ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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帰省したらしたで忙しいよね。146です。
最初にお知らせが2つ!長いですがどうか最後まで見てください!

一つ!前々より企画していた「ラブライダージェネレーションズ」が開催されました!!
この企画は「ラブライブ×仮面ライダー(一部例外アリ)」の作品のキャラが豪華クロスオーバーするものとなっております!

参加する作品は…
希-さんの「ラブドライブ!~女神の守り人~」
蒼人さんの「ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜」
ワトさんの「仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww」
MasterTreeさんの「ラブライブ!サンシャイン‼︎×仮面ライダードライブサーガ 仮面ライダーソニック」と「異世界ディケイド」
グラ二さんの「ラブ鎧武!」
ポリゴン佐藤さんの「ラブライブ!King's Revelation」
がじゃまるさんの「Journey Through The Rainbow」
ボドボドさんの「ラブライブ! ―目覚める魂―」
ゆっくりシップさんの「ラブオーズ!「Anything goes!『旅はまだ途中』」」
水卵さんの「ゼロの名の戦士―その未来を守るために―」
花蕾さんの「少女よ、愛を知れ」
ゲーマーΣさんの「ラブエグゼイド!SUNSHINE!!」
そんで、「ラブダブル!~女神と運命のガイアメモリ~」です!!(書き洩らしあったら死んで償います)

運営対処で削除済み作品から、完全非公開まで参戦。こんなに多い作品クロスしてわけ分かんなくならない?とか、話まとまるの?とか、知らないキャラ多いのはちょっと…とか思っている人も数名いると思います。

が!今回執筆を担当するのは、なんとラブドライブや異形の仮面でお馴染み希ーさんでございます!はい安心!もう安心!見なきゃ損!
残念ながら希ーさんは何故かアカウント凍結されてしまっているため、pixivでの連載となります。ですが、希ーさんが執筆する以上、確実に面白いので是非!是非とも読みに行ってください!(現時点ではpixivで「きー」さんにマイピク申請したら読めます)


そんで二つ!オリジナルドーパント案ですが、集計したところ160を超えておりました!
というわけで、今回から続く2つのエピソードは、「募集案をいつもより割り増しで登場させる」というコンセプトでお送りします!

というわけで新学期編開幕です!


第51話 Pは牙を剥く/再会・再開・新学期

「新学期!だー!」

 

 

ことりと海未を置いて、穂乃果は大声で叫びながら走り回る。

今日は9月1日。長かった夏休みも終わり、今日から音ノ木坂学院は2学期を迎えようとしていた。

 

通学路ではしゃぐ穂乃果を見ながら、アラシは思いにふける。

思えば、夏休みは色々なことがあり過ぎた。

 

まず、組織の“憤怒”による永斗の誘拐、それの奪還。

その際に目覚めたファング・ドーパントとも激闘を繰り広げ、最終的には記憶を取り戻した永斗を奪い返すことが出来た。

 

そんでエクスティンクト・ドーパントとの戦闘ではファーストと協力し、ダブルはファングジョーカーという戦力を手に入れた。

 

その後もメイド喫茶で連続失踪事件があったり、先輩禁止で合宿をしたり、にこの声が消えたりもして大変だった。

 

 

「…思い返せば、改めて濃い一か月だったな……」

 

 

事件とは関係が無いが、プールにも行ったし、祭りにも行った。本当に色々なことがあった。

 

アラシはファング戦の前に数年間の修行をしたのだが、それ抜きにしても長かった。

なんというか、2年半くらい経っている気がする。

 

 

「それにしても、穂乃果ちゃん元気だね」

 

「本当です。昨日は宿題が終わらないと泣きついていたのに。凛やにこも、永斗がいなければどうなっていたか…」

 

「問題はその永斗が学校行ってるかなんだが……」

 

 

 

_______

 

 

 

「あ゛ぁぁぁぁー……学校始まったぁぁ…帰り゛だいぃ……」

 

「永斗くんがこの世の終わりみたいな声出してるにゃ」

 

「あはは…」

 

 

一年生の教室で、永斗は机に突っ伏して唸っていた。それを囲むのは、いつものµ’s1年組。凛、花陽、真姫、瞬樹。

 

まずは早朝に凛が探偵事務所にアタック。布団から出ようとしない永斗を引きずり出し、4人がかりで学校まで連れてきた。今も逃げないように監視している。

 

 

「なんで夏休みが終わると学校始まるのさ…面倒くさい…新型ウイルスの流行とかで休みが伸びたりしないかな……」

 

「ちょっとやめなさい。洒落にならないから」

 

「竜騎士は風邪などに負けん!そしてこの新学期…いや!新世紀は俺の時代だ!」

 

「瞬樹くんはそんなんだから、新学期でもどうせボッチにゃ」

 

「おい凛。永斗を好いているのは分かったが、少しは俺にも優しくしろ!花陽を見習ったらどうだ!お前達は本当に幼馴染か!?」

 

「失礼な!凛とかよちんは、昔からの大親友にゃ!ねー!かよちん」

 

「う…うん。そうだけど…瞬樹くん泣いてない?」

 

 

そんな1年組の賑やかな会話も、教室に教師が入ってきたことで中断される。

教師の後には、5人ほどの生徒が続いて入室してきた。

 

主に男子だが、その中に一人の女子生徒。教室が少しざわめく。

 

 

「えー、今日から新学期ですが、新たに5人の編入生が入ってくることになりました」

 

 

きっとアラシ達同様に、共学に向けた試験編入生なのだろう。

その中に女子が混ざっているのも、5人と大人数なのも、学校存続が現実的になり始めている証拠だ。

 

永斗は興味なさげに爆速で眠りに落ちるが、凛は編入生の顔をじっくり見て、難しそうな顔をしている。そして何かに気付いたのか、ひどく驚いて飛び上がるように立ち上がった。

 

 

「あーっ!」

 

 

凛は女子の編入生を指さし、教室の中で一人声を上げた。

 

 

_______

 

 

今日は休み明けの一日目。午前中に始業式が行われ、午前で放課となる。

この時間を練習に当てようと、絵里と希は部室へと向かっていた。

 

 

「よーし!新学期もはりきっていこかー!」

 

「え…えぇ。元気ね、希」

 

「ウチは嬉しいんよ。編入生も増えて、µ’sでやってきた事がちゃんと形になってるみたいで。編入生といえば…3年生にも一人、男子生徒が入ってきたらしいけど…えりち知っとる?」

 

「このタイミングで3年に編入生?気になるわね」

 

 

クラスが違うにこは、一足早く部室へと向かった。

その男子編入生のことも何か知っているかも、なんて考えていたら2年生組とも遭遇。

 

 

「あ、絵里ちゃん!新学期も頑張ろー!」

 

「穂乃果も元気ね…」

 

 

開口一番がハツラツな穂乃果に、ことりは苦笑い。

海未は疲れた様子でため息を吐くが、ここでツッコむアラシは今はいないようだ。

 

 

「あれ、にこちゃんは?」

 

「にこっちならいち早く部室に行っとるよ。にこっちも相当張り切ってたみたいやし…」

 

 

ことりがそんなことを訪ねているうちに、部室に到着。

やはり既に鍵は開いているため、気軽に扉を開けるが…

 

 

「いいねぇ!今を煌めく新世代スクールアイドル!いいよいいよ、イケてるよ矢澤にこちゃん!」

 

「あんた分かってるじゃない!この宇宙最強アイドルのキュートな立ち姿、しっかりレンズに収めなさい!あ、そっちじゃなくてこの角度から…そうよ。よし、せーのっ!にこっ♡」

 

 

部室では細かく指示を出してポーズを決めるにこと、そんな彼女を撮影する男性が。

そのウルフカットの髪型をした男性は音ノ木坂の男子制服を着ており、そのネクタイの色は緑色。

 

何はともあれ、一同はこの状況に絶句した。

 

 

 

 

 

「えーはい、自己紹介遅れて申し訳ない。俺は嘉神(かがみ)留人(りゅうと)。2学期から編入してきた3年生の男子生徒ということで…以後よろしくµ’sの皆さん」

 

「え…はぁ」

 

 

何故か名刺を渡される穂乃果。その男、嘉神は困惑する穂乃果にレンズを向け、楽しそうにシャッターを切る。

 

 

「人気急上昇中のスクールアイドルµ’s。そんな方々のいる学校に来たなら、会っておくのが礼儀ってもんでしょう。はい、矢澤ちゃんもう一枚!」

 

「ちょっと。編入生なのはわかったけど、急に押しかけてどういうつもりなの?」

 

「君は絢瀬絵里ちゃんだね。知ってるよ、ロシアの天才バレリーナ。それと…一年生の御三方はまだかな?」

 

「質問に…」

 

「ジャーナリストを志す手前、煌びやかなものにレンズを向け、マイクを向けるのが性ってもんでして。µ’sはアイドルと探偵を兼業してるとか。それに男子マネージャーもいると…知りたいことずくめだ」

 

 

嘉神の口からは次から次へと言葉が流れ、瞬きをするようにシャッターを切る。

目を輝かせ、まるで遊園地に来た子供のようだ。

 

 

「それで本題なんだけど…部長は誰?」

 

「にこ、貴方が責任者でしょう。アラシもいませんし」

 

「えっ…あ、そうね!私が部長よ!」

 

「威勢がいいのは助かるよ。実は俺が頼みたいのは一つだけなんだよね。アイドル部への取材はまた追々するとして、今は…」

 

 

「部長」の肩書が非常に嬉しそうなにこ。あからさまに鼻を高くしている。

それを見た嘉神が笑みを浮かべ、何かを取り出そうとした時。

 

 

「お前ら、さっき事務所の方に書面で依頼が入ってた。今日の練習終わったら、いける奴は調べに…」

 

 

遅れてやって来たアラシが自然に扉を開けた。

いつもと変わらない面子の中に、一人違う奴がいる。

 

その顔を捉えたアラシの表情が、塗り替わるように変わった。

 

 

「あ、アラシ君!この人は…」

 

 

状況を説明しようとする穂乃果の言葉を待たず、アラシは血相を変えて飛び出す。

その手は真っ直ぐに嘉神の首を掴み、棚へと叩きつけた。

 

 

「ちょ…アラシ君!?」

「おい穂乃果。いや誰でもいい説明しろ。

なんでコイツがここにいる」

 

 

見たことが無い表情だった。怒った顔は何度も見ているが、それとも違う。普段ドーパントに向ける視線とも違う。だが、どこかで既視感のある空気だった。

 

そこで、ことりが説明を入れる。

 

 

「えっと…編入してきた3年生の嘉神先輩だけど。友達…?」

 

「どう見たって違ぇだろ。つーか編入?んなわけあるか。だってコイツは…」

 

「ちょいちょいちょい。急になにすんのよ()()()()()()()()

 

 

アラシの手から、嘉神がいつの間にか抜けている。

掴みかかろうとするアラシの手をひょいひょいと避け、嘉神はにこを盾にして身を隠す。

 

 

「じゃ、矢澤ちゃん。話を続けよっか。

俺は“探偵部”と契約がしたい。俺が持ってくる情報を、お金で買って欲しいんだよね」

 

「け…契約!?」

 

「そ。探偵とアイドルの両立なんて大変でしょ?俺はその一助になりたいのよ。さぁさご決断を、部長の矢澤さん?」

 

「ふざけんな!誰がテメェなんか信用するか!」

 

 

この狭い部屋で追いかけっこがヒートアップ。状況はまるで分らないが、とりあえず止めねばと、絵里と海未がアラシをなんとか鎮めた。

 

その間に嘉神は窓を開け、風が部屋に吹き込んでくる。

アラシの言葉を聞いた嘉神は、嘲笑するように呟いた。

 

 

「信用…ねぇ。そりゃ()()()()()()()()()なんて無理な話だ。あー可哀想に。彼女たちは気の毒だね」

 

 

冷たい風が吹いた。怖気にも似た感覚が背中に走る。

嘉神は窓に足をかけ、紙飛行機を穂乃果に向けて飛ばした。

 

 

「まぁ信用云々も真っ当な意見だし、それはお試しキャンペーンってことで。事務所に届いてた依頼のお役に立ちますように♬」

 

 

「ばいちゃ」と軽く手を振って嘉神は窓から出て行った。事情を聞く暇も与えず、アラシも額に青筋を浮かべたままそれを追う。

 

 

『アラシに信用されるなんて無理な話だ』

 

 

冷たい声で吐かれたその言葉が、穂乃果たちの心に反響する。

 

µ’sの新学期は、突然に突き付けられた謎から始まってしまった。

 

 

 

_______

 

 

 

「待て!」

 

「って言われて待つ奴いる?まぁ俺は待っちゃうんだけどね。駆けっこで勝てるわけないし」

 

 

手を上げて、アルパカ小屋の前で嘉神は止まった。

ヘラヘラとした様子に、アラシの口から舌打ちの音が漏れる。

 

 

「嘉神、何が狙いだ。テメェが子供相手に小銭稼ぎなんて、それこそあり得ねぇ」

 

「いやー?俺はジャーナリストよ?生まれてこの方、嘘なんて一度も…なーんてジョークが通じる相手でもないか…」

 

 

嘉神の表情が変わった。その懐から出したのは、2枚の写真。仮面ライダーダブルの写真と、変身解除直後のアラシの写真だ。

 

 

「…!コイツを何処で!」

 

「さぁ?仮面ライダーがアラシだったとはねー。あ、最近やっと相棒の方も撮れたよ、白黒のヤツね。メイド喫茶の事件、うまいこと誘導できてよかったよ。ミナリンスキーの写真もいい値で売れたし」

 

 

彼は手のひらをヒラヒラと振って得意げに話す。

この嘉神留人という男は、嘘を嘘と、卑怯を卑怯と、悪を悪と理解したうえで、己の欲望に一切の躊躇が無い。

 

だからアラシは、嘉神が()()()嫌いだ。

 

 

「…コイツで強請るって訳でもねぇんだろ」

 

「貧乏人にそんなことしないよ?俺はただ、“知りたがり”なだけさ。

 

“仮面ライダーに成る方法”、それが知りたい」

 

 

その一瞬のアラシの表情を、嘉神のシャッターが切り取った。

 

 

_______

 

 

アイドル研究部に来訪者がやって来た頃、そこにいなかった一年生は教室に残っていた。

一クラスしかなかった1年生に、5人もの編入生が加わった。学生一同それに沸くが、µ’sの1年組もその渦中だ。

 

 

「さっちー!久しぶりにゃ!」

 

「小学校のときに転校しちゃって以来だよね…?元気にしてた?珊瑚ちゃん」

 

「うん!また会えて嬉しいよぉ、花陽ちゃん!凛ちゃん!」

 

 

編入生唯一の女子生徒、灰垣(はいがき)珊瑚(さんご)

髪型は少しだけ長い、薄い黒髪のショートボブ。音ノ木坂はまだ夏服だが、半袖にアームカバーを着けている。どうやら、彼女は花陽と凜の幼馴染らしい。

 

おとなしい花陽、活発な凛の幼馴染だけあって悪い雰囲気は見えず、言葉にするなら“淡い”印象の少女だ。

 

 

「聞いたよー!2人ともアイドル始めたんだって?意外だよー、特に花陽ちゃん!」

 

「えー、そうかな?かよちんは前からアイドル好きだったじゃん」

 

「2人とも意外なんだけどね。可愛いのに、なーんか自信無さげだったから。何があったの?」

 

「えっと…私の場合は、真姫ちゃんと凜ちゃんに背中を…というか、手を引っ張られて…」

 

 

花陽の視線が、髪の毛を弄っていた真姫に向いた。

珊瑚と目が合った真姫は、つい目を逸らしてしまう。

 

 

「あ、アイドル仲間の。西木野さん…だったっけ」

 

「うん、友達の真姫ちゃんにゃ!」

 

「…よろしく」

 

「で、こっちが…」

 

 

気恥ずかしいのか、真姫は一言だけそう挨拶する。

そして、次に凛の手が向いたのは永斗。しかし、永斗は珊瑚が自分の方を向く前に、超速で目どころか顔を逸らした。

 

凛が力づくで顔を前に向かせようとする。非力にそれに抵抗する永斗。

 

 

「永斗くん!ちゃんとさっちーの方みるにゃ!あいさつ!」

 

「いやいやいや、知らない人と、それも女子と目を合わせるのは陰の者にはキツいから。分かって。友達の友達って一番ハードル高いんだよ」

 

「凛と初めて会ったときは、ちゃんとおしゃべり出来たじゃん!」

 

「ゲーオタ同士で駄弁るのとは訳が違うの。大体、あの時だって凛ちゃんが強引に…」

 

 

結局、永斗の抵抗は長くは持たず、微妙な顔をした珊瑚と顔を合わせることになってしまった。

 

 

「マネージャーの士門永斗くんにゃ!いっつもぐーたらしてるけど、頭がすっごい良くて、あと…いざって時はちょっとだけカッコいいんだよ!」

 

「あ…え…よろしく…お願いします。てか凛ちゃん、ちょっとだけって何?僕けっこう頑張ってるんだけど」

 

「永斗くんはカッコいいって感じじゃないにゃ」

 

 

頭を両手で掴まれたまま、挙動不審な挨拶をする永斗。その反動か、凜との会話が嫌に饒舌だ。

 

 

「仲…いいんだねぇ」

 

「え…そうかな?」

 

 

珊瑚にそう言われて、凛は少しニヤついて分かりやすく照れる。そんな様子を目の当たりにして、珊瑚の表情が止まった。

 

凛のこんな表情は見たことが無かった。その光景から目を逸らすように、珊瑚の視線は瞬樹へと向く。

 

 

「女、今この俺と目が合ったな?」

 

「へ?」

 

「我が名は竜騎士シュバルツ!我が天使の旧友よ、我と盟友の契りを結ぶのであれば、この騎士の名に懸けて!貴公を悪しき刃より守る盾となることを誓おう!」

 

 

もはや定番。瞬樹の竜騎士ムーブは、初見の空気を絶対零度で凍らせる。

皆が冷めた目で見放す中、花陽だけは申し訳なさそうな、困ったような顔をしている。

 

 

「友達…選んだ方がいいんじゃない?」

 

「そ…そんなことないよ!瞬樹くんはちょっと変だけど…すごく優しいんだよ!」

 

 

花陽が慌てて食い気味なフォローを入れた。

自信無さげな様子は変わっていないと思っていたが、その時の花陽の声は、想像よりも芯の通った声だった。

 

その言葉で舞い上がる瞬樹に、花陽と瞬樹を引き離そうとする凛。わちゃわちゃとそんなやり取りが珊瑚の視界で繰り広げられる。

 

 

「あ!もうこんな時間にゃ!絵里ちゃんに怒られる!」

 

「えー、海未ちゃんとアラシの方が怖いでしょ」

 

「そこ論点じゃないの。行くわよ、花陽」

 

「あ…うん。じゃあ練習があるから。また明日ね、珊瑚ちゃん」

 

 

去っていく彼女たちの姿を、珊瑚は柔らかい笑顔で手を振って見送った。

 

教室を後にして少し経った。

突然、花陽が足を止め、走る瞬樹の袖を引っ張って呼び止めた。

 

 

「花陽?」

 

「瞬樹くん…」

 

 

珊瑚に背を向けた一瞬、花陽の目に映った彼女の顔。

何度か見たことがある感覚だった。それも、恐怖や悲しみに結びつくような経験の中で。

 

 

「一つ…お願いがあるんだけど。いい?」

 

「何でも任せろ」

 

 

親指を立て、瞬樹はすごく嬉しそうに答えた。

 

______

 

 

今日のダンスと歌の練習が終わり、アイドル部としての活動は終了。

日も落ちた後は、探偵部の活動が始まる。

 

 

「新学期一発目の依頼はコイツだ」

 

 

アラシが机に紙を叩きつけた。

それは、パソコンで書かれた手紙。文章はメールのような、とても簡素なものだった。

 

内容は探偵らしいものだ。

送り主は母親らしく、進学校に通う受験期の自身の息子の様子がおかしいから、調べて欲しいとのこと。

 

 

「具体的に言えば、両親が仕事でいない夜に不良と絡んでるんじゃないか…ってことだそうだ」

 

「“仮面優等生”って言うらしいわね。それにしても…なんだかドライな文章ね。自分の子供の話なのに、直接依頼にも来ないし…」

 

 

絵里の苦言も分かる。文章は“進学校”や“受験”、“成績”の単語を強調していて、心配というより自分の世間体を気にするような文面だ。

 

 

「別に珍しくもねぇだろ。今時、こんな親は」

 

 

そう言うアラシの声は、喉の奥から怒りや嫌悪感が湧き上がるような声だった。

そういえば、アラシには切風空助という親代わりがいたのは聞いたが、本当の両親の話は全く知らない。

 

それどころか、アラシの過去は全く知らないと言ってもいい。今日やって来た編入生の嘉神だって、結局どんな関係なのか話してもくれないままだ。

 

 

「でもやっぱり、“ここ”にその人がいるのかな?」

 

「あり得る話よ。穂乃果の成績じゃ分かんないだろうけど、受験のプレッシャーってとんでもないんだから」

 

「テメェも言えた話じゃねえだろ、バカにこ。が、ご丁寧に写真まで用意されたら、嫌でも怪しむしかねぇ」

 

 

話の中心にあるのは、嘉神から渡された紙飛行機。

そこに折り込まれていたのは二枚の写真。一枚はある少年が倉庫の奥に入っていく写真だ。調べた結果、調査対象である依頼人の息子で間違いない。

 

二枚目はその倉庫の地下の写真。そして、紙飛行機には情報の詳細まで書かれていた。

 

 

「あの野郎が何のつもりか知らねぇが、調べる必要はあるな。今夜だ。早速潜入捜査を行うぞ。荒くれ者の集いなら、まずは俺の出番だ。

そんでここには、他にも“何か”匂う。俺とは別ルートで調べる部隊として、絵里、希、凛、穂乃果。お前らに頼みたい」

 

 

二枚目の写真に映っていたのは、四方のフェンスに囲まれて殴り合う男たちと、それを囲んで盛り上がる人々。その息子が“賭ける側”か、“賭けられる側”かは分からないが、マトモな人間が関わるべき場所じゃないのは確かだ。

 

 

 

「行くぞ。賭博と殴り合いの悪魔の娯楽、地下闘技場!」

 

 

 

______

 

 

 

飛び散る血、打ちのめされた肉体、それを見て沸く観衆。

 

そんな映像を眺め、ソファの上で踏ん反り返る男。サングラスに派手なアクセサリー、鍛えられた上裸の上に羽織った毛皮コートが目立つ。

 

彼の前の机には大量の料理が置かれ、手づかみでそれを貪るように喰らう。

料理だけでなく、机にはPと刻まれた“銀色”のドーパントメモリも乱雑に置かれ、ソファの隣には大量のドーパントメモリが入ったケースが鎮座していた。

 

 

「んで、何の用だ観測者(オブザーバー)。メシの時間邪魔されてゲロ機嫌悪ぃんだが?」

 

 

その男は不機嫌そうに、空の皿を後ろにいた人物に投げつけた。

その人物=黒音烈は、投擲したナイフで皿を割る。開いた口からは、冷たく美しい声が吹き抜けた。

 

 

「仮面ライダーが、この地下闘技場を嗅ぎつけました。警戒をお勧めしますよ」

 

 

それを聞いた男の口角が吊り上がる。鋭い歯を見せ、皿から取り上げた骨付き肉を、骨ごと噛み千切った。

 

 

「待ってたよ。あの女を喰って、“暴食”の椅子を奪う時が来た。歓迎するぜ、ここが血の海で生きる俺様達の楽園!強者の宴を始めようか!」

 

 

その拳を、机のメモリに叩きつける。

電子音が響き渡る。試合の幕開けを告げるゴングのように。

 

 

《プレデター!》

 

 

 




まずは導入の一話目です。今回も3話構成になりそうです。
今回もオリジナル案をチラ見せしましたが、紹介の方はまとめてさせていただきます。

なお、なんやかんやの都合上、複数の案を一つにまとめるパターンになりますので、ご了承ください。

そして新学期編ですが、ずばりテーマは「ライダーの素顔」!掘り下げなかったアラシと瞬樹の過去、あとはほったらかしの永斗過去編も終わらせます!

ラブライダージェネレーションズの方もよろしくお願いします!一話にチラッとアラシも出ておりますので!

感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!

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