ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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お久しぶりのコラボ編、146です。遅れてすいません。
並行連載中のジオウではラブダブルのセルフコラボ編であるラブライブ編が完結しました。そっちも是非ともよろしくお願いします。

前回、ソニック世界にやって来た一同がエンカウントしたのはいきなりラスボスのエルバ。初っ端から全力バトル勃発です。

今回もここすきをよろしくお願いします!


コラボ編 第6話 憂鬱とはなにか

異世界から来た仮面ライダー、ソニックとスレイヤー。彼らと協力することで組織から追放された一派である『憂鬱』の陰謀を阻止し、彼らを元の世界に戻すという依頼を達成した。

 

しかしアラシは、彼らの世界に行って共に組織の元幹部、憂鬱のエルバを倒すことを決断する。そうして今度はソニックの世界にやって来た3人だったが…

 

そこにあったのは静止した世界と、支配者であるエルバその人だった。

 

 

《ディストピア!》

 

 

エルバがガイアドライバーを装着し、金色のメモリを起動させる。強者が弱者を押し付け、弱者が強者に捧げる、そうやって描かれたDの文字。

 

それはこの静止した世界を的確に表す、『絶望郷』のメモリ。

朽ち果て、錆びつき、黒ずんだ騎士、あるいは皇帝の姿がそこに顕現した。

 

 

「初手から全力だ!行くぞみんな!!」

 

「オウよ!」

 

「覚悟しやがれ憂鬱野郎、とっとと片付けてアイツらの所に帰らせてもらう!」

 

「ステージ移動したらいきなりラスボスとかちょっと笑えないんだけど…ま、それもそうだね」

 

「貴様はここで俺が裁く!」

 

 

5人の戦士が最大限の警戒を放ちながら、それぞれ変身の構えを取る。

 

 

《Evolution!》

 

《SignalBike/Shift Car!》

 

《サイクロン!》

《ジョーカー!》

 

《ドラゴン!》

 

 

「Ready────!」

 

「「「「「変身(Hensin)!!」」」」」

 

 

《Brave!TAKE OFF‼︎》

 

《Rider!Dead Heat!Meteor!!》

 

《サイクロンジョーカー!!》

 

《ドラゴン!!》

 

 

ソニックとスレイヤーは彼の強さを身を以て知っている。初手から最強形態で挑むその姿勢が、エルバの規格外の強さを示している。

 

ダブル、エデンとて様子見というわけではない。ファングジョーカーは持久力に欠け、エデンヘブンズも()()()()()諸刃の剣。

 

この相手にそれを易々と振りかざすなと、彼らの経験が警告しているのだ。

 

 

「来るがいい」

 

 

「名乗り省略!まずは俺だ!!」

 

「あ、おい待て隼斗!」

 

 

挑発するディストピアにソニックが最速で応じた。数の利と速さで圧倒し、相手に何もさせたくない、そんな動き出しだ。

 

煌風とリジェネレイトブラッシャーの二刀流を構えたソニックは一気に加速。呼吸すら許さないスピードでディストピアの懐へ。

 

 

「っラァっ!」

 

 

煌風を振り抜き、胴へ一閃。

ブラッシャーと煌風でもう二撃。

 

速度と技巧が同居する太刀筋がディストピアのガードを崩す。ゆったりと剣を抜いたディストピアだったが、そんな動きでソニックの斬撃に間に合うわけがない。

 

 

「…ほう」

 

「まだまだ!」

 

 

ディストピアに更に一撃が入り、続けて左手のリジェネレイトブラッシャーを振り抜く。しかし、舐めるなと言わんばかりにディストピアの『絶望郷の剣』がそれを受け止めた。

 

あっという間に剣技で制圧された。ソニックの思考回路が予測するのは、()()()()の斬撃を喰らう未来。

 

その必然を覆したのは、この世界にやって来たもう一つの異物の存在だった。

 

 

「余所見すんな憂鬱野郎!」

 

 

ソニックの動きに遅れは取ったが好タイミング。ダブルがディストピアの死角から上段蹴りを繰り出し、カウンターをキャンセルした。

 

 

「先走りがちな馬鹿の扱いなんて、ここんとこ日常茶飯事なんだよ!おら行けバカ二号!」

 

「竜騎士だ!」

 

 

ダブルに続いてエデンが槍をディストピアにぶちかます。そして…

 

 

「黒騎士!」

 

「オウ!グレン・メテオ・レイン!」

 

 

エデンの合図で、空中のスレイヤーが爆発力を蓄えた火球を蹴り飛ばした。

火球は分裂し、ディストピアに降り注ぐ炎の流星群。4人の仮面ライダーが繰り出した波状攻撃が、ディストピアに反撃の余地を与えない。

 

 

『手数には手数、アレで行くよ』

「分かってる!」

 

《ルナトリガー!!》

 

 

スレイヤーの『ブレス・オブ・バーン』による火炎放射。ダブルの集中砲火。このまま一気に畳み掛ける。全員が完全な攻撃姿勢で手を止める気は無い。

 

 

「Yes!これなら行ける!」

 

「オウ!ブレイヴにメテオデドヒ、加えてアラシサン達の力!初戦とはちげーゼ!」

 

「…ほう、少しは手応えのある戦い振りになったみたいだな。だが……」

 

「……ッ!?こいつは───!」

 

 

集中攻撃の中で聞こえた余裕のある声。そこから感じ取った色の濃い『死のイメージ』に、ダブルは全ての攻撃を中断して退避に切り替える。

 

その刹那先に、ダブルが立っていた場所が『斬り取られた』。

コンクリートは何かが通り過ぎて抉られたのではなく、削り取られている。恐らく大気もそうだ。

 

 

『ディストピアの斬撃が通った場所は無に還る。まぁ月並みな表現だけど“空間を切り裂く剣”がディストピアの能力の一つだね』

 

「おい待てコラ永斗、あと隼斗!お前ら知ってただろ!言えや!死ぬとこだったぞ!」

 

「アラシ!俺でも知っていたぞ!?傲慢のヤツが…」

「黙れボケカス中二病!」

 

「説明の暇も無かったんだよ!それに…あんなNo motion(予備動作無し)な攻撃どうしようもねえだろ」

 

 

あの攻撃の中でも自分の攻撃を捻じ込んできた。いくら手練れだろうと、そんな超絶技巧を考慮する方がどうかしている。

 

 

『憂鬱は組織の中で最も才能に優れる者の称号だった』

 

「なんでもござれの全能の天才…ってことカ?」

 

「全方位の天才、どっかのクソ親父思い出すな」

 

『そんでこれ言おうか迷ってたけど…七幹部の序列教えたよね?

憂鬱、エルバは追放時点で傲慢の一つ下に入ってた。つまり……』

 

 

永斗がそれ以上言わずとも、戦士たちの空気は一層ひりついた。

序列は上から『憤怒』『色欲』『傲慢』『嫉妬』『強欲』『暴食』『怠惰』。傲慢の一つ下ということは、『憂鬱』は組織の四天王に名を連ねる強敵ということになる。

 

ずっと攻撃を続け、追い詰めているつもりだが、時折ディストピアの思い出したような反撃が割り込んで陣形が崩れてしまう。その隙は段々と積み重なっていき、ディストピアに致命的な一瞬を与えてしまった。

 

 

「やはり笑えない…もう終わりにしよう」

 

 

大きく構えられたディストピアの剣が暗く輝く。大技を決める気で、これを喰らったら全員もれなく死ぬなんてのは確認の必要もない。避けられるかどうかも怪しいところだ。

 

早い話、撃たせたらヤバい。その先の未来が断たれる。

 

なんのためにここに来た?なんのために戻って来た?ここでやられるためなんかじゃ断じてない。例え相手がどれだけ強かろうと、仮面ライダーは最速最強最善の一発を悪に叩きつけるしかない。

 

 

「絶対止めるぞ!永斗少年!」

 

『アラシ、早撃ちゲーってやれる?』

「やれるに決まってんだろ!」

 

《ライトニングトリガー!!》

 

 

音をも超える光の速さ。稲妻の狙撃手、ライトニングトリガーにチェンジしたダブルは、トリガーマグナムから雷の弾丸を撃ち込んだ。

 

光の速さは人間の反応どうこうで手の届く命題ではない。ライトニングトリガーの射撃を回避することはエルバにさえ不可能。そして、雷弾はディストピアの手から剣を弾き飛ばすことに成功した。

 

 

「なに?」

 

 

「隼斗!行け!!」

 

《ヒッサツ!Full throttle Over!Sonic!Brave!!》

 

 

リジェネレイトブラッシャーをブラスターガンモードに変形させ、シグナルソニックとシグナルブレイヴを装填。ブーストをかけたソニックがディストピアに肉薄する。

 

 

「愚かな。早めに決着を着けたいからとはいえ、闇雲に接近すればいいというものでは……」

 

 

ディストピアは二度目でもうライトニングトリガーの弾丸を弾いた。意味の分からない適応能力だが、一瞬でも気を散らせたのなら狙い通りと言って差し支えない。

 

 

《スタッグ》

《メタル!マキシマムドライブ!!》

 

 

「これは……」

 

 

ルナメタルにチェンジしたダブルのメタルシャフトが、光の爪でディストピアの動きを封じた。メタルシャフトにスタッグフォンを合体させ、敵の束縛に長けたルナメタルでそれを使うことで、無類の拘束能力を発揮するのだ。

 

 

「『メタルスタッグブレイク!』」

 

 

身動きができなければ、それは最早ただの的。

的という表現も正しくないか。ソニックは既に外す要素の無い距離にまで接近し、その銃口をディストピアに密着させていたのだから。

 

 

「吹っ飛びやがれ!テンペスト・バーストォォッ!!!」

 

 

ソニック決死の必殺攻撃、直撃以外の可能性無し。蒼い暴風の砲撃がディストピアの黒き鎧を打ち抜き、大地を削り取りながらその姿を視界の外側にまで追いやった。

 

 

『…いや、本当すごいねソレ…速いしオマケに高火力、攻撃と素早さにスペックガン振りって』

 

「蒼き嵐…これが蒼騎士の真の力か…!」

 

「どうだ……!?」

 

 

これで倒せたなんて思わないから、誰もが警戒を解かない。

粉塵から現れる影の姿、一挙手一投足に全神経を集中させる。

 

 

「────なるほど、これが今の君達の力量か」

 

 

現れたディストピアはほぼ無傷。

頼むから少しくらい削れていて欲しい。そんな謙虚に満ちた見積りでさえも、このエルバという男は甘いと切って捨てた。

 

 

「なん…だと…!?」

 

「今のは確かに会心の一撃だったはず!それを奴は……」

 

『まぁいくらこのメンバーとはいえ相手は組織の四強。瞬殺は無理だとは思ってたけど、まさかね…』

 

「冗談ダロ…!?強いなんてもんじゃねーゾ……!」

 

 

驚嘆と弱音が漏れながらも、まだ戦いの意志は研ぎ澄まされている。誰一人として一歩たりとも退くつもりはない、その覚悟をディストピアに見せつける。

 

 

「…なるほど、悪くない。少し試そうか」

 

「試すだと…!?」

 

「選別さ、仮面ライダーソニック。君たちが俺の憂鬱を晴らしてくれる希望か、つまらない凡夫か、はたまた俺の理解者になってくれるか……」

 

 

ディストピアが剣の先を地面に向けた。その瞬間だけディストピアから戦意が消え、僅かな高揚と深い憂鬱と共にその剣を両手で突き立てる。

 

 

「開闢せよ、『憂鬱世界』───」

 

 

黒いオーラが大気を染め上げた。

瞬間、4人の仮面ライダーがその身で異変を感じ取った。

 

 

(んだこれ……!身体が…重い!?)

 

 

重加速とは性質の異なる何かが彼らを押さえつける。

身体だけじゃない。まるで粘液の海に沈んているみたいで、でも空気は感じられて、しかし酸素が喉を通らない。心臓の音が徐々に遅くなっていくのがわかり、それを認識する思考さえも動きが鈍くなっていく。

 

 

「憂鬱とは停滞の意志さ。外界に希望を見いだせなくなり、前進の意味を見失った時、人はそれを憂鬱と呼ぶ。君たちが今感じているソレは、俺を蝕む憂鬱の一片だ」

 

 

ディストピアの言葉がそのまま重く圧し掛かり、一歩も動けない。動ける気がしない。負の感情が心の内側にへばりついて全身に力すら入らない。

 

 

「チッ…!重加速でもねぇのに…ソニックが止められるなんて……ッ!!」

 

「面倒な能力……持ちやがって…!」

 

「どーすんだヨ……ハーさん…!!」

 

「動けないか…仮面ライダー、どうやらとんだ期待外れだったようだな」

 

「なんだと……!?」

 

「選別はこれまでにも行っていた。俺以外にこの退屈を共有できるものがいれば、そう思ったんだが……誰一人として俺の憂鬱を受け入れる者はいなかった」

 

 

そう言って辺りを見回すディストピア。その言いぶりと苦悶の表情を浮かべたまま止まる街の人々から、彼が何をしたのかは容易に想像できる。

 

 

「まさか、お前そんなことのために…!」

 

『この街の人たちを次々に止めていったって訳ね…本当暇人なのこの人?』

 

「暇だとも。この世界は退屈な事ばかりだ。

毎日を生きる人の人生も、人が描く物語も…俺にとってはどうでもいい。だが一つ面白いことを思いついてね」

 

「面白いことだと…?」

『この手の面白いこととか絶対碌でもないでしょ』

 

 

全てに飽いた魔人は組織に反旗を翻した。

しかしそこで気付いたのだ。悪と悪がぶつかった所で、生まれるのは醜いだけの虚空。負けか勝ちかだけの結果だけが残る。

 

勝ってしまうと退屈だが、負けて死にたいわけじゃない。

心の底から憂鬱を忘れ、笑いたいのだ。そのためにエルバが出した結論はこうだった。

 

 

「────世界を己が物とする。

これほど面白いことは無いだろう、とね。その時俺は…あぁ、久々に笑える気がするよ」

 

『………驚いた。大層な能力持ってる割に、やりたい事が世界征服なんてね』

 

「あぁ……思いの外……拍子抜けで助かったぜ…!」

 

「だったら…止めなきゃな…!sober&better(地味だしありきたり)なのも良いとこだが…世界征服の阻止……HEROらしくていいじゃねえか…!」

 

 

ソニックは煌風を杖になんとか体勢を整え、ダブルも立ち上がろうとする。しかし思うように体が動かない。まるで夢の中にいるよう。

 

ディストピアを前に、平伏さないのがやっとだ。

 

 

「ヒーロー…か………フフッ」

 

「ッ!何がおかしい!」

 

「いや何、少し驚いてね。思わず失笑してしまった。

確か君達が来る前…街の方でこの姿で力を使っていたら、警察の連中が立ち向かってきたのをふと思い出してね」

 

「警察…?」

 

「ドーパントに立ち向かうとは…勇気ある者達だ!」

 

「ああそうだね。だが…いやはや、流石は市民の味方と言ったところか?その姿勢は評価するが、その盲目さは凡人の証だ。実に笑えない。自分達では勝てないと思っていながら、敵わないと理解していながらも…

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

乾いた感情の無い笑いで、ため息交じりに侮辱を吐き出す。

街の方、つまり沼津にまで魔の手が及んでいる。エルバの絶望郷の支配はかなり広大だ。

 

 

「市民どころか警察にまで犠牲者が……!」

 

「何という事を……!!」

 

『マズイね…思ったより事態が深刻そうだ。

とりあえずこの状況をなんとかしないと………憐くん?』

 

 

「………ろ」

 

「憐?お前────」

 

 

ディストピアのあの言葉からだ。スレイヤーの様子がおかしい。

重圧に沈んでいたはずの体が小刻みに震え、赤黒い蒸気がスレイヤーの体から立ち上る。それが示すのは、全身から噴き出すほど激しい……『怒り』。

 

 

「もういっぺん……言ってみろ!!!

 

 

黒竜が咆哮し、獄炎を宿した爪や翼が絶望郷を焼き焦がす。叫び如きで怒りは留まることなく、獄炎のドラゴンとなったスレイヤーが激情の矛先をディストピアに定めた。

 

 

「エルバァァァァァァ!!!!」

 

 

急加速したスレイヤーがディストピアに迫撃を仕掛ける。

その事実に3人の仮面ライダーの鈍る思考に、驚きという閃光が駆けた。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

迫るスレイヤーにディストピアが放つ雰囲気も変わった。

だがそれは、突如飛来した謎の怪物に阻まれた。

 

 

「コイツは──!?」

 

「……参ったな。せっかく笑えるかもしれない所に…」

 

 

スレイヤーの攻撃からディストピアを守ったのは、漆黒の螺旋の体を持った改造の形跡があるロイミュード。その姿にソニックたちは見覚えがあり、ダブルたちは聞き覚えがあった。

 

 

『なるほどね、コイツが隼斗さんの言ってた…』

 

「あぁ、俺達をあっちの世界に飛ばした…謎のロイミュード……!」

 

「謎のロイミュードか…その名でもいいんだが、それだと些か呼びづらいだろう。これの名は『ディファレント』。俺が作り出した、忠実なる僕だ。たまにこうして勝手な真似をするのが玉に瑕だがね」

 

「different…」

 

 

ソニックがその名を口ずさむ。その名の意味は『異質』、存在自体も強さも別格であるということは口に出して推測するまでもない。

 

 

「君たちの思う通り『強敵』という解釈に間違いは無い。選別はやめだ、兎角今は…それだけでは無いということを覚えてもらおうか」

 

 

ディストピアが剣を振るうと、ダブルたちにかかっていた謎の重圧が消え去った。その途端、怒りのままにスレイヤーの攻撃が牙を剥く。

 

立ちはだかるディファレントが右手にエネルギーを集中させ、それを地面に叩きつけた瞬間……

 

 

「ッ……!?」

 

 

ダブルとエデンに襲い掛かる桁外れの重さ、不自由感。さっきまでが粘液の海なら、今味わっているこれはそんなものじゃない。固まったコンクリの中だ。指先一つ動かすこともできない。

 

 

「っ!おい、なんだこれ……!?」

 

『体が重い…こっちは重加速!?いや、あの時とはレベルが違う!』

 

「この途轍も無い威圧感…ヤツが放っているのか!?」

 

 

ソニックとスレイヤーは何の異常もなく動けていることから、重加速には間違いない。しかし、ソニックとスレイヤーはこの現象を知っているようで激しい驚愕を露にした。

 

 

「重加速…いや、『超』重加速だと!?」

 

「ありえねぇ!だって超重加速を使えてたのっテ……」

 

「あぁ…魔進…否、仮面ライダーチェイサーと言うべきか?それとハート…その2機のみがこれを使用していた。ソレについてこの世界に来てから調べ、そして利用させてもらった。仕組み自体を解き明かすのは極めて簡単だったからな」

 

 

この世界ではかつて別の戦いが起こっていた。その際に培われた技術と経験から、ソニックとスレイヤーの装備には超重加速対策機構が備わっている。

 

恐るべきは世界レベルの部外者にしてその技術を盗んだエルバの才覚だ。

 

 

「shit!けど無いよりはマシか…!マガール!カクサーン!それからお前もだキケーン!」

 

ソニックのシグナルバイク、マガールⅡとカクサーンⅡがダブルに、キケーンⅡがエデンの手に収まり超重加速状態が解除される。

 

 

「すまねぇ助かった!」

『まだちょっと重いけどね…なんだったの今の…』

 

「おお!体が動く!なんのこれしき!竜騎士を舐めるな!」

 

 

動けるようになったとはいえ、永斗の言う通り100%の動きができるわけじゃない。その状態で奴らの相手をするのは余りに無謀だ。しかし、そんな理屈で黙っていられるアラシではない。

 

 

「アイツらに任せっきりにさせてたまるかよ…!いいとこ無しで帰ったらアイツらに顔向けできねぇ!永斗!こんなもん死ぬ気で振り払え!!」

 

『いやいやアラシ、これは気力でどうにかなるもんじゃないから。今の僕らにできるのは…ま、後方支援だよね』

 

《ヒートトリガー!!》

 

「クッ…先の決戦でハイドラを使ってさえいなければ…!」

 

 

ダブルはヒートトリガーにチェンジして、激しい動きができない分ソニックと暴れ狂うスレイヤーのサポートに徹する。

 

一方のエデンは遠距離戦闘での戦力不足が悔やまれるが、動きが鈍いながらも持ち前の根性と適応能力で接近戦へと踏み込んだ。

 

 

ディストピアは高みの見物を決め込んでいる分、相手はディファレントのみ。いくら強いロイミュードとはいえ4人で一斉に戦っているのなら勝ち筋は見える。しかし、ディストピアはその光景を退屈そうに見下ろしていた。

 

 

「この程度に手こずるか…やはりまだ早かったようだ。この程度では退屈凌ぎにもならない…全く、あれを超えてきたから少しは楽しめると思ったのだが…笑えないな…」

 

「んだと…!?」

 

「ハッ!そんなこと言ってられるのも…今のうちだぜ!」

 

《SignalBike!Signal Boost!トマーレ!》

 

ソニックがトマーレⅡをブラッシャーに装填し、強化拘束弾を発射。元より躱す気が無いようにも見えたが、黄色の網状の電磁ネットがディストピアを拘束した。

 

 

「そこで大人しく見てろ!お前の最高傑作が無惨にscrapになる瞬間をな!みんな!!」

 

《ヒッサツ!Full throttle!Brave!!》

 

《ヒッサツ!Volca Full throttle!Dead Heat!Meteor!!》

 

《ドラゴン!マキシマムドライブ!!》

 

 

ソニック、スレイヤー、エデンの3人が同時に必殺待機状態に。怒りで1人先走るスレイヤーに合わせる形で、3人の攻撃が一点のタイミングに集約した最大火力を、その歪な体にぶちかます。

 

 

「ディファレントだがなんだか知らねえが、これで終わりだ!」

 

 

「メテオ・インフェルノブレイク!!」

 

「ブレイヴ・エクストリーム!!」

 

竜爪蹴砕撃(ドラゴニック・ミョルニル)!!」

 

 

三位一体のライダーキックが放たれた。だが、その渾身の一撃はディファレントが張った紫の障壁によって完全に防がれていた。

 

 

『────!』

 

「バリア!?おいそれは聞いてねえぞ!!」

 

「舐めんナ!ハーさん!シュヴァルツ!息を合わせてブチ抜くゼ!!」

 

「おう!黒騎士!蒼騎士!力の全てを!!」

 

 

バリアから一度空中に退避したところで、ソニックの風がそのライダーキックに再び命を吹き込む。そうして倍化された必殺攻撃がバリアへと二度目の炸裂を果たした。

 

 

「踏ん張れ2人とも!もうちょっとだ!」

 

「「オオッ!!」」

 

 

バリアが割れる感触が伝わるが、それと同時に急速に修復されているのも分かる。馬鹿げた能力だ。あと一撃、何かが押し込まれればこの均衡は破れるはず……

 

 

《トリガー!マキシマムドライブ!!》

 

 

無論、最初からそんなもの、祈る必要すらも無かった。

 

 

「撃て!アラシ!永斗少年!!」

 

「お前らばっかにいいとこ持ってかせるかよ!行くぞ!!」

 

「『トリガー・エクスプロージョン!!』」

 

 

超高密度の炎が作り出す、殴撃にも似た火炎放射。

これがこの瞬間に繰り出し得る最大の火力。4人のライダーの力が一つになったこの一撃で破れない防壁など、存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

それは根拠のない希望的観測だった。ディファレントが放った暗い光が、それを教えた。

 

 

『────!!』

 

 

光はバリアが一瞬にして修復し、それどころか4人の攻撃のエネルギーが全てバリアに吸収されていく。

 

 

「何っ!?」

 

「我らの必殺技が……!」

 

「エネルギーが吸われテル…!?」

 

 

吸収されたエネルギーは血管を通るようにディファレントの全身を巡り、その体のラインが光を帯び始める。流れ込んでいく膨大なエネルギーを蓄えたとして、それを放出する先なんて一つしかない。

 

 

 

「全員ソイツから離れ───!」

 

 

 

ソニックの警告も遅すぎた。

ディファレントが蓄えたエネルギーは余さず反転され、閃光と衝撃波と爆発になって4人の仮面ライダーの体を紙切れのように吹き飛ばした。

 

それは大量殺戮兵器と言って申し分ない凶悪極まる威力。

その戦場に悪以外の存在は影すらも残らなかった。

 

 

 

___________

 

 

 

無気力に息苦しい何処かを漂う。背中が冷たい。

網膜に焼き付いた閃光からは夢の中でも抜け出せない。

 

 

「───丈夫ですか───しっかり───」

 

 

声が聞こえては夢の中で目を覚まし、痛みと強まる鼓動が少しずつ暗闇を削り取り……

 

 

「っ…!はぁっ…!ここは……!?」

 

 

アラシが目を覚まし、目に入ったのは木製の天井。布団から出した手が覚えたザラザラとした感触は、疊だ。目線を前に向けると障子もあるし、横に向けると女子がいた。

 

ここは旅館のように見える。アラシの服装も浴衣だ。

記憶は鮮明だった。あのディファレントというロイミュードが起こした爆発を喰らい、派手に吹っ飛ばされて海に落ちたのだ。他の連中は無事だろうか───

 

 

「誰だテメェ」

 

「あっ、おはようございます!…なんちゃって…?」

 

 

普通にスルーしていたが、起きたアラシの横に見知らぬ女子がいた。

仲居というには若く、多分同年代。格好も間違いなく私服。肩にかからないくらいの髪は少しだけくるんと癖がついており、その明るい顔つきから既に元気さが見えてくる。

 

少し穂乃果に似ているようで、そうでもないな。それがアラシの第一印象だった。

 

 

「…俺を介抱してくれた、ってことでいいよな。ここは旅館か?悪いがこっちで使えそうな金は無いかもしれねぇんだが…」

 

「こっちでつかえそうな…?あ、お金の話ならいりませんよ!どうせ今はお客さん誰もいないし…それよりも気が付いてよかったぁ……海に浮かんでて服かと思ったら人で!もしかして…海の音とか聞こうとしてました?」

 

「は?海の音?んだそりゃ。アレはその…アレだ、ちょっと爆発に巻き込まれたっつーか」

 

「あー爆発!なるほど爆発…爆発?」

 

「うるせぇ何でもねぇ忘れろ。とにかくありがとな。俺は行く」

 

 

命があった幸運に浸る気も無いアラシは、早速立ち上がって戦いに戻ろうとする。まずは隼斗たちと合流するのが先決。そこから作戦を立て、仮面ライダーがまとめてやられたと思っているエルバの寝首を搔く。これが最も濃い勝機だ。

 

と、思ったがアラシの足が止まった。代わりに手があくせくと動き、自分の体中をまさぐる。そして大変な事態だということに気付いてしまった。

 

 

「……冗談じゃねぇぞ。ダブルドライバーが無ぇ……!?」

 

 

ダブルドライバーが無ければ永斗と連絡を取ることもできない。しかも刺さっていたジョーカーメモリまで一緒に紛失と来た。試しにスタッグフォンを使ってみるが、ここが異世界だからか応答なし。

 

今のアラシは、波に攫われた文字通りの漂流人になってしまった。

 

そんな顔色の悪い彼の様子に、少女もおずおずと声を掛ける。

 

 

「どうかしました…?」

 

「…なんでもねぇ」

 

「なんでもなくないですよその顔は!あっ、もしかして…海に落とし物!?なーんて……その顔、まさか本当に?」

 

「なんっなんだよお前!やっぱ似てるわお前!人の事に首ツッコんでくるとことか特に!あーそうだよ海で居眠りこいて大事なもん落とした阿保は俺だ悪ぃか!悪ぃわ馬鹿!」

 

「逆ギレされた…」

 

「海に落ちたとかシャレになってねぇんだよ…あそこから大分な距離飛ばされたし、そこまで潜水できっか…?」

 

 

無茶なことを考えている自覚はあるが、ダブルドライバーとメモリが無けりゃあらゆる意味で話にならない。探して見つける以外に道は無いのだ、無茶を通すしかない。

 

出て行こうとするアラシを、少女がまた引き留めた。

 

 

「だから何なんだよ!」

 

「今外に出るのはちょっと危ないし…それなら一緒に!私も手伝う!その落とし物探し!」

 

「はぁ!?何言ってんだお前!んなことして何の意味が───」

 

 

意味不明な彼女の決断にアラシが苦言を呈そうとしたその時、開いていた襖から巨大な塊がアラシの顔面に圧し掛かってきた。

 

重さに体が倒れる。顔から感じるのは温度と呼吸、そして毛。

 

 

「しいたけ!?」

 

 

アラシの顔に飛び掛かったのはこの旅館「十千万」で飼われている大型犬のしいたけ。アラシの動物嫌われ体質が関係しているかは不明だが、その毛むくじゃらの体でアラシを捕まえて放さない。

 

 

「んだこの犬!?」

 

「しいたけダメだよ!その人から離れ……」

 

 

困っているアラシを見て、少女の言葉が止まった。そして目を細めてニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。

 

 

「しいたけを離して欲しいなら、私も探し物に連れてってください!」

 

「マジかお前」

 

「いいんですかー?このままじゃ髪の毛がしいた毛だらけになっちゃいますよー?私はちょっと声かければ止めれるんだけどなー?」

 

 

このまましいたけを力づくで跳ね飛ばせはするが、敵意を感じない生き物に害を加えるのは流石にどうかと思い困ってしまう。というかなんで彼女はそんなに同行したいのか、そもそも考えればアラシが拒否する理由もそんなに無いのだが…

 

 

「…分かったよ。勝手にしやがれ」

 

 

それを聞いた少女は宣言通りの一声でしいたけを落ち着かせ、アラシから引き離した。

 

 

「マジで意味が分かんねぇよお前。俺の知り合いといい勝負だ。歳と名前は?」

 

「高海千歌です。高校二年生!」

 

「じゃあタメだ。敬語やめろ」

 

「えぇっ同い年!?その顔で!?」

 

「急に失礼だなやんのかコラ」

 

 

______________

 

 

 

「ところで…どっかで声聞いたことある気がするんだけど、前に会った?」

 

「俺は聞いたことねぇから気のせいだ」

 

 

アラシと千歌は海を前にして気付いた。流石に着衣泳ではキツいな、と。だから淡島にあるダイビングショップまで喋りながら歩くことになった。

 

 

「…で、なんでだ」

 

「なんで?」

 

「執拗について行こうとした理由だよ。お前は比較的バカには見えるけど、余程のバカには見えねぇ。なんか理由あんだろ」

 

「……うん。まぁ…ひとりが怖かった、ってだけだけどね。でもじっとしてるのも辛かったから…」

 

 

悔しさの苦痛に耐えかねた千歌の顔はぎこちなく、心に馴染んでいない感情をどうすればいいか分からない、そんな顔だった。

 

 

「この街に何があった?俺は他所から来たもんで何も知らねぇ」

 

「急に現れた誰かが、この内浦を自分のものにするって言って街を止めたり怪物を呼んだり……自由にしていいって言われたけど外に助けも呼べないし、私の友達も…何言ってるか分かんないよね?」

 

 

その誰かというのは確認せずともエルバだろう。アラシ達があっちの世界で憂鬱を相手にしている間に、そこまで事が進行していたのは不覚だった。

 

 

「今から行こうとしてるお店も友達の家なんだけど、その子も連れて行かれちゃって…いつも助けてくれる友達も今は遠くにいて帰ってこれないみたいで…」

 

「わかったもういい。十分伝わった。でもなんで俺について来た?ただ海に浮かんでた水死体予備軍だぞ?」

 

「わかんない。でも、私の友達となんか似てる気がした。それに、何も出来ずに足踏みしてるくらいだったら、外で走って何か見つけたいもん!」

 

「やっぱ余程のバカかもしんねぇなお前…」

 

 

歩いて淡島の形もくっきりと見えてきたが、ここまで歩いているうちにも止まった人々が散見された。今から行くダイビングショップもそうなってしまっていると、千歌は言っていた。「道具はこっそり借りれるから!」とすぐに明るく振舞うが、辛そうだ。

 

一刻も早くドライバーを見つけ、エルバを叩きのめさなければいけないと、最初は無関係に考えていたこの世界に対してアラシはそんな思いを抱いていた。

 

 

「おやおや、辛気臭い街だと思ったらようやく見つけたよ。活きのいいサンプルを」

 

 

ダイビングショップに向かおうとしていた2人の前に現れたのは、クククと見下す笑いを含んだスパイダー型ロイミュード。胸のナンバーは「050」だ。

 

 

「本場のロイミュードかよ…!」

 

「ロイミュード知ってるの!?」

 

「お前も知ってんのか…!?いや、話は後の方が良さそうだな。おいコラ蜘蛛野郎、そこどけ邪魔だ」

 

「ただの人間如きが俺に指図するな。いいか?お前達は俺達『憂鬱』の管理下にあるんだ。お前達が俺の指図を聞け」

 

「なるほど状況見えたぜ。ロイミュードがエルバの野郎の手下になったってワケか」

 

「クク…分かっていないな。俺は利用しているのさ。ヤツの才能を利用すれば、俺はあの融合進化態を越えた超進化態に……いいや更に上の力を手にできる!」

 

 

目論みを自慢げに語る所がいかにも小物臭いが、奴を煽ったって仕方がない。今は変身能力の無いこの状況をなんとかしなければ。

 

 

「俺は050、エルバからこの区域の管理を任されたロイミュード。俺たちは進化のために管理区域のモノ全てを自由にできる権利を貰っている。つまり、お前たちは俺の所有物…実験サンプルなのさ」

 

「誰がモルモットだこの野郎……っ…!」

 

 

アラシが食いつく前に体が重くなった。050が重加速を展開したのだ。050はアラシを片手で払いのけ、千歌の腕を掴む。

 

 

「人間の女のサンプルを探していた。融合進化と性別の関係を調べる実験をしているんだ。俺が前に融合したのは心の醜い女だったからなぁ。平凡に近いお前で、前に果たせなかった実験の続きも兼ねるとしよう!」

 

「千歌…!待ちやがれ…っ!!」

 

 

ディストピア戦で渡されたシグナルバイクも紛失してしまっている。アラシに打てる手は無く、千歌が連れて行かれるのを見ているしかできない。

 

 

「…っ、絶対…嫌だ!こんなところで…絶対捕まってやるもんか!」

 

 

050に触れていたことで重加速から逃れた千歌が、その鋼鉄の腕に噛み付き、暴れ、050の腕を振りほどいた。しかし離れた瞬間に重加速の効果が復活し、逃げられない。

 

 

「っ…よくも歯向かったなこの子ネズミが!」

 

 

腹を立てた050は電撃を生身でしかも動けない千歌に放った。その苦痛すらも鈍化し、声を上げて痛がることも自由にできない。

 

 

「お前達は俺の実験サンプルだと言ったはずだ!俺に従え!俺に歯向かうな!仮面ライダーもいないこの街じゃ俺達の力が全てなんだ。力の無い下等な存在が、実験サンプルとして役に立って死ねるだけ有難いと思え!」

 

 

050の言う事は確かに一部正しい。この世界じゃ強さが全てを決めるのであって、今ここに050に対抗できる力はない。

 

弱肉強食という仕組みはシンプルにして真理。

 

 

「黙って従え…?弱いから死ねだ…?クソみてぇなご高説垂れてんじゃねぇぞ鉄人形…!!」

 

 

例えその仕組みが正しいとしても、

何か努力しないと生きれもしないのか。努力しても生きれないかもしれないのか。赤子や子供にもそれを強制するのか。力があるから幸せすらも取り上げていいのか。

 

アラシの記憶がその一瞬だけ、ずっと過去に遡る。

 

生まれてきて、生きたいのなら、幸せに生きていいはずだ。

それができない奴は何も間違っていない。間違っているのは世界の方だ。

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「何をモルモットの分際で…気が変わったよ、ここで貴様の耐久実験を始め───!?」

 

 

止まっていたアラシは、海から飛び出てきた紫の光を掴んだ。

それはアラシの感情に呼応したジョーカーメモリ。

 

050は一つ、重大なミスを犯していた。050の能力は触れた相手の悪感情を増幅させる力であり、アラシを払いのけた際に特に考えずその能力を使っていたのだ。

 

その結果がこれだ。アラシの負の感情が増幅されたことで、その感情と適合したジョーカーメモリが飛来した。更にジョーカーの能力である「感情に応じて火力増強」が発動し、そのパワーは何乗にも跳ね上がっている。

 

 

それだけに留まらず、アラシは重加速を撥ね退けた。

ロイミュードでもその事象の解析が追いつかない。理を覆したとしか言えない事実で思考が止まっているうちにアラシの拳は眼前まで到達し……

 

 

「死ね」

 

 

生身のはずのアラシの一撃が頭部装甲を破壊。050は向こう数十メートルは吹っ飛び、水柱を上げて海に落下した。

 

050がダメージを受けたからか能力と重加速が消えた。重圧が消え去り、アラシも我に返る。

 

 

「…っ、なんだ今の。それより…大丈夫か千歌!」

 

「う…うん、平気…ちょっとヒリヒリするけど…ってそんなことより今の何!?」

 

「俺もただいま困惑中だっての。ジョーカーこんな強かったか?今の下手すりゃアイツぶっ壊せてたぞ…?」

 

「どんよりも効かないしさっきのパワー…はっ、もしかして仮面ライダー!?なーんてまさか……」

 

「あぁ」

 

「本当に!?」

 

 

流れで正体を明かしてしまい、口を押えるアラシ。しかしどうせ異世界なのだから、隠す意味もあまり無い気がして気を取り直す。

 

しかし仮面ライダーを知っているということは…アラシにその可能性が思い当たる。

 

 

「そうだ名前!自己紹介したの私だけだったじゃん!名前教えて!」

 

「切風アラシだ」

 

「アラシ、アラシ…やっぱりどこかで聞いたコトあるんだよなぁ…ああぁぁそうだよ!霧香先生の電話に出てた別世界の人!高校生探偵!だよね!?」

 

「…なるほどやっぱりか。お前、隼斗の身内だな。つーことはAqoursか」

 

「Aqoursも知ってるんだ!そうこの私、高海千歌こそAqoursの一人なのです!…でもなんでこっちの世界に?あれ?それなら隼斗くんは?」

 

「はぐれちゃいるが隼斗もこっちに来てる。つまり、もう奴らのクソ政治はおしまいっつーことだ。俺達も手を貸す」

 

 

互いの身分が明らかになり、一気に状況が進展したことに気付く。

隼斗たちは戦力を連れて帰ってきた。千歌が隼斗たちの仲間なら必ず合流の手掛かりにもなるし、女子高生とはいえ頼りになるというのはμ'sでアラシも痛いほど知っている。

 

 

「これって奇跡だよ!」

 

「あぁ奇跡だ。連れ去られたっていうお前らの仲間を助けて、エルバをぶっ潰す!…まずは海に落ちたドライバーを探してからな」

 

「ダメじゃん」

「んだコラ」

 

 

揉めそうになったが050が撃破出来ていない以上、今すぐここから逃げた方がいい。騒ぎを聞きつけて別のロイミュードが来ないとも限らない。

 

アラシは負傷した千歌を抱きかかえ、その場から駆け出した。

 

 

「これ見た目どうなの?お姫様だっこだけど」

 

「文句言ってんじゃねぇ。とにかく今どうなってんだ、捕まってるの何人だ?」

 

「あれは…あの通話の後、それぞれ帰ろうとしてた時…あの縫い痕が付いた人が現れて、私たちのうち果南ちゃんと曜ちゃんと梨子ちゃんを連れて行っちゃったんだ…」

 

「つーことは3人か…なんでそいつらだけ」

 

「分かんない。でも、才能を探しているって…そう言ってた」

 

「才能…か」

 

 

とにかく優先すべきは合流だ。ドライバーを探すにも人手が増えた方がいい。今、エルバはアラシ達を倒したと思っているはずだ。隼斗たちが無事ならば、そのアドバンテージを活かせば勝ちの目も見える。

 

どうか無事であってくれ。あと心配はいらないと思うが………

 

 

____________

 

 

 

攫われたAqoursの3人、果南、曜、梨子は憂鬱が拠点としている研究施設で身を寄せ合っていた。

 

 

「みんな無事かなぁ…」

 

「ここに来ては無さそうだし、もう捕まったってことは無さそうね。外の様子は分からないのがちょっと怖いけど…」

 

「隼斗……」

 

 

エルバの手によって多くの人がここに集められており、どうやら内浦の外からも連れてこられているようだった。その中には見覚えのある有名な人物も散見される。

 

その目的は聞かされていた。「優れた才能を持つ者」を集めているらしい。

 

 

「才能でなんで私なんだろうね?そりゃ曜は水泳、梨子はピアノで分かるけどさぁ」

 

「果南ちゃんも私から見れば凄いよ。体力とか色々…」

 

「いい観点じゃないか。思考停止しない、則ち憂鬱に沈まない心というのは十分に才能だ。やはり俺の目に狂いは無かった。それはそれで…笑えないがな」

 

 

曜の言葉の次に現れたのは出かけていたはずのエルバだった。しかし、普段よりも上機嫌に見えるのが気になる。

 

 

「で!いつまで私たちをこうしておくつもりなわけ!?」

 

「俺の手の上での自由なら許すと言ったはずだけどね。君たちは俺が興味を持った才能の持ち主なんだ。あっちの世界で敗れ、減った手駒の補填として迎え入れてもいいと言っているだろう。君たちに適したメモリも用意してある」

 

「だーかーらー!嫌だって言ってるでしょ!?早くここから帰して!」

 

 

エルバの手から三本のドーパントメモリをはたき落とし、怒鳴りつける果南。敵が誰でも物怖じしないその姿勢に、曜と梨子も思わず委縮する。

 

エルバの勧誘に応じてメモリを受け取る者も多い。しかし3人は断固としてそうするつもりはない。この問答も既に5回目だ。

 

 

「無駄だ。ここから出ても既にこの街は俺の拠点、俺が世界を掌握するための城となっている」

 

「世界を…掌握…!?」

 

「言っていなかったかな桜内梨子、そう怪訝な顔をされるのは心外だ。通信妨害で情報は遮断し、外部にこの状況が漏れることはない。誰も俺の計画を知り得ない。今、別の仮面ライダーに来られるとそれはそれで笑えないからな」

 

 

エルバが警戒するのは、データにあった仮面ライダードライブをはじめとする、こちらの世界にいる歴戦の仮面ライダーたちだ。その中にはガイアメモリの戦士も確認できた。

 

その話を聞き、果南がエルバの目論みを笑い飛ばす。

 

 

「散々なんでもできるって言っておいて、仮面ライダーには怯えるんだ。戦って楽しくなりたいなら他所の仮面ライダーのとこに行っちゃえばいいのに」

 

「…例えば、だ。強さに飢える戦闘民族がいたとして、彼は迫る津波に勝負を挑むか?それでは笑えない。何故なら彼は死にいわけじゃないからだ。俺も失敗したいわけじゃない。順序を立て、その道のりを噛み締め…作り上げた城の上で笑うのさ。

 

一つの挑戦を乗り越えてこそ、憂鬱を晴らし前に進める。その届き得る限界こそ、俺の場合は二つの世界の支配なんだ」

 

 

エルバは袖から金色のメモリを『二本』取り出し、作った笑い声を短く響かせた。その才能には結果へ至る道も、その間に立ちふさがる障害も全てが見えている。

 

 

「今のところつまらないほど予想通りに苦戦し、順調で、少し苛立っている。世界を掌握し、憤怒も『神』も殺し地球の意志を掌上に置いた時…その時にようやく笑えるのかもしれないな。最も…このままでは退屈でその前に死んでしまいそうだが…」

 

「…あっそう。別にあんたのことなんて知らないけどさ、さっきから聞いてりゃ面白くないつまらないって文句ばっかり。子供じゃないんだから」

 

「何…?」

 

「自分ばっかり不幸な顔してるのが可笑しいって言ってるの。自分だけが憂鬱だなんて馬鹿みたい」

 

 

敵であるエルバに話す必要もない。ただ、エルバが言う憂鬱は多くの者が知っている。ここにいる3人もそうだ。

 

曜は千歌との感情のすれ違いで。梨子はピアノのスランプで。

果南は鞠莉の将来を思って突き放した2年間で。

 

果南はあの後、父の怪我で休学していた時期もあったが、今なら分かる。あの頃の果南は学校に行きたいだなんて思わなかった。何かをしたいと心から思うこともなかった。

 

負の感情の鎖で雁字搦めになって一歩も動けない。あれをきっと『憂鬱』と呼ぶのだろう。

 

 

「そうか、ならば教えてくれ。俺の憂鬱はどうすれば晴れる?憂鬱を知っているというのなら、君はどうやってそこから解き放たれた?」

 

「……そんなの、言ったってあんたなんかに分かるわけない。でもさ、もしあんたが世界征服して誰も敵わなくなったとしても……本当にそれで笑えると思ってる?」

 

 

エルバの才能はあらゆる正解を出し続けてきた。分からなかったのはこの憂鬱の晴らし方だけ。部下を使い己を使いあらゆる手を試したが、分からないまま。遂には世界支配にまで来てしまった。

 

しかし、その方針を否定されたのは初めてだ。

 

 

「…面白いことを言うな。それを確かめるため、成し遂げるのさ」

 

 

エルバは果南の言葉を軽く押し返すが、彼女は食い下がり言葉を弾き返す。

 

 

「確かめる、ね……悪いけど、多分あなたの目的は果たせないよ、『絶対』に」

 

「それは、彼のことを言ってるのかい?天城隼斗……確か君の幼馴染だったな。いや、幼馴染…違うな、もはや姉弟と言っても過言ではない…理解はできないが、彼と君との間には切っても切れない縁がある…そう、人が言う『絆』というものが。硬い鎖のように君達を繋いでいる」

 

「隼斗達がいる限り、絶対にあなたの目的は果たせない。いや、果たさせない」

 

「そうだよ!隼斗達を打ち負かした気になってるみたいだけど、隼斗が本気出したらすごいんだからね!!」

 

「隼斗君と憐君がいる限り、あなたが目的を果たす事はないですよ。倒れても立ち上がる…憐君はともかく、隼斗君すごく負けず嫌いだから」

 

「だとしてもだ。彼は一度俺に完膚なきまでに倒されている。いくら力をつけたところで、仲間を増やしたところで勝てはしないさ。それに、今の彼にここを突き止めることは────」

 

 

エルバの言葉の途中で地面が揺れ始めた。床や天井にもヒビが入り、まるで災害でも襲来したかのような騒めきが建物を揺らす。

 

 

「え!え!?何!?」

 

「地震!?こんなときに……」

 

「いや、待って!地震だけじゃない……これは────────風?」

 

 

その風を感じたら直感が降ってきた。それに従い、果南は声を出す。

 

 

「みんな!気をつけて────」

 

 

次の瞬間、風を纏った光が天井を貫き、怒りの一撃を参上と共に炸裂させた。エルバはそれを避け、見えた姿を呆れた声で歓迎する。

 

 

「…全く、野蛮な訪問者だ。笑えない…正義のヒーローとは思えないな」

 

 

ここでアラシの懸念を思い出そう。

アラシははぐれた隼斗たちが無事であることと、もう一つを祈っていた。それはちゃんと再出撃の体勢が整ってくれること。

 

アラシはその心配を除外したが、もし考え無しに単身突撃する者がいたのなら、相手の僅かな油断というアドバンテージをみすみす失ってしまう。

 

結果としてはこうだ。皮肉なことにアラシと千歌がダイビングショップに向かうのをやめた直後、そのダイビングショップに来た彼が惨状を把握し、怒りのままにここへ神風特攻を仕掛けたのだ。

 

 

「────エルバ!!」

 

 

仮面ライダーソニック、早くも敵陣に突撃完了。

 

 




ソニック突撃。それに至る経緯の詳しくはソニックサイドをどうぞ↓
https://syosetu.org/novel/91797/
永斗と憐は待機中ですが、唯一行方不明なままの竜騎士は……!?

感想、高評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!
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