ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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完全復活!146です!受験終わったで!&受かったで!自由だぁぁぁ!!

はい、テンション戻します。
今回でEという少年は完結です。長い。ファングともついに決着!


ここで一つ謝らせていただきたいことがあります。

今回、いくつかの頂いた感想が、運営対処によって消されてしまいました。
原因は感想欄でのドーパント案のご提供でした。メッセージおよび、活動報告への誘導を怠っていた僕の責任です。申し訳ありませんでした。

今度からはメッセージか活動報告にお願いします。案への感想もきちんと送らせていただきます。

至らない作者ですが、今後ともラブダブルをよろしくお願いいたします。



第38話 Eという少年/士門永斗

 

 

 

 

誰かが言った。

 

 

「出会うことだ。好きな女でも、競い合うライバルでも、何でもいい。

コイツになら全てを託せる。そう思える相手に出会って初めて、人間は進化できる」

 

 

彼には何もなかった。生まれた時から隣には誰もいない。

 

手を伸べてくれた人の背中は遥か遠く。

 

そんな、彼の前に現れたのは_____

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「どういうことだよ。永斗……!」

 

「そのままの意味だよ。僕はここから出るつもりは無い。君達とは……ここでお別れだ」

 

 

 

オリジンメモリの意思“F”が目覚め、永斗の体を奪ってから数日。

メモリーメモリの適合者、山神未来のもとでの修行を経たアラシは、μ’sと瞬樹の意思と一体化し、地球の本棚でファング・ドーパントとの激闘を繰り広げていた。

 

レベル2の力を解放したファング。その力に手も足も出ない状況の中、突如としてジョーカーメモリが共鳴し、アラシ達の体だけを別の空間に転移させた。

 

そこにいたのは捕らわれた永斗の意識。瞬間的に理解した。これは、アラシと適合した“J”が仕掛けたもの。永斗の意識との対話の場。

 

しかし、彼はここから出るつもりは無いと言う。

 

理解ができないアラシは、再び問う。

 

 

「分かってんのか!?もうじきお前と“F”が完全に融合する。そうすれば…」

「僕の意識と体は奪われる。そして…受肉した“F”は暴虐の限りを尽くし、大勢の犠牲者が出る。全て承知の上だ。君達に言われるまでもなく、奴は僕が止める」

 

永斗はこちらを見ないまま続ける。

 

「奴と融合する瞬間、地球の本棚にアクセスし、ありったけの情報を“F”の意識に流し込む。不変の存在といえど意思がある以上、過剰な情報量を処理しきれず、システムダウンを起こし、一日は目覚めないはずだ。そうすれば、交戦中の組織のエージェントが僕を捉え、総力を尽くして僕を無力化する。組織が保有するゴールドメモリの力を使えば、それも可能だ」

 

確かに、その方法なら犠牲者を出さずに“F”を無力化できる。永斗が“F”と一体化するからこそ可能な、唯一の勝機。しかし、それは___

 

 

「待てよ…それじゃ、お前はどうなるんだよ!?」

 

「決まってるだろ。融合した僕の意識も同じように、死ぬこともなく永遠に暗闇をさまようだけだ」

 

 

アラシは、言葉を失った。

 

死ぬこともなく、自由もない。永遠の監獄。それはもはや生きているとはいえない。生命としての意義は、無いに等しい。

 

 

「何でお前がそんなことをしなきゃいけないんだ!お前は“F”に利用されただけ、あの事件を起こしたのだって…」

「僕じゃない。そう言いたいんだろう」

 

 

永斗は嘲笑うような声を出し、立ち上がる。そしてこちらを向き。

 

 

ドン!

 

 

細い腕で、二人の間を隔てる壁を叩いた。

無音の空間にその音が響く。永斗が初めて見せたその顔は___

 

 

怒り、絶望、そして憎しみに歪んでいた。

 

 

「僕だってそう信じたかった。“僕は何も悪くない”魔法の言葉だよ。それを言えば、過去から目を背け!何も疑問に思うこともなく!何も考えないで済む!!

 

でも違ったんだ。この街を、この世界を泣かせているのも…人々を苦しめているのも…あの日、大勢の命を奪ったのも……冬ちゃんを殺したのも……!全部僕なんだ!!」

 

 

その瞬間、アラシとその中の10人の意識に大量の映像が流れ込む。

ガイアパーツの回収に行った時と同じだ。

 

それは、永斗の記憶。ガイアメモリを製造していた、組織の最高幹部“怠惰”としての記憶。

 

アラシ達はすべて理解した。彼の過去、苦悩、そして__絶望を。

 

オリジンメモリはあくまでも適合者の感情に反応する。あの日、永斗が絶望したことで“F”が呼び覚まされた。完全に融合していない時、つまりまだ永斗の意識が残っているにも関わらずあの事件が起きたということは、絶望した永斗が心のどこかで、それを望んでいたから……

 

 

「分かっただろ。僕たちがいままで戦ってきた怪物を作ったのも僕だ。

僕はそのことに感付いていながら、向き合おうとしなかった。僕は君たちと一緒にいる資格なんてない。僕は怪物よりも醜悪な…悪魔なんだよ!

僕はもう死んで詫びることもできない。これしかないんだ、これが僕の償いなんだ!

だからもう……放っておいてくれ!!」

 

 

 

永斗の叫びに応えるように、永斗を囲む箱からファング・ドーパントの牙がアラシに襲い掛かる。永斗に攻撃の意思はないのか、牙は頬をかすめこそすれど、当たることはない。

 

しかし、それは永斗と“F”の融合がここまで進んでいるということ。

 

今すぐ永斗を取り戻さなければ、取り返しのつかないことになる。そんなことは分かっていた。でも…

 

 

(体が……動かねぇ……?)

 

 

力の入れた方向に体が動かない。体の中で何かが分裂しそうな感覚。まるでリモコンが壊れたラジコンのように。

原因はすぐにわかった。それは、“心の揺れ”だ。

 

アラシの体にある合計11人の意識は、“永斗を助けたい”という思いで一つになっていた。それ故にあれほどのシンクロを実現させていた。

 

しかし、助けなんて求められてないと知り、自分たちの行動に疑問が生じた。そうすれば穴が広がっていくように、今まで閉じられていた、恐怖、不安といった感情が一つになっていた心をかき乱す。

 

 

「クソ…!迷ってる暇なんてねぇんだ!俺は…永斗を助けるって決めたんだ…だから……!」

 

 

しかし、アラシの心に生じた迷いは消えない。

 

永斗は決して無感情な人間ではない。でも、いつも見せるその感情は、どこかお茶らけていた。無理をしているようにも見えた。相棒でありながら、誰よりも一緒にいながら、アラシは永斗の本当の顔を見たことがないのかもしれない。

 

そして今、初めて相棒に拒絶された。

 

混ざった心が揺らぎを増幅させ、それは波に変わっていく。

 

 

(そうか、俺…アイツのこと、何も知らなかったんだ…)

 

 

自分への憤りが、さらに心を乱す。

精神世界での存在が保てない程に___

 

 

「もう君達も限界のはずだ。今すぐここから消えてくれ。そうすれば…もう君たちが傷つくことはない…もう嫌なんだ!僕のせいで、誰かが傷つくのは!!」

 

「そんなこと…」

 

「あるんだよ!“僕の本”から出てきた影がずっと言ってくるんだ、“お前のせいだ”、“幸せを返せ、命を返せ”、“お前なんて、いなけりゃよかったんだ”って…その通りだよ。僕がいなければ“怠惰”はそこで潰えてた、怪物はあれ以上増えなかった、“F”も目覚めなかった、冬ちゃんだって幸せに生きられた!君たちをこんな戦いに巻き込まずにすんだ!!全部、僕なんかがいたせいで、掛け替えのないものが壊れていく!!」

 

 

その言葉によって、乱れた心は一層歪んでいく。もう存在を保つことはできない。

存在が消えそうな中、動かない体を無理やり動かし、顔を上げる。

 

その時に見えた永斗の顔は、さっきと同じ。

 

でも_______

 

 

 

 

「僕は…生まれちゃいけなかったんだ……!」

 

 

 

 

その叫び、その顔の奥には____

 

 

言葉にならない、悲しみがあった。

 

潰れてしまいそうな、心があった。

 

 

 

本当に、迷っている暇なんてなかった。

 

大切な相棒が、仲間が、友達が、目の前で壊れそうな心を震えさせて、悲しみに満ちた顔で、己の存在を、すべてを嘆いている。

 

それを救ってやれずして何が相棒だ、何が仲間だ、何が友達だ、笑わせるな!

 

助けなんて乞われてなくても、死なせてくれって叫んでいても……

 

“生きてほしい”って思うことに、理由がいるか!!

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

叫びが木霊する。迷いも全て消し去っていく。再び心が一つとなり、存在が安定し始めた。

 

覚悟を決めたような目線を永斗に送ると、アラシは伸びてきたファングの牙を掴み、

 

 

 

自分の腹に突き刺した。

 

 

「ッ…!ガハァッ!!」

 

 

うめき声と共に放たれた吐血が、精神世界に音を立てて飛び散る。

アラシだけじゃない。中にいる全員に、その激痛が走る。

 

 

「何を…!?」

 

「うるせぇ。こんくらいじゃ死なねぇよ。

これは俺たちの意思、自分への罰だ。そんで……」

 

 

アラシは牙を腹部から抜き、拳を握り固める。そして…

永斗を囲む箱を、思いっきり殴りつけた。

 

拳、腹部に再び激痛が走る。箱には傷一つつかない。

 

 

「クッソ…まだだ!!」

 

「何してるんだ!その傷でそんな無茶したら…いくら精神世界でも!」

 

「黙ってろ、引きこもりニート!お前が出る気がねぇなら、無理やりでも引きずり出す!

何を反省しただけで満足してんだ!人生そんなに甘くねぇんだよ!!」

 

 

ガンガンと殴りつけるが、箱は微動だにしない。

 

 

「やめてよ!言っただろう、もう僕のせいで誰かが死ぬのは嫌だって!」

「るせぇ!そんなに死んでほしくなけりゃ出てこい!」

「何その無茶苦茶理論!?」

 

 

思わず突っ込んでしまった永斗。その一瞬だけは、アラシ達の知る、いつもの永斗だった。

 

 

「ほら見ろ。やっぱり死にたくねぇんじゃねぇか」

 

「………うるさい…!君たちに何が分かるんだ!」

 

「分かんねぇよ。俺たちはお前のこと、なんも知らなかった。怖かったのかもしれねぇな、知ればお前が遠くに行ってしまう気がして。だからこそ…知らなきゃいけねぇんだ!」

 

 

永斗は耳を塞ぎ、再び目を背ける。アラシの言葉が聞こえないように。アラシの姿を見ずに済むように。

 

 

「確かに、お前の言う通りかもしれない。あの野郎が目覚めたのも、ガイアメモリのことも、俺たちが戦ってんのも、お前が言うならお前のせいなんだろう。でもお前が生きた証は、それだけじゃねぇだろ!?」

 

 

永斗は黙ってうつむいたまま、答えない。

だが、それで構わない。永斗を救うため、今の思いを届けるだけだ。

 

 

「これだけは言える。少なくとも、俺はお前に救われた!」

 

「……え…?」

 

 

永斗が顔を上げる。さっきまで自分のことで精一杯で、アラシの顔を見ていなかった。永斗が見たその顔は…笑っていた。

 

 

「空助がよく言ってた。“出会うことだ。好きな女でも、競い合うライバルでも、何でもいい。コイツになら全てを託せる。そう思える相手に出会って初めて、人間は進化できる”ってな。俺には誰もいなかった。空助も、隣にいるようで遥か遠くにいた。ずっと欲しかったんだ、横に並び立ってくれる“相棒”が。

 

最初お前に会ったときは、正直クソ野郎だと思ってた。常識は無い、人の情は無い、記憶も無い、おまけに働かないと来た。いつ追い出してやろうかってずっと考えてたよ。まぁ、今でもたまに考えるけど。

 

でも、違ったんだ。お前は俺にないものをたくさん持ってて、たくさんのことを教えられた。何度も助けられた。お前のおかげで、俺は前に進めた。

 

 

ありがとな、永斗」

 

 

「ッ…!なんで…なんでそんなこと言うんだよ!僕は…僕は…!」

 

 

その時だった。

 

殴り続けていた箱の側壁に、ひびが入った。痛む拳と悲鳴を上げる全身を奮い立たせ、さらに殴り続ける。

 

 

「これで分かっただろ!良いことも悪いことも、お前がやったことは消えねぇんだ!それは償いなんかじゃねぇ!お前が消えてできることなんざ、何一つねぇんだよ!」

 

 

拳を叩きつけるたびにヒビが広がっていく。

 

永斗の目から…涙がこぼれる。

 

 

「“いなけりゃよかった”だと?ふざけんな!そんなこと考えてる暇がありゃ、今!お前が生きて何ができるのかを考えろ!

 

“士門永斗”は…今ここに居んだろうが!!」

 

 

 

全ての力を込めて、拳を叩き込んだ。

ヒビが瞬く間に全体に広がり、箱は___

 

 

木っ端微塵に砕け散った。

 

もはや、二人を隔てるものは何もない。

 

 

 

 

その目に涙を溜めた永斗は、座り込んだまま呟く。

 

 

 

 

 

「……僕は、どうすればいい……?」

 

「そんぐらい自分で考えろ馬鹿。まぁでも、どうしても一人じゃ無理だって言うんなら、穂乃果達も手伝ってやるってさ。

 

俺も…力を貸してやるよ。半分だけな」

 

 

アラシが、いや、仲間の皆が、永斗に手を差し出す。

 

 

 

 

 

___あぁ、クソ。何でだよ。

 

 

 

 

もう二度と会えないと思ってた。真実を知れば、拒絶されると思ってた。僕はもうずっと、独りだと思ってた。

 

 

もうこんな気持ちにはならないと思ってた。

 

ダメなはずなのに。罪を犯した僕が、こんなことを望んでいいはずがないのに…

 

 

 

 

“皆と一緒にいたい”だなんて____

 

 

 

永斗が手を伸ばそうとした、その時だった。

 

 

虚空から現れた黒と白の無数の腕が、永斗を捉え、空間の奥へと引きずり込む。

 

 

「永斗!」

 

 

アラシは精一杯手を伸ばす。だが、アラシの体もこの空間から引きはがされようとしていた。

 

 

 

 

「待ってろ!絶対、助け出す!だから……!」

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

気が付くと、そこは崩壊しかけた地球の本棚。目の前には、頭を押さえたファング・ドーパントがいた。

 

アラシの姿は仮面ライダージョーカーに戻り、さっきの腹部の傷がなくなった代わりに、先の戦闘で受けた傷が戻っている。

 

 

ジョーカーの体は触手から解放され、ファングの前に倒れていた。

 

 

「…興覚めもいいとこだ。“J”、余計なことを」

 

 

ファングとジョーカーが体勢を戻し、再び構える。

 

 

「遊びは終わりだ。今すぐ僕の前から消えろ!!」

 

 

ファングが四本の牙腕をジョーカーに伸ばす。先ほどよりも威力も速度も増した攻撃。しかし、ジョーカーは避けるそぶりを見せない。

 

 

「ハハッ!どうした、もう避ける力もないか!」

 

 

そのまま腕は、あたりの遮蔽物もろともジョーカーを蹂躙。空間が歪み、また砂埃のようなものが視界を奪った。

 

 

確実に仕留めた。そう、そのはずだった。

 

 

 

「何……!?」

 

 

 

伸ばした腕に違和感。獲物を貫いた感覚ではない、これは……

 

 

「捕まえたぞ」

 

 

襲い掛かった腕は、ジョーカーの手が掴み、完全に無力化されていた。

 

腕を引き戻そうとするファング。だが、できない。

ファング・ドーパントが、力負けしている。

 

 

「バカな!」

 

「うらぁぁぁっ!!」

 

 

ジョーカーは掴んだファングの牙腕を引きちぎり、それをファングに放り投げる。一瞬視界が奪われ、ジョーカーを見失った。

 

次の瞬間にはジョーカーは懐に入り込み、ファングの胸部、腹部に連撃を叩き込む。

 

ひるんだ一瞬で今度は顔面にキックを決め、最後に拳がファングの体に炸裂、そのままファングごと地面に叩きつけた。逃げ場をなくした衝撃がそのままファングに襲い掛かる。

 

 

「ッ…!ガハッ……!」

 

 

傷はすぐに再生する。しかし、ジョーカーの連撃は止むことがない。

 

どういうことだ、さっきまでレベル2の性能には手も足も出なかったはずだ。だが、今のジョーカーのスピード、パワーは先程までとは段違い。

 

 

「この力…まさか、レベル2!」

 

 

ジョーカーの能力は“身体強化”ただ一つ。ゆえに、レベル2の能力もそのグレードアップに過ぎない。だが、特殊能力を備えてない分、オリジンメモリの力をすべて、その拳、蹴りに捧げる。それがジョーカーメモリである。

 

 

「答えろ!何故、地球の意思であるお前が、永斗の体を使って虐殺を起こした!それが地球の望みだというのか!」

 

「だとしたらどうする!」

 

 

ファングの反撃が、ジョーカーを吹き飛ばす。しかし、一瞬たりともひるまず、ジョーカーは反撃の反撃に転じる。

 

 

「決まってんだろ!人々を、俺たちの世界を泣かせる奴らは、例え地球だろうが黙らせる!」

 

「はッ!面白いが不正解だ!これは“僕自身”の意思!人間という使い勝手のいい玩具を使った、最高の暇つぶしさ!

 

考えたことがあるか?何千年も、下等生物を導くという下らない使命を押し付けられ、自由のないままシステムとして存在するだけの時間を!行きついた先は“怠惰”だよ。僕は一度使命を放棄し、僕が司る“絶望”という感情を求めるままに力を与えた。するとどうだ!実に愉快で、興奮する体験だった!」

 

「オリジンメモリの力を…故意的に悪用させたってことか!」

 

「その通り。暴走させた時も中々興の乗る面白さだった。でも、300年くらいで飽きてきてね。満足できなくなっていたんだよ。君ら風に言うと、テレビゲームを実際に体験したくなった…ってとこかな?するとどうだ、扉から体が降ってきた!しかも相性は最高の体が!僕はこれを使って遊ぶんだ、心が躍るだろ!?」

 

 

ファングの四本の腕から放たれた衝撃波が、再びジョーカーを吹き飛ばし、その体は本棚に激突した。

 

 

「ま、君らには理解できないだろうけどね」

 

 

レベル2になったとはいえ、まだ力の差は大きい。何より、ダメージが一切通らないという問題が残ったままだ。

 

だが、それは何の理由にもならない。

 

ジョーカーは立ち上がる。さっき約束したんだ、絶対助けるって!

 

 

「もう…終わりか…!?」

 

 

それを見たファングの目つきが変わる。嫌悪か、それとも別の何かか。

しかし、これだけはわかる。さっきまでの余裕を見せていた態度は、消えた。

 

 

「いい加減鬱陶しいにも程がある。

いいよ、もうこれで、本当に最後だ」

 

 

レベル2になって生じた四本の腕がファングの体に収束し、ファングの体が浮き上がる。骨格が変形していき、全身の牙は一部が消滅し、一部はさらに鋭さを増す。胸部に蒼い眼球のような宝玉が現れ、全身を走っていた蒼い傷跡も消滅し、獣に近しい姿から、より人に、いや__神に近い姿へと変わっていく。

 

見る者全てに絶望を与える、その姿の名は____

 

 

 

「レベル4、“僕は何も知らない(イノセンス)”」

 

 

 

 

刹那、

 

 

 

空間を切り裂くような衝撃と共に、白い流星がジョーカーを貫く。

 

 

「か…ッ…!」

 

 

背後に現れたファングは、鋭い爪と刃が備わった手甲をジョーカーに突き出す。防御行動は意味をなさないことが直感で分かる。

 

なんとか攻撃を回避。その衝撃は、向こう数十メートルの障害物をすべて消し飛ばした。

 

距離を詰め、ファングにパンチを繰り出す。

しかし、その鎧はおおよそ地球に存在しているとは思えない硬度。一切傷がつく気配もない。

 

手から放たれた衝撃波で、ジョーカーの体は空中に放り出される。

 

ファングは肩から牙を伸ばし、ジョーカーめがけてスイング。

 

 

斬ッ!

 

 

放たれた斬撃は文字通り空間を切り裂き、一直線の爆発を引き起こす。

その斬撃をもろに喰らったジョーカーは、そのまま自由落下。落ちてくるジョーカーにファングは蹴りを叩き込み、ジョーカーは本棚を粉砕しながら彼方まで吹っ飛んだ。

 

当然のように飛んで行ったジョーカーの先回りをするファング。

 

攻撃を受けて無防備な状態のジョーカーに、連撃を叩き込んでいく。

 

 

 

ダメだ___勝てない。

 

いくら何でも強すぎる。自分がどうして人の形を保てているのか、不思議でたまらない。変身状態も、ほとんど気力で維持しているに過ぎない。

 

諦めてたまるかよ。そう心の底から思っていても、二秒後に死ぬ未来しか見えない。

 

クソ……!アイツを、永斗を救えないのか!アイツは最後、確かに助けを求めてた。そして何より、あの目は俺達を信じてくれてた!それなのに…!

 

 

『無様だな』

 

 

何だ…?走馬燈にしては、随分と失礼だな。

 

 

『啖呵切った割には、“F”にも勝てねぇのか』

 

 

うるせぇ…負けるつもりはねぇよ。ここで死ぬつもりも毛頭ねぇ…!

 

 

『ほぅ、心意気だけは本物か。気が変わった。

全部をひっくり返す“切り札”、お前に貸してやるよ。

 

後はお前次第だ、失望…させんじゃねぇぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連撃が止む。すでに地球の本棚が崩壊を始めており、空間にヒビが入っている。

ジョーカーは、動かない。生命力は微塵も感じない。しかし、なぜか変身状態は保ったままだ。

 

死んだか…?

 

ファングに疑念がよぎる。これまで何度も立ち上がってきた、今回もそうかもしれない。

だが、だからなんだという話だ。起き上がってきたところで太刀打ちすらできない。放っておいても、地球の本棚の崩壊と共に、コイツは消滅する。

 

あとは現実に戻り、交戦中の“憤怒”のメンバーを血祭りにあげれば終わり。

 

そうすれば、待ち焦がれた自由だ。嫌が応にも笑いがこみあげてくる。

 

 

ファングは高笑いを響かせると、この空間から去ろうとする。

 

が…

 

 

「…!」

 

 

一瞬、ジョーカーが動いた気がした。だが、改めて見るとさっきと何も変わってない。

気のせいか…?いや、

 

ファングは腕の牙を構える。

 

この男は危険だ。ここで確実に…仕留める__

 

 

 

ガッ!

 

 

 

首筋めがけて真っすぐ振り下ろされた刃。それは…

 

ジョーカーの手に受け止められ、粉々に砕かれた。

 

 

「な……そんな…!」

 

「やかましいんだよ、気持ち悪い笑い声響かせやがって。嫌でも目が覚めるわ」

 

「お前…本当に人間なのか!?」

 

 

ジョーカーはまたしても立ち上がる。

そして、ファングが初めて見せる、明確な“恐れ”。

 

 

「人間だよ。お前の言う、矮小な下等生物のな!」

 

 

拳を突き出すジョーカー。反射的にファングも拳で迎撃。

両者のパンチがぶつかり合い、衝撃波が風圧と爆音に変わる。そして……

 

 

「グアァァァッ!!」

 

 

ファングの拳が、弾かれた。

腕の鎧が砕け、衝撃が胴体に伝わる。

 

 

(馬鹿な…レベル4(イノセンス)が押し負けた!?)

 

 

間髪入れずにジョーカーのキックが炸裂。

痛くもかゆくもなかったはずの攻撃を受けた体が、悲鳴を上げているのが分かる。

 

 

「お前ら……力を貸してくれ!」

 

 

ジョーカーは手元に一本のメモリを取り出す。

青のオリジンメモリ、海未と適合した“O”のメモリ、オーシャンメモリ!

 

 

《オーシャン!》

 

 

オリジンメモリの適合者であるμ’sのメンバー&瞬樹と一つになっている今、アラシはオリジンメモリの力を最大限発揮できる。

メモリを起動させ、マキシマムスロットに装填!

 

 

《オーシャン!マキシマムドライブ!!》

 

 

ファングの四方を囲むように、渦を巻いた海水が現れる。

海水はファングを飲み込み、重力に逆らって滝のように昇っていく。

 

 

オリジンメモリは溺死することはなくとも、息を吸えないことでの苦痛は持続する。

その苦痛は、ファングを少しずつ、だが確実に蝕んでいった。

 

 

「こんなもの!!」

 

 

ファングはエネルギーの一部を爆発させ、海水を吹き飛ばす。

だが当然、その隙にジョーカーも残った本棚を利用して、ここまで登ってきている。

 

 

「僕に…歯向かうなぁッ!!」

 

 

背中から伸ばした、一本の牙。それは腕に絡みつき、腕を一本の刃のように変化させる。ファングは体をねじらせ、その腕で空を切り裂く。

 

その斬撃は空中を旋回し、急激に加速。風を巻き起こしながら拡大していく。

 

 

 

「“僕に近づくな(ロストワン)”!!」

 

 

 

それは、触れる者を灰燼に帰す、斬撃の竜巻。巻き込まれれば一瞬で粒子になるまで切り刻まれ、音すら逃れることはできない。発動したら最後、半径数十メートルは無の世界となる。

 

言うまでもなく、接近していたジョーカーも逃れることはできない。

逃れられるとするならば…

 

 

《ライトニング!マキシマムドライブ!!》

 

 

光だけだ。

 

 

「ガあッ!!」

 

 

ライトニングの能力で技の範囲外に退避したジョーカーは、解除と同時に超速で接近、ファングに攻撃を仕掛ける。

 

ファングが反撃に転じると同時に再び退避、次の瞬間には死角から攻撃が叩き込まれる。完璧なヒットアンドアウェイ戦法。

 

そして何より、ファングは無視できない違和感を覚えていた。

 

そう、“傷の治りが遅い”。

 

さっき砕かれた腕の装甲が、まだ完全に回復していない。普通なら数秒とかからないはずにもかかわらずだ。

 

 

(まさか……)

 

 

ファングの脳裏に、一つの可能性が浮かぶ。

あり得ない。確かに危惧はしていた。だが、毛ほどの脅威だったはずだ。

 

しかし、その現状を前に、確信せざるを得ない。

 

 

「そんな…嫌だ……僕は…!」

 

 

余力を残すため、7秒程度でライトニングを解除。

足に力を籠め、ファングとの距離を一気に詰める。

 

 

「来るなぁっ!!」

 

 

地面から無数の牙が生え、壁を形成。

だが、ジョーカーはそんなものを意に介さず、易々と粉砕し、ファングに蹴りを叩き込む。

 

 

(なんなんだ!この強さ、レベルとかそういう次元の話じゃない!)

 

 

 

軋むファングの体、激闘の中、ジョーカーは語り掛ける。

 

 

「お前、言ってたな。これは遊びだって。それにしちゃあ、随分と必死じゃねぇか」

 

「黙れぇぇぇ!!僕が…人間ごときに…何でだよぉぉぉ!!」

 

 

能力が暴走するように、ファングの全身から牙が伸び、不規則に曲がりくねりながら辺りを破壊していく。だが、理性を失ったその攻撃はジョーカーには当たらなかった。

 

 

「やっとわかったよ、お前はガキなんだ。そうやって人間を、生命を見下してきたから、誰とも出会わず、変わりもしなかった!

 

確かに人間の一生は、お前らにとっちゃ取るに足らない物かもしれねぇ。でも、だからこそ、その短い命で一歩でも前に進もうと足掻くんだ!

 

何千年もの間、一歩も進めてねぇお前なんかに…負けるわけがねぇんだよ!!」

 

 

「黙れ!お前に…何が分かる!!」

 

「悪いがお前のことなんざ、大して分かりたくもねぇ!

失せろ!俺たちの未来に、絶望(お前)は必要ねぇ!!」

 

 

《リズム!》

 

 

今度はピンクのメモリ、リズムメモリを取り出し、装填!

 

 

《リズム!マキシマムドライブ!!》

 

 

エネルギーがジョーカーの拳に蓄積され、放出された音エネルギーが、ジョーカーを加速させる。

 

瞬間、“F”が生まれて初めて感じる、“死の恐怖”。

ファングは初めて、本当の意味で“防御”をとった。

 

繰り出された拳を、ファングの防御は完全に受け止めた。

安堵するファング。だが……

 

 

「まだだ」

 

 

防いだはずの攻撃は、衝撃だけが勢いを弱めず襲い掛かる。さらにもう一撃、さらに一撃と、防御が破壊されても次々とヒットしていく。

 

リズムの能力。数段の攻撃を一撃に乗せる、必殺パンチ。

 

 

地面に叩きつけられるファング。

対して、ジョーカーは高く飛び上がり、こんどは白銀のメモリをスロットに装填。

 

 

《ドラゴン!マキシマムドライブ!!》

 

 

「行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

瞬樹のイメージが西洋の竜なのに対し、現れたのは東洋の龍。高密度エネルギーの龍が、構えをとるジョーカーと共に、ファングに突っ込んでいく。

 

またしても得も言われぬ恐怖が、ファングを襲う。

 

 

「来るな…来るなぁぁぁぁ!!」

 

 

足元から無数の牙を生やし、ジョーカーを迎撃。

回避と撃破を続けるが、手数が多すぎる。そのうちの一本がジョーカーの脇腹を抉った。

 

 

揺らぐ体勢。形成は好転したといっても、気力だけで動いていることに変わりはない。気を抜けば意識を持っていかれる。そんな中、この一撃は致命的だった。

 

それでも、ここで倒れるわけにはいかない!

 

 

「オラァァァァッ!!」

 

 

突き出した拳に呼応し、龍はファングに襲い掛かり、爆発。

無数の牙は一つ残らず燃え尽き、ファングも爆炎の中に飲み込まれた。

 

なんとか着地したジョーカー。もう満身創痍とかいうレベルではない。限界なんて何度も超え、何故動けているのかもわからない。

 

しかし、

 

 

 

「ふざけるな…僕は地球の意思なんだ…!神なんだ!失せるのはお前だ、人間!!」

 

 

 

爆炎の中から傷だらけのファングが現れる。

そうだった。俺の人生、そんな上手くいったことなんて一個もなかったな!

 

 

ファングの全身から鋭い牙が伸び、右腕に収束。それは腕というか、怪物そのもの。見るからに一撃必殺。その名の通り、受けたら一撃で必ず死ぬ。

 

だが、絶望はしない。相棒にあんな偉そうなこと言って、示しがつかない。

ただ一寸先の敗北の先にある勝機を、必然を、絶対に逃さない!

 

 

 

「死ねぇぇぇぇぇっ!!」

 

 

 

 

腕を振り下ろせば終わり。自分を脅かす存在は、消える。

それなのに…

 

体が動かない___

 

 

 

そこには誰もいなかったのだろう。

 

だが、“F”には見えた。自分の腕を振り下ろさせまいと、非力ながらも、力の限り腕をつかむ“彼”の姿が。

 

 

 

「士門……永斗ぉぉぉぉッ!!!」

 

 

 

精神も身体も削りに削れた今、あるいは見逃してしまっていたかもしれないその一瞬。

アラシは決して見逃さなかった。まるで、“そこに隙ができること”を知っていた、いや…

 

信じていたかのように。

 

 

 

《ジョーカー!マキシマムドライブ!!》

 

 

 

手首をスナップさせ、構えを取る。

身をかがめ、足に力を入れ、地面を蹴った。そして、紫電を纏った右足を突き出し、その一撃がファングの胸部の宝玉に炸裂する!!

 

 

「ライダー……キック!!」

 

 

全てのエネルギーが注ぎ込まれた必殺の一撃。宝玉が砕けていき、ファングの全身が崩れていく。その姿はレベル2…そして、レベル1にまで戻ってしまった。

 

全身に走る激痛、迫りくる死の気配、未来のない恐怖、抗えない絶望___

 

 

 

「嫌だ……死にたくない…!僕は…嫌だ…!独りはもう…嫌だぁぁぁぁ!!」

 

 

 

感情をさらけ出した、身勝手な叫び。

ファングの体が粒子となって消えていく。

 

目の前で消えゆく叫びに、アラシがかけるのは、ただ一言だけ。

 

 

 

「あぁ……俺もだよ」

 

 

 

ライダーキックがファングの体を貫き、白と紫の電光が走る。崩れ行く地球の本棚と共に、ファング・ドーパントは断末魔をあげ爆散した。

 

 

 

 

 

 

____________________

 

 

 

同刻、樹海。

 

 

ファングと交戦中のエージェント達。

すでに半数以上の人員が撃破され、上位メンバーも限界寸前。このままでは…

 

 

誰もがそう思っていた矢先、突然、ファングがその場に倒れ、士門永斗の姿へと戻った。

 

 

 

「…これは一体、どういうことっスか…?」

 

 

 

恐る恐る近づくが、どうやら意識は無いようだ。

全員、何が起こったのかは分からないが、流石プロ、誰一人として油断はしていない。

 

ハイドが辺りを観察していると、ある物を見つける。

それを見たハイドは、全てを理解した。

 

 

「ハハ…マジっスか。まさか、本当に……」

 

 

顔を押さえ、呆れたような、喜んでいるような笑いを見せるハイドに一同困惑。撃破され、倒れていたビジョンに関しては、「ついに壊れたか」とつぶやいている。

 

 

「そんで、コイツどうします?任務通り、ここで始末しますか」

 

 

槍を構えるウォーター・ドーパントことリキッド。だがハイドはそんなリキッドを制止する。

 

 

「まぁまぁ、無力な人間に手を上げる趣味は無いっスよ。もう大丈夫そうだし、ウチの診療所に運んでくんないっスか?」

 

 

ポカンとする一同だったが、取り合えず従っておこうと、永斗の体をビジョンにパス。当然ビジョンは「自分で運べや無能上司…」と聞こえるか聞こえないかの声で毒づく。

 

 

そんなハイドの肩に手をおき話しかける、着物の大男__ドランク。

 

 

「いいのかい?任務に背いちまっても」

 

「ジブン等の任務は、“危険分子の抹殺”。彼はもう違うっスよ」

 

 

そう言って、ハイドは地面に落ちていた物を拾い上げる。

それは、一本のガイアメモリ。士門永斗から排出された、ファングメモリだった。

 

ただ、本来絶対にありえないことが起こっている。

核爆弾でさえも破壊できないオリジンメモリのボディに、大きなヒビが入っていたのだ。

 

 

 

「ホンット、何者なんスか……君達……」

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

8/10活動報告書

 

 

組織の永斗誘拐から始まった騒動は、ひとまず幕を閉じた。

ファングを撃破した直後、俺たちの意識は精神世界から引き戻され、気づけば音ノ木坂の屋上にいた。

 

とりあえずは、俺たちの勝利だ。傷は全て無くなっていたが、あれだけの戦いを繰り広げたんだ、心の方はヘトヘトで、帰ってから全員もれなく爆睡。穂乃果にいたっては、まだ寝てるとか。

 

しかし、問題は永斗だ。“F”の意思は撃破したはずだ。だが、永斗の体が見つからない。今は俺が全力で情報を集めまわっている。そして、もう一つは“F”のことだ。確かに倒しはした。俺たち全員でつかんだ勝利だ。だが…どうも胸騒ぎがする。アイツは本当に消えたのか…?

 

まだ一件落着とはいかないが、殺伐としていたここ数日に、やっと日常が戻りつつある。俺からすると数年ぶりだ。あとはここに永斗を迎え入れるだけ。必ず、お前を見つけ出して見せる!

 

 

あ、そうだ。もう一つ問題があった。それは…

 

 

 

「今日は誰の家にします?」

 

「わ…私は別に来てほしいとかそういうの思ってないけど、どうしてもって言うなら私の家に…」

 

「あ、ツンデレ真姫ちゃんは放っておいて、今日はウチにせん?」

 

「ちょ…希先輩!?」

 

「ま~にこは~今日は別荘に泊まるつもりなんだけど~

どーしてもって土下座するなら、にこの実家の庭くらいには野宿させてやってもいいわよ~?」

 

「うっせぇ死ね」

 

「ならば我が神殿に来るといい!烈が入院中で、早い話暇なのだ!」

 

「何しに沸いてきたテメェは」

 

 

俺の住居である。

 

あの日、永斗と一緒じゃないと事務所には帰らないと決意した。

一度決めたなら意地でも通す。これを言ったら全員に呆れられたのが釈然としないが…

まぁ、というわけで、今の俺は住所不定。野宿しようとしていたら皆に止められて、永斗が帰るまでコイツ等の家を日替わりで貸してもらうことになった。

 

昨日は海未の家にお世話になった。料理とか家事とか、手伝える範囲で手伝ったつもりだが…なんか厳しめな感じの家で、微妙に落ち着きはしなかった。ちなみに今も海未宅。暇な奴らが集まってる。

 

 

「早いとこ永斗見つけねぇとな…どっかに落ちてて誰かが拾ってくれたりしてねぇかな」

 

 

その時、スタッグフォンに着信が入った。

見慣れない電話番号だ。とりあえず出てみる。

 

 

「もしもし…ってハイド!?」

 

 

その言葉に一同ビックリ。俺もビックリだわ。電話に出たのは敵組織のエージェント“ハイド”。間違っても気軽に電話かけるような間柄ではない。

っと、驚いている場合じゃない。

 

 

「何だ?一体俺達に何を……え…?

永斗いんの!?」

 

 

今日一のビックリ更新。あぁもう、何が何やら……

 

 

 

だが、この時は誰も気づいていなかった。

この騒動の幕は、まだ下りていないことに……

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

「調子はどう?太陽クン」

 

「おかげさまだ。それじゃあ、始めるぞ」

 

 

 

そう言って白い立方体の部屋に足を踏み入れる2人の人影。

 

一人はフードで顔を隠した小柄な女性、七幹部“暴食”。

 

もう一人は元・“憤怒”のNo2アサルト。服装は以前と変わって、口を開けたサメの歯を正面から見て、その中に目玉が描かれたようなデザインのマークが刻まれた、黒いコート。そして、腰にはベルト型の装置が装着されている。

 

 

部屋の中にいたのは数十人の黒スーツに覆面の怪人、マスカレイド・ドーパント。

 

 

敵を一瞥すると、アサルトはメモリを取り出す。

それは禍々しく黄金に輝くメモリ。

 

 

 

 

 

 

《エクスティンクト!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

「アハッ、仕上がってるわね。想像以上よ」

 

 

 

室内はまるで地獄のような風貌になっていた。

 

あれだけいた敵は一人残らず全滅しており、ある者は焼け焦げ、ある者は凍り、ある者は朽ち果てている。部屋の形は原形をとどめていない。

 

 

その中心に佇む、黒一色の異形。生命を淘汰し続けた、“災害”そのものの姿___

 

 

 

 

絶望のカウントダウンは、再び針を進める。

 

 

 

 

 

 

 




長い(二回目)。F編、もうちっとだけ続くんじゃよ。ってやつですね。やめて!靴を投げないで!
あと2話で終わらせます!ちゃんと出しますよ、黒と白のアイツは…!

今回、最後にチョコっとだけ登場したのは、鈴神さん考案の「エクスティンクト・ドーパント」です!過去編でもちょっとだけ出てましたね。

隙を見つけて過去編も終わらせますし、コラボも進めたい所存!

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案(活動報告かメッセージ)などございましたら、よろしくお願いします!

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