ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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ひっさしぶりの146です。ジオウ書いてたらこっち遅くなりました。調子乗って2本も連載するからですスイマセン。
今回はメイド喫茶編ラスト。どうしても長くなっちゃうのなんでだろう。

注意です。今回の犯人、かなりヤバい奴なので、苦手な方はご遠慮ください。

大丈夫な方はどうぞ。


第43話 不思議なB/箱庭の主、籠の小鳥

高層ビルの窓から見える夜景、落ち着いたクラシックのBGM、完璧な雰囲気を演出する内装。言うまでもなく最高級。世界五大料理と名高いイタリア料理を専門とする高級料理店だ。

 

 

「お待たせいたしました。アクアパッツァでございます」

 

 

水とトマトの水分だけを使った魚の煮込み料理、イタリア料理の定番ともいえるアクアパッツァが、2人の人物が座るテーブルに運ばれた。

 

1人は正装に身を包んだ、朱月王我。やはり窮屈なのか、少し着崩している。

もう1人はドレスを着た女性。肌に張り付くようなドレスが彼女の美しい体のラインを強調し、否が応でも目を惹く。言われなければ分からないだろうが、彼女は“暴食”。普段はフードで隠している顔を、今は仮面で隠している。

 

暴食は魚の身をナイフで取り分け、口に運んだ。ブイヨンを使っていないとは信じれれない程、複雑で洗練された旨味が口の中を駆け巡る。

 

 

「やはり美味ね。貴方も食べなさい」

 

「オレ、変わった物が食いたいんだけどなぁ。カタツムリ食えるんだっけ?あ、それはフランスか」

 

 

朱月は乱暴に、魚を丸ごと口に放り込んだ。おおよそ品位とはかけ離れている。

 

 

「ん、美味し」

 

「下品ね。そういえば、最近は随分とおとなしいみたいだけど?」

 

「あ、オレの事?いや、そろそろ仮面ライダーと遊んでもいいかな~って、ちょっと準備してんだよねぇ。んで?ソッチはゼロをちゃんと始末できたわけ?」

 

「貴方の言う通りだったわ。仲間相手ではまるで雑魚、最強と呼ぶには少し甘すぎた。計画通り、同時進行で憤怒の立場を落とし、七幹部の一柱の事実上無力化に成功…順調よ」

 

 

話しているうちに、別の皿が運ばれてきた。

これもイタリア料理の定番。分厚く切られたTボーンステーキが巨大な花を描くように重なっている、ボリューミーな料理。ビステッカ・アラ・フィオレンティーナ。レアに焼かれた赤色が美しい。

 

 

「おー、やっぱ肉はテンション上がるね~!

でもさぁ…暴食チャン、こんなのじゃ全然足りないんじゃないの?」

 

「そうね。そろそろ……

お腹が空いてきちゃった」

 

 

その言葉が、周囲の空気をひり付かせる。あの朱月でさえも、少し緊張を感じるほどに。

 

 

「また食い荒らされちゃ、たまったもんじゃないよねぇ…」

 

 

朱月はそう呟き、手づかみで肉を噛み千切った。

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

その翌日。

 

昨日の夜に忘れ物を取りに行った永斗は、ことりと同様に帰ってこなかった。

新聞漁りの疲れと翌日のバイトの事を考え、アラシが早めに寝たのが裏目に出てしまった。

 

翌朝、他のメンバーも一緒にメイド喫茶に急行。

 

鍵を開け、中に入るが誰もいない。しかし、服の切れ端から、永斗はここにいたと確信するアラシ。

 

だが、問題があった。この店の鍵は、外からも開けられるが、鍵をかけたのが外か内かは分かる仕様になっている。そして、今回は鍵は“内側から閉まっていた”。

 

 

手分けをし、極力現場を乱さないように痕跡を探す。

 

 

しかし、他に鍵が開いている場所は無し。窓に穴も開いてないし、逃げた痕跡も全くない。争った痕跡は見られたが、犯人の特定には繋がらない。

 

 

「これって…密室じゃねぇか」

 

 

そう、アラシの言う通り、これは紛れもない密室。

そして、事態は深刻だ。敵は証拠を全く残しておらず、メモリの能力も見当がつかない。それを調べられる永斗と分断されてしまったからだ。

 

分断という点では、この間と同じだが、戦闘と事件捜査では話が違う。

 

戦闘ではアラシがメインを担っているのに対し、捜査では永斗がメイン。アラシの閃きも情報収集も、永斗なしでは意味を成さない。

サイバー事件でμ’sが犯人を特定できたのも、実は永斗がゲーム決戦の前に検索を行い、ある程度情報をまとめていたためである。

 

 

つまり、探偵としては今の状況は絶望的。

 

加えて戦闘でもだ。ロストドライバーは破壊され、もうジョーカーには変身できない。エデンはマキシマムオーバードライブを使用したため、1週間は変身できない。あと数日は必要だ。

 

 

「マズいな、俺達の状況を完全に把握してやがる。組織絡みってのは間違いなさそうか」

 

 

早急になんとかしなければ。言ってしまえば、この状態で組織の刺客でも襲ってきたら、打つ手がない。ことりが捉えられてるのも心配だ。永斗が一緒なら、大丈夫だとは思うが…

 

ということは、この事件自体が仮面ライダーを潰すための罠という解釈もできる。しかもライブまで時間も無いし、何より永斗とことりの状態が把握できてない以上、時間を掛けられない。

今回の事件に限っては、訳あって警察は全く信用できない。店長にはそう言って警察を呼ばないようにしてもらったが、そうなると逆に情報が……

 

 

 

「アラシ君!」

 

 

 

考え込んでいたアラシに声を掛けたのは、穂乃果だった。

その声で、アラシの意識が一旦現実に戻る。

 

 

「私たち、もう一回逃げた証拠がないか探してくるね!」

 

「お…おう」

 

 

そう言うと、穂乃果はもう一度店の奥に入っていった。

 

驚いた。ことりと永斗がいなくなった動揺より、“自分達の手で助け出す”という思考が先に出てる。永斗を取り戻したという成功体験が大きいのだろうが、これは探偵としては大きな前進。

 

 

「見くびり過ぎてたのかもな、アイツ等のこと」

 

 

μ’sはもう立派に主戦力だ。全員の力を合わせれば、2人を必ず助け出せる。

 

 

「今、俺がすべき事は……」

 

 

それを考えるアラシの頭に、昨日ぶっ壊したパソコンがよぎった。

 

 

 

____________

 

 

 

 

「キーワードは“ボックスメモリ”」

 

 

 

地球の本棚の本が散り散りとなり、永斗の前に「BOX」と書かれた本だけが残った。

英語で書かれた本をパラパラと読み進め、数分で閲覧を終え、本棚を閉じた。

 

 

「ここでも問題なく地球の本棚は使えるみたいだね。それで、調子はどう?ことり先輩」

 

「うん…大丈夫だよ」

 

 

ボックス・ドーパントに閉じ込められてから、10時間程経過しつつある。

ことりと永斗がいるのは、一面緑色の空間。歩き回って調べたところ、ここは一辺5メートル程度の立方体の中。いや、ドーパントの能力を検索したところ、箱は小さく、中にいる自分達が圧縮されているらしい。

 

箱はかなり丈夫で、持っていたメモリガジェットでも壁を壊せなかった。

 

そして、ここでは電波は全く無いため連絡はできない、さらに、メモリやドライバーの力をも遮断する。つまり、アラシがドライバーを装着しても、永斗のドライバーは現れない。変身は不可能だ。

 

しかし、この空間に何もないという訳ではない。空間の中心に、果物や野菜といった生の食べ物が置いてある。虫でも飼っているつもりなのか。

 

 

 

「検索の結果、ここを内側から開けるのは無理。まぁ、箱を壊せるだけのパワーがあれば別だけど…」

 

「変身できないんだよね…アラシ君も、瞬樹君も」

 

 

それもだが、問題はメモリを検索しても犯人が分からなかったという事。もう少し情報があれば分からないが、外との疎通が望めない。

 

 

 

「ねぇ永斗君」

 

 

 

考える永斗に、ことりは暗い表情で話しかけた。

 

 

「何?」

 

「あの箱のドーパント…もしかして、皆は調べてたりしてたの?」

 

 

やはり鋭い。何でそう思ったのかは分からないが、ことりに黙って事件の調査をしてたのは事実だ。永斗は返答に困る。

 

 

「何で黙ってたの?」

 

「そりゃ…作詞に集中してほしいからだけど」

 

 

そう言うが、ことりの目は真っ直ぐ永斗を見て離さない。永斗は諦める。ことりに永斗の嘘は通じない。

 

 

「…ことり先輩、ちょっと前からメイド喫茶の店員や客が行方不明になる事件、知ってる?」

 

 

驚くことり。その反応を見て、永斗は「やっぱり…」とこぼす。

 

 

「でも……店長もみんなも、辞めたとか風邪としか…」

 

「何で皆が隠したか、分かる?」

 

 

ことりは首を横に振る。永斗は少し躊躇いながらも、言った。

 

 

「皆もそうだけど、ことり先輩は特にだ。ことり先輩は、他人の痛みに敏感すぎる。優しすぎるんだよ。だから、そんな事を知ったら傷つくと思って、誰も教えなかった。今回の事件でことり先輩を外したのも、そういう理由だよ」

 

 

ことりにとって店員や店長、そしてお客は、家族やμ’sの皆の次に近い関係。その中の誰かが攫われたなんて知ったらショックを受けるだろうし、犯人がいるなんて知ればなおさらだ。

 

 

「みんなには大きい借りがある。それに、僕はみんなを守るって決めたんだ。

だから…僕はことり先輩たちに、探偵をして欲しくない」

 

 

「ッ…!?そんな……私たちだって、この間は戦えたよ!それに…」

 

「そういう問題じゃないんだ。当然、みんなは僕たちが守る。でも探偵を続けてれば、必ず人の悪意に触れる。目の前で命が消えることだってある。その度に傷ついてたら、戦わなくても壊れる。それだけは…嫌なんだ」

 

 

人は、不幸になるのを避けて真実を隠す。それを暴くのが探偵。必ず誰かが不幸になる。

 

 

例えそれが犯罪者であっても、ことりは傷ついてしまうだろう。探偵としては致命的なほどに、ことりは優しすぎる。

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

「ホンット無能ね~。パソコンで検索なんてきょうび小学生でもできるわよ?それを壊すだけでも失笑ものなのに、新聞記事でしらみつぶしなんて、大正時代の人間でももう少しマシな思考すると思うけど?」

 

「…!この……!」

 

「落ち着いてくださいアラシ!今回ばかりは、全面的ににこ先輩が正しいです」

 

 

切風探偵事務所で見せつけるようにパソコンを操作するにこと、それに殴り掛かろうとするアラシ、で、それを止める海未、を尻目に壁に寄りかかっている真姫。このメンバーで調査を進めることとなった。

 

昨日、アラシがパソコンを破壊したため、にこが部室から持ってきたパソコンを使用している。

 

 

「貸せ!お前が出来んなら俺にもできる!」

 

「はぁ!?嫌よ!私のパソコンまで壊されてたまるもんですか!」

 

「アラシ、本当にやめてください」

 

 

ガチトーンで諭され、身を引くアラシ。

そうこうしているうちに、にこがある程度情報を揃えた。

 

 

「さて、これと昨日俺が集めた情報が大体の全容だ」

 

 

 

ここ最近起こった、関連性が疑われる事件。どれも妙に証拠が少ない。共通するのは、神隠しのように誰かが消えているという事のみ。

 

 

「そういえば…」

 

「ん?どうした真姫」

 

「永斗が捕まったのは分かります。でも、ことり先輩だけを狙う理由が分からないんです」

 

「確かにな。昨日は2人揃って忘れ物をしてたらしい。それ自体が多分罠なんだろうが、そうなると、狙いはことりの方か」

 

「別に不思議でもないわよ。カリスマメイド、ミナリンスキーを狙う人なんていそうじゃない」

 

 

にこが若干不機嫌そうに言う。自分が狙われなかったのが気に喰わないのだろうか。

 

 

「しかし、被害者の共通点として、“顔立ちが整っている”というのは言えるかもしれません」

 

 

海未の言う通り、行方不明事件の被害者は美男美女が多い。永斗もことりも条件は満たしている。

とすると犯人の動機が見えてくる。気に入った人を誘拐する、典型的なストーカーだ。証拠を残さない分、数段厄介ではあるが。

 

 

「あとは…妙なんだよな。何で犯人はわざわざ密室を作ったんだ?」

 

「攪乱じゃないですか?今だって穂乃果先輩たちはそっちに行ってるわけだし」

 

「いや、今回も証拠と呼べるものはなかった。だったらわざわざ密室になんてしなくても…」

 

 

その時、烈が昨日言っていた言葉を思い出した。犯罪者が持つ、“こだわり”…

 

 

 

「そうか…もしかして…!」

 

 

 

_____________

 

 

 

「ここです、穂乃果先輩!」

 

「ありがとう花陽ちゃん!この窓から外に出たなら、そこだけホコリが落ちてるはずだよ!」

 

「おぉ!さすがは穂乃果先輩にゃ!」

 

「全部ピカピカやん。やっぱりことりちゃん、仕事が細かい!」

 

 

秒で穂乃果の推理が破綻した。

しかし、穂乃果はめげない。

 

 

「じゃああの窓から出たんだよ!」

 

「天窓やね…ちょっと高すぎひん?」

 

「それは…その…ホラ、これに乗ったら届くんじゃない?」

 

 

穂乃果は店の椅子を持ち上げ、天窓の下に持っていこうとする。

しかし、途中で飾り棚にあたり、乗っていた箱のインテリアが落ちてしまう。そこをバレーのスーパーレシーブの如く、持ち前の運動神経で凜がキャッチ。

 

 

「ちょ…穂乃果先輩!」

 

「ごめんごめん。凛ちゃん、ナイスキャッチだよ!」

 

 

全く気にしてない様子で椅子に乗るが、全く天窓には届かない。ていうかよく見たら人が通れる大きさじゃないし、鍵が閉まっている。

 

 

「じゃあワイヤーだよ!凛ちゃん、ワイヤーの跡を探すよ!」

 

「了解にゃ!行くよ、かよちん!」

 

「ま…待ってよ凛ちゃん…!」

 

 

そんな様子を見る絵里。ワイヤーをどう使うのかは分からないが、とりあえず一生懸命だ。まぁ、まだ何の手掛かりも無いのだが。

そんな中、絵里の携帯電話に着信が入る。アラシからだ。

 

 

「もしもし、アラシ?こっちはまだ…え…?

密室はいいから、手を貸せ?」

 

 

 

_____________

 

 

全員が集合し、アラシの指示に従って移動する。ちなみに連絡はできたが瞬樹は来なかった。次会ったらぶん殴ると決意するアラシ。

 

メンバーはそれぞれ、リストに上がった事件の現場に向かった。事件現場が明瞭なものもあれば、不明瞭なものもある。実際に見て確認するのが一番だ。

 

 

「3か月前、大学生の男が行方不明になった事件。家は一軒屋の一人暮らし…と」

 

 

 

これについて、気になる事があった。その男には恋人がおり、いなくなった日の夜に電話で話をしていたという。

 

そして、その恋人の証言によると「あの日の夜。彼は先輩に呼び出され、待ち合わせ場所である公民館に到着し、中に入るまで自分と通話をしていたが、急に通話が切れてしまった」らしい。そのまま男は行方不明に。警察も一時関連性を疑ったが、翌日の朝、その公民館には鍵がかかっており、中には誰もいなかったため関連性なしと判断した。

 

 

そこでアラシはその公民館に赴き、聞き込みを行った。

 

結果、その日の夜、公民館に入る男の姿を目撃した人はいたが、“出ていく様子を見た人はいなかった”。その辺りは深夜でも人通りが多いのにも関わらずだ。

 

証言が正しければ、この事件も“密室”となる。

 

 

 

「やっぱり。殺人事件ならともかく行方不明事件だから分かりにくかったが、この犯人の起こす事件は、いずれも密室である可能性が高い」

 

 

 

 

一連の事件の中には、今回のように被害者が現場にいた痕跡が残っているケースもあった。そして、そのいずれも“密室”。

 

アラシはこれが犯人の“こだわり”と睨み、各人員を操作に向かわせた。

しかし、何かが引っかかる。この公民館を見た時から、何かが…

 

 

すると、スタッグフォンに着信が入った。

穂乃果からだ。穂乃果は2か月前に行方不明になった女性が最後に目撃された場所に行ったはずだ。

 

 

「穂乃果、どうだ?現場は分かったか?」

 

『すごいよアラシ君!その近くにね、すっごい変わった建物があるんだけど!』

 

 

アラシは頭を抱えた。何をやってるあのアホ!しかも、なぜそれを報告する!?

 

 

『なんかキレイなサイコロみたいなカラフルな建物で、げんだいあーと?とかの美術館なんだって!これ何か関係あるかな!?』

 

「あるわけねぇだろ!つーか知ってるよ。ちょっと前にできた立方体型美術館で、オープン直前に鍵と館内の監視カメラがごっそり盗まれたって話題に……」

 

 

 

いや、待て。

 

カメラが消えた?それってメイド喫茶の事件と似ている…それに、鍵が盗まれたってことは、オープン前に中に入ったということ。脱出を考えなければ、密室を作れる。何より、その事件は犯人が捕まっていない。

 

もしかして、そこが現場?

いや、引っかかるのはそこじゃない。この公民館、メイド喫茶、そして…立方体美術館……

 

 

 

「そうか…!でかした穂乃果!」

 

『え!?もしかしてビンゴ?』

 

「あぁビンゴだ。他の奴らにも確認させてみる」

 

 

それぞれ新しい指示を出して数十分後。ほぼ全員がアラシに写真添付したメールを送ってきた。

 

その後、アラシの招集で全員が集合。烈も呼び出した。

 

アラシの指示は、「とある条件を満たす建物が、被害者目撃場所の近くにあるか探せ」というもの。そして、その条件とは…

 

 

「やっぱり、間違いない。犯人のこだわりは密室じゃない…“箱”だ」

 

 

一同が首をかしげる。そこでアラシは送られてきた写真と、メイド喫茶の写真を見せる。

 

 

「メイド喫茶も、この建物たちも、扉や窓を閉めて壁と見立てると、余分な凸凹も装飾もない、左右対称な立方体だったり、直方体だったり…とにかく箱の形になる。探してみるとそういう建物はそんなに無いが、被害者目撃場所の近くには必ずそれがあった」

 

 

アラシはさらに説明を続ける。密室だった理由は、あくまで偽装。行方不明事件+密室なら、そもそも事件がそこで起こったことを隠すことが出来る。そうすれば“箱型”という条件を満たす建物を、警戒されることなく、狩り場として複数回使用できるというわけだ。

 

事実、今回の事件も他の一部の事件も、箱型建造物付近で立て続けに起きている。

 

しかし、烈がそこに口を出す。

 

 

「確かに、そこが現場だった可能性は高いでしょう。しかし、それが犯人を特定する鍵にはなりえません」

 

「その通りだ。でも、同時にメイド喫茶に“アレ”があったことを思い出した。密室のトリックも考えると、メモリの見当がつく。相性のいいメモリは、使用者の遍歴や性格に大きく左右されるからな」

 

「そういえば…あのハイドっていうお医者さんも…」

 

「えぇ、凜の言う通り、岸戸先生の専門は脳神経外科だったわ。そして、先生が使っていたメモリはナーブ…神経よ。ていうことは…」

 

 

真姫は気付いたみたいだ。アラシはそれに続ける。

 

 

「恐らく敵のメモリは“ボックス”、箱の記憶。そうすれば、事件の内容から“対象を箱に閉じ込める能力”って推測できる。人攫いには持ってこいの能力だし、何より密室のトリックを成立させられる。

問題は…烈の言う通り、犯人が分からないってことだ」

 

 

こういう時に永斗がいれば…ここまで情報が揃えば、ほぼ確実に地球の本棚で犯人を特定できる。そうでなくても、永斗なら犯人を見つける策を思いつくはずだ。

 

箱に監禁されているなら、時間に猶予はないと考えるべきだ。考えろ…何か策は……!

 

 

思いつめるアラシ。それを見た穂乃果は、アラシの前に。

 

 

「アラシ君」

 

「なんだ穂乃果…って痛った!」

 

 

穂乃果は頬を膨らませ、アラシの顔を引っ張った。いきなりの事で大いに戸惑うアラシに、穂乃果は言う。

 

 

「アラシ君は、永斗君より頭悪いよ!」

 

「何、悪口!?」

 

「ここにいる皆も、永斗君には勝てない。でも、ことりちゃんと永斗君を助けたいって気持ちは同じだよ!」

 

 

そう言われて、アラシは皆の目を改めて見る。

分かっていたつもりが、分かっていなかった。アラシはずっと、一人では何もできなかった。だから、手を取り合わなければいけない。コイツらは、アラシを導けるだけの力がある。

 

 

「一緒に考えましょう。アラシ先輩」

 

「真姫…あぁ、悪かったな。俺はお前らにも勝てねぇわ。

じゃあ考えるぞ。犯人はことりと永斗を罠に嵌めた。だから俺達も、罠で犯人を仕留める」

 

 

力強く頷く一同。そうして、アラシ達は策を練っていく。

 

しかし、その中で一人。烈は表情を変えずに呟いた。

 

 

「チェックメイト…ですね」

 

 

 

 

______________

 

 

 

その日の夕方。

 

 

「ふー、秋葉原中の花陽グッズを買い占めた!我が騎士道に一辺の悔いなし!!」

 

 

昨日から秋葉原またはその近辺にあるアイドルショップ等を巡って、花陽のグッズを買い漁った瞬樹。ちなみに行く所全てに真姫のグッズも無かったらしい。どこぞの変態兄貴の仕業だろう。

 

花陽のプリントTシャツを着て、花陽のタオルを首に巻き、花陽の缶バッジを山ほど付けた花陽のバッグを背負っている。しかもそれにエデンドライバーを背負っているときた。一歩も間違えず不審者だ。

 

満足げな顔で秋葉原を歩く瞬樹だったが、携帯電話が鳴り、着信元を見ると全身から冷や汗が溢れ出てきた。

 

当然、黒音烈からの電話である。恐る恐る出る瞬樹。

 

 

「もしもし、烈…?」

 

『あ、瞬樹。さっき家の鍵変えたんで、もう帰ってこなくていいですよ。それじゃ』

 

 

通話が終了した。

瞬樹は地に伏せて叫んだ。一瞬にして瞬樹はホームレスとなってしまった。

 

 

「何故だ…まさか!花陽グッズのために烈の貯金ちょろまかしたのがバレた…?」

 

 

実際はちょろまかしたどころか、一週間分の2人の食費を使ったのだが。

何にせよ、瞬樹の貯金はゼロ。食べ物も買えないし、早い話死ぬ。

 

絶望していると、烈からメールが届いた。

 

内容は「すでに話を付けたから、反省するまでここに泊まれ」とのこと。そこは、秋葉原のメイド喫茶だった。無論、瞬樹はそこで事件が起こったことなんて知らない。

 

 

「代わりの家…だと…?いつもだったら三日三晩野宿させた後、家の鍵を川に放り投げて探しに行かせ、しばらくは夕飯が雑草かイナゴになるのに……」

 

あまりの好待遇に、思わず烈を心配してしまう。

しかし、これは好都合。瞬樹はウキウキでメイド喫茶に向かった。

 

 

 

 

「鍵を預けておくよ。冷蔵庫にある余った料理は食べていいけど、他の食材はダメ。奥の部屋が一応寝室になってるから、そこで寝てね。一泊分の料金は追々請求するから」

 

「フッ…承知した」

 

「ホント、何考えてんのよあの店長…ウチはホテルじゃないっての…

今回は特別だからね!今夜泊まったらちゃんと家の人に謝りに行きなさいよ!」

 

 

店員の北田慧から鍵を貰い、説明と説教も貰った瞬樹は、早速中に入り内側から鍵を閉める。

奥の部屋には布団があった。店長がたまに泊まるらしい。

 

風呂は無いが、食事はある。割といい物件ではあるが、実際はつい昨日事件が起こったばかりの事故物件である。

 

そんなことも知らない瞬樹は飯を食べ、そのまま就寝した。

 

 

 

 

その日の深夜。

 

 

 

 

いびきをかいて爆睡する瞬樹に忍び寄る影___ボックス・ドーパント。

既に窓や扉の鍵を閉め、密室は完成している。

 

仮面ライダーダブルを封じ、仮面ライダーエデンが変身できない今が好機。津島瞬樹の姿が確認できないうちに、変身能力が回復するのではないかと焦りはしたが、願っても無いチャンスがやって来た。

 

能力を使用し、瞬樹を箱に封じ込める。これで仮面ライダーは完全に無力化された。あとは危険因子の切風アラシを同様に封じ込めばいい。そうだ、殺さなければいいなら、μ’sの子たちも手に入れよう。楽しみが増えた。

 

 

ここが餌場としての利用価値はもう無い。このまま変身解除し、店から脱出するか?いや、暗くて外が把握できない。深夜だと店から出る様子が目撃されれば怪しまれてしまう。それに…

 

 

やはりここは、いつも通り___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。

 

 

店の扉が開く。アラシだ。瞬樹の様子を見るため、店長から借りた鍵で扉を開けた。

 

 

「おーい、瞬樹!起きてるか!

つーかお前、皿ぐらい洗ってんだろうな!」

 

 

アラシは声を張るが、返答はない。

不自然に思い、瞬樹が泊っている奥の部屋に。

 

 

 

これで誰もいなくなった。犯人は静かに笑う。

 

早朝だが、外には誰もいない。見られる心配もない。切風アラシをここで捕らえるのもいいが、今はまず…

 

 

 

「“対象を箱に閉じ込める”。それなら自分も箱に入れられるよな?

この店に箱のインテリアがあったのを思い出した。店長に聞いた。それはアンタが持ってきたものだってな」

 

 

 

外に出ようとする人影の後ろから声が聞こえた。

そこにあったのは切風アラシの姿。そして、トリガーマグナムの銃口をその人物に向けている。

 

 

「簡単な話だ。店の鍵が閉まる前に、帰る振りをして自分を箱に閉じ込める。そして標的を建物に誘い出し、内側から鍵を閉め、捕まえる。後はもう一回箱に入り、箱のインテリアと入れ替われば準備完了。翌日、誰かが鍵を開けた後、誰もいなくなったタイミングで外に出れば密室の完成。朝や昼なら見つかっても言い逃れ出来るからな。

 

そうだろ、白府リズ」

 

 

立ち尽くす人影__ゴスロリ姿の店員、白府リズは振り返って笑みを浮かべる。

 

 

 

「あら、何の話かわかりませんわ。(わたくし)は今、忘れ物を取りにきただけですわよ?」

 

「へー、そうか。よく入れたな?鍵が閉まってるのに」

 

 

白府はドアノブを捻るが、開かない。外から鍵がかかっている。

 

 

「俺が入った後、外で待ってた凜に、窓から見えないように鍵を閉めてもらった。店長から借りたスペアキーだ。ついでに言っておくが、スペアキーは俺以外誰にも渡してないそうだぞ」

 

 

もう言い逃れはできない。白府の顔から余裕が消えた。

 

 

「メモリを地面に置いて手を上げろ。少しでも不審な行動をしたら撃つ。

言っておくが、俺は穂乃果たちみたいに優しくないからな」

 

 

アラシはトリガーマグナムの引き金に指をかけた。殺気が肌に伝わり、ハッタリじゃないのは明白。

白府は箱とその蓋で「b」と入った青いメモリを取り出す。そして、そのメモリを地面に…

 

 

《ボックス!》

 

 

「ッ!」

 

 

置く寸前にメモリが起動。アラシは迷わず白府に発砲する。

しかし、

 

 

「何!?」

 

 

弾丸は弾かれた。その理由は分かった。ドーパントには変身していないのに、白府を中心に立方体の光の壁が展開されている。

 

 

「惜しかったですわね。貴方の誤算は、(わたくし)が“ハイドープ”だと見抜けなかった事。そして、即座に(わたくし)を撃てなかった、貴方自身の甘さ」

 

 

白府はスカートをめくり、ボトムスとソックスの間、いわゆる絶対領域に刻まれた生体コネクタを露出。ボックスメモリを挿入した。全身を小さな箱が蝕むように、その姿をボックス・ドーパントに変化させる。

 

 

「仕方ないですわね。今ここで、貴方も頂くこととしましょう」

 

「ハッ!やってみろよお嬢様!」

 

 

アラシの周りに板が出現。アラシは咄嗟にそこから離れる。

 

 

「あら、避けますの?」

 

 

箱に閉じ込められれば終わり。分かっていてもいずれ限界が来る。

アラシはトリガーマグナムの銃弾を連射。しかし、全ての銃弾は、届く前に小さな箱に閉じ込められてしまった。

 

 

「そんなのもアリかよ!」

 

 

やはり永斗がいないと情報が足りない。しかも、これで遠距離攻撃が通用しないことが分かった。変身もせずにこの強敵を倒すのは不可能だ。

 

状況はこれ以上ない程に、万事休す。

 

 

「終わりにいたしましょう」

 

 

ボックスはそう笑い、両手にカッターを出現させた。

 

 

 

 

 

__________________

 

 

 

 

箱の中で、ことりは思い出していた。

 

幼少期、ことりは左ひざが弱く、激しい運動が出来なかった。そのせいで、周りからも浮いていた。

一方で、似た境遇の友達もいた。彼女は足自体が不自由で、歩くこともままならない。手術で治るらしいが、彼女の家は貧しく、手術を受けることはできなかった。

 

その後、ことりだけが手術を受けた。

 

それを知った友達は、泣きながらこう言った。

「ことりちゃんは守られてばっかりだ。お金もあって、お母さんも優しくて、そんなのずるい」と。

 

のちに知ったことだが、彼女の母は娘の足の事で親や夫から見放され、そのストレスを娘にぶつけていたという。

 

彼女の言う通り、私は守られてばかり。

籠の中で育った小鳥だ。

 

 

 

そして今、変わりたくてバイトを始めた。強くなりたくてアラシ達について行った。

それなのに…

 

 

ことりは目を開けた。

何時間経っただろうか。電波時計が使えないせいで、時間も把握できない。

 

食べ物はまだ余っている。永斗が何も食べていないからだ。

永斗は死ぬことは無いといっても、平気なはずはない。

 

 

すると、静かにしていた永斗が顔を上げ、立ち上がった。

 

 

「今、アラシが戦ってる」

 

 

永斗もその感覚に驚く。何故かは分からないが、確信した。音も何も外からは遮断されているはずだ。

 

 

「本当?」

 

「うん、多分。ボンヤリだけど何かイメージが…」

 

 

意識を集中させると、それは明確なイメージに変化した。

ボックスとアラシがメイド喫茶店内で戦っている。

 

 

「そうか…ファングメモリだ!ファングと僕は“同じ存在”。そして、絶対に断ち切れない“不変の存在”。だったらこの箱で遮断できないのも頷ける」

 

 

そう、これはあの時ボックスに弾かれ、店内に転がっていたファングメモリの視界。

一体化して間もないからか、視界がハッキリせず、ファングを思うように動かせない。だが、簡単な命令なら与えられそうだ。

 

ファングが捕まったら終わり。チャンスは一回。

でも、活路は開けた!

 

 

「ファング!」

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

 

 

この狭い空間で何とか逃げ続けること数分。ボックスの斬撃も机などを盾にして避け続けるも、既に限界が近い。

秘密兵器も用意はしていたが、正面の攻撃を箱に閉じ込められるなら意味はない。

 

 

「瞬樹をエサにするべきじゃなかったか…」

 

 

「さて、そろそろお返ししましょう」

 

 

ボックスは落ちている箱を一つ拾い上げ、アラシに投げつけた。

すると、箱は空中で解除され、さっきアラシが撃った弾が帰ってくる。

 

 

「マジか!」

 

 

予想外の攻撃を避けるも、対応が遅れる。

その一瞬が致命的。カッターを持ち、ボックスはアラシに斬りかかる___

 

 

 

その瞬間、電子音が鳴り響き、白い斬撃がカッターの刃を砕いた。

それはファングメモリ。ファングは回転しながら、さらにボックスを攻撃。

 

そして深い斬撃がボックスの体に入ると、火花を散らし、その勢いで一つの箱が宙に放り出された。

ボックスが保管していた、永斗とことりが入った緑の箱だ。

 

 

 

「しまっ……」

 

 

 

その刹那で、アラシは永斗の考えを悟った。

アラシはバットショットを取り出し、変形。さらにトリガーメモリをマグナムに装填。

そして、バットショットとトリガーマグナムを合体させた。

 

 

《トリガー!マキシマムドライブ!!》

 

 

 

バットショットと合体させることで、命中精度は格段に上がる。本来はスタッグフォンで威力を底上げしてボックスを倒す算段だったが、バットショットも持ってきておいてよかった。

 

 

「トリガーバットシューティング!」

 

 

箱に照準を合わせ、引き金を引く。

生身の分かなり威力は落ちるが、それで十分だった。発射されたエネルギー弾は、箱の角を正確に射抜き、破壊した。

 

 

それと同時にファングは、破損した箱に飛びつき、消えた。

 

 

アラシはそこでドライバーを装着し、ジョーカーメモリを起動させる。

 

 

《ジョーカー!》

 

 

 

 

________________

 

 

 

「永斗君!?今のって…」

 

「うん、成功だ」

 

 

箱の角に大きな穴が開いた。永斗たちの頭上で、届きはしないが、それでいい。

 

電子音を鳴らし、ファングメモリが箱の中に圧縮されて入ってきた。そして、同時に永斗の腰にドライバーが出現する。

これが狙いだ。メモリが揃い、厄介な箱に穴が開いたのなら、変身できない道理はない!

 

 

《ファング!》

 

 

メモリを変形させ、ドライバーに装填。

すると、アラシのジョーカーメモリが転送されてくる。

 

 

「変身!」

 

 

ジョーカーを押し込み、ドライバーを開いた直後にファングメモリを倒す。

ドライバーに竜の横顔が現れ、戦意の雄叫びを上げる!

 

 

 

《ファングジョーカー!!》

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

箱を切り裂き、ボックスの前に現れるは、脱出した南ことり。そして…

 

 

「よくも、(わたくし)の箱を!」

 

「残念だったね。箱庭遊びは、もう終わりだ」

 

 

永斗が変身した、攻撃特化のダブル。

白と黒の、仮面ライダーダブル ファングジョーカーの姿。

 

 

「ここは店内だよ。マナーの悪いご主人様には、ご退店願おうか」

 

 

ダブルの蹴りがボックスに炸裂。その勢いは止まらず、ボックスは扉を破壊し、外に投げ出された。

 

 

 

「外…箱の外…?ダメ…お母様…お父様…違うのですわ…これは…!」

 

 

 

ボックスの様子がおかしい。何かに話しかけている…いや、独り言?

ともかく、まともに動けていない、今がチャンス…

 

 

「その声…リズさん…!?」

 

 

ボックスの様子を気にしたことりが、追って外に出てきてしまう。

そしてボックスはそれに気づき、半狂乱の様子でことりに向かって駆け出した。

 

 

『ことり!!』

 

「ことり先輩…だから言ったのに!」

 

 

ダブルもボックスを追う。

しかし、ボックスはことりの傍に行くと、ダブルが来たのを見計らい、箱を展開。

 

自分もろとも、ことりとダブルを箱に閉じ込めたのだ。

 

 

 

「これで戦えますわね。さぁ、始めましょう」

 

 

さっきまで2人がいた箱と同じ空間だ。だが、永斗はそんなことを気にしてはいない。

先程のやり取りで、ボックスが白府リズだということと、彼女が箱に執着を持っているのは分かった。そして、それを知ったことりがショックを受けているのも。

 

 

『永斗、どうした?』

 

「ボックス・ドーパント…白府リズだね。君はなぜ、あそこまで箱に固執する。

一連の事件の目的は何だ」

 

 

こんなこと、聞く必要なんて全くない。永斗も分かっている。

でも、優しすぎることりを引き離すには、知らしめておかなければならない。

 

ボックスは不可解そうにしながらも、語りだした。

 

 

「いいですわ。(わたくし)は両親の方針で、幼少期より習い事の英才教育を受け、学校にも行かせてもらえず、勉強は全て家庭教師でした。そこに自由は…全くありませんでした。

唯一遊び道具としてお父様が下さったのは、“箱庭”だけ。その中だけで、(わたくし)は自由でした」

 

 

「箱庭…?」

 

 

「えぇ。そんなある日、車の窓から見えたある男の子に、(わたくし)は一目ぼれ致しました。しかし、(わたくし)に自由は無い。ですが諦めきれない(わたくし)は、こう思ったのです。

 

いつも通り、箱庭の中なら、お父様もお母様も許してくださると」

 

 

永斗の体に悪寒が走る。

 

 

「まさか…」

 

「人が入れるだけの箱庭なんてありませんから、執事にも無理を言い、目を盗んで準備したのです。箱の形の建物を。

早速彼を招き入れたのですが、どうも帰ろうとしたり大声を出したりと、箱庭遊びのようには行きませんでした。ですので……」

 

「……!今、その人はどこに…」

 

「もしかしてお知り合いでしたか?それは申し訳ありません。

そうですね…

 

骨でよろしいなら、お返ししますわよ?」

 

 

気付けば斬りかかっていた。

アームファングがボックスのカッターを粉微塵に砕く。

 

 

『今まで攫った人達も、そうやってきたのか!』

 

「愉しませてもらっていますわ。(わたくし)と違って皆さん良い子ばかりで、少し“躾”をすればちゃんという事を聞いてくださいます♡」

 

『あぁ、そうかよ!胸糞悪ぃからもうしゃべんな!!』

 

 

怒りのこもった声で、ダブルの左側は蹴りと殴打を繰り返す。

 

 

「聞いたよね、ことり先輩」

 

 

攻撃を続けながら、永斗は問いかける。

ことりは、彼女が何を言っているのか分からなかった。ただ、怖く、異常で、冷たい。体が震える。体が動かない。そうか、これが…

 

 

「これが人の悪意だ。ことり先輩も、みんなも、こんな世界で生きるべきじゃない!」

 

 

逃げ出したい。それがことりの正直な心だった。

でも、それって…

 

 

 

「決めるよアラシ」

 

『あぁ、思いっきりドギツいの喰らわせて…』

 

 

ダブルは気付き、動きが止まる。

こんな狭い場所でマキシマムドライブを使えば、ことりも無事じゃすまない。

 

この箱から出ようにも、マキシマム並みの威力が必要。外側からの攻撃や、一部が破壊されている状態とは訳が違う。

 

 

 

『テメェ…ことりを入れたのはこれが狙いか!』

 

「ここまで強いドーパント相手だと押し切れない…どうすれば…」

 

 

 

ボックスの反撃が始まった。

スタミナを消費してしまったのか、防戦一方のダブル。

 

さらにボックスは、箱型エネルギー弾をことりに向けて放った。

 

 

『ヤロウ…!』

 

 

ダブルはことりの前に立ち、攻撃を受け続ける。その度に火花が散り、呻き声が上がる。

 

 

同じだ。

 

変わりたかったのに、変わったつもりだったのに。

籠から飛び立ったつもりが、結局守られてばかり。

 

 

そうだ、私は守られてばかりだ。

 

 

永斗君もアラシ君も、みんなを守るために戦ってる。私を守るため、悪意から引き離そうとしてる。

 

なんでそんなに強くなれるの…?なんで…私は……

 

 

ことりは前を向く。そこには攻撃を受けるダブルの姿が。

傷つき続ける、友達の姿があった。

 

 

そうだ。いくら強くたって、平気なはずなんて無い。

 

悪意の中で戦う2人は、誰かを守るために傷つき続けている。その為なら、その身が擦り減っても戦い続ける。

 

 

 

じゃあ、永斗君たちは___誰が守るの?

 

 

 

 

「永斗君…アラシ君…ごめんね。私、気付けなくて…」

 

 

 

 

ずっと守られてきた。優しい人たちの中で、ずっと。

 

強くならなきゃ、守ってくれた大切な人達を、今度は……私が守るために___

 

 

 

 

「終わり…ですわ!」

 

 

大きなエネルギー弾がダブルに飛ぶ。アームファングで斬れば爆発し、後ろのことりが危ない。受けるしか…ない。

ダブルは変身解除ギリギリで、それでも動く素振りを見せない。エネルギー弾はそのままダブルに……

 

 

 

「…え?」

 

 

 

当たらなかった。

いや、消えた。

 

ダブルを囲うように、ドームのような光が出現していた。

 

 

「そんな…もう一度!」

 

 

再び放つも、エネルギー弾はドームに触れた途端、分解され、光の粒子となる。

こんな力はファングジョーカーにはない。ということは…

 

閉鎖空間であるはずの箱の中に、朝日を思わせる光が差し込む。

 

よく見ると、天井に穴が開き、そこから光が漏れているようだ。そして、その小さな穴から光の球がゆっくりと降りてくる。

 

 

 

『永斗、これって』

 

 

光はことりの手に収まり、灰色のメモリに。

灰色ながらも輝かしいそのメモリには、翼で描かれた“B”の文字が。

 

 

「ことり先輩に適合したオリジンメモリ…“B”!」

 

 

ことりが望んだ、誰かを守る力。ことりはそのメモリを起動させ、地面に手を付ける。

 

 

「永斗君、ありがとう。でも、私は決めたの。皆が私を守ってくれるなら、私は皆を守るって」

 

「ことり先輩…それでも」

 

「私も強くなる。永斗君たちばっかりに辛い思いをさせたくない。

みんなが私を守ってくれるなら、私がみんなを守れば、完璧だよ♪」

 

 

 

 

《ブレッシング!》

 

 

 

ブレッシング__祝福の記憶。神の祝福は、全ての生命を守護する。その能力は、範囲内のメモリ能力を無効化する、絶対防御。

 

 

“B”のオリジンメモリ。地球から分離した26の意思にして、“庇護”の意思。

 

 

その能力で、ボックスの能力が消えていく。

箱が…崩壊する。

 

 

 

 

「馬鹿な…(わたくし)の箱が…箱が……」

 

 

箱が消え、外への脱出に成功した。

開けた場所に出て、ことりも逃がした。もう躊躇する必要は全くない。

 

 

 

「この街…秋葉原はどんなものでも受け入れてくれる。例えそれが、君や僕みたいな大罪人でも。ことり先輩もそうだ。だから、彼女にはこの街がよく似合う。だからこそ、この街を…彼女を泣かせるような奴は、絶対に赦さない!」

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

 

ファングメモリの角を三回弾き、脚に必殺の刃“マキシマムセイバー”が光り輝く。

ダブルはボックスに向かってジャンプ。しかし、ボックスの能力が発動し、ダブルを再び箱に閉じ込めてしまった。

 

 

「これで…(わたくし)の勝ち……!」

 

 

 

がしかし、その程度では

ファングジョーカーは止まらない。

 

 

箱は一瞬にして斬り刻まれ、勢いがついたダブルがボックスの前に。

背中を向け、構えを取っている一瞬は、さながら抜刀する侍。

 

 

 

「『ファングストライザー!』」

 

 

 

空中で振り返ると同時に放たれた、斬撃を纏った回転蹴りが、ボックスの体を裂断する。

 

 

 

「いやああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

断末魔と爆炎の中、蒼白い斬撃の跡が、獲物の終焉を語った。

 

 

 

倒れる白府リズ。そして粉々になったボックスメモリ。

しかし、白府リズが起き上がる。

 

 

 

「嫌だ…(わたくし)はまだ…」

 

「見事だ、仮面ライダーダブル」

 

 

音もなく声だけが現れたような感覚。

メイド喫茶の屋根の上に、突如としてドーパントが現れた。

 

赤い身体で、腰にナイフを仕舞っている。

 

 

「キル。リッパーと言えば通るか?」

 

『リッパー…瞬樹が言ってた刃物使いのドーパントか。ファーストに聞いた話と違うな、もう攻めてこないって話じゃなかったか?』

 

「勘違いするな。既に“憤怒”を捨て、“暴食”の下についた。あともう一つ、別に戦いに来たわけではない」

 

 

キルが手を伸ばすと、白府リズの足元を赤い紐のような物が縛る。

いや、これは…血?

 

 

「メモリブレイクで不要と判断。次はお前だ」

 

「そんな……嫌!放して!放しなさい!!」

 

 

 

血の色の紐は腕、肩、頭と伸びていき、全身を包み込むと、収縮していく。

 

 

 

「嫌だ!嫌だ!やめてぇぇぇぇぇッ!1」

 

 

 

そして数秒後には白府リズの姿は消え、血の色をした小さいボールに。

キルは屋根から降りると、そのボールを回収する。

 

 

巌窟王(ロックド・ロック)。せっかくだ、模倣させてもらった」

 

 

 

キルはまた屋根に飛び乗り、ダブルに背を向ける。

 

 

 

「第二幕は始まったばかり。この舞台の主役は“暴食”か、それとも…」

 

 

 

そう言うと、キルは消えてしまった。

 

 

「瞬樹の言う通り、肩にコネクタがあった」

 

『つーことは、アイツもファーストと同じ、オリジンメモリのドーパントってことか…』

 

 

ダブルは変身を解除し、ドライバー外す。

永斗はひどく疲れた様子で、呟いた。

 

 

「第二幕か……アニメなら一年は待ってくれるのにね」

 

 

すると、永斗はあるモノに気付く。

キルが落としたのか、それはハンカチくらいの大きさの布。

 

サメの口の骨の中に目玉が描かれた、不気味なマークが入っている。

 

 

「これって……」

 

 

 

 

_____________

 

 

8/16 活動報告書

 

 

事件が集結して1日。

永斗が帰ってきて早々に起こった事件は、無事幕を閉じた。

 

メモリが破壊されたことで、箱が全て解除された。瞬樹の箱は戦闘中に落ちていたらしく、店内の床で爆睡していたのが発見された。

 

白府リズの犯行は数年に渡って行われていたことが分かり、被害者の数は数十名。うち、無事に保護されたのが12名、衰弱した状態で治療が続いているのが9名、他の被害者は死体で見つかった。白骨化しているものから、四肢が切断されているものまであったらしい。彼女の両親もその中にいたという。

 

探偵をしてきた中でも、相当に悲惨な事件だった。ガイアメモリは人を狂わせる。だが、元から狂っている人間も存在する。そんな奴らがメモリを手にしたら…悪寒が走るような話だが、それが現実となってしまった。絶対に、こんな事件を繰り返してはいけない。

 

それにしても、白府リズのあの異常性……

 

 

「似ていた。ひょっとこ男に」

 

 

ひょっとこ男__コーヌス・ドーパントとして前に戦った相手だ。人の命を利用し、残虐非道なゲームを行って楽しんでいた外道。

 

それだけではない。今回の事件の不自然なまでの証拠のなさ、ひょっとこ男が持っていた脅しのための証拠品や情報。繋がりを感じざるを得ない。敵が少しずつだが見えてきた。

 

なんにせよ、今後は新聞やインターネットの情報じゃ、今回みたいに隠蔽される可能性がある。キーワードが無ければ地球の本棚も無力。

 

 

「これからは、信頼できる情報源が必要…か」

 

 

そして最後に、ことりのオリジンメモリ…“B"。

これで俺達の所有するオリジンメモリは9本。敵は確認する限り、スラッシュとキルの2本。所在不明が残り15本…

 

 

「悩みは多いな。でも、とりあえず今は…」

 

 

カレンダーに付いた赤丸印。一週間後、ライブが決定した。

ことりの歌詞も順調。衣装はメイド喫茶の物を拝借することで、ことりの負担をカット。場所はもちろん秋葉原!

 

 

準備が進み、練習を重ねること一週間……

 

 

 

ライブ当日。

 

 

「かわいいです!にこ先輩!」

 

「ふっふ~ん!まぁ、にこくらい可愛いと~、メイド服が似合いすぎちゃって困るのよね~!」

 

 

穂乃果におだてられて天狗になるにこ。

そんな中、別の場所で歓声が上がる。

 

 

「ど…どう?変じゃない?」

 

 

歓声の中心にいたのは絵里。メイド服は他のメンバーと同じはずなのに、なんかオーラが違う。ロングスカートがカチューシャが似合いすぎてて怖いくらいだ。

 

 

「やっぱ破壊力凄いわ」

 

 

想像以上に決まっている絵里を見て、永斗は思わず一言。

アラシはそんな絵里とにこを見比べ、割と故意的に噴き出した。

 

 

「何がおかしいのよ!」

 

「いや、馬子にも衣裳だなって…ククッ…」

 

「どーゆー意味!?」

 

 

 

「ゼェ…ハァ…!竜騎士…帰還……」

 

 

メイド服で盛り上がる雰囲気に割って入るように、息を切らして死にそうな瞬樹が入ってきた。

 

 

「貴様…この竜騎士を囮に使ったと思えば、今度は走ってチラシばら撒いてこいだと!?俺は選挙カーか!」

 

「お前、今回何もしてねぇだろうが。我慢しろ」

 

「黙れ黙れ!だからと言ってこの仕打ちはあんまりだろう!神は許しても、この俺が絶対に許さん!」

 

 

 

すると、「遅くなっちゃった!」という凜の声が聞こえ、メイド服に着替えた一年生3人が登場。と、同時にメイド花陽の姿が目に入った瞬樹。驚くほど自然にその場に倒れた。

 

 

「瞬樹くん!?」

 

「天使の域をも超える神々しさ…そうか、俺はこのために生まれたのか…」

 

 

後で分かったことだが、瞬樹はメイド好きだったらしい。花陽+メイドは文字通りの一撃必殺だったようだ。

 

 

「真姫も似合ってんな」

 

「あ…ありがと」

 

「ホント、可愛い子にはメイド服似合うよね。僕としては猫耳付けて欲しいところだけど。凛ちゃんとか絶対可愛いと思う」

 

「にゃ!?そ…そうかな?」

 

 

照れながらも「猫耳…」と呟く凛。

一方で、ことりが永斗の傍に寄ってきた。実家のような安心感のある可愛さだ。すごく衣装と馴染んでいる。

 

 

「ことり先輩…言っても聞きそうにないですね」

 

「うん♪これからもよろしくね、永斗君!」

 

「あー、ずるいわ。かわいすぎる」

 

 

やっぱり彼女は優しすぎる。でも、その優しさも、守りたいと思う可愛さも、立派な強さだ。

 

ことりはそれを一つ乗り越えた。守られる側から、守る側に。

ひとまずは、それを祝福するべきだろう。

 

 

 

 

そして、ライブが始まった。

 

曲名は「Wonder zone」。瞬樹の宣伝の甲斐あって、多くの人が集まった。

 

この街の愛を綴った、真っ直ぐな詩が、優しく、自由な街に響いていく。

歌声は風となり、街を吹き抜け、心を繋ぐ。

 

 

翼を広げた小鳥は、その風に乗り、巣から大空へと羽ばたいていった___

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

路地裏で口笛が聞こえる。

 

青いゴミ箱を蹴っ飛ばした少年は、取り出した写真を見て笑った。

 

 

「ライダーの、正体見たり高校生…ってね」

 

 

その写真は、仮面ライダーダブルと仮面ライダーエデン。そして、変身解除するアラシ、瞬樹、永斗。

写真はあと3枚。うち1枚は、アイドルショップに売られていた、メイド姿のことりの写真。

 

 

あとの2枚は風に飛ばされ、建物の壁に張り付く。

そこに映るのは2つの影。

 

 

 

赤い重装甲を纏った戦士と、マントを翻す白い戦士___

 

 

 

 




新メモリと最後の新キャラ!そして最後の写真は…まぁ、お分かりでしょう。第2章で登場予定の方々です。

本編では触れませんでしたが、ハイドープになったことでの能力は「光の壁」、「箱の中の完全把握」です。箱の定義は使用者の解釈に依存します。白府はこれで建物内の監視カメラの位置を把握し、死角からボックスの能力で消失させていった感じです。

過去編の前に合宿やります。それかコラボも手をつけたい所……
ことりの掘り下げ終わったし、次は花陽か……

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!
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