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!
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