ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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進級した146です。コラボ編ビシバシやっていきましょう。
今回のテーマは仲直り?みたいな感じです。お互いの世界のことに少しだけコンタクトもします。あとは謎に文字数が多いです。すまない。

とりあえず「天城隼斗はカッコいい男」というのは覚えて帰ってください。

今回も「ここすき」よろしくお願いします!


コラボ編 第3話 彼は誰のために戦うのか

「瞬樹。お前に言ったよな、アイツ追えって。

で、なんでテメェはぬけぬけと一人で帰ってきてんだ?」

 

「フッ…見失った。あの速さ流星の如し」

 

「塔に行ったの分かんだろ。見失うもクソもあるか。本当は」

 

「……見かけないおにぎり屋があったから、我が天使にとつい…いででででで!」

 

 

言い終わる前に、アラシの指が瞬樹の頬を千切る勢いで引っ張る。アラシ的にはどうしても隼斗を1人にしたくなかったようだ。

 

 

「で、テメェがもう一人の異世界人の…」

 

「狩夜憐。仮面ライダースレイヤーに変身する。天城隼斗さんの一個下…ってことは僕と同い年の高1なんだ。よろしく憐くん」

 

「自己紹介前に全部言われたんですケド…何その少年、全知全能??」

 

「天才なので」

 

「待て永斗。俺は初対面で呼び捨てだったのだが……」

 

「まぁ瞬樹は瞬樹だし」

 

 

二人目の異世界ライダー、憐も合流。事態は拡大する一方で頭が痛くなるが、永斗は先ほどからのアラシの挙動も気にしていた。

 

 

「アラシ、隼斗さんのこと信用してないの?」

 

「するわけねぇだろ。さっき会ったばっかの奴を」

 

「でも瞬樹の時はもう少しマシだったと思うんだけど。なんか特別気になってる事でも?」

 

「……いや、別にねぇよ。多分こいつは…俺の問題だ」

 

 

アラシの思考が軋む。おかしくなったというか、おかしく()()()というのは解っていた。氷餓や嘉神、山門といい、昔を思い出すことが近頃多すぎたせいだ。

 

そして、噂をすれば影が差す。怒りマシマシの勢いで扉が開き、はぐれていた隼斗が帰還した。

 

 

「あっ、隼斗さん帰ってきたね」

 

「遅えぞ!勝手に飛び出して何やってたんだ!」

 

「っせえな…ついて来れなかったそっちが悪いだろ。それにでけえ声出すな傷に響く…」

 

「んだと?大体お前が人の話を聞かずに突っ走ってくから…」

「はいはいそこまで。また喧嘩されてそれを仲裁する僕の身にもなってくれる?とりあえず隼斗さん、その怪我どうしたの?」

 

 

いつもと違いアラシが厄介者のように見られてると察し、ここぞとばかりに永斗が苦労人常識人アピール。普段の素行に問題があるのは永斗の方である。

 

 

「ああ、永斗少年か。まあこれは元からのやつもあるが……まぁさっきちょっとあの塔の中で戦ってる時に…」

 

「塔の中で?あのドーパント達の他にも敵がいたってこと?」

 

「一体何とやり合ってたんだよ」

 

「アンタらが言ってたアカツキって奴だよ。異世界への扉を作れるっていう…」

 

 

あっさりと飛び出た名前に、事情を知るアラシ達3人の目も飛び出そうになる。今飲み物を含んでいたら間違いなく噴き出していた。

 

 

「なんだと!朱月の野郎が!?」

 

「まさか向こう側から出向いてくれるとはね…で、結果は?って…聞くまでもないか。サクッと倒されたら僕らの面目立たないよ。こっちの大ボスなんだから」

 

「正直しんどかったけどな。向こうに追いつくのが精一杯だったが…この通り生き延びてやったぜ?」

 

 

帰ってきたのは想像以上の言葉。朱月と戦い、無事生還しているのがその証左だ。現状の戦力は異世界組の方が高い可能性が高い。

 

 

「まさか…あの化物とマトモにやり合えていただと!?流石は黒騎士の盟友…」

 

「黒騎士?さっきも言ってたが…ってアンタは…!!」

 

 

隼斗が瞬樹を見て分かりやすい驚きを見せる。憐にも似たような反応をされていたため戸惑う瞬樹だったが、異世界組のしばらくのコソコソ話の後、隼斗は今度は納得したような表情に。

 

 

「お前らさっきから何をコソコソ話してんだ」

 

「こっちの話だ。別に関係ねえよ」

 

「それより異界の蒼騎士!お前の名前は…」

 

 

頭の弱い竜騎士、さっき言われてたのにもう隼斗の名前を忘れる。というか多分聞いてなかった。

 

 

「ああワリ。天城隼斗だ。nice to meet you.」

 

「テンジョウ…天の城か?」

 

「ああ、そう書く。アンタは…」

 

「そうか!ならば答えよう我が名は…」

 

「津島…か?」

 

「そう!我が名は津島……待て、何故お前が我が真名を知っている!?」

 

「そしてシュヴァルツ。アンタには妹が1人イル、堕天使のナ。違うカ?」

 

 

「堕天使」という単語は他人が聞けばすっとぼけたものだろう。でも瞬樹は違う。少なくとも彼の知る妹は「天使」を名乗っていた。

 

 

「た、たしかに妹はいるが……何故そこまで知っている?」

 

「俺達の世界ではその妹さんは仲間の1人なんだ。だからアンタの容姿とキャラを見て確信が持てたって事だ」

 

「そ…そうか…!」

 

 

永斗から聞いた話だと、彼らは未来の並行世界から来たという。

たとえ並行世界の話でも、妹は未来で仲間に恵まれる。そして天使の名前を掲げ続け、誇りを持って生きている。

 

兄にとって、これが嬉しくないはずがない。

 

 

「まあいい!ゴホン!我が名は竜騎士シュヴァルツ!そこの黒騎士と出会い盟友の契りを交わした者である!!」

 

 

瞬樹は槍を掲げ、誇り高くその名を言い放った。

この数奇な偶然と、妹の盟友に深い感謝を述べるように。

 

 

「しかし、あのドーパントとやり合えてるとは蒼騎士もなかなかやるではないか!」

 

「まあな。けど、こっちは数発喰らわせるのが精一杯だった。アンタもアレと戦ったことがあったのか?あの時…『少なくとも、あの騎士のライダーよりかは面白かったし?』とかアイツ言ってたけど…」

 

「…ああ、一度だけな。だがあの時の俺は自らの強さに疑念を抱いていたせいで惨敗を喫し命を落とす寸前まで行った。今は全く負ける気はせんがな!ただ、生き延びただけでなく一対一で奴とやり合えていただけそちらの方が凄い。流石は善子の友!」

 

「…そっか、まあ色々あったんだな」

 

「それより、朱月とやり合っただけか?他に何かあの塔について情報はねぇのかよ?」

 

「朱月の言ってた情報通りなら内壁には多分爆薬かそれに似た何かがある。下手にぶっ壊すのはNG。異世界の扉については俺達の他に誰か別の奴が行ってたらしい。多分そいつが俺達がこっちに来る前に戦ったディストピアとみていいと思う。ただ朱月がそいつを化け物って言ってたのが気になったな…確かにアイツはかなりの強敵だったが…俺からは以上だ。そっから先は朱月とやり合ってたから無い」

 

「了解。それでこっちだけど…」

 

「ハーさんが塔の中に入ってったあと、タワー・ドーパントとやり合ってたケド邪魔が入って…」

 

「フーディエとかいうやつが変な本を使ってタワーを連れて逃げてった。僕たちの方はこんなもんです」

 

「そうか…サンキュ、永斗少年」

 

「いえいえ」

 

「んで、こっからドーすんの?」

 

「どーするっつっても…」

 

 

永斗には一つ、気になっていることがあった。

それはタワー・ドーパントが口走った文言、『憂鬱』。隼斗が言った異世界に行った誰かと合わせて考え、都合の悪いように組み立てると……嫌な想像が出来上がってしまう。

 

だが、まだ想像の域を出ない。黙っておいた方がいい。

 

 

「今のところは隼斗さんや僕らが得た情報以外に目立った手掛かりは無しだからね…」

 

「まぁ言うなら塔のドーパントが言ってた『第一の塔』ってのが気になるな。第一があるってことは二、三もある可能性が高ぇ。でも予測もできねぇし手掛かりっては言えねぇ」

 

「手掛かりが無いなら探せばいいだろ!さっさとあの朱月ってやつをぶっ倒して…」

 

「待てよハーさん。その朱月ってヤツ強エーんダロ?今もういっぺん戦いに行って勝てる見込みは?」

 

「…んなもんどうにかする!例え強敵っつってもライダー全員でかかればどうにか…」

 

「金色クラスならブレイヴは絶対的に必要になると俺っち思うけどナ。鳥も見つかってない現時点で挑んだところで返り討ちになるだけダ」

 

「んなもんそこのダブルと竜騎士で足りない分は補えば…」

 

 

隼斗がアラシと永斗を見るが、

 

 

「俺らを勝手に巻き込むな」

 

「この暴れん坊に同じく」

「あ゛ぁ!?」

 

 

正直首を縦に振りかねる。なにせ組織の最高幹部、しかも三強に入る実力者だ。倒せれば最高だが、あちらが手を出してこない以上、こちらから攻めるのはリスクが大きすぎる。

 

 

「俺としては我が盟友達に手を貸したい気持ちは山々だが…恐らく今のままでは…」

 

「けどこのまま待ってても…!!」

 

「それにハーさん、怪我まだ治りきってないでしょ?」

 

「あ、確かに出会った時から所々…朱月との戦いで負った傷…ではないよね」

 

 

隼斗の体には見るからにダメージが刻まれている。その体で朱月と再戦は死にに行くようなものだ。

 

 

「けどこんなもん見た目だけでほとんど治りきって…」

 

「テイ」

 

「っ……!」

 

「ホレミロ言わんこっちゃナイ。それで無理でもしてミロ、果南サンにまた会う前にこっちの世界でおっ死ぬゼ?」

 

 

憐の傷デコピンで隼斗が蹲る。それを見ていたアラシが呆れたように溜息をついていた気がしたが、隼斗には気付かれなかったようだ。喧嘩にならずに永斗は安心する。

 

 

「そういえば果南さん、って誰?」

 

「向こうにいる俺っち達の仲間でハーさんの幼馴染のオネーさん。ハーさんにとっては1番大事な存在なんダ」

 

「幼馴染のお姉さん?美人なの?」

 

「そりゃーもう!ハーさんがゾッコンにナルレベルで!あ、写真見ル?」

 

「善子はいるのか!?いや…俺は見ない!今はまだ運命の時では……というか勝手に出て行った迷惑かけたくせに俺だけそれを見て満足するのは少し違うというか騎士道に…そう俺の騎士道に反して……」

 

「素が出てるよ瞬樹。あ、この子可愛い」

 

「御目が高い!それがシュバルツの妹さんデ……」

 

「わあああああああっ!!」

 

 

憐の携帯を見て騒ぐ一年組。一方で二年組はそれを比較的冷めた目で見ていた。

 

 

「で、そっちはなんかアイデアねえのかBad detective(不良探偵)

 

「随分上からな依頼人だな」

「最初に目の前の依頼人を見捨てようとした探偵の屑よりはマシだと思うが?」

「勝手にどっか行った奴が悪い。身長以外もガキか?」

 

 

アラシと隼斗の間は会話できないレベルで火花が散る。うっかり爆発しそうなのを見かね、永斗と憐が止めに入った。こっちはもう息が合ってそうだ。

 

 

「まーまー2人ともその辺で」

「そうダゼハーさん!確かに俺っちもこのヒトのことは言いたいことあるケド…」

「あるのか」

 

「あーもう…とにかく、事件に関しては一度ここで切ろう。隼斗さん、憐くん、2人ってスクールアイドルは好き?」

 

「え?まあ好きだが…」

「ってか俺っち達向こうでスクールアイドルのマネージャーやってるシナ」

 

 

またしても幸運な偶然。境遇まで妙に似通っていたようで、話が速い。

 

 

「それならよかった。どうせ暇なら、僕らの仲間の手伝いをして欲しいんだけど…お願いできる?」

 

「手伝い?…まぁ休憩にはなるか。そんで、どんなグループなんだ?永斗少年達の仲間って…」

 

「行けば分かるよ。じゃアラシ、バイク出してー」

「…わーったよ、行くぞ」

 

「行けば分かるって…」

 

 

こんな感じでお世辞にも乗り気ではなかった隼斗&憐だったが、いざその学校に到着すると態度は一変した。

 

 

「こ、ここって……!!」

「まさカ……!!」

 

「音ノ木坂学院。僕らの通ってる学校です」

 

「「音ノ木坂ァァァァァァ!!!?」」

 

「うっせえな!そんなに驚くことかよ!」

 

 

驚きと恐らく喜びのシャウト。それはもう感情の込められた叫びだった。

 

 

「shut up!未来人の俺らからしたら音ノ木坂はかなりの有名どころなんだよ!!」

「詳細はイエネーのが厳しいトコだけどナ」

 

 

凄まじく歯がゆいのがよく分かる顔で、隼斗と憐が訴えてくる。未来で音ノ木坂が有名なのはいいが、どうかいい意味であることを祈る。この世界だと、ぶっちゃけこの学校は魔窟だから。

 

 

「まあいい、行くぞ。アイツらが待ってる」

 

「アイツらって…」

「マサカ……」

 

「決まってるでしょ?μ'sだよ」

 

 

隼斗と憐の許可証を発行してもらい、音ノ木坂の中に。

足を進める度に興奮が指数関数的に上昇するようで、色々と抑えきれないという様子だった。

 

その興奮は、ある場所に来ると最高潮に達した。

アイドル研究部の部室前だ。しかし、そこにあるもう一つの名前に隼斗が首をかしげる。

 

 

「探偵部…?」

 

「うちの仲間達はスクールアイドルと同時に探偵部もやってる。事務所にあんまりにも依頼が来なすぎて、我らがリーダーの提案とみんなの相談で出来上がったんだ」

 

「ま、こんなのが探偵なんじゃな…ってかあの人達になんて事させてんだ…」

「まあ、それもみんなの決断故だから。さ、入るよ」

 

「いや待ってくれ永斗少年心の準備が」

「ただいまー」

 

 

隼斗の進言虚しく、扉は普通に開けられた。

 

 

「あ、アラシ君に永斗君!おかえり!」

 

 

扉を開けた先にいた穂乃果が、パンを食べながら元気に挨拶。色々と動き回って疲れていたのか、休憩中なようだ。

 

 

「Real高坂穂乃果さん…!」

 

 

隼斗はその光景に限界直前のようだ。

 

 

「あれ?その人達は誰?」

「ただいまほのちゃん。この人たちはちょっと訳ありの依頼人で…」

 

「え!依頼人の人!?今回はどんな…」

 

「悪ぃがそれについては話せない。ともかくコイツらがその依頼人だ」

 

「あ、ちょ、テメェ待て…!」

 

「おととと…!」

 

 

アラシが異世界組二人の首を掴み、少し引きがちだった彼らを穂乃果の前に引っ張り出した。思わず二人は目を覆ってしまう。太陽でも見ているようだった。

 

 

「この人達が?」

 

「ああ、事務所に置いとくのも面倒だからな。永斗の提案で連れてきた」

 

「へぇ、そうなんだ!あ、私高坂穂乃果!この音ノ木坂のスクールアイドル、μ'sのメンバーです!よろしくね!」

 

「よ、よろしくお願いします!俺、天城隼斗です!初めまして!」

 

「ツレの狩夜憐デス。ヨロしくお願いします!」

 

 

「なんか俺の時と反応違くねぇか」「そりゃ女子だし」とやり取りをする探偵二人を放っておいて、隼斗たちは興奮どころか爆発寸前に。

 

 

「うん!よろしくね!って…もしかして2人とも私と同じぐらいの年齢?」

 

「一応俺が17で…」

「俺っちが16デス」

 

「そっか、じゃあ隼斗くんとは同い年だし、憐君は後輩かぁ…!」

 

「まあ年齢だけなら、ですけど…」

 

「え?それってどういう……」

 

 

 

「ちょっと穂乃果!いつまで休憩しているつもりですか!?」

 

 

そこに海未も参戦。二撃目の衝撃が体のダメージにも響いたのか、よくわからない風に顔が引きつっていた。

 

 

「あ、ごめーん海未ちゃん!けどほら!依頼人の人だって!」

 

「依頼人、ですか?…見たところこの学校の生徒では無いようですが…アラシが連れてきたのですか?」

 

「みたい!だからこっちの対処もしなくちゃ!」

 

「あーいえ!お構いなく!一応俺…自分達も色々あるんでここに居させてさえくれれば…」

 

 

隼斗の対応に、アラシが「誰だテメェ」と言いたげだ。

しかし、そんな時に再び轟音。さっきと同じく窓の奥に塔が出現していた。これは「第二の塔」だろうか。

 

 

「アラシ、今の音…」

 

「ったくまたアレかよ!次から次へと…!!」

 

「何かあったのですか?」

 

「あぁ、ちょっとな。だけど心配すんな、この件は俺たちだけで片付ける。行くぞ永斗」

「あーちょっと待って。真姫ちゃんいる?」

 

「真姫、永斗が……」

 

「何よこんな時に…」

 

「西木野真姫さん!!」

 

 

唐突に叩き込まれる真姫の登場、すなわち隼斗にとっては三撃目のパンチ。大袈裟だと思いつつも、永斗はある事を確かめるために真姫に提言する。

 

 

「ちょっとお家の車借りたいんだけどいい?」

 

「車?構わないけど…何に使うのよ?」

 

「ちょっと調べ物。あ、あと凛ちゃん借りてくね」

 

「永斗くん呼んだ!?」

 

 

凛の登場。死角からの右ストレート。

「ヤベェ」と遺言を残して隼斗が倒れた。憐がちゃんと受け止めてくれた。

 

 

「ちょっと調査に付き合って欲しい。来てくれる?」

 

「分かったにゃ!」

 

「あとはもう2人ぐらい人手が欲しいけど…」

 

「待ってください!これ以上そちらに人員を裂くと文化祭の準備が……」

 

「あー、そっかぁ…でも残ったメンバーでもどうにかならない?」

 

「ただでさえ私たちは事件につぐ事件で遅れてるんですよ?それを更に遅らせてしまったら……」

 

 

海未の言い分は尤もだ。アラシとしてもこれ以上彼女たちの邪魔をしたくはない。しかし、隼斗を送り返す+塔の対処も完遂しなければならない。勘でしかないが、そうしなければいけない気がする。

 

考えを巡らせているうちに、立ち上がった隼斗が手を挙げた。

 

 

「永斗少年、さっき言ってたよな?仲間の手伝いをして欲しいって」

 

「え?…あーうん、けどさっきのは何というかあわよくば隼斗さん達に手伝わせようかな〜と思ってただけだから…」

 

「俺にやらせてくれ!それなら多少そっちにメンバーが行っても俺がその分をFollowすればいいだろ?」

 

「「ええっ!?」」

 

「は、隼斗くんが私たちの手伝いを!?」

「申し訳ないですよ!依頼人の方に私たちの都合でそんなこと…」

 

「そんなこと言わないでください海未先輩!」

 

「せ、先輩…?」

 

「あ、いえ!なんでもないですあはは…とにかく!俺でよければ力を貸しますよ!それに諸々の理由で当分満足に動けないですし…」

 

 

アラシをチラチラと見る隼斗。永斗はその行動の理由を察したようで、真姫にOKサインを出す。やはり信用できないのか、アラシが若干嫌そうだったが。

 

 

「猫の手でも借りたい気分だったし、本人もそう言ってるんだから、いいんじゃないの?」

 

「…よろしいのですか?ええと…」

 

「あ、こちら依頼人の天城隼斗くん!そして後輩の狩夜憐くん!」

 

「天城さん、よろしいのですか?」

 

「sure.喜んで!あと、隼斗でいいですよ。さん付けも必要無いです」

 

「では…隼斗、お願いします」

 

 

真姫の助け舟に海未も承諾。その後一気に詰められる距離に、アラシの表情が更に曇った。これは多分信用云々ではなさそうだ。

 

 

「…もしかしてやきもち?あぁいうタイプはコミュニケーション激しいからね。不愛想なコミュ障は気にしなーい気にしなーい」

 

「うるせぇ死ね。じゃあ穂乃果、こっちは任せるぞ。あと海未、そいつきっちり見張っとけ」

 

「まかせて!」

 

「何故見張りを?」

 

「訳ありだって言ったろ?じゃあ頼むぞ」

 

 

そう言い残すと、アラシと憐はにこと希を連れて塔に。凛と永斗は車でとある場所へ。謎の塔の捜査が、本格的に始まった。

 

 

 

__________

 

 

 

「…俺たちだけで片付けるって言ったろが。ついて来てんじゃねぇ帰れ」

 

「あんたじゃなくて永斗に頼まれたから来てあげたのよ!アイドル2人も連れてデートみたいなもんなんだがら、素直に感謝しなさい?孫の代まで自慢できるわよ」

 

「アホ抜かせ貧相。希はともかく、テメェは主に首から下鏡に映してジックリ見りゃわかんだろ」

 

「だーれーがー貧相よ!あんたいい加減デリカシーってものを…!」

 

 

塔への道のりの最中、憐は終始アラシとにこの喧嘩を見せられていた。

憐はその口論を聞きながら、同じく捜査に同行している希とにこを見比べる。確かに残酷までな格差。これで同じ3年生というのだから驚きだ。

 

 

「憐君…でいい?ウチは東條希、よろしくね!」

 

「うーん…よく知ってるケド…まぁいいや。

ちょっと聞きたいんデスけど、あの二人って仲悪いんスか?」

 

「憐君にはそう見えるん?」

 

「まぁ、ハーさん…俺っちと一緒にいたもう一人も、アイツとは仲悪かったし。あんな感じデ」

 

「ふーん…それってもしかして、最初に会った時からずっと喧嘩してたりするん?」

 

「そうデスそうデス。ハーさんから聞く限りそうだし、少なくとも俺っちが見てる時はズット……」

 

「それなら大丈夫やと思うよ。カードもそう言ってる」

 

 

タロットカードを出して断言する希だが、どうも憐はピンと来ていないようだ。

 

 

「それじゃ頑張って当ててみよか。ヒントは…アラシ君は動物によく噛まれる!」

 

「動物…?わけワカンネ。でもそう言われると気になるようナ…」

 

 

「むむむ…」と考える憐。何か挑戦されている気がして投げ出す気になれず、アラシとにこの喧嘩を中断させて強引にアラシに質問した。考えるよりも聞くが早い。

 

 

「アラシサン、動物って嫌い?」

 

「んだ急に…そりゃ嫌いだ。それがどうした」

 

「アラシは学校のアルパカにも嚙まれるし、唾かけられるし、猫探しじゃ引っかかれて逃げられるしで動物絡みだとてんで駄目なのよねー。そんな目つきしてるから動物にも嫌われるのよ」

 

「余計なお世話だ!クソ…チビはどいつもこいつも…」

 

「動物に嫌われる……そっかわかったゼ!

アラシサン、アンタは『自分を嫌いな奴が嫌い』なんダ!」

 

 

突然投下された発言に、空気が凍る。何かマズい事を言ってしまったのではないかと焦る憐だったが、そうじゃない。『アラシの内面を言葉にする』という事自体が、なかなかに珍しい状況なのだ。

 

アラシは自分の事を仲間にも話さない。だから仲間もそれに大きくは踏み込まない。

 

 

「……俺を嫌いな奴が嫌い…か。かもな」

 

「アラシが素直…!?」

 

「これはまた珍しい光景やね…」

 

「そんなに!?どんだけ捻くれてんだこのヒト…」

 

 

声に出されたことでアラシも初めて気づいた、そんな様子だった。

今のアラシは『元のアラシ』とは違う。それは自覚しているが、別に何かを意識して振舞っているわけじゃない。ただ前とは違う何かになりたかっただけ。

 

接し方が分からなかったから、無意識な受け身になっていた。

『敵意』には『敵意』を。『善意』には『善意』を。そんな本能的コミュニケーション。

 

 

「単純で分かりやすいってこった。テメェも殴られたくなけりゃ、下手に手ぇ出さねぇことだ」

 

「じゃあ結構いい奴じゃねぇカ、それって優しくされたら優しくし返す…ってことダロ?」

 

「あぁ?」

 

「あと一つ訂正したいとこがアル。ハーさんは別に悪い奴じゃない。多分アンタを嫌ってるだろうケド……それはアンタが俺っちたちの事情を聞いた上で突っぱねたのが、仲間を侮辱されたみたいで嫌だったってだけだと思う。結構メンド―な人なんだ、ハーさんって」

 

 

隼斗から聞いた話で、憐はそう結論付けた。

 

天城隼斗は仲間や友を大切にする男。自分が大切だと思う人物に対し、向ける感情に際限が無い男だ。それは敵対心も同じ。隼斗たちの仲間のスクールアイドルがステージで大敗を喫し、それをライバルに叱責された時は激しく嚙みついたと、憐も聞いている。

 

 

「じゃあ聞いてもええ?その隼斗君って、どんな人なん?」

 

「ハーさんは一言で言えば…愛に生きる男、カナ?果南サンっていうハーさんゾッコンの先輩がいるんだケド、果南サンがこれまたよくトラブルに巻き込まれる人で…二回も誘拐されちゃったりしたワケ。その時ハーさんが……」

 

 

憐は仮面ライダーであることを希とにこに隠しつつも、事の顛末を語る。

一回目はチェーンロイミュードによる事件。その時は怒りの余りデッドヒートという力によって暴走し、危うく人間の犯人まで殺すところだったとか。

 

 

「…ヤバい奴じゃねぇか」

 

「あくまでデッドヒートのフルバーストシステムのせいナ。そんだけ人のために怒れる人だってコト」

 

 

二回目は強敵、トルネードロイミュードとの戦いだった。

自身の「こだわり」のために果南を攫ったトルネードに対し、彼女を絶対に救うために隼斗は修行と覚悟の末、トルネードを凌駕する「限界を超えた力」を手に入れたのだ。今度は怒りに呑まれず、その力を正しく乗りこなすという進化を果たして。

 

他にも果南絡みの事件といえば、ロイミュードが果南をコピーした事件もあった。その時のイミテーションロイミュードも相当な強敵だったが、他二件と同じように「思い」で強くなり、乗り越えたという。この件に関しては()()()憐は関与しなかったため、聞いた話に過ぎないのだが。

 

 

思えばソニックが強くなるきっかけには、いつだって彼女たちがいた。

 

 

「聞いた話と言えバ、曜サンと梨子サンが果南サンから聞いたっていう、ハーさんの告白台詞でも聞く?」

 

「なになに、告白!?ウチ聞きたい!」

 

「下世話ね希……それ言ってもいいやつなんでしょうね?」

 

「多分ダイジョブ!どーせ本人にその気は無かっただろうシ……っと確か」

 

 

『俺は絶対に死なない!俺は…俺は姉ちゃんの事を、心から愛してる。その気持ちがある限り、俺は不死身だよ!』

 

 

「こんな感じカナ?」

 

 

思ったより火力の高い台詞に、女子2人が湧き上がる。普段接する男子が朴念仁、オタク、中二と惚れた腫れたの恋愛話が全く出ない面子であるため、男子のイケ台詞に胸がときめいているようだ。

 

 

「カッコええやん隼斗君!ほらほらアラシ君も見習って!にこっちにカッコいい告白の一つや二つ!」

 

「こ…コクハク…!?なにいってんのよ希、そんなの別に嬉しくなんて……!」

 

「は?言う訳ねぇだろ何言って…痛っ!テメコラ何蹴ってんだチビ!」

 

「…なんだ、アンタも仲間から好かれてるんダナ。その様子ならハーさんとも仲良くなれるんじゃないカ?」

 

「どこ見てそう思ったんだテメェは……

まぁ…ちゃんと凄ぇ奴でいい奴だってことは認めてやるよ。アイツもお前もな。愛を持ってそれを伝えるってのは、心底尊敬する」

 

 

またしても飛び出たアラシの素直に、希とにこは目を丸くする。

特ににことの会話は悪態無しで成り立ったことが無いため、ここまで淀みの無い賛美がアラシの口から出てきたことに違和感しか覚えていないようだ。

 

 

「そっか…憐君に優しくされたから、アラシ君も同じように返したってことやね!つまり精一杯褒めて褒めて褒めちぎって優しくすれば、いつもと違うアラシ君が見れる!」

 

「はぁ!?おい待て希、テメェ何考えて…」

 

「アラシ君は本当は優しい!友達想い!料理上手!甘党なところがギャップ萌え!」

 

「じゃあ俺っちモ!アラシサン強い!仲間に慕われてる!多分頭いい!ほらほら、にこサンも続いテ!」

 

「え…えぇっ!?なによ、えっと……顔は良い、いつも全力なのがカッコいい、頼りがいがある、にこのことちゃんと見てくれてる、誕生日の曲が嬉しかった……あれ…?」

 

「な……ばっ…何言ってんだお前ら!うるせぇやめろ!ボケ!バーカ!」

 

 

勢いでこちらも素直になるにこも面白いが、優しさの集中砲火でアラシの挙動がバグった。そこからしばらくこの遊びは終わらず、アラシの小学生語彙の罵倒も続くのだった。

 

 

 

___________

 

 

 

「ん…!?」

 

「どうしたの永斗くん?」

 

「いや、今アラシがすっごい面白い事になってる気がして…」

 

 

西木野家から借りた車で移動中、永斗は相棒としての第六感で何かを察知した。後でその詳細を聞き、その場に居なかった事を死ぬほど後悔するのはまた別の話だ。

 

永斗が考え事をしている間、凛は暇を潰す。そうして車が向かうのは東京都の外。

隼斗は異世界に行った誰か=ディストピアと断定した。全く部外者というのは恐ろしい推測をするもので、そしてそれは十中八九の正解を示すのも世の常。

 

タワー・ドーパントは『憂鬱』と言葉を漏らした。そしてあのフーディエという女性に関しては、朧気だが見覚えがある。しかもディストピアが朱月によって異世界に送られたとなれば、出てくる結論は一つしかない。

 

 

「着いたね。一応凛ちゃんも付いてきて」

 

「わかったにゃ。でもなんで、ここって神奈川だよね…?しかも山奥だし」

 

「凛ちゃんには紹介しとくよ。ここが僕の生まれ育った実家」

 

 

そこはかつて永斗が七幹部『怠惰』として研究を行っていた、組織の最高研究所。生まれた時からここに監禁されていた場所だが、永斗はここで大切な人にも出会った。なんとも言い難いが、思い入れがあるのは間違いない。

 

 

「実家!?でも永斗くん、ここって…」

 

「そうだね。久しぶりの帰省だってのに、随分と迎えが寂しい。思った通りだけどね」

 

 

ここはファング事件の際にもアラシが訪れた場所で、その時は研究所の瓦礫が積みあがっていたと聞いている。しかし永斗と凛の目の前に広がるのは、驚くほど平たい「更地」だった。

 

 

「あの塔がドーパントの能力だとしても、あの大きさを無から創り出すのは流石に無理だ。凛ちゃんわかる?質量保存の法則っていうんだけど」

 

「ん……うーん…?たしか理科だったよね!」

 

「化学ね。要するに10の量からは10しか作れない。0から1は不可能ってこと。まぁドーパントの力は物理法則ガン無視もいいとこだけど、それにしたって限度があるって話よ。つまり、あれだけ巨大な塔を作るのにはそれだけの『材料』を使ったはず。

 

さてここでクイズ。ここには何年も放置されてたはずの大量の瓦礫がありましたが、最近になって忽然と消えてしまいました。それはどうしてでしょうか?」

 

「もしかして…そのガレキで塔を作ったってこと!?」

 

「多分正解。さらに、ここを知った上で勝手に持ち出したりできるとなると、それはもう組織の人間確定。しかも相当な実力と立場がある人間……七幹部の一派クラスだ」

 

 

ある場所を目指しながら、永斗は自身の推理を凛に語る。

少なくとも七幹部は、永斗がファングの力で暴走して記憶を失うまでは『八幹部』だったはずだ。消えていた名前こそが『憂鬱』。

 

更地の一角に到着した。

そこは地下室への入り口で、丁寧に入口まで取っ払われていた。

 

そこに入った二人は、その奥に緑に光る鉱床があるのを見つける。

瓦礫が目的なら無用の長物として放置されていると思ったが、ビンゴだ。

 

 

「きれいにゃ…」

 

「これはガイアパーツ。アラシがロストドライバー作る時に採集したやつね」

 

「あ、永斗くんが引きこもってた時の!」

 

「言い方やめようか。語弊があるでしょ色々と。

で本題だけど、これは地球の意思の影響を強く受けた石なわけよ。僕の本棚がデータベースなら、これはその端末。超平たく言うとカメラや録音機ってとこ。地球の本棚とこれを併用すれば、この場所の記憶にアクセスできる」

 

「…わかりやすく言ってくれるんだよね!」

 

「諦めが早いのも美点だと思うよ僕は。まぁすっごい大雑把に言うと、僕は今からタイムスリップする」

 

 

地球の本棚では、組織や幹部のことにはロックが掛かって閲覧できない。だからこのガイアパーツに保存されている記憶から研究所を再現し、永斗の力でそれに干渉。そこで直接『憂鬱』のことを調べるしかない。

 

 

「そんなことできるの!?」

 

「だからアラシからメモリーメモリを借りてきた。ここに来るまでに理論は構築したし、面倒だけどやるしかない。成功したら褒めてね凛ちゃん」

 

 

永斗はガイアパーツを握ってメモリーメモリを起動させ、同時に地球の本棚にアクセス。『憂鬱』を追うため、過去の記憶に足を踏み入れた。

 

 

___________

 

 

一方その頃、事務所で留守番している瞬樹。

 

 

「未来の善子…善子がスクールアイドル…!?しかも、堕天使…!!そういえば烈は善子に懐かれていたな、教えておいてやろう。それにしても気になる…!どんな風に…いや必ず麗しい!必然的に!だが我が天使とどちらが……はっ!天使を比べるなんて愚かにも程があるぞ竜騎士シュバルツ!いやでも絶対可愛いんだよなぁ……」

 

 

妹の事について、1人で延々と悶々としていた。

 

___________

 

 

 

それから調査と準備は日が落ちきるまで続いた。

 

アラシ達は出現した塔をくまなく調べたが、分かったことは隼斗の言う通り爆薬が仕込まれているという事と、第一の塔とは全く造りが異なっているという事。敵がこれを使って何かを企んでいるのは確定なのだが、この塔を撤去するのは無理そうだ。

 

一方で隼斗とμ’sの文化祭ステージ準備の方は、学校に戻って来た永斗がその程度を確認した。

 

 

「これは……また随分と進んだね」

 

「えぇ、隼斗がとても働いてくれました。これなら早くて明日からは打ち合わせや練習に専念できそうです!」

 

「そりゃ全速全開で張り切りますよ!何せあのμ’sと……いや、なんでもないっす」

 

 

隼斗が何か言おうとしたのも気になるが、それ以上にほとんど完成した簡易ステージに驚いてしまう。というか、真姫や絵里は余りの進行具合に若干引いているまである。

 

 

「それで永斗少年はどこに行ってたんだ?」

 

「過去」

 

「過去!!??いやでも俺も今過去に……ん…!?」

 

「説明は後で。とりま情報共有しよう。

もう遅いし、皆はそろそろ帰った方がいいんじゃない?」

 

「そうですね。今日は随分と進みましたし…そろそろ片付けましょう」

 

 

μ’sが片付けをしている間に永斗と隼斗はアラシに電話をする。どうやら永斗は相当な情報を掴んで帰って来たらしい。隼斗も大きな期待を寄せているようだ。

 

と思ったら着信音は近くから聞こえた。そこには珍しいレベルで疲弊した様子のアラシと、実に楽しそうな希と憐。あとは何やら後悔のオーラを撒き散らすにこがいた。

 

 

「……今戻った」

 

「なんかめちゃくちゃ疲れてねえかアイツ」

「うわ絶対面白い事あったじゃん。見逃したの痛すぎ」

 

「うるせぇ…お前んとこのコイツが…その…お前が……あぁもういい。情報共有するんだろ、早くしてくれ」

 

 

語彙力の低下と疲労で悪態からキレが消失している。海未から聞いた話もあり、次に会ったらちゃんとアラシを見定めようとしていた隼斗だったが、相手側に余裕が無さすぎた。

 

 

「えーと…僕は例の研究所兼実家に行ってきたんだけど、そこで過去に触れて全知全能になりました」

 

「……ゼウスか」

 

「ヤバいよ隼斗さん、アラシがクソツッコミした。これは重症だ」

 

「おい何があったんだよ憐。あのMad dog(狂犬)が老いたブルドッグみたいになってるぞ」

 

「何ってずーっと褒めてたダケ。そしたらアラシサンがフニャフニャに。なんでダロ?」

 

「…よく分からんが、褒め殺しが実現し得る事象だってことは分かった」

 

 

ツッコミが無くて張り合いが無いのか、永斗は普通に手に入れた情報を開示し始める。

 

 

「まず塔のドーパントね。アイツは僕らの世界の敵組織の構成員確定で、アイツが創る塔には『原料』がある。具体的に言えば壊れた建物のリサイクルね」

 

「質量保存則だな」

 

「隼斗さん理系?話が早くていいや。どうにも原料は組織が所有してた建物を再利用してるみたいで、調べた限りだと崩壊したまま放置されてた建物が二件まるっと消えてた。大きさは大体同じくらいのやつ」

 

「塔は二本、つまり一件で一本ってことダナ、エイくん」

 

「エイくんって僕?」

 

「永斗だからエイくん」

 

「あそう。そんで僕らと憐くんの前に現れたあの女の人だけど…彼女は胡蝶(フーディエ)。組織の最高幹部『憂鬱』の側近。タワーことデュオン・ヴァン・スーザも憂鬱の部下」

 

「『憂鬱』だと…!最高幹部は七人じゃねぇのか!?」

 

 

その名前に、くだびれていたアラシも声を荒げた。

 

 

「ここに来る前、ハイドから聞いた。僕が記憶を失った直後に八幹部『憂鬱』が謀反を起こし、朱月の手によって処理されてる。憂鬱は朱月でも倒せず、取られた処刑方法は……ゲートの能力での別世界追放」

 

「おい、てことは俺たちが戦ったのが…!」

 

「使用メモリはディストピア、その名はエルバ。称号は『憂鬱』にして組織最高の万能を持った最も完全に近しい人類。そいつが今、この世界に戻って来ようとしてると見て間違いない」

 

 

七幹部最弱の『暴食』ですら、ダブルは遠く及ばない現状。数年前とはいえ朱月でも倒せなかった相手は、どう考えても手に余る。

 

しかもつい先日あんな大事件が起こったばかりで世界中が不安定なのだ。そんな化け物が帰ってきて暴れでもすれば、今度こそ完全に世界から日常は消え失せる。

 

 

「…何が何事も起こらないように、だよ。未曾有のピンチじゃねぇかよクソが」

 

「あんな危ないヤツがこの世界に…!早く帰ってぶっ倒さねえと!この世界のμ’sの学園祭、邪魔なんてさせてたまるか!手を貸せよBad detective(不良探偵)、μ’sを守り抜くんだろ?」

 

「初めて意見が合ったが言われるまでもねぇ。これ以上アイツらの道を歪めさせねぇよ。そのためにお前が手を貸せ」

 

 

また喧嘩をしているように見えて、何かが違う。

互いが互いを少しだけ理解して、この二人は初めて手を取った。少なくともそれぞれの相棒にはそう見えた。

 

 

「よーし変わらず目標は異世界御一行をお帰しするでいいね。他にも色々分かってるから明日からは憂鬱の作戦を探りつつ、ワンチャンその異世界転移を利用して隼斗さんと憐くんを送るって流れで。それで一つ気になるんだけど……お二人はどこ泊まるの?」

 

 

永斗が出した疑問に、隼斗と憐は完全に忘れていたと口を開ける。

そのままアラシの方を向く二人だが、帰って来たのは露骨に嫌な顔。このままじゃ野宿になりかねない。

 

 

「それなら、ウチたちの内誰かの家に泊まるってのはどう?」

 

「はいっ!?」

 

 

そこだけ都合よく話を聞いていた希が、そんな事を言い出した。

しゃっくりレベル100みたいなリアクションをする隼斗。口に水分を含んでいたら、間違いなく派手にぶちまけていただろう。

 

 

「あーなるほどそういう展開…希ちゃんそんなこと言ってるけど、どうするアラシ?」

 

「あ?いいんじゃねぇか別に。コイツら泊めなくていいなら願ったり叶ったりだ」

 

「はっ!?バッッッカじゃねぇのお前!あのμ’sだぞ!?そもそも初対面で迷惑だし、男二人がこんな美少女アイドルと、しかもあのμ’sと一つ屋根の下って!?」

 

「何がダメなんだよ。俺も何人かの家に泊まったことあるけど、別に邪険に扱われるなんて無かったぞ」

 

「───!?」

 

「あ、ハーさん死んだ」

 

「アラシはその辺の観念ガバいからね…希ちゃんも分かって言ってるでしょ。依頼人で遊ばないで」

 

「んー?なんのことかウチさっぱりわかんない」

 

「うるせぇのが寝てるうちにさっさと決めろ。誰の家に泊まるんだ?」

 

「えぇ…本当に泊めてくれるのカヨ……」

 

 

ステージ準備を通して隼斗の印象が良かったのか、その提案には皆が肯定的だった。その中でも、隼斗たちを泊めるという事で真っ先に立候補したのは穂乃果だ。

 

 

「はいはい!私の家に泊まってよ!みんなはどう?」

 

「穂乃果!?いえ…流石に私は見知ったばかりの男性を泊めるのは、やはり少し抵抗があると言いますか……」

 

「私はお母さんに聞いてからって思ったけど…穂乃果ちゃんは大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよことりちゃん!二人も急に泊まった時あったじゃない!それと同じだよ!」

 

 

永斗は頭を抱えた。我らが二大リーダーの穂乃果とアラシ、似ている所は多いが一番似ているのは貞操観念というか男女関係の考えが小学生レベルということだ。憐もそれには苦笑い。

 

ともあれ、永斗や憐のやんわりとした抵抗では穂乃果の謎情熱に勝てず、そのまま高坂家に泊まる流れになってしまった。

 

 

隼斗が目を覚ましたのは、穂乃果の実家「穂むら」の前。目覚めと同時にもう一度絶叫したらしい。

 

 

_________

 

 

 

事務所に帰ると、アラシはソファに倒れ込んだ。

彼にしては珍しい疲弊具合だった。エンジェル事件の連続後始末から始まり、急遽入った依頼でロイミュードに出くわし、異世界の仮面ライダーもやって来たかと思えば八人目の幹部と来たのだから仕方がない。何気に褒めちぎられた時間が一番しんどかった気もする。

 

 

「お疲れさん」

 

「…そりゃお互い様だろ。あの場所に行ったんだろ、永斗」

 

「……まぁ、何にも無くなってたのはちょっと寂しかったかな…

この話はいいよ。問題は憂鬱の方だけど……」

 

 

永斗がチラリと寝かけているアラシに視線を移す。

アラシが何に悩んでいるのかは分かる。相棒である彼が何を考えているのか、永斗には比較的はっきりと分かってしまう。

 

 

「ダブルの頭脳として進言するけど、僕はソレをおすすめは出来ないよ。μ’sやこの世界の事を考えるなら…それ以外の道を選ぶのが丸いと思う」

 

「分かってる。どっちが大事なんて選ぶまでもねぇ。

でも……アイツらも同じなんだよな、俺たちと」

 

「なんだかんだ結構悩むよね、アラシって」

 

 

そうして長い一日が終わった。

しかし、きっと次の一日も長くなる。その予感は実体を得て、街に降り立つ。

 

 

 

 

「Good morning…なんて気分じゃねえな、クソ」

 

「遅ぇぞ、呑気に寝坊しやがって」

 

「穂乃果さんの家だぞバカ!こちとら疲れてたのに緊張で全然寝付けなかったんだよ!」

 

「ハーさん寝たのほとんど朝だったらしいゼ。エイくんは?」

 

「寝てる。いつものことだ、どーせ起きねぇから置いてきた。

それはいいとして…コイツは随分と分かりやすい号砲だ」

 

 

朝がやって来た。

死んだように眠っていたアラシを叩き起こしたのは、太陽と共に地面から昇ったこの『第三の塔』と激し過ぎる轟音。

 

 

「いち早く俺たちの世界に帰って、ディストピアから姉ちゃんたちを守る」

 

「憂鬱の帰還作戦を阻止して、学園祭を守る」

 

「「この一日が勝負だ」」

 

 

アラシと隼斗は力強く、同時に決意を口に出した。

世界を超える戦いが遂に始まる。

 

 

 

 




https://syosetu.org/novel/91797/
↑ソニックサイド。隼斗の手伝いや、高坂家のお泊り会はあっちで読めます。今回も今回でこちらから珍しいゲストが行ってます。

感想、高評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!

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