ラブダブル!〜女神と運命のガイアメモリ〜   作:壱肆陸

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ヒスイ地方で生きていたらまさかの二か月の間が空きました。146でございます。

お誘いしてから実現まで数年、更にコラボエピソードを進めること一年……長いお話もこれにて終結。コラボ編、最終話でございます。平和から別れまでのラストラン、お付き合いください。

https://syosetu.org/novel/91797/
↑コラボ編お世話になりましたソニックのお話はこちら!!!



コラボ編 エピローグ 君の待つ未来になにを託すのか

自分の世界も守れてない癖に、他人の世界を救いに行きたい。そう言った自分には驚いた。それから届き得ない強さに何度も打ちひしがれて、それでもこの奇跡が繋いだ風を止めたくないと走り続けた。

 

そして、幾度めかの奇跡を踏み越えて、高く飛び上がって。

 

仮面ライダーの一撃は『憂鬱』を穿った。

暗闇に覆われた世界に風穴を開けたのだ。

 

 

「……勝ったのか…俺達が……」

 

 

着地と同時に崩れる変身。晴れていく街を見下ろして、アラシは満足そうに倒れ込んだ。勝ち取った勝利と革新的な一歩を、眠りに落ちる意識に沁み込ませて。

 

 

______________

 

 

 

「えーそれでは!この度はえーと…エルバ? をぶっ倒して!」

 

「俺たちがな」

 

「内浦に平和が訪れましたって事で! 『隼斗くんと憐くん、アラシくん、永斗くん、シュバルツくんありがとう&勝利おめでとうパーティー』を始めます!!」

 

「長いねー」

 

「まあいいじゃない。本当なんだし」

「そうそう!」

 

 

『憂鬱』との短く濃い戦いは終わり、2日が経過。

それを祝し、仮面ライダーたちはAqoursの9人と共にパーティーをして〆る運びになった。音頭を取るのは彼女たちのリーダー、高海千歌。

 

 

「エヘン。てな訳でみんな、グラスをお持ちください!」

「…ん? まちたまえ千歌くん、私は!?」

 

 

頑張ったのに功労者として名前を呼ばれなかったのが気に入らない霧香博士。まぁ元はと言えば彼女の研究データがエルバに盗まれたのが悪いわけで。

 

 

「みんな!今日はとことん!飲んだり食べたりして楽しもう!カンパーイ!!」

 

『カンパーイ!!!』

 

「聞けえええええ!?」

 

 

パーティーが始まった。この立食パーティーは浦の星の屋上で行われており、折角の機会ということでアラシ達も大いに準備に力を貸した。特に料理は戦いの後だというのに気合が入っている。

 

 

「お前、料理できたんだな…」

「まぁな。普段からこの怠け者の面倒見てんだ、これぐらい朝飯前だ」

「アラシー、ハンバーガーまだー?」

「黙って待ってろクソニート!」

「本当お疲れ様だな」

 

 

怒涛の勢いで魚を捌いて揚げていくアラシ。余りに暇だったもので昨日は勝手に沼津に行ったのだが、そこで食べた料理が彼の何かを刺激したらしい。それから食材を買って再現&アレンジに没頭し、永斗がゲームしながら「料理漫画の主人公か」とツッコミを入れていた。

 

 

「はーい!ヨキソバ、もうすぐあがるよー!」

「marryのシャイ煮もよ!」

 

 

曜や鞠莉も料理を担当しており、曜が作っているのシンプルに食欲を惹かれるオムそば。しかし鞠莉が混ぜている鍋の方は得体が知れない。高級食材が詰められているのは分かるのだが、なんかオレンジ色だし変な匂いするのは何故だ。

 

 

「曜のはともかくなんだあのグロテスクな料理」

「高級食材を適当にぶち込んで煮込んだらなんかすごいのができた奴だ。見た目は擁護できないが味は保証する」

「濾す前のコンソメスープみたいなもんか。てか食ったことあんのか………」

 

 

美味いと言われてもアレを食す気にはなれないのは当然だと思う。一方で、別方向からも得体のしれない料理が迫っていた。

 

 

「アラシ! 永斗! 食ってみろこれ! とてつもなく美味いぞ!!」

「クックックッ…そうでしょう? 我が至高の一品、堕天使の泪……竜騎士シュバルツ、お口に合ったようで何よりです」

 

 

善子が作って瞬樹が美味しそうに食べているのは黒い球体。その正体はタコの代わりに何故かタバスコを詰めたタコ焼きのようなもの。兄妹揃って味覚が狂っているため美味しそうに見えるが、率直に劇物であるため誰も近寄らない。

 

 

「しかし、こんなことしてていいのか? 事件は終わったんだ、さっさと帰らねえと……」

「それがそうもいかんのだよ、切風くん」

 

「…あんた楽しそうだな。なんだその山盛りカレー」

「あ、博士いいところに。これあげる」

「やめたまえ士門くん、いらないからってその黒い物体を私のカレーに乗せるのは」

 

 

瞬樹に堕天使の泪を押し付けられた永斗が霧香博士にパス。危険物を押し付け合いながら、霧香博士は帰れない理由というのを説明する。

 

 

「もう一度世界間ゲートを開くにはちょっとまた装置を作り直さなきゃならなくてな……設計、開発、起動実験エトセトラ…諸々細かい点を省いてどんなに急いでも最低3日はかかる」

 

「「3日!?」」

 

「うん。僕と霧香博士で検討した結果多分どんなに急いでもそれぐらいはかかる。だからとりあえず今はのんびりしとこうよ、せっかく大きな山場を越えたんだし」

 

「つってもなぁ……どうすんだよ文化祭とか。モタモタしてたら余裕で始まるぞ」

 

「あ、それなら大丈夫。並行世界間では時間の流れがなんやかんや違うから。良い感じに戻れると思うよ多分」

 

「急に都合良いなオイ」

 

 

なんにしても、あと3日で隼斗たちとはお別れ。奇妙な邂逅から始まった同盟にも終止符が打たれるということだ。それに感じるものがあったのか、隼斗がこんな提案をする。

 

 

「なら、それまでは暇って事だな?」

 

「私と士門くん以外は、だが」

 

「いや……博士、それって俺にも手伝えるか?」

「隼斗に?……まあ所々君でも出来そうな所はありそうだが…」

 

「せっかくだ、サクッとゲート完成させてそしたら最後に遊ぼうぜ! あとは…どうせならAqoursのパフォーマンス見てってもらうか? この時代のスクールアイドルのパフォーマンスを生で見れる大チャンスだし」

 

 

夏休みの宿題を早く終わらせて遊ぼう!みたいなことを言いだした隼斗に、Aqoursも同調する。

 

 

「名案ですわね隼斗さん!」

「good idea! カナン、いけるわよね?」

「もちろん! もうすっかり良くなったしね!」

 

 

ゴールドメモリを使わされたという果南も、この数日ですっかり健康体に。元気が有り余っているくらいで、食い気味にライブの提案に賛成した。

 

 

「未来から過去へ…最高の贈り物ずら!」

「で、でも! それで過去が変わったりしたら……」

「並行世界なんだし、心配ないんじゃないの? あ、でもμ'sが…スクールアイドルが存在する以上過去の私達も確かに存在するかもしれない…そうしたら…」

 

 

勢いよく話が進んでいるが、アラシと永斗もそれを拒む理由は無い。それに未来のスクールアイドルがどれほどのレベルにいるのか、今後もμ'sをサポートするなら見ておいて損は無いだろう。

 

 

「心配すんな、そんな未来のことをベラベラ喋る気はねぇよ」

「それに、こっちのμ'sが君らの知ってるような歴史を辿るかどうかなんて分からないしね~」

 

「影響が出ない程度になら大丈夫なはずだ。そんな訳だ、とりあえず今日は思いっきり騒ごうぜ!!」

 

 

元々が陽気な性格な隼斗。楽しいことを考えるのは得意なようで、アラシは穂乃果に振り回されている気分だった。しかし彼に関し、一つ気になることは残っている。

 

 

「お前、体は大丈夫なのか?」

 

「そういえば。ジョーカーとはもう分離してるけど、そうなるとオーバーブレイクのバックファイアが…」

 

「あー、それか…実はな……特に何もねえ。なんかちっともなんだよ、全然反動がねぇんだ…」

 

 

エルバとの最終決戦中に発現したソニックの謎の力。形は違えどオーバーブレイクである以上、尋常ならざる反動がかかるはず。あの時はジョーカーメモリと一体化したことで負担を帳消ししているのだと分析したが、一体化が解けても隼斗の身体は変化しないままだった。

 

 

「最強の力なのにまさかの反動無効化?…それちょっとチートじゃない?」

 

「んなもんどうでもいいだろ、無事ならそれでいいじゃねえか。死ななかったんだから得したぜラッキー、ぐらいに思っとけ」

 

「…まあ、それならいいか。そうだな!よしもっと食うぞー! 曜! こっちにも焼きそばplease!」

「ヨーソロー!」

 

「よし、俺らも食うか!」

「だね」

 

「堕天使の泪おかわり!!」

「承知!」

 

 

戦いが終わったのだから、難しい話は無粋というもの。取り合えず元の世界に帰るまでの、まずはこの一晩。何も考えずに宴に興じることにした。

 

_____________

 

 

「ふぅ…」

「いやぁ…これは極楽だねぇ」

「戦いで負った傷が癒えてゆく……」

 

「だろ? ここの温泉悪くねえだろ」

「ハーさん確かここ毎日入れんだよナ?いいな~」

 

「けどなんで俺ら揃って一緒に温泉入ってんだよ」

 

 

パーティーが終わり、アラシたちは千歌の実家の旅館「十千万」に。折角だからとライダー組で仲良く温泉に浸かっていた。広い風呂場という非日常に、アラシは静かに感動していた。

 

 

「いいじゃねえか、裸の付き合いってやつ。こうして一緒に居られんのも残り3日だ、どうせなら最後の最後まで一緒にいてぇ」

「お前なぁ…」

 

「まあいいじゃんアラシ。今のうちに沢山喋っときなよ、友達いないアラシにとって隼斗さんは貴重な同性タメじゃん?」

 

「うっせえ黙ってろ。それに、手は組んだけどダチなんかじゃ…」

「え、そうなのか? 俺はてっきりお前とはもうダチなのかと…」

「なんでだよ」

 

「お前自分で言ってたじゃねえか。『俺のダチの居場所で好き勝手やった報い、受けさせてやるよ!』って」

 

「お前本当どうでもいい事よく覚えてるよな」

 

 

熱に浮かされてそんな事も言ったなと、アラシは少しだけ後悔した。しかし永斗の言う通り、隼斗との縁は自分で思っていたよりも深いらしい。これもまた、空助が言っていた『人を変える出会い』なのかもしれない。

 

 

「……そうだな。確かに最初はお前が気に食わなかった、仮面ライダーが正義のヒーローだのなんだの面倒事持ち込んできやがってってな。お前の真っ直ぐな志が眩しかったんだ。くだらねぇ感情からキツく当たっちまって…」

 

「no problem.別に気にしてねえよ」

 

「隼斗、お前言ったよな。守りたいから守る、理屈なんぞどうでもいいって。…その言葉、最後まで貫けよ」

「アラシ…」

 

「あと、果南のこと。あまり心配かけさせんなよ? 家族みてえなもんなんだろ」

 

 

『出会い』は大切で、人間は一人じゃ生きられない。独りで生きていたアラシに、空助はそれを教えてくれた。だからアラシは一度掴んだ『出会い』を放したくない。

 

あの時、失ってしまったアラシと違って、隼斗には守り抜いて欲しいと願った。

 

 

「…分かってる。死ぬほど分かってる」

「死んだじゃん一回」

「シャラップ永斗少年」

 

「え、ハーさんマジ?」

「死者蘇生、リビングデッドソニック…!」

 

「いや…俺もよく分かんねえんだけどさ…」

 

 

隼斗の口から語られる、その言葉の真実。

戦いから戻った隼斗は博士に呼び出され、開口一番で折檻を喰らった

 

 

「今度は何をしたんだお前は!! 戦闘ログを見直してたらまたオーバーブレイクを使った挙句、君の生体反応が一瞬消えていたんだが!?」

 

 

あの一撃を喰らった時、隼斗は本当に一度死んでいたらしい。理屈不明のジョーカーメモリとの融合が起こったからよかったものの、あれが無ければそのまま海の下で死体になっていたということだ。

 

 

「いやいや別に大したことねえって!そんな怒らなくても…」

「いーや良くない! それに、あの時それを見ていた果南くんがどれだけ取り乱したか! 君には想像つくまい!!」

 

「……まあ」

 

「……だが、五体満足で生きているならいいさ。私は許そう、この事は不問に処す」

「博士……!!」

 

「が、()()が許すかな?」

「彼女?…………………あっ」

 

 

霧香博士が指さす先。彼女というのはもちろん、

目に涙を浮かべ、ずかずかとこちらに歩いてくる果南だった。

 

 

「あ、やっほー姉ちゃんただい…」

 

 

ま、を言う前に走る衝撃。果南のビンタが、隼斗の頬を引っぱたいた。

 

 

「っ……痛って!?痛ったいよ姉ちゃん! 俺怪我人なんだけど!?」

 

「うるさい!!!」

 

「………ごめん、また…心配かけて…」

 

「本当に…本当に心配してたんだから……!」

 

 

涙を流す果南。約束を破ってしまったことに後悔は無い。それでも、頬の痛さ以上に心が痛く、どうしようもなく申し訳なくて、隼斗は少し背伸びしてその頭を撫でた。

 

 

「でも死んでないから。またちゃんと帰ってきたから……ね?」

 

「……バカ」

 

「…ただいま、果南姉ちゃん」

「…お帰り、隼斗!」

 

そのまま力強く抱きしめられる隼斗。大好きな人の温もりで、やっと戦いが終わったことを───

 

 

「はい終わり終わり! いらなかったよね果南ちゃんのくだり丸々。あーもうやめよこの話。温泉に砂糖リバースしそう」

「だな、これ以上惚気話なんか聞けるか」

 

「……………」

 

「シュバルツ死んでるケド」

 

「ほっといて大丈夫だよ、リア充のオーラに殺されてるだけだから」

「あ、ウン」

 

「リア充って…まだ付き合ってねえんだけど」

 

「はぁー?」

 

 

永斗がうんざりしたように隼斗のカミングアウトに反感を吐き出した。完全に永斗のリア充に対する悪感情にスイッチが入ったようだ。

 

 

「あんだけイチャついてそりゃないでしょ。別に幸せが妬ましいとかそういうのじゃないけどさ、持ってる側がこっち側の顔してるのは流石に看過できないよ僕は」

「事実だ、そもそも姉ちゃんは俺を異性としては見てねえよ。それに俺も…この好きはlikeであってloveでは……」

 

「いやあれはラブだろ良く分かんねぇけど」

「あのアラシまで言ってるのヤバいよ。100%ラブでしょなんなの隼斗さん」

「…………」

 

「ハーさん、俺っちもそう思ウ。いい加減自覚したら?」

 

「でも………」

 

「likeだってんなら、エルバの野郎にあんな事言われたりしてキレはしねぇだろうがよ」

 

 

『俺は松浦果南に恋をしていたようだ』、エルバが発した一言に対する隼斗の反応は、それは激しいものだった。激怒だった。思い出した今も嫉妬の炎が背後に浮かび上がるようだ。

 

その感情に対し、隼斗もそろそろ名前を付けるべきだと感じた。

 

 

「……かもな」

 

「だろ? 他の奴に盗られる前にさっさと告っとけ面倒くせぇ」

「そうそう、後々バトルになった時面倒だよ?」

 

「そうする。その時が来たら……伝えるさ」

 

 

今は大事な時期だと、一度身を引く隼斗。

しかしそういう話にときめかないタイプの男子2人、容赦なく一蹴。

 

 

「チキんな」

「クソビビり」

 

「うっせーーーな!!! じゃあそっちはどうなんだよ! μ'sの皆さんと随分仲良さそうだったけど!!?」

 

「いや俺らのは違ぇだろ。何言ってんだ」

「うん。ほら、流石に僕ら弁えてるし。現役アイドルだよ?」

 

「ああぁぁぁぁぁ納得いかねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

理不尽に唸る隼斗。その横で瞬樹は「善子の恋愛話とか知らないか? 黒騎士は善子のことどう思ってる?」と問い詰めていた。

 

 

_________________

 

 

残された時間はあと3日。

激闘の後の休息のため、体に続いて戦士たちは頭脳を酷使する羽目になった。

 

 

「次そっちの回路を頼むよ。電位差キープが肝だから留意するように」

「げぇ、これ半導体作りからやんの。母相はこれでいいとしてもドープ何? さっき使えそうなデータあったからテキトーに改良でおk?」

「それなら合成条件をこうするといい。光電効果がフルで回るようになるはずだ」

「めんどい。今更何を電気代ケチってるんすか」

「なぁここのプログラム、こうじゃなくて繋げるのこっちじゃないか?」

「そーだね、隼斗さんナイス。それでお願い。あーあと10分、それで休憩でいい? もう無理」

 

 

霧香博士、永斗の2人が主だった調製やデータ管理、プログラミングを行う。隼斗ができる範囲でそれらの作業をサポートして補完する。こうして世界間ゲートは急ピッチで開発が進んでいた。

 

一方そのころ他の面子は。

 

 

「フッ……この時を待っていた! 行くぞ8切り、からの起きよ革命! これより強さの定義は逆転する!」

「今こそ月の魔力が満ちる時…褒めて遣わします竜騎士シュバルツ!」

「ヤベーぞアラシサン! ヨっちゃんのことだから絶対手札クソザコ数字に決まってル!」

「これはまさかの善子ちゃん大富豪コースずら…!?」

「行けーっ! 決めろ善子!!」

「ヨハネよ! さぁ喰らいなさい堕天の一撃、4の3枚出し!」

「3の3枚出し。8切り。10捨てであがり」

「あ、俺っちも6であがりダ」

「マルもあがりずら。後はシュバルツさんと善子ちゃんだけずらね」

「……始めようか堕天使ヨハネ、貧民の座を賭けた闇のゲームを…!」

「なんでまたこうなるのよ!!」

 

「Heyお前ら! トランプなら他所でやってくんねぇかな!?」

 

 

非頭脳派ライダーズは、Aqoursの皆と一緒に知能指数の低いトランプに興じていた。何故かゲート開発の横で。人数が多くてうるさいので十千万を使えないという理由を盾にしているが、実際のところノリである。

 

 

「ったく…遊んでるなら手伝えっての。瞬樹くんはともかくアラシとかなら少しは……」

「何言ってんの。少しでもアラシが触ったら完成が半日は遠のくよ」

「マジ…?」

 

 

 

そんなこんながありまして。隼斗のアシスト、アラシの不干渉のおかげで最後の一日を残してゲートが完成した。しかし突貫作業で作った物。一度きりの使用が限界らしいが、今回に限っては十二分だ。

 

 

「はああああああ疲れた……!」

 

「Wake up永斗少年! もうみんな待ってる!」

 

「えー…僕寝る…って言いたいけど、仕方ないね。そういう話だったし」

 

「さぁ行こうぜ最後の一日、遊ぶぞ!!」

 

 

______________________

 

 

時間の許す限り。平穏の許す限り。

彼らは男子高校生。慣れた場所を散歩して、知らない場所を開拓して、過ぎる時間を謳歌する。

 

 

「とりあえず土産買っとかなきゃだよな、アイツらにも」

 

「この辺で土産ならやっぱみかんダゼ、アラシサン!」

 

「海鮮類も美味いぞ! まあ長持ちはしないだろうが…」

 

「アラシ! 木刀がある! 買うぞ!」

「いらん。返してこい」

 

「刀と言えば…あのスラッシュメモリはどうしたんだ? ファーストも…」

 

「戦いの後すぐ飛んでったよ。ファーストも来る時勝手に来たんだし、帰る時も勝手にやるでしょ。知らんけど」

 

 

今回の戦果、ファーストがいなければ決して成し得ないものだった。これまで何度も救われたのは分かっている。それでも、いずれ彼らと本格的に敵対する日が来るだろう。あの鋭い剣先はいずれ仮面ライダーに向けられる。

 

 

「戦いたくねぇな、お前とは……」

 

 

敵に回すと厄介だからか、もしくは別の理由か。

だがアラシの勘は当たる。まだ見ぬ彼の素顔と、その憤怒の源泉は、きっと彼らを死闘へと誘うだろう。

 

今はまだその時じゃない。アラシは自分の予感に蓋をし、この束の間の暇に再び身を投じることにした。

 

 

「おお…まさかこんなすげぇもん食えるなんてな……」

「隼斗さん、マジでいいのコレ…?」

 

「no problem!どうせ博士の金だし!」

「あの人謎に金持ちだよナ」

 

 

沼津の有名海鮮料理店「丸勘」で絶品海鮮丼を頬張る少年一行。少ない探偵業の稼ぎでは滅多に食べられない高級品に、アラシと永斗は一口ずつ感動を味わっていた。

 

 

「霧香博士、か……」

 

「どうしたアラシ?」

「なぁ隼斗、ちょっと気になったんだが…あの博士ってどういう流れでお前らの仲間になったんだ?」

 

「あ? 霧香博士なら、確かハーレー博士…ああ、お前にはあの夜話したろ? 俺が助手やってたその博士の紹介で浦女に来たんだが…それより前のこととなると知らねえな」

「…そうか」

 

 

博士と聞くとアラシが思い当たるのは2人の人物。切風空助と山神未来、喪った父親と最近知り合った師匠の名だった。あの二人が前に仲間だったという話は聞いているが、詳しい話は聞かず終いだった。

 

霧香博士と未来がもし出会ったら…随分と話が弾みそうだ。間違っても巻き込まれたくない組み合わせなのは確かだが。

 

 

「それがどうかしたのか?」

「…いや、なんでもねぇ。ちょっと気になっただけだ。あと美味いな、魚が良い。やっぱ魚買って帰るぞ。他のやつも色々食っとくか」

「マジで? アラシまだ食うの?」

 

「高ぇもんを金のこと気にせず食える貴重な機会なんだ、食わなきゃ損だろ?」

 

 

そういえばアラシは金が絡むとがめついのだった。

次に向かったのはみかん園。

 

 

「…美味いなコレ」

「だろ!? ここらのみかんは日本一だぜ! 他の県にも負けちゃいねぇよ!」

「持ち帰りもできるから、その辺気にしなくていいのが最高だよナ」

 

「烈の分と、我が天使の分…ハッ!善子にも持っていってやらねば!」

「オイシュバルツ! あんま採りすぎんなヨ!?」

 

「μ'sのみんなにもお土産として持っていかなきゃだからね。迷惑にならない程度に沢山持っていっとこうか」

「だな、甘いもんはいくらあってもいいもんだ。足りない分は別途で買えばいい」

「博士の金だからって遠慮なさすぎナ…」

 

 

甘いものということでアラシのテンションは更にヒートアップ。稀に見る上機嫌でみかん園を後にした次は、Aqoursが練習に使っているという淡島神社に。

 

 

「『がんばって』」

「『禁煙』……妙に馴染むあと張りされてんな」

 

「だろ?一周回って自然に見えるよな本当に」

 

 

「ゼェ…ゼェ…蒼騎士!黒騎士!あとどれぐらい登るんだ!?」

「ちょ…無理…マジで……死ぬ…」

 

「シュバルツもエイくんもバテ過ぎダロ……」

 

 

この神社の石階段がまぁ長い長い。ここまでフルパワーで遊んでいた瞬樹と、特にはしゃいではなかったが単に体力がミジンコの永斗は虫の息だった。階段上りの特訓はスクールアイドルの中で伝統となっているのだろうか。

 

 

「ってか毎回練習で上り下りしてんのか?」

「いいや、最近は全くだ。終バスの時間とかの都合で沼津のスタジオに練習拠点移したからな」

 

「って事はその前は結構やってたんだな」

「鬼じゃん……Aqours鬼じゃん……」

「うちの海未とどっこいどっこいだな」

 

「そういやアラシ、ダイヤさんが言ってたんだが……この特訓メニュー、マジでやったのか?」

「あ?…………お前なんでこれ知ってんだ」

「ゲェッ………」

 

 

永斗が絶句した。隼斗が見せたメニュー表は、見覚えしかなかったのだから。

 

 

「ダイヤさんが裏ルートで手に入れたって。μ'sが夏合宿でやった(とされてる)super特訓メニュー表」

 

「……アイツ、こっちの世界でも変わらねぇのか」

「え、really………?」

「負の遺産すぎる……」

 

 

夏合宿にて海未が錬成したメニューが後世に残っているとは。感心しているアラシの横で、永斗は手を合わせておいた。

 

そして次なる目的地は水族館「三津シーパラダイス」。

 

 

「しかし、初めて来たなこんなとこ……」

「それは僕もだよ、知識としては勿論知ってたけどやっぱり実際に来ないと楽しさってのは分からないもんだね」

 

「アラシ! 永斗! 巨大な牙を持った魔獣がいるぞ!!」

 

「シュバルツそれうちっちー! マスコットだゼ!?」

 

「目立つだろはしゃぐなバカ!」

 

 

「そろそろだな……アラシ、永斗少年、大丈夫か?」

 

「問題ねぇ」

「モチ。瞬樹、本当にいいの?」

「たかが水飛沫程度、この俺には効かん! どんとこい!!」

 

『ー!』

 

 

盛り上がるイルカショー。トレーナーさんの合図で飛び上がるイルカ。着水した途端、とてつもない水飛沫が一斉に飛び掛かる。被害を被ったのは逆張りでレインコートを着用しなかった瞬樹だけだったが。

 

 

「だから言ったのに……」

「シュバルツ…警告を無視したカラ…」

 

「フッ…水も滴る偉大な竜騎士……ブェクショイ!!!」

 

 

こうして遊んで、過ぎ去りつつある平和を楽しんだ。

しかし日は暮れる。いつまでもここに居るわけにはいかない。

 

残ったプログラムはあと一つ。Aqoursが贈る、仮面ライダーたちへのライブだ。

 

 

「…にしても、わざわざそこまでしてくれなくても良かったんだぞ。この短期間でライブだなんて無茶だろ」

 

「それ僕らが言う? まぁちょい見せくらいのテンションでしょ。そんな大変じゃないんじゃない」

 

「いや、なんかμ’sに伝わるかもって事で気合入ったらしくてな」

「特にダイヤサンがナ」

「3曲やるらしいぜ。しかも一つは新曲だとよ」

 

「マジかよ」

 

 

案内通りに指定場所へ向かうと、そこにはきっちりと簡易特設ステージが用意されていた。ここまでやるかと仰け反るアラシ。暇だったから内緒でステージ建設を手伝っていた憐は得意げだ。

 

 

「お待たせ! 私たちは…浦の星女学院のスクールアイドル、Aqoursです!」

 

 

ステージの照明が閃光し、華やかな衣装をまとったAqoursの9人が登場した。マイクを握って声を張る千歌の姿に、アラシたちは穂乃果の姿を想起した。

 

 

「まず最初に……私たちの世界を守ってくれて、ありがとう!!」

 

 

律儀に謝意をマイク越しに叫ぶ千歌。他の8人も気持ちは同じなのだろう。返事を返してやりたいところだが、そこで永斗がアラシ達にサイリウムを手渡す。アイドルと観客という関係性の今、対話はパフォーマンスと応援が礼儀だ。

 

 

「私は…μ'sが憧れでした! μ'sがいたからAqoursがいる! そんなμ'sを守ってくれてありがとう!!」

 

 

オレンジに光ったサイリウムを振る男たち。Aqoursは微笑んで天を指す。

 

 

「この感謝をこめて、未来から過去に! これが私たち…Aqoursの輝き! 聞いてください───『MIRAI TICKET』!」

 

 

上昇する熱気とメロディーに乗って少女たちは舞う。この曲はAqoursが一回目のラブライブ地区大会で披露したもの。あの時は惜しくも敗退を喫してしまったが、『未来』からの贈り物ならこの曲を外すことはできないだろう。

 

 

「いい曲だね。なんていうか、彼女たちが歩んできた道が見えるみたいだ」

 

「そのための曲だからな。とにかくみんな必死だったんだ、学校を守ろうって」

 

「μ'sとはまた違ぇな…」

 

「善子ー!! 善子すごいぞ!! 善子ー!!」

 

 

若干一名喧しいが、アラシはそのステージを冷静に分析する。形が歪な原石を激流と激突で削って、そうして出来上がりつつある未完成な宝石。

 

この曲はさながら夢への『情熱』や『希望』。

 

そうして一曲目が終わった。

暗転。息をつく暇も無く、次の旋律が始まり、9人が新たなフォーメーションに。

 

 

「おっ…この曲やるのカ!」

 

「なんだ憐?」

 

「まあ見てなってお前ら。凄いもん見れっから! 『MIRACLE WAVE』だ!」

 

 

先ほどとは打って変わって激しい曲調が走り抜ける。

2曲目『MIRACLE WAVE』。隼斗たちの記憶にも新しい、この間のラブライブ地区大会で披露した曲だ。ただ1曲目と違うのは、Aqoursはこの曲で勝利を勝ち取ったということ。

 

アップテンポに乗って垣間見える、Aqoursの新たな顔。しかしこの曲の真価はここからだ。曲がサビ前に差し掛かった瞬間、千歌以外の8人が作り出したドルフィンウェーブ。そこを渡る千歌と、そこから訪れる静寂の時。

 

 

そして、披露されたのは千歌のバク転パフォーマンス。

これにはアラシ達も目を見開き、それをニヤニヤと隼斗達が眺める。

 

 

「…すっご。何今の、難易度鬼じゃん」

 

「アイツあんなに運動神経良さそうには見えなかったけどな…凛ならともかく」

 

「そりゃもー大変だったゼ。な、ハーさん」

「だな。でも…千歌なら絶対やれるって信じてた」

「泣いてたくせに」

 

 

まぁそりゃ泣きもするだろうと、アラシは思った。まだ形も無かったような夢や希望を、なんとか背伸びしてその手に掴もうとする気迫。血の滲むような努力を隠さない彼女たちのパフォーマンスは、観客に熱と感動を与えるのだ。

 

曲が終わった。ここからは隼斗も知らないAqoursだ。彼女たちは輝きを求めて、進化を止めないのだから。

 

 

「これが最後の曲…世界と世界、私たちの知らない戦い。知らなかった仮面ライダー。この掛け替えのない出会いを……全力で歌います!」

 

 

―『KU-RU-KU-RU Cruller!』―

 

 

「いつの間に作ったんだか…amazingだな。本当、皆には驚かされてばっかりだ」

 

「気持ち分かるぞ。スクールアイドルってのはどいつも予想を超えて、驚かせることしかしねぇんだよ」

 

 

──空はつながってるよ

──海もつながってるよ

──いつだって いつだって 心のなかで会えるから

 

 

この曲は千歌と梨子が作ったまま形にせず、埃を被っていたものの一つ。だが、今回の世界を超えた邂逅、その送別と来て、偶然にもこの曲の歌詞と状況がリンクしたのだ。

 

未発表で既存の曲がベストという奇跡。それがこの短時間で新たなパフォーマンスを創り出し、彼らに送るライブを最高のものへと昇華させた。この奇跡はきっと必然で、意味のあるものだ。

 

 

──飛びこんだ世界で 夢よまわれ…まわれ!

 

 

『ギャアアア!?half&half monster!?』

『なんだと!?』

 

思い返すと出会いは最低で最悪だった。そこから盛大にいがみ合って、分かり合えない互いの性分をぶつけ合った。ぶつけ合った先で、見えたモノがあった。

 

『───決めろ、隼斗!』

『……あぁ、任せろアラシ!』

 

その化学反応が憂鬱の絶壁に風穴を開けた。敵でも無ければ相棒でもない、仲間ではあるのだろうが少し不思議な感触。その未知の絆があったからアラシ達は飛べたのだ。

 

 

──楽しいなら大丈夫さ

──新しいやり方で Make you happy!

 

 

全く縁もゆかりもない世界で命を懸けて戦った。出会って少しのよく分からない奴らに命を預けた。そうやって勝ち取った、何万分の一の奇跡。採算度外視もいいところだ。こんなことを続けてれば命がいくつあっても足りない。

 

 

(割に合わねぇか…? 馬鹿言え、後悔なんてこれっぽちもねぇよ)

 

 

──おなじキモチだって 分かっちゃう いつも分かっちゃう

──君の想いが分かっちゃうんだ

 

 

戦いの先で手に入った友情と、Aqoursが見せてくれたスクールアイドルの未来。身に余る報酬だ。これ以上望む馬鹿がどこにいる。

 

 

「……すげぇな。μ'sが憧れ…か。えらいもんに憧れられたな、アイツらも」

 

「何言ってんだアラシ。超えてくぜ、Aqoursはμ'sを!」

 

 

こうしてAqoursのライブは幕を閉じた。

それはこの世界に居られる時間が尽きたことを意味する。別れの時が、やって来たのだ。

 

 

_________________

 

 

 

「回路接続、起動シークエンス開始。次元座標WL-02、接続レベル146。目標設定…日本 東京…秋葉原周辺と…」

 

「博士、まだかかりそうか?」

「急かすな隼斗。テスト不可の1発勝負なんだ、ちゃんと帰せなくてみすみす切風くん達を死なせる訳にはいかないんだよ!」

「あ、そうか…了解」

 

「まーそう言わないでよ隼斗さん、仕方ないし。博士には随分無理頼んでるんだからこれぐらいはね」

「ああ、時間云々もほぼ気にしなくていいってなら別に急ぎはしねぇよ」

 

 

日が昇った。霧香博士が完成した世界間転移ゲートを操作している間、そわそわとする仮面ライダーたち。別れに向けて綺麗に収めたつもりが、最後にグダグダしていてなんとも言えない感じだ。

 

 

「善子ォォォ! 俺が帰っても息災でいるんだぞぉぉ!!」

「あとこの竜騎士どうにかしてくれ」

「ゴメン、それは無理カナ」

 

 

ただし瞬樹はただただ煩かった。ライブ中も一番叫んでたし、なんなら終わってからもめっちゃ叫んでいる。

 

 

「いや、そうだ! 俺は残るぞアラシ! 永斗! 我が妹を残して帰る訳には…」

 

「向こうにいる本来の妹はどうすんだ瞬樹くん」

「そうだぞ、シュバルツ」

 

「ハッ! そうだった…グッ…仕方ないか…」

「なくねぇだろ何言ってんだ」

 

 

ここにいる善子とあちらの善子、あと花陽のこともあって瞬樹が悶える。現地妻ならぬ現地天使なんて永斗は思ったが、流石に怒られそうだったので言わなかった。

 

そんなこんなでも時間は過ぎる。ようやくその時はやってきた。

 

 

「待たせたな3人とも! ゲート…開通だ!」

 

 

操作がエンターキーで締めくくられ、円形のゲートから緑色の光が溢れた。ここに来るときと似た感じの光。元の世界に繋がっているゲートだ。

 

 

「…お別れだな」

 

「ああ…世話になったな、色々と」

「最初は面倒くさかったけどね…世界が違ってもμ'sが、スクールアイドルが与える影響って凄いんだね。ちょっと安心したよ」

 

「そうだな…面倒だったし疲れたし…でも、楽しかった。それが全然気にならなくなるくらい、この数日は楽しかった!」

「ダナ! 俺っちも久しぶりに楽しかったゼ」

 

「楽しかった…かもな。全部が全部とは言わねぇが」

「だね」

「異世界での新たなる盟友…この出会い、俺は決して忘れないぞ!」

 

 

アラシは隼斗と、憐は瞬樹と。永斗は隼斗と憐2人同時に手を差し出し握手を交わす。それで終わりかと思いきや、隼斗はアラシの手を強く引っ張ると、他の面子も引き寄せ思い切り抱きしめた。

 

 

「ちょ、いきなり何すんだお前…!」

 

「…俺は忘れない。お前らのこと、μ'sの皆さんのこと…この戦いの全てを、絶対忘れねえから…!」

 

「…ハーさん?」

 

 

その目に溜めた涙をアラシは見逃さなかった。アラシは別れに対しこんなに感傷的にはなれないが、隼斗は優しく感情豊かで融通が利かない超特急みたいな人間だった。似ても似つかない、光と影のような乖離した人間性。それでも出会えて良かったと、心から思えた。

 

隼斗は涙をアラシの肩で拭い、肩を押して離れた。そして最高の笑顔で、心からの言葉で感謝を込めて叫ぶ。

 

 

「Let's meet again! Our best companion!」

 

「…なんて?」

「またな…だってさ」

「…あぁ、その時が来ればいいな。今度は厄介事抜きでな」

 

「ダナ。…あ、アラシサン達これ!」

 

 

憐が駆け寄り、アラシ達に一つのビニール袋を渡す。その中身を見て、アラシは呆れたように笑った。

 

 

「ああ! それ私の残してたやつ!?」

「まだ持ってたのかよ!?…まあいいや、ほらアラシ!約束の物だ」

 

「馬鹿律儀だな、流石正義のヒーロー様」

「まあな、ヒーローたる者約束は守んなきゃな。コイツで依頼達成って事で」

 

「……そういう事か。ならいいだろう! 切風くん、士門くん! そしてシュバルツ! そろそろ時間だ、行きたまえ!」

 

 

それぞれが自分のバイクに跨り、エンジンをかけようとしたその時。Aqoursの中から一人、縋りつくように飛び出した影があった。

 

 

「竜騎士シュバルツ!」

 

「……善子?」

 

 

津島善子だった。その相手は、もちろん瞬樹だ。驚いて目を丸くする瞬樹に、善子は言いそびれていた言葉を伝えた。

 

 

「竜騎士シュバルツ…いや、『兄上』…と呼んでもいいのかしら」

 

 

不意に喜んでしまう瞬樹だったが、すぐにそれを隠すように背を向ける。その呼び名は、瞬樹には少々重い。

 

 

「…俺は、お前の本当の兄じゃない。この世界のお前は一人っ子、俺は存在しないのだろう? なら俺とお前は運命が巡り合わせただけの関係、家族や兄妹では…」

 

「それでも、あなたは私を守ってくれた。心を通わせ、あの巨悪を共に打ち砕いた! ならば何をそんな事! 世界が違えど同じ血が流れているのなら、心に宿す誇りが似通っているのなら!……私達は兄妹、そうでしょう?」

 

 

善子はその親愛の証として、黒い羽根を瞬樹に手渡した。それは堕天使ヨハネとしての善子のトレードマークだ。

 

 

「これは…」

 

「貴方にこれを授けましょう。これは私との絆の証…そして誓いの証。今ここで永遠の別れとなろうとも、これからも互いに己の道を突き進む。貴方は…それを約束できる?」

 

 

これもまた、少し重い。だが『弱さも強さ』、堕天使ヨハネがくれた言葉が竜騎士シュバルツを強くした。だからもう逃げない。己の弱ささえも誇らしく掲げ、瞬樹は進む。

 

 

「我は誓おう! 異なる世界の妹よ! 天界堕天条約に基づき、命尽きる時までこの誓約を破らぬ事を!」

「ええ! 我らの魂は永久不変! 共に互いの明日に祝福を! そして…いつでもいい。向こうの私に会えたら、それを渡して。そして伝えてほしいの。『貴女は貴女の道を行きなさい、ありのままの貴女を受け入れてくれる仲間に、いつか必ず巡り合える。信念を曲げずに生きなさい』とね」

 

「ああ、約束しよう。さらばだ我が最愛の妹よ!」

 

 

包み込むような握手をして、涙を隠さず瞬樹は別れを告げた。

 

 

「…さぁ、行くぞ!」

 

 

今度こそ本当の別れだ。エンジンを始動させ、ゲートに向かって走り出す。

 

 

「アラシくん!永斗くん!瞬樹くん!ありがとー!!!!」

 

『ありがとう!!!!』

 

「…あぇ! またなお前ら! 超えて見せろよ、μ'sを!」

「またね~!」

 

「さらば異世界の盟友達よ! いずれ運命が、再び我らを導くまで!」

 

 

加速するバイクに追いつく別れの言葉と感謝の想い。向かう先は光に包まれ、いずれ何も聞こえなくなった。その全てを胸の中に仕舞い、事件の風吹く故郷の世界へ。

 

 

「……じゃあな、仮面ライダーソニック」

 

 

____________

 

 

9/13 活動報告書

 

 

元幹部の『憂鬱』が引き起こした異世界をも巻き込んだ事件は、こうして幕を閉じた。この事件の立役者は言うまでもなく隼斗や憐、あっちの世界の仮面ライダーたちだ。

 

 

「ちょっとアラシ君! そんなの書いてないで手伝ってよー!」

「でけぇ事件だったんだよ、報告書ちゃんと書かせろ!」

 

 

穂乃果が引っ張るのに抵抗し、俺はキーを叩く。こっちの世界には存在しない仮面ライダーの記録、しっかり記録に残しておきたい。いつものお飾り報告書とは訳が違うんだから集中させてほしい。

 

そういえばこっちの世界に帰った時、本当に時間が経っていなかったらしく驚いた。皆には「もう帰って来たの?」と言われた始末だ。

 

さて、執筆に戻るが今回の事件はファングやエンジェルの件に並ぶほど大きなものだったと言えるだろう。当然、俺達に残した影響もとてつもなく大きい。

 

 

「で、凛たちまだ隼斗さんたちの活躍聞いてないにゃー! 仮面ライダーソニック! どんなのだったのか気になるよー!」

 

「お前もか凛、永斗に聞け…って寝てんじゃねぇか起こせ」

 

「ウチは憐君のスレイヤーが聞きたいな!」

 

「なんだ全員集合か? お前ら暇なのか?」

 

 

仮面ライダーソニック、仮面ライダースレイヤー。コイツらがいたから大罪の一柱『憂鬱』を落とすことが出来た。現状、俺達よりも遥か先にいる存在だ。でも、ここからは俺達だけでも七幹部を倒せるようにならなければいけない。

 

 

「ねぇアラシ、さっき瞬樹が凹みながら歩いてたんだけど、アレなに?」

 

「真姫もいんのか。そりゃ多分アレだ、本当に久しぶりに実家に連絡したが、そん時に母親にガチ叱られしたらしい」

 

「でも妹ちゃんにも謝れたって瞬樹くん言ってたよ。お正月には帰る約束もしたって」

「あっ、かよちん! 聞いてよアラシくんが隼斗さんたちの話してくれなくてー!」

 

「そうよ! 仮面ライダーの話なんてどーでもいいけど、Aqoursの話を聞かせなさい! 未来のスクールアイドル……なにより未来のにこ…じゃなくてμ'sの話を!」

 

「うるせぇバカにこ。そいつは喋れねぇ約束だ」

 

 

影響と言えば、Aqoursの事も外せない。わざわざ見せてくれた未来のスクールアイドルの新世界。今よりももっと広く、熱狂の飛び交う、自由な世界だった。そしてμ'sに憧れたっていう千歌や、隼斗たちの反応から未来でμ'sがどんな存在になっているのか想像はできるが、それは俺達が勝ち取らなきゃいけない未来だ。

 

 

「未来の話より一週間先の話です! 揃いも揃って何をしているのですか!」

 

「せっかく隼斗たちが手伝ってくれたのに、これじゃ顔向けできないわよ。ほらみんな、準備と練習戻って」

 

「海未ちゃんと絵里ちゃん!?」

「なんでここがバレたにゃ!」

「そうよ! こっそり準備抜け出して来たのに!」

 

「ごめん…聞かれちゃったからつい…」

 

「ナイスことり。文句言ってないで戻れ3バカ」

 

 

学園祭まであと1週間。これもまた隼斗たちが戦ってくれたから勝ち取れた未来だ。俺達はこれからも戦って、スクールアイドルの未来を繋いでいく。少なくともお前らが見せてくれたあの未来までは、必ず……

 

 

「待てお前ら」

 

 

準備に戻ろうとするμ'sを、俺は呼び止めた。

 

 

「これだけ言っとくが、お前らの後輩はすげぇぞ」

 

「…じゃあ負けられないね! まずは学園祭成功させて、廃校阻止だ!」

「あとはラブライブも。目指せランキング20位♪」

「後輩のAqoursに恥じぬよう、皆で精進あるのみですね!」

 

 

超えてみせろ、そうは言った。でもな隼斗。世界が違おうがこっちだって負けてやる気は一ミリもねぇ。μ'sはAqoursの何倍もすげぇって事を精々未来で思い知れ音速ヒーロー。

 

ある程度文を書いて疲れた。俺は手元に置いてあった袋から、最後にアイツらから受け取った「土産」を取り出す。それの蓋を開け、スプーンを沈ませて口に運ぶ。

 

 

「アラシ君、なにそれ? プリン?」

 

「塩プリンだ。沼津のなんとかってパティシエが…詳しい話は忘れた」

 

「プリンに塩!? それって美味しいの? 合うの?」

 

 

あちらの世界に行くとき隼斗と約束した、今回の「依頼」の達成報酬。あんな流れの約束を律儀に守る辺り、本当に愚直で眩しいヤツだった。自分で言うのもなんだが捻くれたクール気取りとは大違いだ。でも、この「出会い」はきっと俺たちを進化させたはずだ。そうだろ、空助。

 

 

「合うんだよ。こういうよく分かんねぇ組み合わせが意外とな」

 

 

海風を感じる味わいの余韻に浸り、窓から空を見上げる。

空も海も繋がってる。スクールアイドルの運命は音が繋げてくれる。どーせまた世界だって繋がるんだ。だったらまたどっかで会えんだろ。

 

扉は閉じた。それでも()()はきっと、何処までも高く上昇する。

世界を超えるほど疾い、正義の風に乗って。

 

 

 




コラボ編、これにて終了。改めましてMasterTreeさん、コラボありがとうございました!誰かと小説書くっていう一年、本当に楽しかったです!マスツリさんが作ったスラッシュ(あとロイ)はこれからも活躍しますのでよろしくお願いします!ソニックもラストスパート、頑張れ!

コラボ編、個人的な満足ポイントは善子と瞬樹の話をしっかり書けたとこです。話し始めると長くなるので振り返りはまたどこかの機会に。

さてさて次回からはいつも通り(くっそ久しぶり)の原作回です。やって来ました学園祭。コラボ編で大暴れした憂鬱やジョーカーメモリの謎も引っ張りつつ、あの幹部が大きく動き始めます。

感想、高評価、アドバイス、オリジナルドーパント案ありましたらお願いします!
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