なんでこうなったのか。
別にいいけど………
「作戦終了!艦隊が無事帰還………ううっ」
「ど、どうしたんですかアローさん!まさかケガしていたんですか!?」
鎮守府に帰還したR-9Aが急に泣き始めたのをみて時雨が心配する。
「い、いや………まさか、作戦に出たあと帰還できるなんて思わなかったんだ」
「「「は??」」」
駆逐艦三人は疑問符を浮かべた。
「えーっと………もしかしてR-9Aさんの世界って戦って死んで来いが当たり前な世界なんですか………?」
「ああ………私の前期型なんて第1次バイドミッションで大隊クラスも投入したが帰還したのは一機だけでパイロットも死亡したんだ………」
「っ!?」
「帰還できることがこんなにうれしいとは思わなかった………!」
感無量なR-9A。それを見た駆逐艦三人は改めて自らの帰る場所があることが幸福、そして全員そろっていることのありがたみを感じた………
「………ここに置けばいいんだな?」
「そうです。あとは妖精さんが勝手に補給してくれます」
帰還した彼女たちは工廠に自らの艤装に燃料や弾薬の補給、細かいところのメンテナンスを妖精に頼みに来た。
ちなみにR-9Aの艤装は宇宙服の様なものの背部に戦闘機だったころのブースターなどが某MSの様に装備されており、ラウンドキャノピーの様なバイザーのついたヘルメットを着用している。
「しかし妖精か………かわいいな」
「長門さんみたいなこというんですね」
「おいおい、それは長門に失礼じゃないのか?」
ここにいるのはR-9Aと時雨だけだった。島風は走り込み、吹雪は作戦報告に向かっていた。
「かわいい………補給………ん?もしかして妖精はPOWアーマーなのか?」
「ぱうあーまー?なんですかそれ?」
「私の世界の補給機だ。ちょうどいいところに黒板があるな。POWアーマーというのはだな………」
チョークを手に取ったR-9Aはさらさらと簡略化されたPOWアーマーを描いた。
「………僕の目がおかしいのかな。足が生えてるように見えるんだけど」
「当たり前じゃないか。POWはどんな環境においても活動するんだ。足は必要なんだ」
「いやおかしいって!?というかどうやって補給するのさ!?こんなボールみたいな補給機で!?」
「意図的にR戦闘機の攻撃に対してはもろく作ってあるから叩き壊して補給物資を出現させてザイオング慣性制御システムの応用で補給物資を引き寄せて回収する」
「壊される前提の補給機とか物資の無駄だよね!?」
「中身の物資がバイドに奪われるよりマシだろう!」
「おかしいのは僕なの………?」
「まあ、物資とかで言うならあの世界も高価なはずの水爆を普通に使う機体があったりするが………」
「そっちがどう考えてもおかしい!そんなもの使ったら地球が汚染されちゃうよ!?」
「………バイドに汚染されて体が変質して化け物になってしまうのと、今は住めなくなるが除染することがまだ可能。どちらがいい?」
「………世界って大変だね」
ある意味究極の決断を迫られた時雨は答えを出すことを諦めたようだ。
「お互いさまだ。終わりの見えない戦いを続けているのは、お前も私も同じだ………やれやれ、ラストダンスの公演はいつになるのか」
「ラストダンス?」
「私の世界ではバイドとの最終決戦を始めていたんだ。その作戦名が………『LastDance』なんだ。私はその先遣隊だった」
「そうだったんだ………でも、なんだか切ない名前だね」
「あのLastDanceが終わったとき、果たして人類は何を見るんだろうな。平和か?果てしなき争いか?それとも………異世界への侵略か?」
「アローさん………怖いです」
「兵器は怖いものだろう?特に兵器を向ける相手を見失った人なんかはな。所詮兵器である私も、お前も。戦争が終わったら利用され、仲間に対してその銃を向けなければならなくなるかもしれないぞ?」
それを聞いた時雨は考え込んでいた。彼女は長く戦い続け、その中で多くの仲間の最後を見てきた。
彼女なりに『LastDance』という名前にに思うことがあるのかもしれない………
「………アローさん。僕らは………心があります」
「ん?」
「かつて、軍艦だったころは僕らに意思なんてなかった。あれをしたいこれをしたいなんて思ったところで叶えられもしない、ただの鋼鉄だった。でも、今は違います。僕らには手もある。足もある。誰かのことを思う心もある。だから………僕らの先にどんな運命があるとしても、抗って見せます。扶桑さんや、山城さんのように」
「………いい覚悟だ」
「わ、やめてくださいって!僕の髪はおもちゃじゃありませんって!?」
R-9Aは時雨の髪をぐしゃぐしゃにしながらも撫でる。実は彼女は少しだけ艦娘のことを侮っていた。
戦う理由も見つけず、言われたままに戦う。そんな悲しい雰囲気を感じていたのだ。
彼女の相棒だったナガトは、言われたままに戦った結果バイドになって命を落としてしまった。彼女の乗る機体はいくらパワーアップしているとはいえ、所詮は旧式。そんな機体で戦うことにナガトは文句もいわなかった。
もしかすると、バイドに負けることが前提で彼女は戦わされたのかもしれない。敵の情報を探るために。
そんな彼女みたいな使い捨てにされる命を作り出したくはないと思っていたR-9Aにとって時雨の言葉は艦娘に対しての認識を改めることとなった。
「それにしてもフソウか。ここでそんな名前を聞くとは思わなかった」
「知ってるの?」
「私が作られていた工廠で誰かが言っていた気がするな………」
「そうなんだ………アローさんの戦闘機だった頃って異世界での僕らが軍艦として戦っていた頃よりずっと先なんでしょ?それなのに扶桑さんのことが伝わっているのってなんだかうれしいな」
「あのパゴダマストにはロマンがあるとか言っていたな。パゴダマストってなんだ?」
「ふふっ、パゴダマストっていうのはね………」
時雨は、喜々として扶桑の話を始めた。
本来、こんなことはなかっただろう。彼女………時雨は軍艦であり、心がなかった。
しかし、今は心がある。心というものは、何かを思うことができ、何かを伝えることができる。
心がある限り、歴史や、伝説は伝わっていくのだ。
シリアス風味がだいぶ出てる………始めるべきか?
バイドとの闘いを。