宮城の山奥に住む技師の女性。23歳。ロストドライバーを作るほどの高い技術を持つ。切風空介とは昔一緒に探偵をやっていた間柄らしく、「ミミック」と呼ばれていた。ゼロとも面識があるらしく、彼によると「1000年以上生きている仙人」らしいが、詳細は不明。“M”のメモリ(メモリーメモリ)と“真実”の感情で適合しており、その能力で他人の記憶を読み取れる。性格は元気溌剌、天真爛漫で、勢いのあまり周りを置いてけぼりにすることもしばしば。
名前の由来は「仮面ライダー電王」から、「野上良太郎」の「野上」を読み方と漢字を変えて「山神」。時間のイメージから「未来」。
特技:機械いじり、発明、その他大体できます(ドヤッ)
好きなもの:空助、動物さん、可愛い子、金平糖
嫌いなもの:片付け、お刺身
昨日ぶりの人は昨日ぶり、146です。久しぶりにキャラ紹介入れてみました。
アルファベットも底をつき始めたところなんですが…さて、どうするか。
人の気配のない夜の公園。そこで一人、段ボールの住処を背後に彷徨うホームレスの男がいた。
体は汚れ、髭は伸び、清潔感は微塵も感じられない。
そこに、黒いマスクをした小さな影が、軽い足音を鳴らしながら闇より現れる。
「暴食の言ってた“魔術師”、ですね」
マスクを取ると、烈の顔が虫の集まる街灯に照らされる。無表情な言葉に、ホームレスの男は聞こえていない様子で空き缶を拾い始めた。
「殺してほしい人がいます。達成報酬は…300万払いましょう」
それだけ聞くと、髭を生やした口で笑みを浮かべ、持っていた空き缶を放り投げた。
男は汚れ一つないハンカチを広げ、描かれた鮫の歯と目玉の紋章を月に重ねる。
空き缶は微塵の音もたてず、地に落下した。
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時は少し遡って7月22日。ゲーム研究会からオープンキャンパスの発表権を奪取してしばらくした日。そして
「みんな~!今日はにこの誕生会に来てくれてありがと~!にこっ♡」
矢澤にこの誕生日である。
皆はサプライズを計画したのだが、自分で宣伝し始めたため頓挫に。部室でパーティーを開き、各々持ち寄ったプレゼントを渡しているわけだが…
「なんでアンタはプレゼントの一つも無いのよ!」
「うるせぇ、こっちだって死活問題なんだ。テメェに振る袖はねぇ。
そもそも言うのが遅いんだよ!誕生日なら一か月前に申告しろやクソチビ!」
いわゆる誕生日席で三角帽をかぶって祝われているにこは、一人だけ何も持て来なかったアラシと喧嘩していた。
「なぜあの2人はいつも喧嘩腰なのでしょう…」
「さぁ?似たもの同士だと思うんだけどねぇ…」
それを見て呆れる海未に、フライドポテトをカリカリかじりながら永斗が答えた。
一方、一人だけ茶碗にご飯を盛っていた花陽。パソコンにメールが届き、確認する。
「え…ええぇぇぇぇぇぇっ!!??」
その直後、誕生日パーティーに似つかわしくない、悲鳴にも似た花陽の声が響いた。
「どうした我が天使!魔界の敵襲か!全員俺の後ろに隠れろ!」
「それで、どうしたの?」
「え…絵里先輩…皆さんも見てください…こ…これ……」
そう言われて部室のパソコンの画面を覗く。メールが表示されており、何やら短い文章の上には「μ’s様へ」と書かれている。
「んで、なんだよコレ」
「分からないんですか!?Summer Girls Festival、通称サガフェス!毎年夏の終わりに行われるスクールアイドルの一大イベントです!ラブライブの開催決定前は、スクールアイドルといえばこのイベントだったんです!」
「お…おぉ…。で、そのサバフェスがどうしたんだ?」
「サガフェスです!この大イベントに……注目アイドル枠でμ’sにお誘いが来たんです!!」
「なんですって!?」
それを聞くや否や、座っていたにこが帽子を捨ててすっ飛んできた。
パソコンの前の一同をかき分けその画面を確認すると、目を輝かせて一人で何やら笑っている。
そんな中、絵里と希は冷静に。
「日程は一か月後、8月29日ね。是非とも出たいところだけど…」
「このちょっと後に文化祭やね。夏休みの終わりってこともあるし…どうする?」
「何言ってんのよ!出るわ!出るに決まってるじゃない!」
相談が始まりそうなところに、有無を言わせない勢いで食い気味ににこが割り込む。凄くテンションが上がっているのが目に見えるようだ。
「最高の誕生日プレゼントよ!待ちに待ったこのサガフェスで…この宇宙ナンバーワンアイドルにこにーが、ラブにこパワーで最高のライブを届けるの!」
机に脚を乗せ、高笑いするにこ。いつも以上にテンションが暴走しているにこに、思わず皆少し引いてしまった。
その中で、穂乃果は少し不思議そうにこぼした。
「なんでにこ先輩、あんなに嬉しそうなんだろう…」
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そして夏合宿を経た、8月27日。
「あー。それはアレよ。サガフェスっていうと、にこの前からの目標だったから」
場所は切風探偵事務所。サガフェスも目前に迫る中、ポッキーをかじりながら穂乃果に詳細を説明しているのは、アラシ達がユニコーン事件で知り合った元アイドル研究部員の久坂陽子だ。
「前っていうと…にこちゃんが一年生の時からですか?」
「話だと小学生だったか中学生だったか…そのくらい前から目指してたって聞いてる。
それより、アイドル研究部は敬語禁止になったんだって?ちょっと私のことも陽子ちゃんって呼んでみてよ」
「え…えぇ…?」
「ったく…夏休みも終わるってのに、キックボクシング部は暇なのか?」
困っていた穂乃果に助け船を出すアラシ。サガフェスのライブが近く、準備で少しイライラしているようだ。
「今日はオフよ。後輩が揃って今日のお祭りに彼氏連れで行くって言うから…
それにしても…サガフェスかぁ。もうそんな時期なのね。これはちょっとタイミング悪かったかな?」
「「タイミング?」」
「うん。そろそろ来ると思うんだけど…」
そう言われ、ふと扉の方を見ると、半開きした扉から誰かがのぞき込んでいるのが見えた。その隙間から、上で結んだ髪の毛がぴょこんとはみ出ている。
「誰だ?」
「やっぱり来てた。ほらほら、こっち来なって」
陽子に促され、その人物は気恥ずかしそうに事務所内へと入ってくる。
さっき見えたように、前髪は上で結んであり、草の葉のようになっている。背はにこより少し高い程度の女子だ。
「音ノ木坂2年の茂枝ミズノちゃん。演劇部のエースって有名だけど、知らない?」
「知ってます!隣のクラスにすっごい声が奇麗な子がいるって、ことりちゃん言ってた!」
「あぁ…クラスが違うのか。道理で知らないわけだ。
んで、用件は?依頼なんだろ」
アラシが問うも、ミズノは下を向いたまま話そうとしない。
「アラシ君が怖いから!ほらもっと笑って……!」
「ちょ…穂乃果、顔を引っ張るな、痛い!」
「あー、違うんだ。ミズノは話さないんじゃなくて…話せないんだ」
それを聞いて、2人は黙ってミズノを見る。見られて恥ずかしそうに顔を隠してしまった。ここだけ見れば単に恥ずかしがり屋のようにも見えるが…
「ミズノは確かに舞台以外じゃこんなのだけど、そうじゃないんだ。ミズノは文字通り“声が出ない”。これを見たら分かるかな」
ミズノは顔を下げたまま手を叩く。しかし、そこからは全く音が出なかった。
他にも机を叩いたりするが、やはり無音。
「それじゃあ、ミズノちゃんから音が出なくなっちゃった…ってこと?」
「んで、こんな芸当はドーパントに間違いないって訳だ。確かに今来てほしくはなかったが…」
アラシはミズノを一瞥する。顔を隠してはいるが、その表情は暗い。泣きそう…というより、ひとしきり泣いた後だろう。少し目が腫れているのが分かる。
アラシはさっきまで何やら書いていた紙を机の本立てに突っ込み、日差し避けの帽子をかぶった。
「依頼は“声を取り戻す”でいいな?引き受けた。ソッコーで片づけてやる」
ミズノの顔が上がり、表情も少し晴れる。信じてもらえたこと、そして陽子から聞いた通りの頼もしさが何より嬉しかった。
しかし、声を消すドーパント。これがこの状況で何を意味するのか
穂乃果とアラシは、ここで気付くべきだったのかもしれない。
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「ふぁ~あ…」
場所は音ノ木坂学園。穂乃果が練習に来たのを見届けると、永斗は下の階でスポーツドリンクを作り始めた。欠伸をしながら水を入れていると、背後から襟を掴まれ、勢いよく体が後ろに引っ張られた。
「うぉっ、ビックリした。ってなんだ、アラシか」
「瞬樹はどうした」
「皆のアイス買いに行ったよ」
「そうか。じゃあ取り敢えず検索だ」
「えー…このタイミングで依頼?」
文句を垂れ流しながらも、永斗は依頼の概要を聞き、白い本を片手に地球の本棚を展開した。
先日の戦いの痕は消え、以前のような本棚だけの空間が広がっている。
「声を取り戻す…ねぇ。まるで人魚姫だ」
「あ、そうだ。アイツらの調子はどうだ?」
「それ今聞く?まぁ…張り切ってるよ。特ににこちゃん」
「だろうな。アイツこの間、鏡の前で決め顔とかポーズとか練習してたからな。訳分かんねぇ」
「へー、結構見てんだね、アラシ」
「勝手に視界に入ってくるだけだ。邪魔で仕方ねぇ」
気を取り直し、検索準備を始める永斗。目を閉じ、腕を広げる。
「じゃあまずは“声”」
「いや、声が消えたっていうより、茂枝ミズノの“音”が消えたって感じだ」
「そうだったね。ピンポイントなテレビのミュート機能みたいな?
それじゃ最初のキーワードは“無音”」
本棚が移動するが、案の定絞り切ることはできない。
永斗は更なる情報を求める。
「音が消えた時の事を詳しく」
「数日前の帰宅途中、突然首筋に刺されたような痛みが生じると、その直後に声が出なくなっていたらしい」
「まぁそれがドーパントの攻撃と見て間違いないだろうね。
となると可能性は3つ。①シンプルに針②静電気のような不可視の攻撃③虫のような生物を使役しての攻撃」
「その直後、誰かとぶつかったらしい。パニック状態で顔も姿も覚えてねぇらしいが。
となると①だろうな」
「だね。それが犯人と考えればの話だけど…ぶつかった際に刺さったままの針を回収した。回収しないといけないってことは、不可視でも自律でもないわけだからね」
永斗は“針”をさらに入力。本棚がかなり減る。
「にしても、今回の奴も手強そうだね」
「痛みが走れば声を出す。つまり、針より先に消えた声に気付く。そのままパニック状態に陥っから、姿を記憶にも残さず、気付かれないまま針を回収できる…今回みたいな、声にこだわりを持つ奴なら尚更だ。大胆かつ安全な策…余程の自信家で、慎重。そんでかなり犯行慣れしてやがる」
永斗は気になっていた。前回の犯人、ボックス・ドーパントこと白府リズ。彼女はこれまでの犯罪者とは一線を画すほどに狡猾、それでいて異常。今回の事件も似た雰囲気を思わせる。
「もしかして…」
キルが白府リズを回収する際に落としていった布。そこに描いてあった紋章…
「キーワードを追加。“鮫の歯”、“目玉”、“暴食”」
「おい永斗、それって…」
以前に何度か遭遇したメモリセールスのアタッシュケースには、決まってそのマークが刻まれていた。そのため、アラシ達はこれを“組織のマーク”と考えていた。
しかし憤怒のメンバー、そして蘇った永斗の記憶の中での怠惰直属の研究者たち。彼らは誰一人として、このマークを身に着けていなかった。
つまり、このマークは組織ではなく“暴食”のマーク。白府リズ、キルは暴食配下だった可能性が高い。
そして暴食が率いる集団、永斗はその正体にも目星がついていた。
「前じゃ無理だったろうけど、記憶が戻って、検索範囲が広がった今なら…」
本棚が遠くへと消えていき、目の前に一冊の本だけが残った。
表紙に刻まれるのは「silence」の文字。
「ビンゴ。メモリはサイレンスだ」
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夏も終わりかけているが、暑さは容赦を知らない。
そんな中、買ってきた全員分のアイスの入った袋を引っさげ、瞬樹は鼻歌混じりにノリノリで帰っていた。
暑さで頭がおかしくなったわけではない。何故機嫌がいいのかというと、この男、貰った金で自分だけ2つもアイスを買ったのだ。
瞬樹はスイカバーを太陽にかざし、ほくそ笑む。
「西瓜烈斬…いや、赤果氷砕槍!」
満足そうにスイカバーを振りかざす瞬樹、子供に笑われているのは気付かない。
今度はあずきバーを取り出して
「赤銅金剛鎚と書き…トールハンマー!」
二刀流!と叫びながらアイスを振り回す瞬樹。やはり頭がおかしくなってしまったのかもしれない。
ふと冷静に戻り、笑っている子供に気付くと、大人しくベンチに座った。
あずきバーの堅さは知っている。瞬樹は意を決して、あずきバーに噛みつこうとする
次の瞬間、風でも吹いたかのように、あずきバーが瞬樹の手から弾かれた。
「誰だ!」
瞬樹は立ち上がり、エデンドライバーを構える。しっかりスイカバーはホールドしたままだ。
突然誰もいないところに武器を構える瞬樹を見て、子供がまた笑う。
傍目には瞬樹がアイスを落としただけのように見えるだろう。
しかし、瞬樹の目は捉えた。“銃弾があずきバーを貫いた”光景を。
が、全く発砲音も聞こえなかった。超遠距離射撃を警戒し、瞬樹は木の多い公園に逃げ込んだ。
「ッ!」
瞬樹がエデンドライバーを振ると、再び放たれた銃弾が弾かれた。
火花は見えたが、当たった金属音は聞こえなかった。
しかし、銃弾の放たれた方向は上からではなく、正面。そして、僅かに火薬の匂い。
「近い…?そこか!」
少し先に隠れる人影を発見。気付かれたことに気付いたのか、その人影は逃げだす。
瞬樹は駆ける。人影を追って走った。メモリガジェットを置いてきたため、全力で走った。
人影との距離は縮まっていき、その姿を捕らえた。みすぼらしい格好の男、公園で見かけるホームレスだ。
「逃げられると…思うなっ!」
完全に追いつき、男の服を掴んだ。
が、手答えがあまりにも軽い。そう、掴んだのは服だけ。かぶっていた帽子や付け髭、ズボンがアスファルトに落ちる。
「ブラボー。鬼ごっこの勝ちは譲ろう」
いつの間にか背後に立つ男。しかし、その姿はまるで別人。タキシード姿で、片目だけを見せるような仮面をかぶっている。仮面の口の部分には、ファスナーのようなデザインが。
「なんだビックリマジシャン。暑そうな恰好しやがって」
「正装だよ。それにマジシャンではなく…魔術師と呼んでもらいたいね!」
ピストルを構えた男は、再び無音で発砲。しかし、瞬樹は即座に躱し、銃弾は瞬樹の肩をかすめた。
「やはり銃は苦手だね。腕を撃ってしばらく大人しくさせたかったんだが…」
《サイレンス!》
胸ポケットから取り出した赤いドーパントメモリ。横顔と口の前で立てられた人差し指で、Sと描かれている。
手袋を外し、手首の生体コネクタにメモリを挿入した。
「ドーパントか!」
《ドラゴン!》
「変身!」
すっかり溶けてしまったスイカバーの棒を投げ捨て、エデンドライバーにドラゴンメモリを装填。瞬樹は白銀の鎧を纏い、仮面ライダーエデンに変身。
一方で男もドーパントへと姿を変えた。
姿は比較的人に近い。灰色の体に、忍者を想起させる鎖帷子が全身を覆う。胸にある大きな口のような部位は、糸で縫い付けられている。他に目立った装飾は無く、口元は真っ黒なフェイスマスクに覆われている。
「騎士の名の下に、貴様を裁く!」
サイレンスはピストルを捨て、別の銃を取り出した。ピストルより一回り大きい。
引き金を引くと、やはり無音で弾が発射される。エデンドライバーで防ぐが、衝撃が体まで伝わってきた。
「特注の銃だよ。人間じゃ耐えられない反動の代わりに、とんでもない威力を見せてくれる」
「おのれ…ならば!」
《ハイドラ!》
エデンはハイドラメモリをバックルのスロットに装填。
《ハイドラ!マキシマムオーバー!!》
マキシマムオーバーを発動し、バックパックの浮遊攻撃ユニット“ヴェノムブレイカー”を起動。九つの蛇を模した砲台が、サイレンスに照準を合わせる。
3つのユニットが高密度レーザーを発射。しかし、サイレンスは身軽に避け、飛び上がる。
すると、その姿は背後に。着地の音も消えており、対応に遅れてしまう。直後、銃弾の痛みだけがエデンに走った。
「くっ…!」
尚も攻撃を続けるが、サイレンスはヒョイヒョイと躱してしまう。隙を見つければ、無音で接近し攻撃。サイレンスは足音も攻撃音も無い。それが想像以上に厄介だった。
だが、エデンも諦めはしない。幸い、サイレンスの攻撃力はそこまでではない。タイミングを見計らい…
「そこだ!」
「ガアァっ!」
レーザーがサイレンスの体に直撃。サイレンスは痛々しい音と共に、背中を地面で汚して地に伏せた。
九本のユニットを使い切り、エデンのマキシマムオーバーが解除される。
「音は聞こえんが、戦えないというまでではない!終わりだ手品師!」
「魔術師とは呼んでくれないみたいだねぇ…
そうだ騎士の仮面ライダー、最後にとっておきのマジックをしよう」
「何?」
エデンはサイレンスの動きに警戒する。音が聞こえない以上、目視しか術がない。
ここでマジックの基本を確認しよう。それは…
“いかにタネから注意を逸らすのか”。
瞬間、エデンの体に横から凄まじい衝撃が襲った。
「君が無様にぶっ飛ばされる、というマジックだ。気に入ってもらえたかな?」
エデンがサイレンスによって誘導されていたのは、道路の真ん中。そしてエデンを襲ったのは、優に10トンを超える大型トラック。
気付くはずもない。走行音も聞こえず、注意は全てサイレンスに注がれていたのだから。
何よりそのトラックは無人。れっきとした、サイレンスによる攻撃だった。
「悪いが、2人目の標的は君じゃない」
トラックはそのまま建物に激突し、爆発。
倒れるエデンを尻目に、サイレンスは足音を立てず消えていった。
____________
「瞬樹の野郎…連絡つかねぇ、何やってんだ」
サイレンスの事を伝えようとするも、瞬樹が電話に出ず、苛立つアラシ。
永斗のおかげで、サイレンス・ドーパントの能力詳細が分かった。メモリ自体はかなり弱い部類。まずは見つけてシバく。
「永斗は調べものあるって帰りやがったし…人手が足りねえな。情報収集に長けた奴…」
ふとアラシの脳裏ににこの顔がちらつく。だが、すぐに払拭した。今、彼女に頼るわけにはいかない。
「いた!アラシ、アンタ何やってんのよ!」
「ゲッ…」
「ゲッって何よ。ゲッって」
そんな考えを読むかのように、休憩で降りてきたにこと出くわしてしまった。
「サガフェスは目前。アンタも私たちの調整に付き合いなさい!特に2番のステップに不安が…」
「あー、俺はちょっと捜査に行ってくる。ダンスのことは絵里に聞いてくれ」
そう言って立ち去ろうとするアラシ。
しかし、にこはそれを見過ごすわけがなかった。
「待ちなさいよ!まさかとは思うけど…こんな時まで依頼?」
「……あぁ、音ノ木坂の学生からの依頼だ。ライブ準備はちゃんとすっから、心配すんな」
「信じらんない!サガフェスは私の夢なの!μ’sのためにも、絶対に成功させなきゃいけないのよ!アンタはμ’sより、そのよく知らない奴の方が大事って言うの!?」
にこが激昂する。喧嘩することは度々だったが、こうも感情をぶつけられるのは初めてだった。
アラシも分かっている、にこのアイドルに対する思いは。それでも…
「依頼人を大切にしない奴は探偵失格だ。彼女は俺達を頼って来た、俺達にはそれに応える義務がある。
断じてそこに貴賤を設けるつもりは無い」
アラシは言い切った。ここだけは譲れなかったから。
アイドルと探偵の両立の上で、避けては通れない問題だ。
だが、少し相手とタイミングが悪かった。
「…そう、やっぱり。アンタは私のこと嫌いだから…」
「は?お前、何言って…」
「分かってるのよ!!いつも憎まれ口叩く私のことが嫌いなんでしょ!だから協力したくないんでしょ!?本当は…私なんていなけりゃいいって思ってる癖に!!」
「おい…マジで何言ってんだ、このバカ!」
「じゃあなんで誕生日に何もしてくれなかったのよ!」
「…それは……」
そう、あの時アラシは珍しく嘘をついた。プレゼントを用意するくらい金はあったのだ。にこもそれに気づいていた。それでもアラシは、にこにプレゼントを渡さなかった。
にことアラシは仲が悪いように見えて、互いに敵意があるわけではない。そんな微妙な関係。
が、にこの方は少しずつ不安が溜まっていたのだ。
本当に嫌われていたら。
他の皆のように、仲間と思われてなかったら。
『俺が仲間になってやる』
あの言葉は、にこを一人の世界から連れ出した。
その言葉がにこを支えていた。
もし、あの言葉に意味なんて無かったら。
もし、また裏切られたら。いや…
ずっと信じられてなんていなかったら。
やっぱり、仲間なんて最初から誰も___
「やっとここまで来たの…私が夢を掴むの!私のことが嫌いならもう邪魔しないで!!私だって……
アンタのことなんて大っ嫌いよ!!」
歪な叫びが校舎に響く。
にこは階段を駆け下り、行ってしまった。
アラシは呼び止めなかった。
いくらデリカシーが無いからといっても、分かる。これはアラシの怠慢が招いた末路だ。
「バカ……は俺か。ったく…」
しかし、実に数分後。
アラシは呼び止めなかったことを後悔することになる。
______________
「はぁ…はぁ…」
つい学校の外まで出てしまった。
にこは心の中で言い聞かせる。
間違ってない。前からそうだった。
夢を掴む以外に、欲しいものなんてない。それだけのために生きればいい。
「やぁ、矢澤にこちゃん」
音もなく現れたタキシードの仮面の男。
にこは助けを呼ぼうとする。だが、躊躇ってしまった。
助けを呼ぶ?誰に?アラシに?
あんなことを言ってしまったのに?
その躊躇の時間で、にこは背後から口を押えられ、自由を奪われてしまう。
抵抗するにこ。しかし、体格差が大きい。腕を振りほどくことが出来ない。
「おっと暴れるねぇ。君、予防接種で逃げ出しちゃうタイプだろう?
ダメだよ?そういうのって、こっちに任せてくれれば痛くないようにしてるんだから
暴れたら、うっかり殺してしまうかもしれない」
恐怖が背中にへばりつくような感覚。この男は本当に殺す。
アラシたちとの経験が、皮肉にもそれを告げていた。
「大丈夫。殺しはしない。
死んでは貰うけどね」
___________
「にこちゃーん!」
「どこにゃー」
「にこっちー?」
アラシから事情を聞き、走り去ってしまったにこを探すμ’s。
そんな中、真姫と希が、校舎裏で倒れているにこを発見した。
「にこちゃん!?」
真姫が容態を確認する。異常は特に見られない。
すると、にこが目を覚ました。
「にこっち!大丈夫!?」
「何があったの?私のこと分かる?」
朧げな視界と記憶で、真姫に答えようと口を開く。
そして気付いた衝撃で、意識が叩き起こされた。
おかしい。
いつものようにやってるのに。それなのに聞こえない。
何度やっても。何度やっても。信じたくない現実が首を絞める。
「にこちゃん?どうしたの、答えて!」
「にこっち!?」
夢が崩れ去る音で、もはや何も聞こえない。
それは、アイドルとしての“死”を意味する。
声が___消えた。
今回登場したのはFe_Philosopherさん考案の、「サイレンス・ドーパント」でした!お待たせしました!サイバーでは扱いが雑になってしまったので、今回こそは…!
さて、にことアラシが本格的に仲違い。しかもアイドルとしては大ピンチ。しかも強敵ときた…どうするんでしょうかね(他人事)。
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!