ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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山神未来(やがみみく)
宮城の山奥に住む技師の女性。23歳。ロストドライバーを作るほどの高い技術を持つ。切風空介とは昔一緒に探偵をやっていた間柄らしく、「ミミック」と呼ばれていた。ゼロとも面識があるらしく、彼によると「1000年以上生きている仙人」らしいが、詳細は不明。“M”のメモリ(メモリーメモリ)と“真実”の感情で適合しており、その能力で他人の記憶を読み取れる。性格は元気溌剌、天真爛漫で、勢いのあまり周りを置いてけぼりにすることもしばしば。
名前の由来は「仮面ライダー電王」から、「野上良太郎」の「野上」を読み方と漢字を変えて「山神」。時間のイメージから「未来」。

特技:機械いじり、発明、その他大体できます(ドヤッ)
好きなもの:空助、動物さん、可愛い子、金平糖
嫌いなもの:片付け、お刺身


昨日ぶりの人は昨日ぶり、146です。久しぶりにキャラ紹介入れてみました。
アルファベットも底をつき始めたところなんですが…さて、どうするか。


第46話 チェンジ・Y・ワールド /晩夏の人魚姫

人の気配のない夜の公園。そこで一人、段ボールの住処を背後に彷徨うホームレスの男がいた。

体は汚れ、髭は伸び、清潔感は微塵も感じられない。

 

そこに、黒いマスクをした小さな影が、軽い足音を鳴らしながら闇より現れる。

 

 

「暴食の言ってた“魔術師”、ですね」

 

 

マスクを取ると、烈の顔が虫の集まる街灯に照らされる。無表情な言葉に、ホームレスの男は聞こえていない様子で空き缶を拾い始めた。

 

 

「殺してほしい人がいます。達成報酬は…300万払いましょう」

 

 

それだけ聞くと、髭を生やした口で笑みを浮かべ、持っていた空き缶を放り投げた。

男は汚れ一つないハンカチを広げ、描かれた鮫の歯と目玉の紋章を月に重ねる。

 

空き缶は微塵の音もたてず、地に落下した。

 

 

 

____________

 

 

 

 

時は少し遡って7月22日。ゲーム研究会からオープンキャンパスの発表権を奪取してしばらくした日。そして

 

 

「みんな~!今日はにこの誕生会に来てくれてありがと~!にこっ♡」

 

 

矢澤にこの誕生日である。

皆はサプライズを計画したのだが、自分で宣伝し始めたため頓挫に。部室でパーティーを開き、各々持ち寄ったプレゼントを渡しているわけだが…

 

 

「なんでアンタはプレゼントの一つも無いのよ!」

「うるせぇ、こっちだって死活問題なんだ。テメェに振る袖はねぇ。

そもそも言うのが遅いんだよ!誕生日なら一か月前に申告しろやクソチビ!」

 

 

いわゆる誕生日席で三角帽をかぶって祝われているにこは、一人だけ何も持て来なかったアラシと喧嘩していた。

 

 

「なぜあの2人はいつも喧嘩腰なのでしょう…」

 

「さぁ?似たもの同士だと思うんだけどねぇ…」

 

 

それを見て呆れる海未に、フライドポテトをカリカリかじりながら永斗が答えた。

一方、一人だけ茶碗にご飯を盛っていた花陽。パソコンにメールが届き、確認する。

 

 

「え…ええぇぇぇぇぇぇっ!!??」

 

 

その直後、誕生日パーティーに似つかわしくない、悲鳴にも似た花陽の声が響いた。

 

 

「どうした我が天使!魔界の敵襲か!全員俺の後ろに隠れろ!」

 

「それで、どうしたの?」

「え…絵里先輩…皆さんも見てください…こ…これ……」

 

 

そう言われて部室のパソコンの画面を覗く。メールが表示されており、何やら短い文章の上には「μ’s様へ」と書かれている。

 

 

「んで、なんだよコレ」

「分からないんですか!?Summer Girls Festival、通称サガフェス!毎年夏の終わりに行われるスクールアイドルの一大イベントです!ラブライブの開催決定前は、スクールアイドルといえばこのイベントだったんです!」

 

「お…おぉ…。で、そのサバフェスがどうしたんだ?」

 

「サガフェスです!この大イベントに……注目アイドル枠でμ’sにお誘いが来たんです!!」

 

「なんですって!?」

 

 

それを聞くや否や、座っていたにこが帽子を捨ててすっ飛んできた。

パソコンの前の一同をかき分けその画面を確認すると、目を輝かせて一人で何やら笑っている。

 

そんな中、絵里と希は冷静に。

 

 

「日程は一か月後、8月29日ね。是非とも出たいところだけど…」

 

「このちょっと後に文化祭やね。夏休みの終わりってこともあるし…どうする?」

「何言ってんのよ!出るわ!出るに決まってるじゃない!」

 

 

相談が始まりそうなところに、有無を言わせない勢いで食い気味ににこが割り込む。凄くテンションが上がっているのが目に見えるようだ。

 

 

「最高の誕生日プレゼントよ!待ちに待ったこのサガフェスで…この宇宙ナンバーワンアイドルにこにーが、ラブにこパワーで最高のライブを届けるの!」

 

 

机に脚を乗せ、高笑いするにこ。いつも以上にテンションが暴走しているにこに、思わず皆少し引いてしまった。

 

その中で、穂乃果は少し不思議そうにこぼした。

 

 

「なんでにこ先輩、あんなに嬉しそうなんだろう…」

 

 

 

____________

 

 

そして夏合宿を経た、8月27日。

 

 

「あー。それはアレよ。サガフェスっていうと、にこの前からの目標だったから」

 

 

場所は切風探偵事務所。サガフェスも目前に迫る中、ポッキーをかじりながら穂乃果に詳細を説明しているのは、アラシ達がユニコーン事件で知り合った元アイドル研究部員の久坂陽子だ。

 

 

「前っていうと…にこちゃんが一年生の時からですか?」

 

「話だと小学生だったか中学生だったか…そのくらい前から目指してたって聞いてる。

それより、アイドル研究部は敬語禁止になったんだって?ちょっと私のことも陽子ちゃんって呼んでみてよ」

 

「え…えぇ…?」

 

「ったく…夏休みも終わるってのに、キックボクシング部は暇なのか?」

 

 

困っていた穂乃果に助け船を出すアラシ。サガフェスのライブが近く、準備で少しイライラしているようだ。

 

 

「今日はオフよ。後輩が揃って今日のお祭りに彼氏連れで行くって言うから…

それにしても…サガフェスかぁ。もうそんな時期なのね。これはちょっとタイミング悪かったかな?」

 

「「タイミング?」」

 

「うん。そろそろ来ると思うんだけど…」

 

 

そう言われ、ふと扉の方を見ると、半開きした扉から誰かがのぞき込んでいるのが見えた。その隙間から、上で結んだ髪の毛がぴょこんとはみ出ている。

 

 

「誰だ?」

 

「やっぱり来てた。ほらほら、こっち来なって」

 

 

陽子に促され、その人物は気恥ずかしそうに事務所内へと入ってくる。

さっき見えたように、前髪は上で結んであり、草の葉のようになっている。背はにこより少し高い程度の女子だ。

 

 

「音ノ木坂2年の茂枝ミズノちゃん。演劇部のエースって有名だけど、知らない?」

 

「知ってます!隣のクラスにすっごい声が奇麗な子がいるって、ことりちゃん言ってた!」

 

「あぁ…クラスが違うのか。道理で知らないわけだ。

んで、用件は?依頼なんだろ」

 

 

アラシが問うも、ミズノは下を向いたまま話そうとしない。

 

 

「アラシ君が怖いから!ほらもっと笑って……!」

「ちょ…穂乃果、顔を引っ張るな、痛い!」

 

「あー、違うんだ。ミズノは話さないんじゃなくて…話せないんだ」

 

 

それを聞いて、2人は黙ってミズノを見る。見られて恥ずかしそうに顔を隠してしまった。ここだけ見れば単に恥ずかしがり屋のようにも見えるが…

 

 

「ミズノは確かに舞台以外じゃこんなのだけど、そうじゃないんだ。ミズノは文字通り“声が出ない”。これを見たら分かるかな」

 

 

ミズノは顔を下げたまま手を叩く。しかし、そこからは全く音が出なかった。

他にも机を叩いたりするが、やはり無音。

 

 

「それじゃあ、ミズノちゃんから音が出なくなっちゃった…ってこと?」

 

「んで、こんな芸当はドーパントに間違いないって訳だ。確かに今来てほしくはなかったが…」

 

 

アラシはミズノを一瞥する。顔を隠してはいるが、その表情は暗い。泣きそう…というより、ひとしきり泣いた後だろう。少し目が腫れているのが分かる。

 

アラシはさっきまで何やら書いていた紙を机の本立てに突っ込み、日差し避けの帽子をかぶった。

 

 

「依頼は“声を取り戻す”でいいな?引き受けた。ソッコーで片づけてやる」

 

 

ミズノの顔が上がり、表情も少し晴れる。信じてもらえたこと、そして陽子から聞いた通りの頼もしさが何より嬉しかった。

 

しかし、声を消すドーパント。これがこの状況で何を意味するのか

穂乃果とアラシは、ここで気付くべきだったのかもしれない。

 

 

_____________

 

 

「ふぁ~あ…」

 

 

場所は音ノ木坂学園。穂乃果が練習に来たのを見届けると、永斗は下の階でスポーツドリンクを作り始めた。欠伸をしながら水を入れていると、背後から襟を掴まれ、勢いよく体が後ろに引っ張られた。

 

 

「うぉっ、ビックリした。ってなんだ、アラシか」

 

「瞬樹はどうした」

 

「皆のアイス買いに行ったよ」

 

「そうか。じゃあ取り敢えず検索だ」

 

「えー…このタイミングで依頼?」

 

 

文句を垂れ流しながらも、永斗は依頼の概要を聞き、白い本を片手に地球の本棚を展開した。

先日の戦いの痕は消え、以前のような本棚だけの空間が広がっている。

 

 

「声を取り戻す…ねぇ。まるで人魚姫だ」

 

「あ、そうだ。アイツらの調子はどうだ?」

 

「それ今聞く?まぁ…張り切ってるよ。特ににこちゃん」

 

「だろうな。アイツこの間、鏡の前で決め顔とかポーズとか練習してたからな。訳分かんねぇ」

 

「へー、結構見てんだね、アラシ」

 

「勝手に視界に入ってくるだけだ。邪魔で仕方ねぇ」

 

 

気を取り直し、検索準備を始める永斗。目を閉じ、腕を広げる。

 

 

「じゃあまずは“声”」

 

「いや、声が消えたっていうより、茂枝ミズノの“音”が消えたって感じだ」

 

「そうだったね。ピンポイントなテレビのミュート機能みたいな?

それじゃ最初のキーワードは“無音”」

 

 

本棚が移動するが、案の定絞り切ることはできない。

永斗は更なる情報を求める。

 

 

「音が消えた時の事を詳しく」

 

「数日前の帰宅途中、突然首筋に刺されたような痛みが生じると、その直後に声が出なくなっていたらしい」

 

「まぁそれがドーパントの攻撃と見て間違いないだろうね。

となると可能性は3つ。①シンプルに針②静電気のような不可視の攻撃③虫のような生物を使役しての攻撃」

 

「その直後、誰かとぶつかったらしい。パニック状態で顔も姿も覚えてねぇらしいが。

となると①だろうな」

 

「だね。それが犯人と考えればの話だけど…ぶつかった際に刺さったままの針を回収した。回収しないといけないってことは、不可視でも自律でもないわけだからね」

 

 

永斗は“針”をさらに入力。本棚がかなり減る。

 

 

「にしても、今回の奴も手強そうだね」

 

「痛みが走れば声を出す。つまり、針より先に消えた声に気付く。そのままパニック状態に陥っから、姿を記憶にも残さず、気付かれないまま針を回収できる…今回みたいな、声にこだわりを持つ奴なら尚更だ。大胆かつ安全な策…余程の自信家で、慎重。そんでかなり犯行慣れしてやがる」

 

 

永斗は気になっていた。前回の犯人、ボックス・ドーパントこと白府リズ。彼女はこれまでの犯罪者とは一線を画すほどに狡猾、それでいて異常。今回の事件も似た雰囲気を思わせる。

 

 

「もしかして…」

 

 

キルが白府リズを回収する際に落としていった布。そこに描いてあった紋章…

 

 

「キーワードを追加。“鮫の歯”、“目玉”、“暴食”」

 

「おい永斗、それって…」

 

 

以前に何度か遭遇したメモリセールスのアタッシュケースには、決まってそのマークが刻まれていた。そのため、アラシ達はこれを“組織のマーク”と考えていた。

 

しかし憤怒のメンバー、そして蘇った永斗の記憶の中での怠惰直属の研究者たち。彼らは誰一人として、このマークを身に着けていなかった。

 

つまり、このマークは組織ではなく“暴食”のマーク。白府リズ、キルは暴食配下だった可能性が高い。

そして暴食が率いる集団、永斗はその正体にも目星がついていた。

 

 

「前じゃ無理だったろうけど、記憶が戻って、検索範囲が広がった今なら…」

 

 

本棚が遠くへと消えていき、目の前に一冊の本だけが残った。

表紙に刻まれるのは「silence」の文字。

 

 

「ビンゴ。メモリはサイレンスだ」

 

 

 

___________

 

 

 

夏も終わりかけているが、暑さは容赦を知らない。

そんな中、買ってきた全員分のアイスの入った袋を引っさげ、瞬樹は鼻歌混じりにノリノリで帰っていた。

 

暑さで頭がおかしくなったわけではない。何故機嫌がいいのかというと、この男、貰った金で自分だけ2つもアイスを買ったのだ。

 

瞬樹はスイカバーを太陽にかざし、ほくそ笑む。

 

 

「西瓜烈斬…いや、赤果氷砕槍!」

 

 

満足そうにスイカバーを振りかざす瞬樹、子供に笑われているのは気付かない。

今度はあずきバーを取り出して

 

 

「赤銅金剛鎚と書き…トールハンマー!」

 

 

二刀流!と叫びながらアイスを振り回す瞬樹。やはり頭がおかしくなってしまったのかもしれない。

ふと冷静に戻り、笑っている子供に気付くと、大人しくベンチに座った。

 

あずきバーの堅さは知っている。瞬樹は意を決して、あずきバーに噛みつこうとする

 

 

次の瞬間、風でも吹いたかのように、あずきバーが瞬樹の手から弾かれた。

 

 

「誰だ!」

 

 

瞬樹は立ち上がり、エデンドライバーを構える。しっかりスイカバーはホールドしたままだ。

突然誰もいないところに武器を構える瞬樹を見て、子供がまた笑う。

 

傍目には瞬樹がアイスを落としただけのように見えるだろう。

しかし、瞬樹の目は捉えた。“銃弾があずきバーを貫いた”光景を。

 

が、全く発砲音も聞こえなかった。超遠距離射撃を警戒し、瞬樹は木の多い公園に逃げ込んだ。

 

 

「ッ!」

 

 

瞬樹がエデンドライバーを振ると、再び放たれた銃弾が弾かれた。

火花は見えたが、当たった金属音は聞こえなかった。

 

しかし、銃弾の放たれた方向は上からではなく、正面。そして、僅かに火薬の匂い。

 

 

「近い…?そこか!」

 

 

少し先に隠れる人影を発見。気付かれたことに気付いたのか、その人影は逃げだす。

瞬樹は駆ける。人影を追って走った。メモリガジェットを置いてきたため、全力で走った。

 

人影との距離は縮まっていき、その姿を捕らえた。みすぼらしい格好の男、公園で見かけるホームレスだ。

 

 

「逃げられると…思うなっ!」

 

 

完全に追いつき、男の服を掴んだ。

が、手答えがあまりにも軽い。そう、掴んだのは服だけ。かぶっていた帽子や付け髭、ズボンがアスファルトに落ちる。

 

 

「ブラボー。鬼ごっこの勝ちは譲ろう」

 

 

いつの間にか背後に立つ男。しかし、その姿はまるで別人。タキシード姿で、片目だけを見せるような仮面をかぶっている。仮面の口の部分には、ファスナーのようなデザインが。

 

 

「なんだビックリマジシャン。暑そうな恰好しやがって」

 

「正装だよ。それにマジシャンではなく…魔術師と呼んでもらいたいね!」

 

 

ピストルを構えた男は、再び無音で発砲。しかし、瞬樹は即座に躱し、銃弾は瞬樹の肩をかすめた。

 

 

「やはり銃は苦手だね。腕を撃ってしばらく大人しくさせたかったんだが…」

 

《サイレンス!》

 

 

胸ポケットから取り出した赤いドーパントメモリ。横顔と口の前で立てられた人差し指で、Sと描かれている。

手袋を外し、手首の生体コネクタにメモリを挿入した。

 

 

「ドーパントか!」

 

《ドラゴン!》

 

「変身!」

 

 

すっかり溶けてしまったスイカバーの棒を投げ捨て、エデンドライバーにドラゴンメモリを装填。瞬樹は白銀の鎧を纏い、仮面ライダーエデンに変身。

一方で男もドーパントへと姿を変えた。

 

姿は比較的人に近い。灰色の体に、忍者を想起させる鎖帷子が全身を覆う。胸にある大きな口のような部位は、糸で縫い付けられている。他に目立った装飾は無く、口元は真っ黒なフェイスマスクに覆われている。

 

 

「騎士の名の下に、貴様を裁く!」

 

 

サイレンスはピストルを捨て、別の銃を取り出した。ピストルより一回り大きい。

引き金を引くと、やはり無音で弾が発射される。エデンドライバーで防ぐが、衝撃が体まで伝わってきた。

 

 

「特注の銃だよ。人間じゃ耐えられない反動の代わりに、とんでもない威力を見せてくれる」

 

「おのれ…ならば!」

 

《ハイドラ!》

 

 

エデンはハイドラメモリをバックルのスロットに装填。

 

 

《ハイドラ!マキシマムオーバー!!》

 

 

マキシマムオーバーを発動し、バックパックの浮遊攻撃ユニット“ヴェノムブレイカー”を起動。九つの蛇を模した砲台が、サイレンスに照準を合わせる。

 

3つのユニットが高密度レーザーを発射。しかし、サイレンスは身軽に避け、飛び上がる。

すると、その姿は背後に。着地の音も消えており、対応に遅れてしまう。直後、銃弾の痛みだけがエデンに走った。

 

 

「くっ…!」

 

 

尚も攻撃を続けるが、サイレンスはヒョイヒョイと躱してしまう。隙を見つければ、無音で接近し攻撃。サイレンスは足音も攻撃音も無い。それが想像以上に厄介だった。

 

だが、エデンも諦めはしない。幸い、サイレンスの攻撃力はそこまでではない。タイミングを見計らい…

 

 

「そこだ!」

 

「ガアァっ!」

 

 

レーザーがサイレンスの体に直撃。サイレンスは痛々しい音と共に、背中を地面で汚して地に伏せた。

九本のユニットを使い切り、エデンのマキシマムオーバーが解除される。

 

 

「音は聞こえんが、戦えないというまでではない!終わりだ手品師!」

 

「魔術師とは呼んでくれないみたいだねぇ…

そうだ騎士の仮面ライダー、最後にとっておきのマジックをしよう」

 

「何?」

 

 

エデンはサイレンスの動きに警戒する。音が聞こえない以上、目視しか術がない。

 

ここでマジックの基本を確認しよう。それは…

“いかにタネから注意を逸らすのか”。

 

 

瞬間、エデンの体に横から凄まじい衝撃が襲った。

 

 

「君が無様にぶっ飛ばされる、というマジックだ。気に入ってもらえたかな?」

 

 

エデンがサイレンスによって誘導されていたのは、道路の真ん中。そしてエデンを襲ったのは、優に10トンを超える大型トラック。

 

気付くはずもない。走行音も聞こえず、注意は全てサイレンスに注がれていたのだから。

何よりそのトラックは無人。れっきとした、サイレンスによる攻撃だった。

 

 

「悪いが、2人目の標的は君じゃない」

 

 

トラックはそのまま建物に激突し、爆発。

倒れるエデンを尻目に、サイレンスは足音を立てず消えていった。

 

 

 

____________

 

 

 

「瞬樹の野郎…連絡つかねぇ、何やってんだ」

 

 

サイレンスの事を伝えようとするも、瞬樹が電話に出ず、苛立つアラシ。

永斗のおかげで、サイレンス・ドーパントの能力詳細が分かった。メモリ自体はかなり弱い部類。まずは見つけてシバく。

 

 

「永斗は調べものあるって帰りやがったし…人手が足りねえな。情報収集に長けた奴…」

 

 

ふとアラシの脳裏ににこの顔がちらつく。だが、すぐに払拭した。今、彼女に頼るわけにはいかない。

 

 

「いた!アラシ、アンタ何やってんのよ!」

 

「ゲッ…」

 

「ゲッって何よ。ゲッって」

 

 

そんな考えを読むかのように、休憩で降りてきたにこと出くわしてしまった。

 

 

「サガフェスは目前。アンタも私たちの調整に付き合いなさい!特に2番のステップに不安が…」

 

「あー、俺はちょっと捜査に行ってくる。ダンスのことは絵里に聞いてくれ」

 

 

そう言って立ち去ろうとするアラシ。

しかし、にこはそれを見過ごすわけがなかった。

 

 

「待ちなさいよ!まさかとは思うけど…こんな時まで依頼?」

 

「……あぁ、音ノ木坂の学生からの依頼だ。ライブ準備はちゃんとすっから、心配すんな」

 

「信じらんない!サガフェスは私の夢なの!μ’sのためにも、絶対に成功させなきゃいけないのよ!アンタはμ’sより、そのよく知らない奴の方が大事って言うの!?」

 

 

にこが激昂する。喧嘩することは度々だったが、こうも感情をぶつけられるのは初めてだった。

アラシも分かっている、にこのアイドルに対する思いは。それでも…

 

 

「依頼人を大切にしない奴は探偵失格だ。彼女は俺達を頼って来た、俺達にはそれに応える義務がある。

断じてそこに貴賤を設けるつもりは無い」

 

 

アラシは言い切った。ここだけは譲れなかったから。

アイドルと探偵の両立の上で、避けては通れない問題だ。

 

だが、少し相手とタイミングが悪かった。

 

 

「…そう、やっぱり。アンタは私のこと嫌いだから…」

 

「は?お前、何言って…」

 

「分かってるのよ!!いつも憎まれ口叩く私のことが嫌いなんでしょ!だから協力したくないんでしょ!?本当は…私なんていなけりゃいいって思ってる癖に!!」

 

「おい…マジで何言ってんだ、このバカ!」

 

「じゃあなんで誕生日に何もしてくれなかったのよ!」

 

「…それは……」

 

 

そう、あの時アラシは珍しく嘘をついた。プレゼントを用意するくらい金はあったのだ。にこもそれに気づいていた。それでもアラシは、にこにプレゼントを渡さなかった。

 

にことアラシは仲が悪いように見えて、互いに敵意があるわけではない。そんな微妙な関係。

が、にこの方は少しずつ不安が溜まっていたのだ。

 

本当に嫌われていたら。

 

他の皆のように、仲間と思われてなかったら。

 

 

『俺が仲間になってやる』

 

 

あの言葉は、にこを一人の世界から連れ出した。

その言葉がにこを支えていた。

 

もし、あの言葉に意味なんて無かったら。

 

もし、また裏切られたら。いや…

ずっと信じられてなんていなかったら。

 

 

やっぱり、仲間なんて最初から誰も___

 

 

 

「やっとここまで来たの…私が夢を掴むの!私のことが嫌いならもう邪魔しないで!!私だって……

 

アンタのことなんて大っ嫌いよ!!」

 

 

歪な叫びが校舎に響く。

にこは階段を駆け下り、行ってしまった。

 

アラシは呼び止めなかった。

いくらデリカシーが無いからといっても、分かる。これはアラシの怠慢が招いた末路だ。

 

 

「バカ……は俺か。ったく…」

 

 

しかし、実に数分後。

アラシは呼び止めなかったことを後悔することになる。

 

 

______________

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

つい学校の外まで出てしまった。

にこは心の中で言い聞かせる。

 

間違ってない。前からそうだった。

夢を掴む以外に、欲しいものなんてない。それだけのために生きればいい。

 

 

「やぁ、矢澤にこちゃん」

 

 

音もなく現れたタキシードの仮面の男。

にこは助けを呼ぼうとする。だが、躊躇ってしまった。

 

助けを呼ぶ?誰に?アラシに?

 

あんなことを言ってしまったのに?

 

 

その躊躇の時間で、にこは背後から口を押えられ、自由を奪われてしまう。

抵抗するにこ。しかし、体格差が大きい。腕を振りほどくことが出来ない。

 

 

「おっと暴れるねぇ。君、予防接種で逃げ出しちゃうタイプだろう?

ダメだよ?そういうのって、こっちに任せてくれれば痛くないようにしてるんだから

 

暴れたら、うっかり殺してしまうかもしれない」

 

 

恐怖が背中にへばりつくような感覚。この男は本当に殺す。

アラシたちとの経験が、皮肉にもそれを告げていた。

 

 

「大丈夫。殺しはしない。

死んでは貰うけどね」

 

 

 

 

___________

 

 

 

「にこちゃーん!」

「どこにゃー」

「にこっちー?」

 

 

アラシから事情を聞き、走り去ってしまったにこを探すμ’s。

そんな中、真姫と希が、校舎裏で倒れているにこを発見した。

 

 

「にこちゃん!?」

 

 

真姫が容態を確認する。異常は特に見られない。

すると、にこが目を覚ました。

 

 

「にこっち!大丈夫!?」

「何があったの?私のこと分かる?」

 

 

朧げな視界と記憶で、真姫に答えようと口を開く。

そして気付いた衝撃で、意識が叩き起こされた。

 

 

おかしい。

 

いつものようにやってるのに。それなのに聞こえない。

何度やっても。何度やっても。信じたくない現実が首を絞める。

 

 

「にこちゃん?どうしたの、答えて!」

「にこっち!?」

 

 

夢が崩れ去る音で、もはや何も聞こえない。

それは、アイドルとしての“死”を意味する。

 

 

声が___消えた。

 

 

 

 




今回登場したのはFe_Philosopherさん考案の、「サイレンス・ドーパント」でした!お待たせしました!サイバーでは扱いが雑になってしまったので、今回こそは…!
さて、にことアラシが本格的に仲違い。しかもアイドルとしては大ピンチ。しかも強敵ときた…どうするんでしょうかね(他人事)。

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!
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