モーレツ銀河海賊   作:ノナノナ

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第39話

 通常空間に最後に復帰して来たオデットは、海賊の歌が流れる中ゆっくりと海賊船船団の中央へと進み出た。

 『ところで加藤茉莉香。弁天丸のみんなは船長不在で寂しがってるんじゃないのか』

 娘から期待通りの反応を貰って満面の笑みを浮かべるケンジョー・クリハラが茉莉香に振った。

 「弁天丸のクルーはみんなベテランです。私なんかが居なくてもむしろ上手くやっちゃいます。でも、これは海賊としてのお仕事ですから船長不在はチョット不味いんで、私は弁天丸に戻ります。ここから先のオデットの船長はチアキちゃんにお願いします。集まって下さった海賊軍団の提督はリーゼです」

 『嬉しいねえ。俺っちの目が黒いうちにまたチアキの船長姿が拝めるって訳だ。だがそれだと寂しがるねえ、なあチアキよ』

 「ちょ、お前ぇ。何言ってんだ!」

 にやけた髭面に噛み付くチアキを尻目に、豪快な笑い声を残して通信は終わった。

 「じゃ、あとお願い。」

 そう言って、ポンと椅子を蹴って宙に舞う茉莉香。

 空になった船長席を見て、チアキが静かにその席に就いた。

 「解ったわ。行ってらっしゃい」

 チアキの声を後にして、手を振りながらブリッジを離れる。

 クルーが差し向けた連絡艇で、茉莉香は弁天丸に戻った。

 

 「よお、お帰り」

 「弁天とオデットの二足の草鞋、ご苦労さん」

 「いつもながら、バタバタと慌ただしいねえ」

 営業用(海賊衣装)に着替えながら、アタフタと弁天丸のブリッジに現れた茉莉香をクルー達が迎える。

 茉莉香は船長席に座るとコンソールを開いて状況を確認した。そんな茉莉香にクルー達がそれぞれ報告を入れる。

 「見ての通り植民星の海賊船二一隻、ガーネットA宙域に展開中。ちなみに先の海賊狩りでやられたビッグキャッチやシルバーフォックスもいるぜ。竜骨の一部が残ってたってんで海賊免状は失効しなかったそうだ。で、タニアで修復を受けて無事復帰、でもビッグキャッチは、ありゃほとんど新造艦だな」

 「やられ得」

 百目とルカの言葉に、船長さん海賊止めずに済んだんだとほっとする茉莉香。

 「その海賊船長たちから通信入ってるわよー」

ミーサがコンソールに向かっている茉莉香に振る。

 「あ、出る」

 通信を開くと、グランドクロス以来の海賊たちの顔が出る。

 『銀河系を相手とは、また剛毅だねえ。手始めが帝国艦隊かい?』

 ビラコーチャの女船長、カチュア・ザ・レディだ。

 『荒くれ共の闘いぶり、とくと御覧じろ』

 『…ふむ…』

 忍者姿のマスター・ドラゴンに、ワインを揺らすデスシャドウのクルップ侯爵。

 「皆さん、私たちの我儘に付き合わせちゃって御免なさい。でも、お尋ね者どころか凶状持ちになるかも知れないのに…」

 『でも殺らない。こんな面白そうな事をやらない訳ないだろうが。え、加藤茉莉香』

 『海賊は正義の味方ってな』

 胸に「見習い」から「新米」のゼッケンをつけた白銀号の船長や、村上丸の擂粉木船長の姿もある。みんなワクワクした顔をしている。

 『俺たちもいるぞい!』

 『先の独立戦争から、もう一回海賊団をやった気がするが…いつじゃったかのう?』

 『さあ、忘れた!』

 オリジナル・エイト、ナイン、テンの三爺さんだ。

 「おいおい、半年前を忘れたって、大丈夫なのかよ」

 げんなりした顔で三代目がぼやく。

 「大分、進んでるようね…」

 同じくミーサ。

 『グランドクロスと同様に、散々小突き回して、付け入る隙を衝く寸法だな』

 「はい。」

 茉莉香の返事に、ウィザースプーンのスプーンがぐにゃりと曲がり、不敵な笑いを浮かべる。

 「それじゃあ、皆さん。お願いします!」

 おう、という返事で一同、戦闘位置に就く。

 「第五艦隊プラント防衛艦隊群は、ガーネットA星四億キロ軌道上に展開。こちらは六億キロ、彼我の差二億キロ、約十一光分。まだ距離はあるが防空識別圏内だ」

 シュニッツアがモニターしながら報告する。

 「気付かない、って訳ないか。こっちは派手にトランスポンダーと名乗り上げてるし。ねえ、向こうに動きは? なんか言って来てる?」

 「電子妨害すらないわ。まああっちにすれば相当やりにくい相手だし、様子見ってとこじゃない?出来ればお相手したくないとか」

 「その防衛艦隊の統合参謀司令部への通信が増大している。こちらの取り扱いを照会しているようだ。それに対する司令部の返事は、判で押したように同じ。『決められた手順通り』だそうだ」

 通信を傍受している百目が言った。

 「そりゃ主筋に当たる御人が敵じゃ複雑だわ」

 「司令部も面と向かって『撃て』とは言えない。現場の判断に任せるってわけね」

 揚げゲソを口元でピコピコさせながらクーリエの感想に、ミーサが同乗するように付け加えた。

 「このまま見逃し、てのは無いわね」

 「それは無い。絶対防衛ラインを越えてくれば腹を括るだろう。相手が皇女だろうと艦隊

 司令部の命令は絶対だ。距離が一〇光分になれば応対せざる負えない。――いま、入った」

 薄い期待をシュニッツアが否定する。

 海賊船団がガーネットA星の内星域領域に入ったところで動きがあった。

 各星系ではガス状惑星の内側、岩石惑星からが内惑星領域だが、惑星を持たない単体星では、恒星を取り巻く小惑星帯かその重力と恒星の大きさによって内領域と外領域が比定されている。一般的な主系列星の内惑星軌道まで膨れ上がった赤色巨星では恒星と外領域との距離は短くなる。といっても内惑星軌道が二つは入るほどの広さはあるが。そして内星域領内からが絶対防衛ラインである。

 「せんちょー、第五艦隊旗艦ノイシュバンシュタインから通信。『所属不明船団の旗艦、船長』宛てでーす。」

 通信は二一隻すべての海賊船に送られていた。

 「あえて白鳳海賊団とリーゼの名は出さないのね」

 相手の苦しい胸の内を思って、茉莉香は通信文を開いた。

 『貴船団は帝国艦隊の特別防衛圏に侵入している。直ちに退去されたし。このまま進めば撃墜も辞さない。第五艦隊旗艦ノイシュバンシュタイン、ガーネットA防衛司令司令長官フリードリヒ・フォン・カイデル』

 「あっらー、核恒星系に乗り込んだ時の艦長さん。」

「栄転ですね。旗艦とはいえ艦長から司令長官に昇進ですから。貧乏くじだけど」

 申しわけなさそうな茉莉香にルカが言う。前にリーゼとお相手したことがあるという事で、総司令部が押し付けたのだろう。

 オデットがどう返答するか注目していたところに、通信機から拍子木の音が響いて来た。

 「なに?」

 そして、メインスクリーンには三色の幕に舞い散る華吹雪の映像が流れる。

 

 ――『絶景かな、絶景かな!!』――

 

 思わず茉莉香は、船長席で盛大にずっこけた。

 スクリーンに現れたのは、大キセルを手に持ち金地に紺色褞袍という、ド派手な装束のリーゼ・アクアだった。

『銀河の眺めは値千金とは小せえ、小せえ。このリーゼには値万両。もはや赤色巨星も西に傾き、誠に恒星(ほし)の夕暮れに帝国艦隊の盛りもまたひとしお。はて、うららかな眺めじゃなぁ!』

 流れるような銀髪を大毛玉のような百日蔓にして、キセルをかざして艦隊群を望む仕草。

 これには第五艦隊側も驚いた。総司令部から白鳳海賊団を名乗る一党の頭目がリーゼだとの報告で、皇女が海賊姿で現れることは覚悟していた。しかしこの出で立ちは想像を絶していた。

 『…いったい、何という…』

 オープン回線のまま、フリードリヒ・フォン・カイデルは絶句した。これが全艦艇に流れている――。

 『それがし、元は大帝国の皇女リーゼと申す者。』

 『ひ、姫様。兎に角お引き下さい、このままでは、こ…攻撃せざう負えなくなります』

 気を取り直して老将フリードリヒ・フォン・カイデルは言うが、微妙に噛んでしまっている。それに構わずリーゼは続けた。

 『本国に母を残し、白鳳に渡りて反逆を企て、今月ただいま露見なし、

 たとえ空しく相果つるとも、

 この銀河に在りし悪の思惑を海賊を頼りになにとぞ尋ね出し、

 わが存念を語り、力を合わせ、ステラスレイヤーを討ち取るべきものなりぃ~』

 口上を述べて大見栄を切る。

 「これって、総司令部も見てるわよね…」

 恐る恐る茉莉香が聞いた。

 「総司令部だけじゃねえ。あの悪童どもがそれだけで満足すると思うか? 絶賛銀河中継中だ。」

 そう言って百目が銀河ネットの映像を茉莉香に回した。ヨット部が散々乗っ取りしているジーチューブだ。

 「親(女王)が見たら泣くぞ」

 眉を寄せてケインが呟く。

 「不敬罪ものね」

 ルカもボソッと言うが、帝国に宣戦布告している以上いまさら不敬罪もない。だがケインの親が泣くには茉莉香も肩を落とした。

 そして台詞はヨット部員たちに移った。

 『石川や 星の真砂は尽きるとも――』

 びっくりするフリードリヒ・フォン・カイデル。

 『や、何と!』

 そしてヨット部員とリーゼが合わせて言った。

 『世に盗人の 種は尽きまじ。』

 『巡礼にご報謝!』

 哀れ老将は、ショックのあまり椅子から転げ落ちた。

 「ちょ――、みんな何言ってんの~。もう海賊ですらないし!」

 茉莉香は船長席から立ち上がって叫んだ。

 これ見たら、女王、ぜったい娘をオデットに送ったこと後悔するだろーな、と思う。グリューエルもだけど、いちおー自分の立場というものを考えて欲しい。

 「おおおっ、濃密な電子妨害だ。奴さんたち腹括ったようだぜ」

 百目のレーダー・センサーに白くノイズが入った。宙域全体に強力な電子妨害の嵐。

 「大丈夫よん、しっかり見えてる。画面に靄が掛かる程度だわ」

 余裕の電子戦席。以前の弁天丸なら感度を上げようと迂闊に出力を上げると、オーバーフローして焼き切れてしまう所だが、今回チューンアップされた電子系はびくともしない。

 「みんなとのネット回線はどお?」

 茉莉香からの確認にクーリエはO.Kと指の輪を立てる。グランドクロスでやった時のようにネットを張っての共同戦線だ。

 その取り纏めを今回もクーリエがやっている。事前に取り決めたものではなく、集まった海賊船たちとのツーカーで自然とそうなった。歴戦の海賊は一度経験があれば仕事が早い。新たにやったことと言えば、オデットをネットに加えることぐらいだった。旗艦はオデットだが、実際の司令船は弁天丸という事になる。

 「ケイン。これまでと大分勝手が違うけど、操船しっかりお願い」

 弁天丸をはじめ今回集まった海賊船は、主転換炉の他に重力制御も装備している。

 「誰に言ってんだよ、オデットのクルーじゃないんだぜ。まああっちは大変だろうが」

 「その辺は大丈夫よ。半ば自動でするようにプログラムしてあるから」

 新たに補助推進に重力制御を組み込んだオデットだが、重力制御の難しい調整と操舵は自動で行えるようにしてある。攻撃時の戦術的な挙動は出来ないが、旗艦は戦闘の矢面に立つわけではないのだからそれで十分だ。戦闘は武装艦がする。

 「出力安定!」

 「重力波センサー感度良好」

 「兵装、シールド、その他戦闘に問題なし」

 「天気晴朗なれど、波高し」

 「宙域に問題あるも、航行に支障なし」

 頼もしいクルー達を船長席から見廻して、茉莉香は言った。

 「弁天丸、行きましょう。」

 

 兵装を持たないオデットを後ろに、二一隻の海賊船は第五艦隊に突進した。

 戦闘は三六〇〇万キロまで近付いたところで始まった。

 「敵の射程に入った。撃って来るぞ」

 「まだ有効弾は来ないわ。相手の有効射程ぎりぎりまで近付いて」

 口火を切ったのは、最も強力な砲を持つノイシュバンシュタインだった。

 光の速さで約二分の距離だが内惑星どうしの隣近所ほどはある。狙って当たる距離ではない。狙うには熱源か反射波が必要だが電子妨害でそれは効かない。光学照準もあるが、大きさが小天体クラスならまだしも、戦艦がいくら大きいといっても数キロの規模はない。

 敵の距離位置が正確に把握できない場合、精密挟叉砲撃で敵位置を測る。

 挟叉がだんだんと狭まり、砲撃の振動がびりびりと弁天丸に伝わって来る。

 そろそろ有効打も来る頃だが、いまのところ電子妨害は上手くいっている。エネルギー波の閃光が船体を掠めていくが一発も当たっていない。

 「オデットはどう?」

 砲撃の振動はオデットにもあるはずだ。乗り込んでいるのは、全員女子学生。

 「進行方向、速度そのまま。堂々としたもんだよ」

 百目の言葉に安心する茉莉香。流石はヨット部、初めての練習航海でのライトニングⅦから伊達に戦闘回数を重ねていない。

 「敵の砲撃にも躊躇いがある。まあ皇女が乗っているんだから仕方ないが」

 「あんまりためらうと、当たらないものも当たっちゃう事あるのに」

 敵砲撃をサーチしているシュニッツアに茉莉香が毒づいた。

 「そろそろ反撃するか? 距離的には十分だ」

 砲撃が大分近くなって来てシュニッツアは言うが、茉莉香はとどめる。

 「まだよ。どうせなら一撃必殺で行く。そのうち機動力がある遊撃艦隊が飛び出して来るわ。肩透かしを食らわせて、そのままどてっ腹にぶち込む!」

 第五艦隊プラント防衛艦隊は互いの距離を固めた魚鱗の陣形で進んでくる。砲撃密度も濃くなるが、それ以上に重力制御でシールドをたかめビーム攻撃を防御しているのだ。なにしろ相手は十倍の戦闘艦数、いわば巨大な壁だ。

 対する海賊船二一隻は、オデットを中心に散開して飛んでいる。

 「まだ有効打は出ないのか。密集陣での集中砲火だぞ、当たらない訳がない!」

 ノイシュバンシュタインの艦橋でフリードリヒ・フォン・カイデルは苛立って怒鳴った。

 「こちらの砲撃はことごとく避けられています。艦どうしの距離を取って挟叉攻撃を紙一重で擦り抜けています」

 「では、重力制御の防御ではないというのだな。」

 なんて奴らだとカイデルは唸った。これだけ濃密な砲撃を、あえて電子妨害と操舵で躱している。こちらも盛んに電子妨害を展開しているが、向こうが撃って来なければ意味がない。

 「反物質魚雷およびヒッグス粒子ミサイル攻撃用意、飽和攻撃で揺さぶりをかける。間髪を入れず遊撃艦隊突入で敵連携を断ち切る。」

 カイデルは相手の電子妨害が、連携を取り合って宙域の戦況把握をしていると読んだ。だから攻撃に当たりもせず隊列を乱すことなく向かって来る。ならばその網を破ればよい。乱れたところで隊列を整える時間を与えず各個撃破だ。

 ミサイル発射と前後して、主砲のビーム攻撃も熾烈さを増す。着弾までの足止めが目的だ。

 「敵さん、盛大にぶっ放して来たぜ。全部実体弾! おっ艦隊前翼に重力波増大!」

 百目からの報告に茉莉香は椅子から立ち上がる。

 「ミサイル着弾寸前に跳ぶ。引火性チャブ散布用意! クーリエ!!」

 「例のジグザグが来るわよ~。学生注目ぅ!!」

 クーリエは物凄い勢いでキーボードを叩き、重力波を見せた遊撃艦隊の突入予想進路を海賊船団の電子戦担当に送信する。

 『頂きぃ!』

 弁天丸が実体弾に効果の薄いチャブを撒いたことで、各海賊船の船長たちは何をするつもりかを悟る。

 二〇〇隻余りの戦艦巡洋艦から放たれたミサイルの飽和攻撃は、二一隻の海賊船目掛けて飛び、続いて遊撃艦隊の機動戦艦が猛烈なスピードで不規則なジグザグを描きながら向かって来る。予測不能な軌道もグランドクロスとやり合った海賊たちには既知のもの。

 ミサイル群が目標を捉えると同時に、盛大な火球がそこかしこに花開いた。

 「やったか!」

 カイデルはスクリーンに釘付けとなって椅子から身を乗り出した。

 爆発から半歩遅れて目標の海賊船に跳躍した遊撃艦隊から報告が入る。

 『海賊船消滅。しかし該当空域に残骸の反応もありません』

 「なに?」

 その途端、ノイシュバンシュタインに衝撃が走った。カイデルは椅子にしがみ付く。

 「どうした!!」

 ノイシュバンシュタインの艦橋にアラートが鳴り響く。

 「敵からの直撃弾!」

 「何だと!」

 ブリッジ士官からの報告に驚く。けたたましいアラートの中でカイデルは叫んだ。

 「被害報告! それと、敵位置の確認!」

 「被害…は、ありません。直撃位置は艦橋部分です。模擬弾と思われます。」

 「模擬弾……」

 また船体が揺らいだ。

 「今度はエンジン部分です! 直撃です! 被害はありません。航行に支障ありませんが、演習規約では本艦は大破してます」

 (演習規約だと? これは実戦だ。)

 なんて不謹慎なことを言ってやがる。弛んでいるにも程があると思った矢先、同様の報告が僚艦や他の二〇の艦隊群から入る。

 「ミサイルの飽和爆発はチャブによるものと思われます。海賊船の位置は、こちらの重力波と干渉し合って把握し切れません。どうやらジグザグに飛んで実体弾を撃ち込んでいる様子です」

 その間にも船体に断続的に衝撃が来る。戦闘機で空襲を受けているみたいだった。船体に穴が空くような重大な被害は出ていないが、レーダーやセンサー系には被害が出ている。それが索敵を余計困難にさせつつあった。

 このままではタコ殴りだ。だが、防空弾幕は意味がない。たいしたことはないだろうが僚艦に被害が及ぶ。戦闘機のような小型艇なら効果もあろうが、攻撃している相手も戦艦クラスなのだ。当たっても効果が薄い。

 「各艦散開。いったん戦域を離脱して体勢を整える。アンテナが駄目になる前に知らせろ!」

 たった二〇隻を前に、二〇〇隻の大型戦闘艦が跳んだ。

 「あ、逃げた。」

 戦域を離れた第五艦隊を見て茉莉香は言った。

 「さっすが帝国艦隊よね。実害が出ていなくても戦況をよく解ってる」

 艦隊群が旗艦の指示待ちで通信系統をズタズタにされる前に、さっさと動く。艦隊行動を取る各艦長もよく理解していて、迅速に従う。

 「やっぱ辺境と違って、中央の艦隊は規律がしっかりしてるなあ」

 サンピエトの艦隊がたった一隻のミューラに散々弄ばれた、髑髏星での戦闘を思い出していた。あの時は情報部のナッシュさんも一緒だった。その戦い振りは参謀総司令部にも報告が入っているだろう。

 「前も開いたことだし、そんじゃあ行きますか!」

 舵輪を握ってケインが陽気に言った。

「行っちゃって行っちゃって。チアキちゃんと黒髭船長さんに連絡。始めますと」

 弁天丸、オデット、バルバルーサの三隻が、ガーネットAのプラント目掛けて跳躍した。

 

 

 

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