ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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ワクワクが止まらない146です。
ようやく…ようやく…!決定から3年と3か月の時を経て、MasterTreeさんの「仮面ライダーソニック」とのコラボが実現しました!

まずはプロローグ。あっちのキャラは(ほぼ)出ませんが、ソニックから来てくれた方々のためにも振り返り的な内容にしてあります。これまでの話を読んで欲しくはありますが、この話だけ読んでもらう形でもコラボ編を楽しめるかと。

PCならクリック、スマホならスライドで「ここすき」もよろしくお願いします!


コラボ編 プロローグ この世界に落ちてきたのは誰か

空に吸い込まれ、空から落ちた。

流れついた場所には見覚えがあった。慌ただしく人間が動き回り、悪がベットリとこべり付いたあの街。忘れるわけが無い。俺は一度ここで死んだのだから。

 

だが違う。あの時の街とも、それどころか()()()()()()()()()とも、同じようで全く違う。この世界は一体なんだ?

 

まぁいい。俺のやる事は変わらない。

どんな世界でもどうせ、社会から悪が消えることは無いのだから。

 

 

______

 

 

 

「クソがッ!しつこいっ!」

 

 

街中を走る怪人。頭部から背中にかけて大きな殻を背負い、粘液に塗れた体を持つその姿は誰が見ても一目瞭然。カタツムリの能力を持ったスネイル・ドーパント。

 

 

「しつこいのはテメェだ!止まれゴラァ!」

『走るカタツムリってそれどうなの…!?』

 

 

逃げるスネイルを追うのは仮面ライダーダブル。だが彼らは普段より機嫌が悪いようだ。怒りをそのまま発散させるような熱が、ヒートジョーカーの体から溢れ出している。

 

苦し紛れにスネイルが吐き出した粘液も、その熱で一瞬も経たずに焼き払われてしまう。万事休すの場面で、スネイルは最後の手段を解放。背負った強固な殻で完全防御体勢に変化した。

 

 

「やっと止まった!覚悟しやがれ!」

 

《ジョーカー!マキシマムドライブ!!》

 

「『ジョーカーグレネード!!』」

 

 

がしかし、ダブルにとってはスネイルの防御など薄皮。二方向から繰り出された炎の拳が殻を粉砕し、本体を叩きのめす。

 

 

「なんなんだよ…お前…!警察か…!?」

 

「探偵だ」

 

 

爆発したスネイルから金髪のゴロツキが転がり出たのを確認すると、ダブルはスネイルメモリを踏み潰した。

 

これで任務完了。とはいっても、これは本日3件目のドーパント騒ぎだ。

 

先日のエンジェル・ドーパントこと山門が引き起こした大事件、その過程で一般人に大量のガイアメモリが流出してしまった。その多くは警察によって回収されているのだが、当然このようにメモリを使って暴れる輩も現れる。ダブルはその始末に追われているのだ。

 

 

「つっても探偵の仕事じゃねぇよなコレ…依頼も出てないってのに」

 

『僕ら警察とやってること変わらないからね実は。せめて警察にも仮面ライダーいたら楽でいいんだけど…』

 

 

変身を解除すると、アラシのスタッグフォンに着信が入る。ドーパント退治に出ているもう一人の仮面ライダー、津島瞬樹からだ。

 

 

『我が名は…フッ、竜騎士シュバルツ』

 

「いたずら電話の方がなんぼかマシな第一声だな。で、何の用だアホ」

 

『アホじゃない竜騎士だ!実は重大な問題に直面してしまった…コンビニの新作特選米おにぎりと、定番のごはん屋のおにぎり…我が天使はどっちを買えば喜んでくれるだろうか!?』

 

「知るかボケ」

 

 

その次の言葉を待つことも無く、アラシはすぐに電話を切った。

 

これが先日の事件がもたらしたもう一つの弊害。瞬樹が立ち直り、花陽との仲も深まったのはいい。しかし瞬樹の花陽に対する好意と忠誠心が悪く作用し、瞬樹のバカさに拍車がかかってしまったのだ。

あれから口を開けば「我が天使が…」「我が主が…」しか言わないから心底面倒くさい。

 

 

「惚気…って言わねぇかアレは。花陽のやつも大変だろうな…」

 

 

花陽もそうだが、μ'sの彼女たち全員が大変だ。なにせこんな状況でも学園祭は開催されることとなり、ただいま急ピッチで準備に勤しんでいるのだから。

 

学園祭ではライブをする予定だ。ラブライブも予定より一週間遅れで開催が決定したため、このライブは極めて重要なものとなる。気合が入るのは必然。

 

 

「俺らも手伝ってやりてぇが…」

 

 

せめてこれ以上、何事も起こらないように。

アラシはそう心の中で願った。

 

 

_______

 

 

 

さて、アラシ達がドーパント退治をしている中、アイドル研究部の方はというと。

 

 

「………」

 

 

準備の慌ただしさはそのままに、雰囲気は完全にお通夜だった。

その原因は、一人こわばった笑みを見せている自称部長の矢澤にこにあった。

 

 

「……講堂」

 

 

希がわざとらしく、ため息交じりで呟いた。

その単語はにこの心臓に鋭く刺さる。

 

 

「なによ!私のせいっていうの!?」

 

「だってそうにゃ!にこちゃんがハズレなんか出すから!“瞬樹じゃないんだから余裕よ余裕~”とか言ってたのどこの誰にゃ!」

 

「うっさーい!運なんだから仕方ないでしょ!」

 

「疫病神ー」

 

「聞こえてんのよ希!」

 

 

さきほど行われた、学園祭での講堂の使用をかけた抽選会。回転抽選機、いわゆるガラガラで行われたのだが、にこはそれで見事にハズレを引いたのだ。

 

つまり、アイドル研究部は学園祭で講堂を使えない。

 

 

「そういえば、オープンキャンパスの時はゲーム研究会から時間を勝ち取れたよね?」

 

「今回はあそこも外れてたわよ。灰間部長が絵里を散々煽ってたけど…」

 

 

花陽の提案に真姫が返し、その時の光景を思い出す。

 

『おやおやおやおや、天下の生徒会長要するアイドル研究部がまたもハズレを引くとは!天に見放されてなんとも哀れ!私たちが輝くアタリを出す所を指を咥えて見ているがいいさ、既得権益に胡坐をかいた堅物生徒会長!ははははっ!』

 

と言った直後にハズレの白玉を出していて、運営に訴えようとしていたところを副部長の木部霧華と部員の楯銛青葉に連行されていた。

 

絵里曰く「少し留飲が下がった」らしい。

 

 

「その話はもういいでしょう。結局屋上でライブすることになったんですから、喋ってないで手を動かしてください。ステージを一から作るのですから、急がないと間に合いませんよ!」

 

 

海未がそう周りを急かす。

彼女の言う通り、穂乃果の提案でライブは屋上ですることとなった。ハズレを引いたことに対する同情ゆえか、演劇部などから簡易ステージの材料を分けてもらえることになったが、練習などを考えると本当に時間が無い。

 

皆が気合を入れ直したその時、ステージ背景に使う布を確認していたことりがある事に気付く。

 

 

「布の大きさ…ちょっと足りないかも…」

 

「…どうしましょう。これ以上他の部から貰う訳にはいきませんし、買うとなると少し費用が……」

 

「あ、布ならあったよ!確か…永斗君の部屋に使ってないのがたくさん!」

 

 

穂乃果が思い出したのは、永斗のコスプレ趣味だ。出会った当初こそ何度かコスプレしていたが、最近は事件続きでコスプレ衣装を用意する暇がないとぼやいていた。

 

その使わなくなった衣装用の布が、事務所に残っているはず。それを上手く貼り合わせれば背景の布を拡張できるかもしれない。

 

 

「私、ちょっと取ってくる!」

 

 

そう思い付いたらノータイム。返事を待たずに穂乃果が飛び出してしまった。

 

 

_______

 

 

 

「布?あー、持って行っていいよ。てかよく覚えてたね、自分でもコスプレ趣味なんて死に設定だと思ってたけど」

 

「ありがとう永斗君!そっちもファイトだよ!」

 

「うんファイトする。頑張る」

 

 

変身するため事務所に残っていた永斗を軽く励まし、穂乃果は布を持ってドタバタと出て行く。

 

一刻も早く学校に戻ろうとしたが、事務所を出ると扉の前にいた誰かとぶつかりそうになってしまった。

 

 

「あっ!ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

「いえいえ…こちらこそごめんなさいね」

 

 

いたのは柔らかい表情のお婆さんだった。杖を使っているから腰は悪そうだが、ぶつかりそうになった際にどこかを痛めたような様子はない。穂乃果はとりあえず安堵した。

 

 

「それで、この探偵事務所に何かご用ですか?おばあちゃん」

 

「ここから出てきたけど…もしかして探偵さんかしら?」

 

「探偵…私が…!はいっ!私は音ノ木坂探偵部の高坂穂乃果です!」

 

「あら…若いのにすごいわねぇ。

それならお願いしたいことがあるの……探し物をしてほしいんだけど……」

 

 

______

 

 

 

「また電話かよ。穂乃果から…?」

 

 

少し休憩とクレープを食べていたアラシに再び着信。急いでクレープを食べ終えると、口元のクリームを拭いながら電話に出た。

 

 

「もしもし、どうした。なんかトラブルか?」

 

『アラシ君!依頼だよっ!探偵の依頼!』

 

「はぁ!?依頼って…今かよ」

 

 

何事も無いようにと祈った傍からこれだ。自分は疫病神かもしれないと、少し落ち込んでみたくもなってしまう。

 

 

「お前なぁ…俺がいないのに勝手に依頼を受けんなよ」

 

『でもサネ子さんすごい困ってるって!助けてあげないと!』

 

「誰」

 

『さっき事務所前にいたおばあちゃん。お孫さんの誕生日プレゼントにおもちゃを買ったらしいんだけど、急に無くなっちゃったんだって!今日中に見つけないと誕生会に間に合わないみたい。引き受けようアラシ君!』

 

 

声が大きい。思わず携帯から耳を放してしまう。

何だか知らないが妙に張り切っている。こういう時の穂乃果は少し面倒だ。

 

だがアラシは仮にもマネージャーの立場。その辺はしっかりと管理しなければならない。

 

 

「駄目だ。学園祭まで時間が無さすぎる。そんなことしてる暇はねぇ」

 

『そんな…でも!探偵もアイドルも両立させるって…頑張ればきっと!』

 

「無理なものは無理だ。両立とは言ったが限度がある。廃校を防ぐためにもお前らはアイドル優先。しかもライブ前なのに無理してどうすんだバカ」

 

『でもサネ子さんは…』

 

「分かってる、依頼人を大事にしない奴は探偵失格だ。

だから俺たちがやる。お前は安心してライブの準備してろ」

 

 

それだけ言って、アラシは聞こえないように溜息をついた。

あっちの両立もそうだが、こっちの仮面ライダーと探偵、ついでにマネージャーの両立も楽じゃない。

 

 

______

 

 

 

結局、あの後穂乃果を説得するのにも一苦労した。

依頼人のお婆さんには事務所で休んでもらい、暇な永斗が接待しつつ色々と聞き込みをしている。

 

アラシはまず、そのおもちゃを無くしたという場所に向かった。

 

 

「おもちゃ屋を出て信号を渡り、右に曲がってすぐ。人通りは少なくない場所だな。でも落としてすぐに拾えないほど混んではねぇ…」

 

 

一応確認として、アラシは近くの交番に落とし物が届いていないか聞きに行った。そこで帰ってきたのは警官の「またですか」という反応。どうやらここ近辺で紛失が多発しているらしい。それも恐らく同じタイミングで。

 

その後、明らかに何か苛立っていた若い男性に話を聞くと、お婆さんと同じ場所で財布を『誰かに盗まれた』という。

 

 

「永斗、大体話が見えてきた。こいつは紛失じゃなくて窃盗。しかも多分メモリ犯罪だ。もう手の凝った事件を起こす奴が現れやがった」

 

『僕もサネ子さんに話聞いたよ。その場所で突然“体が動かなくなった”らしい。動けるようになったらおもちゃが消えていた』

 

「こっちも同じ話を被害者から聞いた。さっき行ったケーキ屋も同じ現象が起こった後、気付いたらシュークリームがごっそり消えてたってよ。山門のせいで大騒ぎだってのに、とんだ火事場泥棒だ」

 

 

だが依頼とドーパント退治を同時にこなせるのは幸運かもしれない。ここから先はいつも通り、犯行手口とメモリの特定から始める。

 

 

「その婆さんは腰が悪いんだよな?どっか痛めてる様子はあるか?」

 

『特に』

 

「じゃあメモリは重力系じゃねぇな。重力で動きを封じて窃盗したなら、老人はその負荷に耐えられねぇ。そもそも、んなことすればシュークリームがペシャンコで台無しだ」

 

『オッケー。じゃ鈍化の方向で検索進めとくねー』

 

「サボんじゃねぇぞ」

 

『善処します』

 

 

ここで永斗が電話を切った。ここからは出来るだけ情報を集め、永斗の検索をサポートするのがアラシの仕事。

 

おもちゃなら買い直せばいいと一回思ったが、永斗が言うには「アレは先着順に特典アイテムが付いてくるやつ。同じのはもうどこに行っても買えない」らしい。さっさと泥棒を見つけるしかない。

 

 

「監視カメラには泥棒の姿映ってるかもな。こればっかは警察じゃなきゃ無理だし、北嶋のオッサンに頼んでみるか」

 

 

しばらく手掛かりを探るも、特に無し。盗まれたものに統一性も無く推理は行き詰まり。やはり捜査では警察に遠く及ばないと判断し、アラシは警察内の知り合いである北嶋刑事に連絡を取ろうとした。

 

 

「……おい」

 

 

が、スタッグフォンを閉じ、アラシはすれ違った男に声を掛ける。

口と顎に短い髭を生やした、若干ワイルドな40代くらいの男。特に変な様子は無く、声を掛けられた男も少しの困惑が見えた。

 

 

「何かな」

 

「俺はスイーツが好きなんだ。最近の流行りはシュークリームでよ、特に秋葉原にクランベリーをふんだんに使ったシュークリームを出す洋菓子店がある。珍しいだろ?あそこは結構穴場で俺のお気に入りだ」

 

「…そうか、覚えとくよ。じゃあ」

 

「待てオッサン、話は終わってねぇ。

今日もシュークリーム買いに行ったらビックリだ。開店前に全部盗まれたってんだから。でも新しく焼いて開店できるようになったら連絡くれるってんだから、親切な店だよな。ちなみに連絡はまだだ」

 

「もういいだろ!?何の話なんだよさっきから!」

 

 

声を荒げる男の怒りに見向きもせず、アラシは男の服に付着していた塵のようなものをつまみ上げる。それは黄色がかった薄い皮のようなもの。

 

 

「小麦と砂糖の匂い、シュー生地だ。ついでに口からプンプン匂うクランベリーの香り…そんだけ匂うだけの量、間違ってたら悪いが…何を食ったんだ?」

 

 

アラシの推理の正誤を確かめるまでもなく、様子が豹変した男はアラシを突き飛ばして逃走した。

 

 

「ラッキー、当たりだ!」

 

 

しかし突き飛ばした程度でアラシが怯むはずもなく、一瞬で立ち上がると猛スピードで追跡。すぐに追いつき、抵抗する男を捻じ伏せた。

 

 

「はははっ!いいぜ、こいつを使ってやる!」

 

《ハンマー!》

 

 

どこからか取り出した大きな袋。その中をまさぐって取り出したのはガイアメモリだった。

 

ガイアメモリを腕に挿し、追い詰められた男がドーパント態に。全身に大小様々なハンマーの形を持った筋骨隆々の姿。特に右腕のハンマーの破壊力は見るまでもない。

 

 

《ジョーカー!》

 

「永斗、変身だ。いけるか?」

(早いねー。仕事が減るのはいいけどさ)

 

 

ドライバーにサイクロンメモリが転送され、アラシもジョーカーメモリを装填。ドライバーを展開し、風を纏って仮面ライダーダブルへ変身する。

 

 

「変身!」

 

《サイクロンジョーカー!!》

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

「お前…仮面ライダーだったのか!」

 

 

ハンマーは開幕全力の一撃。量産メモリといえど、流石に何発も喰らえない威力だ。と、そこで永斗がドーパントを見て首を傾げる。

 

 

『あれが窃盗の犯人?ハンマーじゃ例の現象が説明できないんだけど』

 

「知るか。殴れば分かる!」

 

『アラシって戦闘になると途端に脳筋だよね…慣れたけどさ』

 

 

ハンマーの攻撃の間を縫って、的確に蹴りのカウンターを入れていく。硬い肉体だが、さっき戦ったスネイルほどじゃない。軽く三発も入れればダメージになる程度だ。

 

 

「野郎…!これでも喰らえ!」

 

 

苛立ってきたハンマーが鎖付き鉄球をダブルに投げつけた。受け止めた腕がジンジンと痛む、骨にまで響く重さ。これはサイクロンジョーカーでは面倒だ。

 

 

《サイクロンメタル!!》

 

『磯野、野球しようぜー。なんてね』

 

 

ダブルはサイクロンメタルへとチェンジし、メタルシャフトで鉄球を打ち返す。何度投げても打ち返されるし、接近して殴ってもサイクロンメタルの防御力で受け切られてしまう。殴り合ったら先に根を上げるのはハンマーの方だ。

 

サイクロンジョーカーまでは感じていた手応えが、完全に消えた。多彩なフォームであらゆる敵に対して苦手をぶつけることが出来る、これこそがダブルの強み。

 

 

「詰みだぜクソ火事場泥棒」

 

「調子に乗るなよ!俺はまだ終わっちゃいねぇ!」

 

 

勝ちの局面だと思っていたが、その考えは一変する。

またも出現した袋から、ハンマーが今度は別のメモリを取り出したのだ。

 

 

《ノイズ!》

 

 

ハンマーが体にメモリを挿し、別の姿に。

体格が一転して細身になり、鉄々しかった見た目が電子機器のような電線乱れる全身へと変化した。特徴的な右手のマイクと右胸のメガホンといい、さっきまでとは完全に別物だ。

 

 

「メモリの複数使用だと!?どうなってんだ!」

 

『幹部格ならまぁ分かるけど、ただの人間がやっていい所業じゃないよね…普通なら負担と毒素に耐え切れずぶっ倒れるよ』

 

 

ノイズは持っていた袋を野球ボールほどに縮小化し、腰に仕舞った。あの袋の仕組みにもツッコみたいところだが、ノイズの攻撃が迫る。

 

 

「くたばれえぇぇぇぇっ!仮面ライダァァァァァァッ!」

 

「うる…っせぇ!」

『耳壊れる……』

 

 

見た目通りの騒音攻撃。凄まじい怪電波で耳どころか全身の感覚にまで狂いが生じ始め、視界が傾き、シャフトを掴む握力が緩む。

 

 

「今だ!もらいっ!」

 

 

ノイズが伸ばした触手がメタルシャフトを奪い取り、そのシャフトでダブルを攻撃。反撃しようにも感覚が全く掴めず、視界が当てにならないため避けることもできない。

 

 

「この蝉野郎…!見た目も蝉っぽいの腹立つな…夏終わったんだから冬眠してろ!」

 

『リズムで相殺…いや、それならトリガーだ』

 

「…!あぁ、なるほどな」

 

 

ダブルはなんとかメモリを入れ替え、ドライバーを再展開。

 

 

《ヒートトリガー!!》

 

 

メタルメモリを抜いたことでシャフトが消滅。ノイズが驚いた隙に、トリガーマグナムから広範囲の火炎放射を繰り出す。

 

これなら狙いが定まらなくても比較的当たりやすいし、電子機器は熱に弱い。その狙い通り火炎を受けたノイズが怪電波を停止させ、ダブルの感覚が復活した。

 

 

「っしゃあ!覚悟しやがれ!」

 

「クソ!もう一度…!」

 

 

一度見た手は何度も喰らわない。ダブルはノイズが仕掛ける前にインファイトへと持ち込み、顔面を銃で殴りつけると炎の蹴りで吹っ飛ばす。

 

地面を転がるノイズに照準を定め、マグナムにトリガーメモリを装填。荒ぶるエネルギーを抑え、引き金を引いた。

 

 

《トリガー!マキシマムドライブ!!》

 

「『トリガーエクスプロージョン!!』」

 

 

超圧縮された炎がノイズの姿を焼き尽くし、大爆発。ノイズメモリは砕け、放り出されたハンマーメモリもダブルが握り潰して無力化完了。

 

が、男はすぐに立ち上がると、まだ抵抗の姿勢を示す。

 

 

「まだメモリを使う気か?上等だよ、何回でもぶっ倒してやる」

『えー僕もう嫌なんだけど…』

「黙ってろクソニート」

 

「畜生…()()()()()()()をしやがって…!もういい!遊びはおしまいだ!」

 

 

男はそう言い放つと、髑髏の頭部を持った機械の怪人に変化。首元の襟のような部分は緑色で、胸には三桁の数字が刻まれている。その番号は『106』。

 

 

「なんだあの姿、蛾…いや蝙蝠のドーパントか…?

いやおかしい。今アイツ、メモリを…」

 

『うん、ガイアメモリを使わず変身した。あいつはドーパントじゃない!』

 

 

蝙蝠怪人が両手を前に出すと、奇妙な波動が空間に広がっていく。それは一瞬の衝撃と、その後の異変をもたらした。

 

 

「……これは…!?体が重い…そうかこれが!」

 

 

ダブルが動けない間に、怪人は緑の翼を広げて飛び去ってしまう。しばらくの時間が経つと、ようやく重苦しさから解放された。

 

まるで泥沼の中でもがいているような不自由感。盗難被害者が感じた奇妙な現象は、やはりあの男が出したもので間違いなかった。

 

 

『あら逃げられちゃった…どーしよっか、あの重いやつあると僕ら手出せないよ』

 

「それはそのうち考える。今は…依頼達成の報告だ」

 

『達成?…あ、なるほど。ちゃっかりしてるね』

 

 

ダブルの手の中には、さっきの怪人が持っていた小さな袋が握られていた。強く握ると元の大きさに戻り、中には被害にあった盗品がズラリ。依頼人のお婆さんが買ったと思われるおもちゃも、その中にあった。

 

 

「殴り合った時にスった。泥棒返しってやつだ」

 

『手癖の悪さに定評のある探偵ねぇ…』

 

「うるせぇよ。勝手にゲームに金使ってるお前に言われたくねぇ」

 

 

犯人には逃げられたが、おもちゃの奪還には成功。

大きな懸念を残しながらも、見事に依頼を達成したダブルであった。

 

 

_______

 

 

 

人々を鈍化させる謎の機械怪人の出現は、あらゆる陣営に波紋を広げる。

 

永斗は事務所に戻った後、すぐに検索を開始。

心当たりはある。何度か『傲慢』がゲートから出していた「異世界の怪人」。異世界が並行世界という意味ならば、この世界にも情報が存在している可能性がある。

 

『機械』『鈍化』『変身』『蝙蝠』『数字』―――

最後に『並行世界』と『未知』。そのキーワードを入れ終えると、一冊の薄い本が残った。

 

ページを開く。空白と文字化けだらけで読めたものではない。

永斗は嫌な予感を胸に留めながら、その題名を呟いた。

 

 

「ロイミュード…」

 

 

一方、カフェで退屈そうにお茶をしていた組織の幹部、『傲慢』こと朱月王我と『暴食』の女も、その存在を感知し、興味を向ける。

 

 

「アレ、貴方が出したの?」

 

「まさか。あのロイミュードは違う、()()()()()()から来たホンモノさ。誰が送ってきたんだろうねぇ。あっちの世界に追放したヤツで生きてそうなバケモノなんて…一人しか知らないけど!」

 

「まさか彼が…?3年前、貴方でも殺せなかったって言う…」

 

「いいねぇ!帰って来なよ。今度こそ退屈させず、オレが殺してやる」

 

 

そして、逃走したロイミュード106。

ダブルの攻撃はボディにも大きな損傷を与え、このままじゃロクに活動もできない。

 

 

「クソっ!この世界にも仮面ライダーがいやがるのか!見てやがれ、俺も進化すればあんな奴!」

 

 

106は、かつて一度仮面ライダーに敗北した。使い捨ての駒にされ、炎に焼かれて死んだ。

 

その時は警察官とは名ばかりの、とある卑劣な男と融合して進化を果たしていた。だから今度は自分の力で、あれ以上の力を手にする。

 

あの時と同じように『盗み』を繰り返し、その快感を吸収し続ければ…やがて到達できるはずだ。究極の、超進化態へ。

 

 

「嗚呼エルバ様!心より感謝致します!私如きのために、貴方様直々にこのような贈り物をくださるとは…!!」

 

 

野望を噛み締めていた106の前に、天を仰いで叫ぶ妙な女が現れた。

女の視線は106に向けられ、恐れるでもなく近寄って来る。

 

 

《サテライト!》

 

「ッ…!させるか!」

 

 

女から何かを感じ取っていたのか、警戒していた106。女―――胡蝶(フーディエ)がメモリを出して鎖骨に挿した瞬間、攻撃より早く重加速を発動させた。

 

ドーパントやメモリの仮面ライダーは、この重加速を前に太刀打ちはできない。その事実を確認し、106は笑う。この世界でなら、天下をも手中にできる。

 

 

そんな身の程知らずの野望を、レーザーという名の天誅が射貫く。

 

 

「なにィ…!?」

 

 

一撃で急所をやられ、106のボディは爆散。

重加速が展開される寸前にサテライトが発射した小型衛星が、重加速の範囲外の空から106を狙撃したのだ。

 

浮かび上がる106のコアを、サテライトは掴んで放さない。

 

 

「あちらの世界の記憶を持つ存在。これにより転移の座標が固定され、私のプログラムは完成する……お待たせしましたエルバ様!この忌々しい世界の壁、今こそ壊して会いに行きます!この世界と数多の悲鳴を手土産にっ!」

 

 

『人は皆、化け物と呼び合う心を持っている』

かつて106と融合した人間、仁良光秀は人間をそう評した。彼も桁外れの外道だったが、それを今になって痛感する。

 

106のコアを掴んだ腕から伝わってくるのは、もはや醜いとまで言える忠誠心。恐怖すら覚える禍々しく濁った感情。

 

106は思い出した。106をこの世界に送り込んだ男もそうだった。

彼の中身は虚無。ただ広く、無限に広がる狂気の『憂鬱』。これが人間。これが本当の化け物。

 

 

サテライトの右腕が、106のコアを吸収。

最後に覚えた恐怖を抱え、そのロイミュードの意思は消え去った。

 

 

 

そして再び扉が開き、新たに二つの存在が世界に落ちる。

並行で平行だったはずの世界が、混ざり合おうとしていた。

 

 

 

 




今回登場したのはMrKINGDAMさん考案の「ハンマー・ドーパント」、髭アンパンさんとτ素子さん考案の「ノイズ・ドーパント」でした!

ロイミュード106って実は声優が勝杏里さんなんですよね。仮面ライダービルドのキルバスやダンボール戦機の仙道ダイキを演じられてる方です。そういう意味でも好きなロイミュードだったので、今回ソニック世界からお借りしました。

仮面ライダーソニックの方でもプロローグが投稿されているので、ぜひ見に行ってください!

感想、高評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!
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