あつ森してましたぁ(前科二犯)(繰り返されるポケモンの過ち)(成長しない男)
いや、無人島ライフは正直言ってポケモンバトルより性に合ってました。ただしブラックバス、スズキ、テメェらは悪意に満ちているから絶滅すべき。
今回からちょっとだけラブジェネ宣伝挟みます。
まずは皆さんご存知、ラブジェネ主催者にして「ラブドライブ」でお馴染み希ーさん。マジで何故か垢凍結されてしまいましたが、pixivと暁で「ラブドライブ」と「異形の仮面」の連載を続けられております。是非見に行ってください!
そして今回ですが、オリジナル案大放出です。どうぞ。
地下闘技場とは、
法外な格闘試合が行われる闘技場。地下にあるというよりは“裏社会の闘技場”という意味合いが強い。表社会では考えられない莫大なファイトマネーが動く分、命が保証されることは無い、ルール無用の試合が毎夜繰り広げられているという。
そこの調査をすることとなった探偵部。
アラシ、凛、穂乃果、絵里、希の目と鼻の先にある倉庫こそが、その地下闘技場へのゲートだ。
「ここから先は別行動だ。何か分かったらすぐに連絡しろ」
「わかった!」
アラシはそう言って、倉庫の裏へと向かう。
この治外法権の戦場に赴くのは、変装をした4人の少女のみだ。
話は遡る事、2時間前。
「お前らはアイドルだ。有名人に片足突っ込んでると言っていい。
顔が割れてる可能性も無視できねぇ。だから、お前ら4人には変装をしてもらう」
アラシがそう提案する。「有名人」という単語に穂乃果とにこが嬉しそうだが、もう放っておくことにした。
「配役、設定も大事だよね。女の子だけってのはアレだから、一人男装させた方が…」
永斗は潜入部隊4人を眺める。
絵里と希は目線が素通りし、一瞬だけ穂乃果に止まる。だが、永斗は首を横に振った。
そして今度は凜に止まる。永斗の視線は、彼女の顔より少し下に向けられ…
「よし、凛ちゃんだね。男装決定」
「待って。今どこ見たの?」
「身長は低くてオッケー。マフィアのボスっぽくすればいける」
「そうじゃなくて。永斗くん?」
こんな感じで色々決定。各々が衣装を揃え、いざ潜入。
「…これやっぱり露出多くないかしら?」
「絵里ちゃんは似合ってるからいいよ!凛なんておっさんだよ!?納得いかないにゃー!」
「あ、そうそう。えりちは喋るといい子なのバレバレやから、黙って愚民どもを見下す感じで!ちょっと前の嫌ーな生徒会長をイメージするとええと思う!」
「学校の許可ァ?認められないわァ」
「ちょっと、私そんなこと言ってないわよ!?」
絵里は胸元の開いた大人っぽい赤いドレスにピアス。永斗と希がノリノリで選んでいた。
目元には仮面舞踏会のようにマスクを着けている。
凛はサングラスを着け、さらに付け髭とメイク、帽子、高そうなコート。なんちゃって葉巻まで咥えている。成金具合を表す時計や指輪は、どれも100均で買った偽物である。
希と穂乃果はネタに走ったと言わんばかりの不良ファッション。サングラスでは隠しきれない程の、人生を舐め切った顔面を完全再現している。
「卍ィ!」
ちなみにボキャブラリーが乏しすぎた穂乃果は、さっきからこれ以外の言葉を発さない。
変装したとはいえ、緊張は凄まじい。
倉庫の入り口でスーツ姿の男が2人、見張りをしている。狼狽を悟られないように、4人は足を進めた。
「会員か。会員証を見せてもらおう」
呼び止められる。波打った心臓を鎮め、堂々と4人は立ち止まった。
会員証を出そうとしない凛たちを怪しむ見張りの男たち。だが、凛がネクタイ替わりに着けていた“布”のマークを見て、その態度が変わる。
「こ…これは失礼を。“悪食”の方々でしたか」
「そ…そうだ!全く…そのくらいすぐに分らんのか!」
「おぉん!?なんやウチのボス舐めとんのかぁ!?」
「卍ィ!」
凛は慌てて偉そうに振る舞うが、無事に通過できて死ぬほど安心している。
やっぱり永斗の言う通りだった。地下闘技場への侵入に成功し、凜はせき込むように口元に手を置き、小さく呟いた。
「あの布で中に入れたにゃ。アラシくん」
凛が語り掛けたのは、小型のマイクガジェット。
それと入場券の役割を果たした“布”は、永斗が持たせたものだった。
「これは“オタマポッド”。フロッグポッドを介することで、通話、録音、再生ができる超小型ユニット」
永斗は潜入隊5人に一つずつ、そのオタマジャクシの形をしたガジェットを渡した。
そして、凜には更に一枚の布を手渡した。
布にはサメの口の骨の中に目玉が描かれたマークが。
「これはボックスとの戦闘の後、キルが落として行ったやつ。倉庫の写真を解像したところ、このマークを身に着けた人間が散見された」
「このマーク…何?なんか怖いにゃ…」
「“暴食”のマーク、って考えた。そんで、さっき検索したところ…そのマークは犯罪シンジケート“悪食”のものってことが判明した」
犯罪シンジケート「悪食」。犯罪者たちに対し、メモリや戦力、装備、果てには証拠隠滅まであらゆる面から犯行をサポートする組織。表社会での知名度は皆無。地球の本棚によって、やっとその輪郭が見え始めたレベルだ。
永斗の考えでは、その「悪食」のトップにいる人物こそ、七幹部の暴食。
「その布を身に着けて、もし入れたのなら間違いないよ。
この地下闘技場は、組織の息がかかっている施設だ」
_______
「組織がただの喧嘩大会を応援するか?絶対に何か秘密がある。
俺は俺のやり方で…まずは!」
オタマポッドから凜の連絡を聞いたアラシは、既に倉庫の中へと侵入していた。微かに聞こえてくる歓声は遠い。どうやら、ここはいわゆる選手控室辺りのようだ。
通路を通る、袋のようなマスクを被った選手を見つけた。
アラシは即座に背後へと回り込み、一撃。その選手は声を出す間もなく気を失い、倒れた。
「おい!そこのお前、次が出番だぞ!」
「あぁ、今行く」
奥から聞こえた声に、マスクを被ったアラシは、小さく答えた。
______
派手な恰好をしている者、凜たちと同じように顔を隠す者、身なりのいい者、大勢の裏社会の住人が集い、倉庫の地下を熱気で満たしていた。
リングではルール無用のデスマッチが繰り広げられる。ルールは簡単。素手での勝負、そして片方が戦闘不能で試合終了。命の安否は問われない。
「本当にいるのかなぁ…この人」
穂乃果が捜査対象の人物の写真を取り出す。
松井卓郎。太めの眉に大人しそうな顔、メガネが特徴的な男子学生だ。
目の前の死闘と写真を交互に見る。
容赦なく顔面に叩きつける拳、なんなら蹴りも顔面に入る。こんな貧弱そうな男子があそこに立てるとはとても思えない。
「やっぱりこの人、観客側にいるんとちゃう?」
「でもここで動くお金って、さっき見たけどとんでもない額よ?競馬や競艇とは訳が違うわ。それに、そもそも普通の高校生がここに入れるとも思えないし…」
絵里が頭を悩ませる。ここに居ないのならば、別室の賭博場にいるはずだ。
しかしやはり、アラシの言っていた“何か”があるのかもしれない。
鈍い音が聞こえ、試合が終わった。観客の一喜一憂の声が聞こえる中、負けた側は意識が無いようだ。率直に、この場所は狂っているとしか思えない。
「あっ、みんな!あれ…」
すぐに次の選手が出てくる。
袋を被ったようなマスクの選手。顔を隠しているが、布を纏わぬ上半身に刻まれた傷は、海に行った時に見覚えがあるものだった。
「もしかしてアラシくん!?」
「ハラショー…確かに手っ取り早いけど、まさか選手になるなんて…」
相手は体格が二回りも大きい巨漢。案の定、賭け金も相手側に集中しているようだ。
四人も心配そうな視線で見守る。そして、ゴングが鳴り…
アラシの蹴りが相手のガードを崩壊させ、鳩尾に左ストレート。畳みかけるように回し蹴りが顔面にめり込み、一瞬で試合は決した。
「容赦ないにゃ…」
流石にこれは…なんてチラリと思いはしたが、全くそんなことは無かった。アラシに関しては心配する必要は毛ほども無いだろう。
しかし、観客席からは気になる会話が聞こえてきた。
「あの男、もしや…」
「あぁ。久しぶりに一般からVIPに上がるかもしれんな」
“VIP”確かにそう聞こえた。
「ビップ…って何?絵里ちゃん」
「穂乃果…VIPっていうのは、更に上のランク、特別なランクのことよ」
「つまり、こことは別に特別な試合をしてる…ってことやね」
永斗は潜入前に、“ある可能性”を提示していた。それがVIPの正体であるならば、卓郎がそこにいる可能性は高い。
「なんじゃ。ゴロツキにしちゃ勿体ないくらいのべっぴんさんがおるやないか」
VIPを探しに行こうとしていた矢先、観客の男に絡まれてしまう。
長髪を後ろで結んだ、ガタイのいい男。リングに立っていてもなんら不思議ではない。
男はどうやら、絵里をナンパしようとしているようだ。
「暴食にこんな娘おったか?まぁええわ。どや、ちょっとワシんとこ来ぃひんか?」
「おぅおぅ!なんや、ウチの婦人に手ぇ出そうっちゅうんか!?」
「卍ィ!」
「あー、イキらんでもえぇぞ。ワシは鼻がえぇんじゃ。オタクらが弱っちいことくらいは分かっとる。でもこの姉ちゃんからはメモリの匂いがするなぁ。若とも違う濃い匂い…オリジンメモリか?」
希と穂乃果の虚勢が看破されている。凛が持つ、悪食のマークにも動じてない。
それどころか、オリジンメモリや暴食のことを知っている。組織の人間確定だ。
想定よりも早い非常事態だ。捜査が打ち切りになる恐れもあるが、これしか方法が無い。
絵里は隠し持っていたライトニングメモリに手を伸ばす。
「よしておけ」
別の男の声が、その状況に割って入った。
メガネを掛けている。が、松井卓郎のような弱腰な顔ではない。
冷徹と断ずることのできる、切っ先のように鋭い視線。穂乃果と凜はその男に見覚えがあった。
「ラピッド…!?」
憤怒のエージェントの一人、ラピッド。
ファストフード店で一度襲われたことがある。絵里がドーパントになった時の事件で、ダブルに敗北してから永斗奪還戦にも現れなかった。そんな男が、何故ここに?
「久しいのう、憤怒の足長。コイツらは知り合いなんか?」
「貴様の姿が癪に障るだけだ、鉄頭。この期に及んで口説きとは、余程暇らしいな」
「アンタさんには負けるわ。憤怒がボロボロなときに呑気に賭けとは。最強…ハハッ、じゃったか?あの男の部下も堕ちたもんじゃ」
「黙れ。その臭い顔に風穴を開けられたくなければ、さっさと失せろ」
男は両手を放り出すように上げ、ポケットに手を突っ込んで何処かへ行ってしまった。
ラピッドはその眼差しを凛たち4人に向ける。
「…今、リングで戦っているのは切風アラシだな。その時点でお前達の目的は把握した」
当然のように変装がバレている。
「今すぐここから去れ。今のこの場所はバケモノの巣窟だ、獅子丸土成がいたのがその証拠。お前達が手に負える相手ではない」
「え…?」
敵として相見えた記憶がある穂乃果から、戸惑いの声が漏れる。
アラシから、憤怒が襲ってくることは暫く無いという話は聞いていた。それと関係しているのか、ラピッドに敵意は無いようだ。戦闘にならなくて、一先ず胸をなで下ろす。
「あの馬鹿を救った借りは返した。次は無しだ」
「待って!…ください!」
消えようとするラピッドを、誰かが呼び止めた。
その声は、穂乃果だ。
「穂乃果…!?あなた、何を…」
「ここに来たことはあるんですよね。だったら、私たちをVIPに連れていってください!」
正体を隠しながらVIPを探すのは難しいだろう。仮に調べられたとしても、入るのは更に困難なのは容易に想像できる。反面、ラピッドは組織の上級職。VIPに出入りできてもおかしくはない。
永斗の予測が正しければ、松井卓郎を一分一秒とて放っておくわけにはいかない。
だから、穂乃果は思いついたこの可能性に賭けた。
「忠告はした。が、撤退はそもそも論外というわけか。
話にならないな」
ラピッドが眼鏡を上げる。その一挙動だけで、心臓を握られたような気分だった。
「借りは返したと言ったはずだ。
威圧感のある言葉がのしかかる。正論だ。
放っておいて上手く行くなんて世界ではない。アイドルも、探偵も、考えて動いた結果でしか何も成しえない。
絵里と凛は引き下がることを進めてくる。希は何かを考えているようだ。
(アラシ君が、私たちに任せてくれたんだ。だから、アラシ君みたいにしなきゃ!)
アラシの戦いを間近で見てきたはずだ。その武器も。
そこに必ず、答えはある。
「……ラピッドさん。私たちと協力しませんか?」
「何だと?」
考えた末、穂乃果の口から出たのはそんな提案だった。
「アラシ君も言ってました。私も実際に会って思いました。
ラピッドさん。戦い、好きじゃないですよね?」
ラピッドの眼や放つ空気は、これまでに出会ったドーパントや、他のエージェントとは全く異なっている。事実、ラピッドはさっきからリングを極力見ようとしない。
「それなのにこんな所に来た。ってことは、何か別に目的があるはずです。それが“誰かをやっつける”ことなら、アラシ君に永斗君、瞬樹君が手を貸します!」
「その代価としてVIPに連れていけと?仮にそうだったとして、仮面ライダーの力を借りる必要が何処にある」
「怪我してますよね?アラシ君がよく無茶するから、よく見てます。ラピッドさんの歩き方や立ち方が、その時とよく似てる。その身体で戦うのは危ないと思います」
穂乃果の推理は見事に的中していた。ラピッドの足は、アサルトとの戦いで折れてから完治していない。さらに、この状況だと「憤怒VS他幹部」の構図を作るのは危険。一方、仮面ライダーを代理で戦わせれば、実に自然な構図となる上に、失敗したところで仮面ライダー側が痛手を負うだけで、ラピッド側には不利益が最小限となる。
そこまで穂乃果が分かっているのか定かではないが、少しの推理で見事に「頼み」から「取引」へと昇華させた。
「…断る理由は無いか。ついてこい」
苦虫を噛んだような顔をした後、ラピッドは背を向けて歩き出した。
後ろで、穂乃果は安堵を込めて息を吐きだした。希から「グッジョブ」と言われ、親指を立てて返す。絵里と凛も感心して、力の抜けた穂乃果を支えた。
闘技場を後にし、オタマポッドでアラシに報告。
しばらく歩くと、また見張りの男たちが立っていた。
ラピッドの顔を見ると、すぐに道を開けた。
もう一段地下に続く広い階段が、目の前に広がる。
「40点だ」
階段を下りながら、ラピッドは開口してそう言った。
「よんじゅ…ってん?」
「さっきの貴様の交渉だ、高坂穂乃果。理由は三つ。
まず第一に、俺は誰かと戦いに来たわけじゃない。人探しが目的だ。最初からこの交渉は破綻している」
疑問が穂乃果の口から出る前に、ラピッドは足を速めて続ける。
「二つ目、ここにいる化物は俺と仮面ライダーが組んだところで、どうにかなる相手では無い。そして最後…俺はここにいる連中も、貴様たちも、心の底から嫌いだ」
「え…?なら、なんで私たちを…?」
「端からどうでもよかっただけの話だ」
戦わずして生きることが出来る命に生まれ、それを自分から投げ捨てて不幸面する。死と隣り合わせでないと生きられなかった命が、争いが無ければ真っ当に生きられた命が、どれだけあるのかも知らないで。
『あたしを…たたかわせて』
15年前、拙い日本語でそう声を掛けられた。その声の主は、幼い女の子だった。
その思いを声には出さない。が、この少女を見るたびに湧き上がるのは、嫌悪感か、それとも在りし日の“彼女”の面影か。
「着いたぞ」
穂乃果たちが疑問を口にする前に、もう一つの地下闘技場が見えた。
上の階よりも数倍広い空間。そして、歓声も充満する狂気も比ではない。
「ここがVIP…凄い人にゃ…」
「約束通り連れてきた。対価は貰っていくぞ」
ラピッドは絵里の前に立ち、仮面を被ったその顔を見下ろす。
彼女たちに戦慄が走った。もし、対価がオリジンメモリを持つ絵里とするなら、とても守り切ることは出来ない。
「ルーズレスの見舞い品に丁度いい」
しかし、ラピッドの手は絵里の耳に伸び、安物のピアスだけをその手に収めた。
彼はそれを仕舞うと、それ以上何も言うことなく踵を返し、人ごみの中へと消えていく。
例え敵だとしても、それを忘れてはいけないと思った。
声を出すと目立つ。だから、穂乃果たちは感謝の意を込め、深く頭を下げた。
「あの人も、もっと違う所で逢えてたらなぁ…」
そんな穂乃果の呟きをかき消すように、大きな歓声が反響した。
人をかき分け、リングがその視界に飛び込んでくる。それは、信じられない光景だった。
フェンスに囲まれた広い空間の中で、命を削り合うのは人に非ず。
黒い外套を纏って牙を剥いた蝙蝠男と、全身刃物の歪な怪人。
目に映った瞬間、それがドーパントであることは分かってしまう。
この時、永斗の予想は見事に的中していたことが確定した。
「永斗君の言った通りやね」
「えぇ。まさかとは思ったけど…“ドーパント同士の拳闘試合”なんて」
予想を裏付けるように、リングでは理性の欠片も無い猛戦が続く。
二体のドーパント―――ドラキュラ・ドーパントとエッジ・ドーパントの戦いは既に佳境。ドラキュラが小さなコウモリに分裂し、エッジへと襲い掛かる。黒い渦の隙間から飛び散る鮮血と悲鳴が、その末路を物語る。数秒後には、瀕死の男と破壊されたメモリが地を転がった。
「でも…やっぱりそうだよね?この卓郎っていう人、ドーパントになって戦ってるんじゃ…」
凛が怯えた声で言う。その推測は、ほとんど確証に近いだろう。
ドーパントになれば、変身前の身体能力など容易くひっくり返るのはよく知っている。
リングではドラキュラが雄叫びを上げる。
しかし、仕合終了のゴングは鳴っていない。その直後、上空から触手がドラキュラに襲い掛かった。
そう、この戦いは三つ巴。ドラキュラはコウモリを放ち、触手の根元の駆逐を試みる。
だが、コウモリは二度と戻ってこない。代わりに聞こえるのは、観客席まで響く身の毛がよだつ様な“租借音”。
「ひっ……!?」
その姿を見て、絵里が思わず悲鳴に近い声を上げた。
天井フェンスに張り付いていた三体目のドーパント。頭部には触覚と顎、体中の節足動物の脚は、個別にワラワラと蠢いている。
その正体は一目瞭然。“ムカデの記憶”で変貌した、センチピード・ドーパントだ。
ムカデは極めて凶暴な肉食節足動物。大きいムカデは洞窟の天井から体を伸ばし、飛行するコウモリさえも捕食するという。その生態を再現するように、センチピードはその強靭な顎でドラキュラのコウモリを噛み砕いている。
「ギ…チ…」
骨が軋むような音を立て、センチピードが体から触手を伸ばす。
その触手はムカデそのもの。自我を持つ触手は飛行するドラキュラを追尾し、爪がドラキュラの胴体をかすめた。
途端にドラキュラの様子が急変。真っ直ぐ飛行することもままならなくなり、能力も上手く使えていない。狩り時と言わんばかりに、センチピードの触手がドラキュラを締め上げ……
バキッ、ゴキッ。
耳を塞ぎたくなるような、痛々しい音が聞こえた。
派手に地面に叩きつけられたドラキュラは、変身が維持できず、泡を吹いて倒れた男の姿に戻る。
センチピードの勝利だ。
一段と観客席が盛り上がる。
「ドラキュラも勝てないか」や「あのルーキーはまだ稼がせてくれそうだ」などと、嬉しそうに語る身なりの良い男や女。何処かに運ばれてしまった瀕死の敗者の身を案じるのは、穂乃果たち4人だけだった。
「めちゃくちゃだよ…こんなの!」
「そうだよ!こんなことしてたら、みんな死んじゃうにゃ!」
「落ち着きなさい。残酷だけど…私たちの目的は、この地下闘技場を叩くことじゃないわ。まずは選手の中から松井卓郎を探さないと」
「いや、その必要は無いみたいやよ」
リングの中心で佇むセンチピードが、変身を解除した。その姿に一同が目を見張る。
雰囲気が少し荒いが、その姿はまさしく、写真の松井卓郎に間違いない。
「大変だ…次の仕合が始まる前に、早く助けないと!」
「穂乃果!?」
絵里の制止も聞かず、穂乃果は真っ先に飛び出してしまった。
______
地下闘技場の最深部。そこでは昼夜問わず、この闘技場のオーナーが“食事”を行っている。
フォークもナイフも使わず、オーナーの男は一人で料理を口に押し込む。これが彼の食事会だ。しかし、今日に限っては、そこに客人の席が用意されていた。
「下品な味ね。上等なのはお酒くらいかしら」
上品に料理を一口食べると、今日の客人である“暴食”はそう吐き捨てた。
「まぁそう言うもんじゃないぜ、暴食ちゃん。ここのシェフは“強欲”から借りたんだろ?クソ成金の趣味が狂ってるのはいつものことじゃない」
そう返すのは、もう1人の客人。こちらも七幹部の“傲慢”、朱月王我。
「勝手に押し掛けといて好き勝手言うじゃねェか、七幹部ども。アンタらは客じゃねぇんだよ」
一心不乱に食事を続けていたオーナーの男が、食べるのをやめた。
不機嫌そうな声で、幹部だろうが構わず食いかかる。
「勝手にとは心外ね。愛しい貴方に会いに来てあげたのよ?ねぇ、
「“愛しい”…だぁ?よく言うぜ。なら夜這いに行ってやるから股広げて待ってやがれ」
「あら怖い。そんな大それたことは、せめてハイドープに覚醒してから言いなさい」
「まー、冗談はさておき。実際は近況確認だよね。
なにせ、この地下闘技場は“朱月組”がバックに付き、“悪食”による運営及び、選手提供と選手育成。言うなればオレと暴食ちゃんの、愛の合作だからねぇ。獅子丸から“憤怒”のラピッドくんが来てるって聞いたし、存外面白い場所になっててオレは満足だよ」
「じゃあ帰れよ」と氷餓が睨みつける。
そんな時、暴食はそのテーブルに、もう一つ空席があることに気付いた。
「珍しいわね。誰か客人がいたのかしら?」
その席には一杯だけ、ワインが置いてある。
「あぁ。俺様の客はアンタらじゃなく…仮面ライダーだ」
「さっき烈クンから聞いたのね。でもはしゃぎすぎよ、サンタを待つ子供じゃあるまいし。果たしてそんなすぐに来るのかしら?」
「一度、二色の仮面ライダーの戦いを見た時に確信した。アイツは俺様と“同種”だ。
俺様が作ったこの場所はなぁ、そんな奴らの“楽園”なんだよ!それを黙って我慢なんてできる訳ねぇ」
モニターに映る、一般闘技場の仕合が終わった。
仮面の男がこれで7連勝。いずれも瞬殺だ。
その戦いっぷりを見ていた朱月、そして氷餓の表情が変わる。
飢えた笑みを浮かべた氷餓は、机に置かれたメモリを掴んだ。
「待ってたぜ…仮面ライダーダブル!」
______
選手控室に戻ったその少年、松井卓郎は、センチピードメモリを握りしめて追憶にふける。
この手でドラキュラの全身を砕いた。その感触も、音も、鮮明に身体に刻まれている。“彼女”に誘われ、ここに来てから全てが滅茶苦茶になった。人生、常識、価値観。何もかもが痛快なくらいに。
「松井さん…松井卓郎さん!」
記憶の反芻をとある声が遮った。
彼の腕を引き、物陰に連れ込んだのは、見るからに不良の少女。
その少女、穂乃果は卓郎の前で変装を解いて見せる。
「…君は……」
「えっと…探偵です!あなたのお母さんの依頼で、卓郎さんを助けに来ました!早くここから逃げましょう!」
穂乃果が強く腕を引いて、ここから離れようとする。
だが、卓郎はそれを突き放すように振りほどいた。
「バカにしてるの?」
拒絶を予想もしていなかった穂乃果の肩を、強く押す。勢いのまま壁にぶつかった穂乃果は、戸惑いのあまり動けない。卓郎の顔は、実に楽しそうに笑っていた。
「ここは僕たちの“楽園”なんだよ。クソ婆は口を開けば“進学”、“いい会社”、“楽な人生”。どうせ自分の経歴に傷がつくのが嫌で、探偵なんて雇ったんだろ?そんな表の世界よりこっちの方がマシだよ」
「でも…あんなことしてたら、いつか死んじゃいますよ!」
「いいよ別に。あんな人生を生きるくらいなら、ここで死んだって」
永斗を“F"から奪還した時と似ているようで、全く違う。
彼は、心から助けなんて求めてない。ただ軽率に、自分の命を捨てようとしている。
「なんで……何にも悪くないのに…!なんであなたが死ななきゃいけないの!?」
「は?」
涙が落ちるように、その言葉は自然と穂乃果の口から零れた。
自分でも驚いているようだ。その言葉に対する驚きではなく、“前にこの言葉を言ったことがあるような”感覚に。
「君、知ってる。µ’sの高坂穂乃果でしょ?学校でも話題だよ。
いいよね、才能が有って。自由に好きなこと出来て。色んな人に愛されて。
でもさ、僕だってココじゃ強いんだ。この楽園の中でだけ、僕は自由になれる!!」
感情が昂った卓郎は穂乃果を睨みつけ、メモリを振り上げる。
しかし、その手は別の腕に捕まれ、止まった。
穂乃果を守る形で、袋仮面の選手がそこに立っていた。
連勝し、VIPまで最短で上がって来たアラシだ。
「何?お前…!」
「暴れたければ相手してやる。リングに上がれ」
上等。そう言うように、卓郎の足は真っ直ぐリングへと向けられた。
同じようにアラシもリングへと向かう。その際、穂乃果の頭に手を置き、一言だけ囁いた。
「後は任せろ」
______
上と四方は強固なフェンス。恐らく、並大抵のドーパントでは破壊も出来ないソレは、さながら牢獄のよう。そして、その牢獄から無事に出られるのは勝者の片方のみ。
その拳闘の場に、松井卓郎とアラシが立つ。
「話は聞いてた。お前、死んでもいいんだって?」
「はぁ…?それが?そうだよ、どうせ生きてても言いなりの人生だし」
「よし分かった。テメェは、とんでもない勘違い野郎だ」
アラシはメモリを取り出す。
が、渡されたドーパントメモリを投げ捨て、代わりに取り出したのはダブルドライバー。
「あー、聞いたことあるよ。お前が仮面ライダーか!」
「ついでに探偵だ。依頼通り、テメェを自由から引きずり戻してやるから覚悟しろ」
「冗談じゃない!」
仮面ライダーの登場で、会場が一気に沸いた。
今度はジョーカーメモリを取り出して起動させ、転送されてきたサイクロンメモリと同時に押し込んだ。
「変身!」
《サイクロンジョーカー!!》
旋風を帯び、足元からその姿が仮面ライダーへと変わる。
《センチピード!》
卓郎もセンチピードメモリを首裏に挿入。人の形は瞬く間に異形へ。
マフラーをたなびかせる戦士とムカデの怪物が、仕合という場で相見える。
ゴングが鳴った。
先に仕掛けたのはセンチピード。ムカデ触手が同時に2本伸び、ダブル目掛けて喰らい付いた。
ジャンプで回避し、足場だけが削れる。
その隙にセンチピードが一気に加速。
ムカデの走行速度は節足動物界ではトップクラス。ドーパントとなったその走力を用い、瞬きの間にこの広いリングを縦横無尽に駆け回る。
「どうだ!僕に追いつけないだろ!!」
高速移動するセンチピードの爪が、ダブルの腕をかすめた。
その瞬間、アラシの体を異変が襲った。熱、痛み、吐き気、寒気、痺れ。異なる5つの苦痛が、渾然一体となって体を蝕んでいく。
『センチピードの毒か…どーする?毒効かないし、僕に代わる?』
「いや、必要ねぇ」
『だよね』
ダブルは平衡感覚が狂いながらも、構えを取る。
好機とばかりに、センチピードは背後を取って触手攻撃を繰り出した。
捕えれば締め上げて勝負ありの一撃必殺。
(獲った!―――)
「甘ぇ」
その攻撃を完全に読んだダブルの回し蹴りが、触手を弾いた。
いや違う。旋風を帯びた蹴りは、斬撃にも似る。その蹴りは、センチピードの触手を“切り裂いた”のだ。
「意味わかんない…まだ…!」
「そうか、じゃあ…これで分かんだろ!」
毒が回っているはず。まともに立てもできないはず。
そんなのは理由にならない。その現実を
ダブルの左腕が、渾身の一撃と共に叩きつけた。
「は…ァ…!?」
その衝撃のままフェンスに叩きつけられたセンチピード。
動くことが出来ない。今の一撃で、完全に戦意が折られてしまった。
数年分の修行を経て、さらに暴食の強敵と立て続けの連戦。
この夏休みで、アラシの戦闘力は爆発的に上がった。
もう素人の一般ドーパントなど、相手にすらならない。
「弱いな」
「ッ…!うるさい!」
「そりゃそうだ。生きようともしない、失うものもない。
この世にそれ以上弱いもんなんてねぇよ」
センチピードの姿が人間へと戻った。
ダブルは卓郎の胸ぐらを掴み、力ない彼に語り掛ける。
「これが自由か?んなわけねぇ。今ここで死ねば、テメェはそこらの虫未満の存在で終わりだ」
「じゃあどうしろって言うんだよ!戻っても母さんは僕を道具としか思ってない!周りの奴も僕を必要となんてしてない!生きてたってしょうがないじゃないか!」
「誰かに求められねぇと生きていけねぇのか?違ぇだろ!!」
熱が込められた声が、その場に木霊した。
上っ面じゃないのが伝わってくる。信念から滲み出たような、そんな言葉だった。
「ただ生きろ!!そのクソみてぇな人生の泥沼から、光る石を必死で探せ!
そいつが生きる価値か死ぬ価値か、命を投げ出すのは見定めてからでも遅くねぇよ」
手を放された卓郎が、膝から崩れ落ちた。
終了のゴングは鳴らない。歓声も皆無だ。だが、確かに勝負はここに決した。
会場はざわついている。混乱と落胆を含んだ声が乱雑に聞こえる。
それに割って入るように、拍手の音が聞こえた。
ゆっくりと近づくその拍手は、会場を静まり返らせる。
そして、その姿が現れた時、観客の熱気は最高潮に達した。
「良いこと言うじゃねぇか、仮面ライダー」
「察しはつくよ。お前がここのボスか」
ゲートを通ってリングに足を踏み入れた氷餓は、サングラスを外す。
「人生には光が必要だ。だから俺様はこの場所を作った。闘争を求める獣たちの“楽園”としてなぁ。だから…ソイツみたいな半端な奴は、見ててゲロほど白ける」
氷餓の言葉は卓郎に向けられる。
この一言から発する気迫で分かる。この男は、強い。
「自己紹介が遅れた。俺様は氷餓!苗字は胎盤の中に捨ててきた。
さぁ!第二ラウンドだぜ、仮面ライダーダブル!」
《プレデター!》
氷餓が掲げるのはシルバーメモリ。獲物を喰らう獣で、Pと刻まれている。
プレデターメモリが起動し、氷餓が出した長い舌の上に生体コネクタが出現。飲み込むようにメモリを突き刺す。
目の無い顔には牙が生え揃った大きな口、左腕は口の付いた触手でまるでウツボ。右腕には長い針と、手のひらにタコやウニのもののような口。とにかく口が多い。それだけでなく、発達した四肢は狼すら想起させる。まさに狩りに適した姿。
「随分と食い意地張った格好だな。
穂乃果、コイツを連れて逃げろ!」
控室から騒ぎを聞きつけ、リング近くまで穂乃果が来ている。
ダブルは卓郎をここから逃がそうと、放り投げるように後ろへ…
手を離した瞬間。
床を突き破り、飛び出した口を持つ物体。それが、卓郎へと喰らい付いた。
「いい恐怖の味だ。うっすら希望の味もしやがる。食前酒にゃ丁度いい」
「……!?テメェ!」
確かに喰らい付かれたが、卓郎に外傷はない。その生物のようなものは、卓郎を透過し、プレデターと一体化した。
「何しやがった…!」
「精気を喰った。まァ、要するに感情と体力だ。敗けた奴は俺様の食事になる、そういうルールだ知らなかったか?」
卓郎の呼吸に変化はない。意識を失っているわけでもない。
ただ無気力に、そこに倒れている。目を開けたまま、逃げようともせずに。
「精気は腹に溜まんなくて困る。が、弱者の肉はマズくて食えたもんじゃねぇ。
お前はどうだ?一口喰わせろやァ!!」
「食い意地は見た目だけにしやがれ、この口だらけ野郎!」
姿勢を低くしたプレデターが、間合いを詰めると同時に攻撃を仕掛けてくる。
蹴りで叩き落そうとするが、宙で体をよじり逃げられた。荒々しいが、洗練された体捌きだ。
「食い意地上等!“食”とは命を求める尊い欲求!日々飢え、求める俺様は!そこらの上部を飾った雑魚とは格が違ぇ!!」
繰り出された右腕の突きはフェイント。左腕の触手がダブルの命を狙う。
だが、それはダブルも読んでいた。風の補助で身体能力を強化し、紙一重で触手を躱した。
触手は勢いを止めず、床を削りフェンスへと激突。
その通り道全てが、触手によって“喰われて”いた。
「口だけじゃ…ねぇってことか」
「当然。俺様は
ダブルが加速し、距離を取る。
控室付近まで逃げると、ダブルは変身を解除した。
傍から見ると「逃げ」以外の何物でもない。客席はブーイングが飛び交っている。
「早すぎるぜ、まだ幻滅させてくれんなよ!」
プレデターがそれを見逃すわけもない。
アラシとて、逃げられると考えるほど楽観的ではない。穂乃果が近くに来たことを確認すると、アラシはドライバーからサイクロンメモリを抜いた。
「変身」
プレデターが迫る中、再びドライバーを展開する。
そもそも、この場所には戦いに来たのではない。戦闘態勢が万全ではない中、こんな強敵を相手するのは危険。
だが、その可能性を考慮しないわけもない。
万が一を考え、µ’sの司令塔は“保険”を用意していた。
《ファングジョーカー!!》
強固なフェンスが切り裂かれ、そのリングに新たな戦士が降り立つ。
穂乃果がアラシの体を連れ出したのを見届けると、永斗が変身したファングジョーカーは、プレデターを挑発するように尋ねた。
「あ、選手交代って…ルール的にオッケー?」
「ヒハハッ!大歓迎だぜぇッ!」
_______
探偵部による地下闘技場潜入作戦。
重大な戦力である瞬樹は、招集にも応じず不参加だった。
その理由はただ一つ。瞬樹は昼に花陽から受けた“頼み”に、盲目ともいえる熱意で取り組んでいた。
『珊瑚ちゃんを…見ててくれないかな?』
この一言を受けてから、瞬樹は灰垣珊瑚を徹底的に付け回している。
花陽の頼みを違えているわけでは無いが、ストーカーと化している辺り何かがズレている。
既に夜も遅いが、珊瑚が家に帰る様子も無い。放課後からこの一日、あてもなくあちこち歩き回っているだけだった。
「あの女…どういうつもりだ?」
瞬樹が疑念を持ち始めた頃、珊瑚の足が止まった。
人通りが少ない公園。珊瑚は左手首を握り、項垂れた。
「うっとうしいなぁ…」
小さな呟きは、瞬樹の耳に届く前にかき消された。
珊瑚を照らしていた街灯が、いきなり音を立てて折れたのだ。
突然の事で、瞬樹の意識が珊瑚から離れてしまう。
次の瞬間、何かが瞬樹の耳元の空気を切り裂いた。
「くっ…!?ドーパント…か…!?」
その姿を見て、瞬樹の頭から言葉が消えた。
暗闇に佇む雰囲気は、確かにドーパント。だが、異形と称するには余りに“醜い”。
暗闇に浮かび上がる髑髏に顎は無い。嗅覚を侵すような焼ける匂いと腐った匂い。体が黒いのか随所は見えないが、全身で鈍く輝くのは溶岩のように赤く、ドロドロと流れる血液。
瞬樹は思わず口を押える。見ただけで吐き気を催す程の嫌悪感。
このドーパントは、疑う余地も無く異質だ。
「こけおどしなら…効かん!気持ち悪いが、それで怖気づく竜騎士ではない!」
すぐさまドライバーを構え、メモリを装填。
ドーパントに一撃を浴びせ、トリガーを引く。
「変身!」
《ドラゴン!!》
仮面ライダーエデンへと変身し、エデンドライバーの刺突でドーパントに攻め入る。
“地獄の記憶”を宿したそのドーパントは、「ヘル・ドーパント」。ヘルは錆びついた大鉈を振るい、大きい動きでエデンに斬りかかった。
エデンとヘルの打ち合いが続いた。だが、この数手で把握した。ヘルの動きは鈍く、攻撃力も特段高いという訳ではない。これまで戦ってきた組織の刺客たちと比べれば、数段見劣りするレベルだ。
「容赦はしない。騎士の名の下に、貴様を裁く!」
隙を見つけ、そこの力を込めた一撃を突き刺す。
しかし、その槍の一撃は、ヘルに届く前に弾かれた。
「弱き者を加害する…許されざる行為っ…!」
「どーでもいいが…今そいつ殺されちゃ困るんだよなぁ、空気読んでくれや騎士さん」
ヘルとエデンの間に現れたのは、修道服の二人組。
それぞれ右目と左目を髪で隠した二人は、片目ずつでエデンを睨んでいる。
「ほら、早く逃げなさい。神の思し召しは今日ではない」
「来たる日まで自由にさせてやっから、勘弁してくれや。って、神さんも言ってるな」
「何者だ、邪魔をするな!」
「邪魔?そりゃこっちのセリフだよ、なぁヒデリ」
「その通りだカゲリ。我らは神の思し召しがまま、この者を守護するだけだ」
信仰的な方の「ヒデリ」と、気だるげな「カゲリ」。
その二人は、それぞれドーパントメモリを出し、それぞれ左手と右手の掌にメモリを挿した。
《アベンジャー!》
《リベンジャー!》
その姿が変わる頃には、ヘルの姿は闇の中に消えていた。
だが、それを追う余裕などない。少しでも目を離せば刈り取られる。瞬樹の直感が、そう最大音量で告げている。
ヒデリと呼ばれた男は、報復者=アベンジャー。サイのような逞しい一本角を持ち、纏った鎧は鎖で覆われ、血の色が染みついたような盾と大剣を構える。
もう一人のカゲリは、復讐者=リベンジャー。鋭い2本の角が後ろに伸び、全身に埋め込まれた化石の意匠を囲む有刺鉄線。両手の手甲には刀のような爪が二本ずつ。
「いいだろう。この竜騎士の名に懸け、返り討ちにしてくれる!」
《グリフォン!》
《グリフォン!マキシマムオーバー!!》
二体一の構図を確認した瞬間、エデンはグリフォンのマキシマムオーバーを発動させ、空中へ跳び上がった。
ウィガルエッジで空中を足場に、予測不可能の高速移動を可能にする。初見でこの動きを制した者は、存在しない。
「跳ね回るが脱兎の如し…カゲリ!」
「はいよ。ピョンピョンすんなよイラつくから」
リベンジャーの姿が、陽炎が揺らぐように消えた。
構わずエデンは残るアベンジャーに攻撃を仕掛ける。しかし、その死角からの攻撃が何処かから防がれた。
「…!?」
その一瞬、リベンジャーの姿がエデンの視界に映った。
エデンは空を蹴り、さらに速度を上げる。縦横無尽に空中を駆けまわるが、肝心なタイミングで何度もリベンジャーが妨害に入ってくる。
ここまで来れば間違いない。リベンジャーは、エデンの動きを完全に見切っている。
(信じられない…この動きを初見で見切る反射も、それについてくる速さも、化物か!)
体勢を整えるためエデンが動きを止めた瞬間、待ちくたびれたようにリベンジャーが眼前へ。
刹那の怯みが敗北に直結する。それが分かっているから、エデンは即座に攻め入った。
グリフォンの力で、あらゆる動きのスピードが上がっている。
その状態で放たれるエデンの連続突きは、疾風怒濤の百裂ラッシュ。
一つ問題があるとするならば、
リベンジャーがそれらを全て、余裕で弾いたことだけだった。
「微妙ぉーだな。遅くはないけど…言うて速くもねぇ」
動きを止めたエデンに複数の斬撃が、遅れて襲い掛かった。
攻撃を捌くどころか、あの連撃の隙間を突き、超速のカウンターを返す神業。どう考えても、この男の実力は常軌を逸している。
「終わ…るか!まだだ!」
《ユニコーン!マキシマムオーバー!!》
今度はユニコーンのマキシマムオーバーを発動。防御とパワーを底上げし、軽い攻撃は一切受け付けない要塞と化す。そしてエデンは、リベンジャーに向けて全力の一撃を突き出した。
そこに割って入るは、アベンジャー・ドーパント。
しかし何を思ったか、盾と剣を手放している。無防備なアベンジャーに、容赦なくエデンの一撃が炸裂した。
「哀れだ…我々に背いた時点で、神は貴殿を見放した」
アベンジャーは一歩も退かず、その一撃を“片手で”受け止めていた。
剣を持つことも無く、アベンジャーの右拳がエデンの装甲を強襲。防御が意味を成さない威力が、エデンの体に響く。
パワーも、防御も、エデンが出せる最高値を圧倒的に上回っている。
絶望的事実に、瞬樹の心まで折れそうになる。だが…
「まだ…だ……!」
《フェニックス!マキシマムオーバー!!》
エデンドライバーを地に刺し、体を支え、倒れる体を留めた。
ここにフェニックスのマキシマムオーバーを使用し、イモータルフェザーが展開。聖炎がエデンの傷を癒す。
「まだ立つ…諦め悪いのは美点だとは思わねーな、これだから」
「救わねば…この愚かな生命を、戦いの監獄から!」
「無限の時を生きる者よ。我が望みは慈愛なり。
我が牙と一つとなりて、愛より生まれしその命を導け。滅さず、滅びずの刃となれ!!」
《フェニックス!マキシマムドライブ!!》
ドライバーをバックルにかざし、マキシマム状態に移行。炎を纏ったエデンは飛び上がり、炎剣の蹴撃を解き放った。
「
再生能力を帯びた必殺攻撃は、その名の通り不滅。敵を穿つ瞬間まで朽ちることは無い。
その赤き炎撃を受け止めたのは、アベンジャーではなく防御の薄いリベンジャー。
確かな手ごたえが感覚を刺激した。
だが、倒せた気はしない。何故なら…リベンジャーは、
「あー…!痛ぇ、痛ぇ痛ぇ痛ぇっ!!なんで我がこんな目に遭うんだ?おかしいよなぁ!ムカついてムカついて、頭に血が上ってしゃあねぇ!!神さんもそう言ってるぜ、なぁヒデリ!!」
「あぁ神よ!この者は分不相応に我が兄弟を傷つけた!この愚か極まりない子羊を、この手で罰することをお許しください!そうさカゲリ、我らはいつでも神のお告げのままに!!」
リベンジャーから黒い炎が吹き上がる。エデンの足元から何かが飛び出て、それはアベンジャーに白い炎を宿した。その時、瞬樹は確かに感じた。
忘れたと思い込んでいた、「恐怖」を。
「「神の名の下に―――」」
白炎と黒炎が激しく輝く。
何が起こったのかは定かではない。だが、結果だけは残酷にそこに遺ってしまう。
「報復を」
「復讐を」
エデンの装甲が砕け、爆散。
簡潔なその事実は、何よりもエデンの敗北を意味していた。
_____
戦いの場は、地下VIP闘技場へ。
プレデターVSダブル ファングジョーカー。
過去、これ以上に盛り上がる仕合は無かっただろう。敵であるダブルが来てもなお、楽しむ余裕のある観客たち。仮面ライダーなんて脅威じゃない程の存在が後ろにいるという事だ。やはりこの闘技場は果てしなく黒い。
だが、そんなことを考えている余裕も無い。
戦況を一気に優位にするための交代だったが、予想を大きく外し、現時点で完全に力が拮抗している。
プレデターの実力が予想以上だった。この男は、前情報なしで戦うには危険過ぎる。
『永斗、まだ踏ん張れるか』
「クロの鬼訓練のおかげで多少はね。でも限界近いんで逃げても…」
『却下だ。ふざけんなクソニート』
「だよねー。知ってた知ってた」
「“二人で一人”はマジだったか。面白ぇ芸だなオイ!面白ついでにもっと盛り上げてくれやぁ!!」
ダブルのショルダーファングを、プレデターの口が受け止め、噛み砕いた。
勢いを止めないプレデターの突進。猛スピードで弾丸のようなパンチが迫る。
ダブルはそれに突っ込んでいく形で応戦。アームファングでプレデターを迎え撃つ。
二人が交差する瞬間、一瞬きで凄まじい攻防が繰り広げられる。
通り過ぎた後、ダブルの脚が、プレデターの触手が、それぞれ斬り付けられていた。
「やるじゃねぇか。そんならコイツは知ってるか?俺様は拳闘士であると同時に…“剣闘士”だ!」
再び繰り出したアームファングの斬撃が、何かとぶつかり合った。
この感触は、間違いなく“太刀”。
プレデターの体から引きずり出された、身の丈程もある肉の大剣。無数の牙と口が備わったその剣は、まるで生物のように脈打っている。
『おいおい!ペットはともかく、剣が使い手に似るなんて聞いたことねぇぞ!?』
「ヒハハッ!コイツの名は
飛び掛かったプレデターが、軽々と大剣を振るう。ダブルの首目掛けた斬撃はすんでの所で回避され、その後ろにあったフェンスが食い千切られた。
「食う」と「斬る」を同時に行う武器。しかも出鱈目に振り回しているのではなく、一撃で命を狩り取るために的確な太刀筋をしている。
「厄介過ぎるでしょ、その性能は」
攻撃を回避した瞬間、プレデターの姿が消えた。
ほぼ直感。咄嗟に振り返った背後に、剣を振りかぶるプレデターが。
ダブルは後ろに蹴って、間合いから出ようとする。
しかし、振られた刃は斬撃の途中で“伸びた”。肉で出来た剣は、長さも自在という事か。
「こう見えて小細工大好きだ。さぁ喰い甲斐見せてみろやぁッ!!」
急所を狙う刃を、ダブルはアームファングで受ける。さらに刃同士を滑らせつつ、加速してプレデターに接近。アームファングで剣を根元から断ち切った。
剣から鮮血が噴き出す。完全に間合に入った。ダブルの刃はプレデターの胴体に牙を剥く。
が、アームファングに蓄積された衝撃が、最悪のタイミングで敵に回った。
敵前にして、無慈悲に砕け散るアームファング。
途端に状況は攻勢から、絶体絶命に。
今のダブルは口を開けたワニに裸で突っ込んでいくに等しい。
いや、もう例えでも何でもない。プレデターは顔の口を大きく開け―――
ダブルの右腕を、噛み千切った。
バトル書くの楽しくて5000字くらい増えちった(反省)。
今回登場した案を一気に紹介!まず、ブラッドマスカレイドさん考案の「センチピード・ドーパント」。こんころ狐さん考案の「プレデター・ドーパント」、MrKINGDAMさん考案の「イーター・ドーパント」、Fe_Philosopherさん考案の「ハンガー・ドーパント」、鈴神さん考案の「イート・ドーパント」を一つにまとめたのが「プレデター・ドーパント」。希-さん考案の「ヘル・ドーパント」。MrKINGDAMさん考案の「ビートル・ドーパント」「スタッグ・ドーパント」にτ素子さん考案の「リベンジャー・ドーパント」をまた合体させ、「リベンジャー・ドーパント」と「アベンジャー・ドーパント」。です!
今回登場しなかった案は、今出すべきではないと考え、保留しました。多分今回に限らず、今後オリジナル案放出のスピードは上がってくるので、よろしくお願いします!
感想、評価、アドバイス、オリジナルドーパント案などございましたら、よろしくお願いします!