ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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超!お久しぶりです!146です。多分みんなもう忘れていると思いますけど。
センター終わって二次対策の間に書き終えました。久しぶりすぎて書き方忘れてますので、若干雑です。

それではどうぞ。


あ、受験終わったらジオウの新作書きます。



第37話 Eという少年/牙と切り札

 

 

8月9日 正午

 

場所は都外のとある樹海。年間の自殺者が多いという、不気味な肩書を持つことで有名な場所だ。組織のエージェント、ハイドは白衣を着てその入り口ともいえる場所に佇んでいる。

 

隣にはポニーテールの若い女性。憤怒のNo7、コードネーム“タクト”。つい先日まで重傷で寝込んでいたため、まだ少し傷が残っていた。

 

 

「悪いっスね、病み上がりのところ」

 

「医者のアンタが言うなら大丈夫なんでしょ?それに、正直私がいないと厳しいじゃない」

 

「ハハ…返す言葉もないっスわ。坊ちゃん、アサルト、しまいにはリッパーにも連絡つかないんスから。だから非戦闘員のクラフトにも出てきてもらってるんスよ」

 

 

ハイドの隣で座り込んでいる、たれ目気味の少年。見た目は中学生ほどにも見える。

憤怒の中では最年少、組織内でもトップクラスで幼い、No15“クラフト”。ツールメモリであらゆるものを改造する、組織内きってのクリエイター。年齢ゆえにこの序列に収まっているが、その才能は上位メンバーにも一目置かれている。

 

 

「ん?いーよぉ。どうせ暇だしぃ。それより、いつになったら始まんのぉ?」

 

「君はもう少し、目上に対する言葉遣いを覚えた方がいいっスね」

 

 

この樹海の周りは、ジャミング、リキッド、ソリッド、ドラウンといった上位メンバーに包囲されている。そして上空にはゾーン・ドーパントに変身したビジョンもスタンバイ済み。

 

 

「よーし。じゃあ、そろそろ準備しようか」

 

 

《バクテリア!》

 

 

タクトが肘に緑のメモリを挿入。その姿が変異する。

女性的なスレンダーなフォルムは残しつつも、体の各所は映画に出てくる凶暴なエイリアンのような風貌に。それは武装しているというよりは、原生生物を思わせるような姿。これがバクテリア・ドーパントである。

 

 

飛翔兵(ジャバウォック)

 

 

バクテリアが手を掲げると、上空の空中細菌が能力に反応し、急速進化。

瞬く間に、樹海の上空には数十体の怪物が。手足は人間のようだが、翼を持ち、目はない。大きな口には鋭い牙が生えそろっている。さしずめ亜人といったところだろうか。

 

ハイドもナーブメモリを起動させ、変身しようとする。しかし、その瞬間、真姫の顔と言葉が脳裏をよぎる。

 

 

ダメだ。今は岸戸能晴としての感情は殺せ。憤怒の参謀 ハイドとして果たすべき役割のみを遂行しろ。

気の迷いは死に直結する。この樹海にいる相手はそういう相手、正真正銘の化け物なのだから。

 

 

ハイドはナーブ・ドーパントに変身し、総員に一斉通達。

 

 

 

「ファング討伐作戦、開始」

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

「ハハハッ!どうした、その程度か仮面ライダー!!」

 

 

 

地球の本棚では激しい戦いが展開されている。

ファング・ドーパントはスラッシュ戦の時のように、鞭のような牙で広範囲攻撃を続ける。その一撃は、宙に無数に浮かぶ本棚を一撃で一刀両断。まともに受けたらゲームオーバーは間違いない。

 

仮面ライダージョーカーは本棚に身を隠しつつ、反撃のタイミングをうかがう。攻撃手段が近接格闘のみのジョーカーは、うかつに近づくことができない。

 

 

「クッソが…見てろよ、あの野郎」

 

 

ジョーカーのその呟きが聞こえたのか、ファングはジョーカーの場所を完全に把握。

 

 

「そこだッ!」

 

 

鋭い斬撃が、ジョーカーのいた辺り一帯を切り刻む。

が、しかし。手ごたえがない。

 

次の瞬間、切り刻まれるはずだったジョーカーはファングの背後に現れた。

その気配を察知し、ファングは腕に刃状の牙を生成し、切りかかる。

 

 

が、ジョーカーはその攻撃も飛び上がって回避。さらに、空中に固定された本棚を足場として使い、壁キックのような要領で空間を飛び回る。縦横無尽に動くジョーカーには、攻撃が中々当たらない。

 

 

「ちょこまかと…調子に乗るなよ虫の分際で!」

 

 

ファングはスラッシュに見せた三つ目の戦法を行使する。肩の牙を分離し、凄まじい速度で遠隔操作。その威力もシャレにならない程である。

 

それにより、ジョーカーの戦況は一気に悪化すると思われた。

だが、それでもなお攻撃の回避を続ける。本棚から本棚へと、まるで宙を駆けるように移動し、ファングの攻撃を避け続けている。

 

ファングも空を飛んで追いかけるが、遮蔽物が多く、見失ってしまう。分離した牙には自動追尾機能は無い。つまり、術者の視界から消えたものを追うことはできないという欠点がある。

 

 

「なるほどね、小動物程度の知恵はあるみたいだ。でも、甘いよ」

 

 

ファングは分離した牙を回収し、右手を前に。

 

 

「消えろ」

 

 

腕の付け根から指先にかけて、右腕の全体から夥しい数の牙が、毛髪を思わせるかの如く伸びる。ただ言うまでもなく毛髪と違う点は、その一本一本が絶対的な破壊力を持つこと。

 

ファングが右腕に力を籠める。それに呼応した右腕の白牙は、眼前のあらゆる物体を破壊、蹂躙しながら、広く、遠くに伸びていく。

 

響く轟音。瞬く間に世界は喰らいつくされていく。

 

 

一分と立たず、ファングの目の前のみ、真っ白な空間が広がる。そこだけ空間がかじり取られたようだった。これがオリジンメモリの力、この技を市街地で使われれば、被害者の数はまさに天災クラスだ。

 

しかし、破壊の範囲が広すぎるあまり、自身も何を破壊したかは把握できていない。あれで殺せていなければ、もう一度打つだけだが……

 

 

 

「そう来ると思ったぜ」

 

 

 

ファングの頭上で聞こえる、本棚を蹴る軽快な足音。が、認知した時にはもう遅い。

頭上に現れたジョーカーのかかと落としが、ファングに炸裂。ジョーカーの攻撃が初めて届いた瞬間だった。

 

その勢いで、宙に浮いていたファングは下面に叩きつけられる。

痛がっているというよりは、自分に攻撃が当たったことが不可解な様子だ。

 

 

「見失えば、圧倒的な力で広範囲攻撃。探すのが面倒だったか?」

 

 

着地したジョーカーは、間髪入れずに殴りかかる。

その攻撃は受け止められるが、力で押されているようにも見える。何より、戦闘を近距離に持ち込むことに成功した。

 

 

「分かりやすいな、地球の意思さんよぉ」

 

「下等生物が…!」

 

 

かと言って、ファングに近距離の戦闘手段がないわけではない。腕の牙を剣のように扱い、ジョーカーに神速の斬撃を繰り出す。

 

その速度はさっきまでの攻撃よりも速い。にもかかわらず、ジョーカーは紙一重で回避。二撃目、三撃目もギリギリで避ける。ギリギリの回避を続けている、それ即ち、完全に見切っているということ。

 

 

ここで話をアラシの修行のことに変えよう。

 

アラシはメモリーメモリの力で、圧縮された時間で数年間の修行を行っていた。

その内容は、死と疲労の概念がない空間で、過去に戦ったドーパントとの戦闘。これをひたすら行うというものだった。

 

つまりアラシは、数多の戦闘、敗北を超え、数年間かけることにより、過去の戦闘から得られる経験、学び、技術を100%習得したということになる。

 

 

「“F”。確かにお前の攻撃は速い。でもな…」

 

 

再びファングが斬撃を仕掛ける。その時、アラシの目にはその攻撃と数年間の戦闘の記憶が重なって見えた。

 

 

「ラピッドの方が───疾い!!」

 

 

蛇の身体構造が可能にする、ヴァイパー・ドーパントの鞭のような音速の蹴り。あれに対処することを考えれば、ファングの攻撃は遅くすら感じる。

 

さらに、ファングの斬撃。その技の精度は、ファーストことスラッシュ・ドーパントに比べれば何段も劣る。

 

ジョーカーは続けて攻撃を問題なく躱していく。

ファングの攻撃には焦りが見え始め、少しずつ精度も落ちていっているのが分かる。

 

 

「図に…乗るなッ!」

 

 

そして、ファングのプライドから生まれた一瞬の隙。そこにジョーカーは拳を叩き込む。

 

硬い。その肉体はまるで鋼の鎧を纏っているかのような強度を見せる。だが、

 

 

「ハァッ!!」

 

「ガァッッ!!」

 

 

ただ殴るのではない。拳に溜めたエネルギーを、インパクトの瞬間に解放することで、打撃とは別の衝撃波を加える。そしてその攻撃は防御力を無視して、確実にダメージを与える一撃。

 

 

軟質ボディ(コーヌス)攻略で得た発想だ!食らえ!!」

 

ファングの腹部に渾身の一撃が突き刺さる。衝撃は体を貫通し、ファングの体を吹っ飛ばすに留まらない。衝撃をモロに喰らい、ファングは思わず膝をついた。

 

 

「僕に…膝をつかせただと…!?」

 

 

追撃に迫るジョーカー。その瞬間、ファングの姿が消えた。

だが、ジョーカーは動じない。

 

 

「そこだ!」

 

 

背後に蹴りを放つと、偶然か、打ち合わせたかのようにそこにファングが現れる。

 

「ッ!?」

 

 

空中で体勢を変え、なんとか回避。再び遠距離に持ち込もうと、ファングは浮遊するが、それも予測したジョーカーは本棚を足場に強引に間合いを詰めてくる。

 

ファングは一気に加速し、触手と分離牙を展開して攻撃を仕掛ける。そしてジョーカーも自分から突っ込んでいき、本棚を足場として、加速するファングとの戦闘が始まった。

 

常人の反応速度を優に超えた闘い。その上、ファングの攻撃は全て必殺性を持つ。それでも、ジョーカーは互角以上に闘いを繰り広げられている。

 

理由は簡単。まず全ての攻撃が必殺技、というのはギャロウ・ドーパント。触手と手裏剣の攻撃はサイバー・ドーパントと共通している。アラシからすれば、闘い慣れた相手とも言える。

そして奴の攻撃は触手攻撃、斬撃とバリエーションが乏しい。四属性を組み合わせるエレメント・ドーパントに比べれば対応も容易というものだ。

 

 

「そこだっ!!」

 

「バカな…動きが読まれている…?」

 

 

さらに、未来予知をするプリディクション・ドーパントとの闘いでは、予知される未来さえも捉える予測能力が必要とされた。それに加え、今のアラシ、仮面ライダージョーカーには11人分の情報処理能力、反応が備わっている。

 

 

「俺はお前には勝てない。だが…

俺達が積み上げてきた全部なら!お前を倒せる!!これがお前が舐めてきた、人間の力だ!」

 

 

ジョーカーの攻撃がファングの牙を弾き、頭部に炸裂。吹っ飛ばされこそはしないが、確かにダメージになる一撃を与えた。

 

 

「人間の力…だと?!あり得ないんだよ。人間ごときが、僕に歯向かえるなんて!」

 

 

ファングの攻撃が激しさを増す。それでも、ジョーカーも攻撃を捌きつつ互角以上に立ち回る。

だが、有効打となる攻撃が決まらない。確かな一撃を叩き込むには、見せる隙が余りにも小さすぎる。このままではジリ貧だ。

 

 

(クソ…!なんかねぇのか、コイツに隙を作らせる方法が…!)

 

 

 

________________

 

 

 

同刻。

“憤怒”のメンバーが、ある一人の人物を中心に広い円を描くように取り囲む。空にはバクテリアが作り出した飛翔兵。逃げ場はない。

 

そしてその中心にいるのは、士門永斗───現実世界の“F”だ。

 

 

「今取り込み中なんだ。邪魔…しないでくれるかな!」

 

 

“F”の瞳が白く輝いたかと思うと、ファングメモリがひとりでに手の甲の生体コネクタに刺さり、その姿をファング・ドーパントに変える。変身時に発せられた衝撃は、不可視の斬撃となって辺りの大木を切り落とし、重力のままに地面に倒れた大木が地響きを鳴らした。

 

 

それが、開戦のゴングだった。

 

 

「行くぞ!」

 

 

憤怒の11番手、リキッド───ウォーター・ドーパントは体を液状化させ、槍を構えて真っ先に突っ込んでいく。ファングの斬撃は凄まじい攻撃力。しかし、物理攻撃である以上、流動体を捉えることは不可能。攻撃はウォーターの体をすり抜ける。

 

そして、攻撃の後に生じる隙を見計らい、実体化したウォーターの刺突がファングに刺さる。だが、鎧のような皮膚を貫くには至らない。

ファングは無論、ウォーターが実体化したその瞬間に再び攻撃を仕掛ける。だが、攻撃はまたしても不発に終わった。今度は、盾のようなものに弾かれて。No12ソリッド───ダイヤモンド・ドーパントの能力で生成された、ダイヤの盾だ。

 

 

殲滅兵(リントヴルム)

 

 

今度はバクテリアの能力で空気中の微生物が異常進化。ドーパントに変身した状態でのみ生み出せる、彼女の最高戦力。目は無いが、四つの首と大きな口、牙を持つ巨大な蛇、殲滅兵(リントヴルム)を生み出す。あくまで微生物の進化の延長線であるため火を吐いたりはできないが、その巨大な体躯と獰猛さから繰り出されるのは純粋な「暴力」。唸り声をあげ、四つ首が一斉にファングへと襲い掛かる。

 

 

「その程度…!」

 

 

数秒と立たないうちに殲滅兵(リントヴルム)はこま切れと化す。しかし、その数秒で喰らわせたダメージは大きい。そして、それを予期していたハイド───ナーブ・ドーパントが、突如としてファングの目の前に現れる。クラフトメモリの力で改造されたこの“樹海”には、憤怒のメンバーしか知りえない抜け道、仕掛けが多数存在する。

 

 

「まずは挨拶代わりっスよ!」

 

 

ナーブはファングに拳を突き出す。神経線維で構成されたその拳は、ファングに届くまでに槍のような形状に変形。

 

 

「ガハァッ!!」

 

 

さっきよりも深く刺さった一撃は、ファングの体を数メートル吹っ飛ばした。インパクトの瞬間に流した高圧電流…仮に生身の人間が喰らえば一瞬で消し炭になるほどの強さなのに、ファングは体から少し煙が出ている程度で、大したダメージが残っている様子もない。こんな怪物の相手をするのかと思うと、ナーブの口から自然とため息が漏れる。

 

 

「まぁ、仕方ないっスね。人類の未来…なんてことを言うつもりは毛頭ないっスけど、“ジブン達の怒り”のために…消えてもらうっスよ、士門永斗」

 

「どいつもこいつも…調子に乗るなよ、虫の分際で!」

 

 

 

________________

 

 

 

地球の本棚。

 

 

 

変わらず、ファング・ドーパントと仮面ライダージョーカーの激闘が繰り広げられている。

戦況にも変化がなく互いの力が拮抗しており、ファングは距離を取ろうとするとジョーカーが間合いを詰めて対応。これを繰り返している。

 

体力も11人分あるとはいえ、このままでは分が悪い。

 

しかし、その時だった。

 

 

「ッ!」

 

「何…?!」

 

 

ジョーカーの蹴りが、ファングの体をかすめた。さっきまでなら確実に避けられていた攻撃だ。攻撃を仕掛けた側も受けた側も、驚きを隠せない。

 

 

(反応が鈍っている…これなら!)

 

 

ジョーカーは温存していた力を開放し、攻撃をより速く、鋭くさせ、ファングを追い詰める。

 

アラシの読みは当たっていた。現在、ファングは精神世界だけでなく現実でも戦闘を行っている。言わば、スマホゲームをしながら喧嘩をするようなものである。必然的に動きは鈍る。

 

ファングの反応が明らかに遅れだした。そして、そこには確かな隙が生まれる。イケる。今なら…!

 

ジョーカーはありったけの力を左腕に込め、ファングの胴体に叩き込んだ!

ファングの体を貫通する衝撃。体が軋む音。拳に伝わる、何かを砕く感触。今度こそ確実に、ジョーカーの攻撃が“決まった”。

 

 

「まだだ」

 

 

この好機を逃す手はない。次は右腕、蹴り、といったように全力の一撃を加え続ける。

 

 

「バカな、この僕が…!」

 

 

ファングの体にヒビが入り、攻撃を受けるたびにヒビは広がっていく。そして、何十発目かの全力の一撃がファングの体を吹っ飛ばした。

 

本棚に激突し、ファングの勢いが止まる。常軌を逸した衝撃で地球の本棚の空間が歪み、地面の無いはずの空間で白い土煙のようなものがファングの姿を隠す。

 

しかし、奴の気配は依然としてそこに感じる。

トドメを指すのは今だ。ジョーカーの行動に迷いは無い。

 

 

《ジョーカー!マキシマムドライブ!!》

 

 

ドライバーからメモリを抜き、ベルト横のマキシマムスロットに装填!メモリのエネルギーが仮面ライダージョーカーの左腕に蓄積されていく。

 

 

「ライダーパンチ!」

 

 

文字通り全てがこもった拳は、さながら紫の流星のように直線を描き、煙の中のファングに向かっていく。

そして、その必殺はファングの胸に突き刺さり、先程を優に超える衝撃が、今度は煙を消し飛ばした。

 

 

「ハハ…驚いたよ。まさか君達人間が……ここまで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愚かだなんてね」

 

 

その一言で、アラシに襲い掛かったのは途方もない恐怖、そして言うまでもない__圧倒的な絶望。

違和感はあった。炸裂したはずのライダーパンチ、あれは今までとは明らかに違う。「刺さった」というより、「当たった」いや、「止められた」といった言葉の方が妥当だ。

 

信じたくはない。だが、信じざるを得ない。

 

 

「愉快を通り越して苛立ちすら覚えるよ。まさかこうも同じ手に引っかかるなんて。

それに、君の推理の中で言っていただろう?僕たちオリジンメモリは神に等しい存在。絶対的な力を持ち、そして……“不変”だ」

 

 

さっきまでの戦闘で与えたファングの。傷、体のヒビが消えていく。ビデオの早戻しのように、数秒でその体は戦闘前のものに戻ってしまった。

 

そう。信じたくはなかった。これまでの攻撃が“全く効いていなかった”なんて。

 

だが、アラシも薄々予感している。否、予感できてしまった。

絶望はまだ終わらない。

 

 

ファングの姿が変化していく。体の棘が伸び、鋭さと禍々しさを増す。さらに、背中から二本、腰から二本、腕のようなものが伸びる。腕というには長く、恐竜の肋骨のような形状をしている。そして先端にはそれぞれ一本の巨大な爪。

 

 

「いい絶望だよ。これだから人間で遊ぶのはやめられない」

 

 

そのうち一本がジョーカーの首を掴み、吊るし上げる。

肌からも感じる、圧倒的な力。そのときアラシ含め、その中の全員がこう感じてしまった。

 

 

「レベル2。“誰が僕を狂わせた(ダンス・マカブル)”」

 

 

 

勝機は───完全に潰えた。

 

 

 

 

ヒュンと空気が切れる音が聞こえると、次の瞬間にジョーカーの体は意識も追いつけないような速度で吹き飛び、本棚に激突、粉砕。しかし勢いは止まらず、背中に痛みが走るよりも速く次々と本棚を貫通していく。

 

レベル2になって生えた触手が、ジョーカーを投げ飛ばしたのだ。そう、"投げただけ”で、この威力。

 

体を起こすと、間髪入れずに別の触手が迫る。肋骨のような刺はそれぞれ伸び、個別にジョーカーへと襲いかかる。

 

 

「ッ……!」

 

 

とっさの回避行動で、なんとか攻撃を全て避けきる。

だが、あの触手は一本ではない。残りの三本も同様に迫り、追撃を浴びせる。逃げても逃げても、遮蔽物なんか無いように触れる全てを破壊し、速度を上げながらジョーカーの後を追い続ける。

 

逃げ切ることは…不可能に他ならない。そして、ついに一本の触手の先端がジョーカーの腹部に突き刺さる。

 

声にならない痛みと叫び声を気にとめることなく、他の触手は迫り来る。体が思うように動かない。痛みが、力が、恐怖が、絶望が、その全てが体を縛り付ける。

 

 

「ち…くしょう……!」

 

 

なされるがまま、ジョーカーの体は四本の触手に絡め取られた。触手は縮み、ジョーカーの体を持ったままファングのもとへと戻っていく。

 

ジョーカーを捕らえるまでの一連の動作で、ファング自信は一歩たりとも動いていない。さっきまでの攻防は茶番だった。否が応でも、その事実が残酷に突きつけられる。

 

 

 

「理解したかい?例え僕の力が不完全でも、君達の浅知恵じゃあ僕には届かないし、十数年なんて瞬きみたいな時間で培ったもの程度で僕は倒せない。

 

君達ムシケラがいくらお涙頂戴の絆や友情を見せたところで、僕に一矢報いることすら出来ないんだよ!」

 

 

既に崩壊しかけている地球の本棚に、“F”の高笑いが響き渡る。この力じゃ、勝つことどころか、歯向かうこともできない。アラシはこの瞬間に理解した。

 

それでも…

 

 

 

 

 

「うる…せぇ……!!」

 

 

 

 

 

例え理解するしかなくても、納得する訳には、いかなかった。

 

 

 

「俺達は永斗を取り戻す……!お前をぶっ倒して…皆で帰るんだ…空助が作った……俺達の居場所に!だから…諦めるわけには…いかねぇんだよ!!」

 

 

 

それを聞いたファングの笑い声が止まり、不気味な静寂が訪れる。ファングの視線は冷たく、心から辟易しているのが伝わってくる。すると、少し声に笑いを含ませ、言った。

 

 

「助ける…ねぇ。よくそんな勝手なことが言えたもんだ」

 

「んだと…!?」

 

「分からないみたいだから教えてあげるよ。士門永斗は……」

 

 

ファングが笑いながら何かを言おうとしたその時。

突如、ロストドライバーに装填されているジョーカーメモリが黒く輝きだす。そして、ファングの掌の生体コネクタも、それに呼応するように白く輝いている。

 

 

「これ…は…?」

 

「まさか……」

 

 

ファングも何が起こっているのかは理解できていないようだ。しかし、どことなくその声には動揺が見える。

 

輝きが強まり、アラシの意識が光の中に吸い込まれていく。それを見たファングの中で想像が確信に変わり、怒りを露わにした声を発する。

 

 

「やっぱり…“J”…!千年振りに動いたと思えば、また邪魔するつもり…!?」

 

 

誰かが笑った。そんな気がしたかと思うと、アラシの意識は完全に体から抜けた。精神世界の、さらに奥へと入っていく感覚。地球の本棚よりも、もう一つ深層の世界。

 

 

 

 

 

 

 

気づけば、さっきまで白い空間にいたはずのアラシは、真っ黒な空間にいた。

 

そして、視界に入った自分の手は、仮面ライダージョーカーの黒いアンダースーツではなく、変身前の生身のもの。服装も変身前の状態に戻っている。

しかし、さっき受けた腹部への攻撃で負ったはずの傷も、戦闘での疲れも消えている。現実と地球の本棚での感覚が違うように、ここもまた別の世界。いうなれば、“精神世界の中の精神世界”。

 

いるのはアラシだけで、ファングはいない。だが、アラシの中には、一緒に入ったμ’sの10人の意識がはっきり感じられる。

 

いや、違う。アラシだけではない。アラシはこの奥に誰かいるのを感じた。そして、それが“誰”なのかも。

 

なんでここにいるのかは分からない。こうしている間、自分の体がどうなっているのかも分からない。それでもアラシは、アラシの中にいる皆が、“そいつ”に会うために力の限り駆けた。

 

 

そして、いた。走り抜けた先に、その姿はあった。

 

 

 

「永斗!!」

 

 

 

直感的にわかる。座り込んでおり、こちらに顔を向けていないが、あれは士門永斗だ。“F”でもない。間違いなく、アラシの相棒でμ’sのマネージャーの士門永斗だ。

 

駆け寄ろうとするが、そこには見えない壁、いや、永斗を囲む透明な箱があり、それを阻む。

 

だが、アラシは箱を叩き、永斗に大声で呼びかけた。

 

 

「永斗!お前を助けに来た!!“F”の呪縛から逃れるには今しかない!一緒に帰るぞ!」

 

 

アラシにとってはあまりに久しぶりだったせいだろうか。嬉しさみたいないろんな感情がごっちゃになって、上手く言葉が出ず、不器用な感じになってしまった。

 

他の皆の喜びや、安堵を内から感じる。ここで永斗を連れ出せば、助け出せる。そう思っていた。

 

 

 

 

 

でも、帰ってきたのは、思いもしない言葉だった。

 

 

 

 

「だめだ」

 

 

「…え……?」

 

 

 

聞き間違いかと思った。でも、すぐに違うと分かった。

永斗はこちらを見ないまま、続ける。寸分の希望すらも感じない、そんな声で。

 

 

 

 

 

 

「僕はここから出ない。君達とは………一緒に行けない」

 

 

 

 

 

 

 




はい。終わりませんでした。嘘つきました。
サブタイトルもしれっと変えました。スイマセン、次こそVSファング終わらせるんで。
てか、久しくF編やってるとラブライブの二次創作だってことを忘れてしまう。早く書かねば…

次はホントに二次試験終わってから…あと一、二か月後になります。頑張りますので、どうか待っていてください……

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!
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