モーレツ銀河海賊   作:ノナノナ

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第50話

 ノエルが辺境でいちばん近い銀河帝国の出先機関がある、自由貿易都市明夜に向けて飛び立って行ってから三日が過ぎた。そこで銀河警察にジャッキーを引き渡すためだ。

 ノエルが明夜を選んだのは、そこが帝国領では無い事。帝国と敵対している勢力から、直接帝国に乗り込む訳にはいかないからだ。その点、明夜は自由港であり中立的立場にある。帝国を排除している訳ではなく、出先機関があり、帝国と国交を結んでいない星系との外交の場にも利用されている。

 白鳳海賊団は、いったん髑髏星で待機していた。

 リーゼが送ったメッセージの反応を見るためだが、辺境星系連合も銀河帝国も、まだ何の音沙汰も無い。

 やる事やったから、この戦争いち抜けた――では済まないのだ。終戦はおろか停戦にも相手の同意が要る。白鳳海賊団はいまだ両面戦争継続中なのだ。

 「いつ海明星に帰れるのかなあ」

 伸びをしながらキャサリンがぼやいた。

 「いま帰ったら、一週間後に期末考査だよ」

 それに、手持ち無沙汰げなファムが返す。

 「それは嫌だなあ」

 「この状態が一週間続いたら、帰宅困難者ってことで期末考査免除してくれたりして!」

 「それいい!」

 キャサリンの都合の良い思い付きにウルスラが相槌を打っている。

 「でも戦争終わんなかったら、このままずっとこの状態?」

 「それはそれで嫌だなあ」

 ヨット部員たちが、暇を持て余している。

 あまり髑髏星の中をうろつかないで欲しいとのミューラからのお達しがあったのだ。話では聞いていても、本当にオデットのクルーが女子高生なんだと目で見るのは、髑髏星としては複雑なのだ。前に上陸した時も、周囲の目がやたら気になった。キミーラやアイの女王号でのブリッジでも乗組員の視線が痛かった。ステラスレイヤーを沈黙させたいまとなっては余計そうだ。それで、現在ヨット部員たちは船内待機中。

 そこにジェニーがやって来てパンパンと手を叩いた。

 「期末考査の事なら心配しないで。ここでしっかりと受けてもらいます」

 え――、と不満げな声。

 「冗談はさておき、先ほどセレニティーから船が来たわ。表向きはグリューエルとヒルデ滞在に対する、白鳳海賊団への表敬となっているけれど、帝国の意向を伝えに来たようなの」

 「帝国の意向て、降伏勧告?」

 「やる事やったし、これで帰れるわね」

 しかしチアキが疑問を投げかけた。

 「白鳳海賊団は帝国に降伏するとは言っていないわ。他の海賊船との擦合せが未だだってこともあるけれど、ここで私たちが降伏しても、帝国の財産を破壊した事実は事実。リーゼは第一級反逆罪に問われるし、私たちは監獄行きよ」

 「えー、皇女様でも?」

 「だからこそよ。ましてや世継ぎとなれば尚更。それが法と秩序を第一とする銀河帝国だわ。」

 向き直してみんなに告げた。

 「それに戦争は、帝国と星系連合との正面戦争に変わるだけよ。帝国と星系連合に宣戦布告をした以上、どちらかに降伏したからハイ退場ってわけにはいかない。白鳳海賊団は吹けば飛ぶような勢力だけど、双方の決戦兵器を沈黙させた実績がある。海賊はどちらにも与しない戦力で、両勢力の緩衝材になってる。茉莉香はそれを狙って宣戦布告をした。私たちが退場できるのは、両者の戦争が終結した時なのよ。その時の白鳳海賊団の立ち位置が重要になるわね」

 「何だかややこしいね」

 「じゃあ、チアキちゃんなら、どうやって戦争を終結させる?」

 「それは――切り札を失って生ぬるい戦争に移るか、落とし所の妥協点を見つけて和平協議するか――、まあ時間は掛かるわね」

 「それじゃ他力本願じゃない。海賊として出来ることはないの?」

 「ない。いまは潮目を待つ時なの。待つことも戦いなのよ」

 きっぱりとチアキは言った。

 「そう、時間は確かに掛かるわね。銀河帝国はまだしも、辺境星系連合はこちらが降伏宣言したところで、おいそれとは受け入れてくれないわ。白鳳はこれでもかって位に向こうの面子を潰しちゃってる。たいした戦果を上げていない連合艦隊は反対するでしょう。」

 ジェニーもチアキに同意した。

「銀河帝国はまだしもって、帝国艦隊もいいところ無かったじゃないですか。降伏します。はい分かりました。ってふうには行かないかなあ」

 ナタリアも同じな様子。

 「それに今のままだったら、リーゼちゃん第一級反逆者だよ」

 それに付け加えるキャシー。

 「もしかして、セレニティーの船って、その潮目なんですか!」

 目を輝かせたナタリアにジェニーが微笑む。

 「よくぞ気付いてくれました。いまセレニティーの皇女とリーゼが、帝国の意向とやらを聞いているわ。使者はあのヨートフさんよ。それともう一人いるみたい」

 

 「ヨートフ、お勤めご苦労様です。私たち姉妹は、こうして元気に過ごしておりますよ」

 「第七・第八皇女様のお健やかなご尊顔を拝し、老体これに過ぎる悦びは御座いません」

 グリューエルの言葉に拝跪し、ヒルデの方をちらと見るヨートフ。

 「ヒルデ様は、よくぞあの場でいにしえの戦衣を纏って下さいました。お陰でどれだけ援けられましたか」

 そう言って深々と頭を下げる。

 援けになったとは? と不思議に思う二人の前に、一人の少年が姿を現した。

 それを見てリーゼが声を上げた。

 「ソリス!」

 侯帝の孫、ソリス・ルクス・スプレンデンス王子だった。

 「リーゼ義姉さま」

 人懐っこい男の子の顔が、リーゼを見ていっそう輝く。

 「あなたが、どうして此処へ?」

 「先ずは、銀河帝国行政府より、白鳳海賊団に免状をお渡しします」

 そう言って一枚の免状を手渡す。

 それは、白紙免状だった。

 海賊業務における契約事項や脱法行為を一時的に棚上げに出来るというもの。使い方によっては違法行為すら合法としてしまえるため、そうそう発行はされない代物だ。その効力の発揮には帝国中枢部による監査を必要とするが、例えば帝国への反乱も無かったことに出来るのだ。

 そして、姿勢を正した。

 「私は帝国艦隊総督の名代として、銀河帝国女王陛下の使者としてここに参りました。白鳳海賊団総帥であられるリーゼ・アクア様に親書をお届けするためにです」

 親書は二通あった。

 今年小学部に上がったばかりとは思えぬ立派な口上とともに、まず一巻の封書をリーゼに捧げた。

 受け取ったリーゼは、蝋で閉じられた封印を切り、聖王家の紋章が透かしに入った文書を開ける。

 書面を見たリーゼの顔が、みるみる驚愕の色に染まった。

 そのまま手渡されたセレニティーの姉妹も、それを見て目を丸くする。

 「ヨートフ、あなたが言った援けになったとは、この事だったのですね!」

 何も答えず、ただ深々と下げる老執事。

 「独立艦隊も、続々と集結中とのことです」

 そうソリスは付け加えた。そして、晴れやかな顔で言った。

 「銀河系の行く末を決める時局で、その勤めを初めての外交で行えた事は、聖王家の一員としてこれ以上の無い誉です!」

 

 

 翌々日、髑髏星の防空識別宙域に、辺境星系連合の大艦隊が出現した。

 その数、一万隻。

 『よくもまあ集まったもんだ。第七艦隊が慌てて集結するのも無理はない』

 『でも、あの時は一万五千隻じゃなかったか。あとの五千は何処へ行った?』

 『さあ、トンズラこいたんじゃねえの。一万はほぼ七つ星で編成されてるようだし』

 『てことは、連合に所属する星系へのお目付け役は、留守ってことか』

 『壮観な眺めじゃのう』

 対峙する海賊船たちが口々に言って来る。

 迎え撃つのは、白鳳海賊団二〇隻余りと海賊団に同盟する海賊ギルドの船一二〇〇隻。

 数だけは多い。だがその多くが旧式の仮装巡洋艦や武装商船だ。重力制御推進を装備している艦はキミーラと愛の女王号の二隻に過ぎない。どう見ても寄せ集め艦隊の感は拭えない。

 「こうして見ると、たう星沖海戦を思い出させるわね」

 「あん時の植民星艦隊も寄せ集め艦隊だったもんな」

 「集結している艦艇は今の方が多い。でも戦力差も大きい」

 「でも旧式艦での戦い方は、オリオン腕海賊がお見せしたから、いい線いくんじゃねえの」

 「いちおー、ネットでの共同戦線はレクチャーしておいたわよー」

 「見えない。戦況次第では危険が危ない」

 「まあ、こっちは寄せ集めだからね。根城を失っても一匹狼でって奴らも多そうだから。それとルカ、用法が間違ってるわよ」

 茉莉香の感想に、弁天丸クルー達が続いている。一部、船長の影響を受けた者もいるようだが。

 

 「辺境連合艦隊は艦隊を三つのグループに分けて展開。左右に二五〇〇隻、正面に五〇〇〇隻、それぞれが五列縦陣を取っています。――こちらを囲い込む形です」

 「数を頼りに力づくでの包囲ね」

 レーダー・センサーに就いているヒルデの報告に、チアキがコンソールで確認しながら言った。ヨット部員たちはオデットに戻っている。

 「この包囲網、あなたならどう戦う?」

 メインスクリーンに映し出された宙域を見ながら、通信席に座っているグリューエルに意見を求めた。

 「向こうは殲滅戦で行く気です。数は圧倒的ですが、それなりの損害も覚悟の上だと思います。つまり向こうには後顧の憂いがあるのではと思います。それを利用すべきです」

 「具体的には?」

 「こちらは海賊らしくゲリラ戦で応戦し、手子摺った所で逃げ道を用意する、という所ですか…」

 「例の白紙免状ね。それ本物なの?」

 以前に情報部が髑髏星との渡りを付ける際、茉莉香やケンジョーらは艦隊での演習で提示されたことがあるが、その席にチアキは同席していなかった。

 「はい。免状には帝国行政府の印がありました。ソリスが使者だったことからも、大伯父様も承認しています」

 リーゼが答える。

 「帝国の総意って訳? でもよくこんな決定呑んだわね、特に侯帝は。」

 白鳳海賊団を反逆者にして置く方が、帝位を狙う侯帝としては都合が良い筈なのだ。それなのに帝国は白紙免状を出した。しかも、それには予め認証印が押してある。何を免状するかが書かれていないまま、それに対する監査も無しに承認するという破格の白紙免状なのだ。

 「それだけ追い詰められているという事ですよ。何でも帝国艦隊でも統率が執れておらず、脱走が相次いでいるとか」

 「ヨートフが申すには、ヒルデの戦衣姿が決定的だったようです。形だけとはいえ、セレニティーが海賊に与したことになりましたから。あとはヨートフが根回しを行ってくれたたようですが、今回の合意は、あくまでも秘密会談の扱いだそうです。その方が辺境星系連合にとっても都合が良いでしょう」

 外向けのすました顔で答えるセレニティーの皇女たち。

 「フン。」

 何やら他にも企んでいそうな雰囲気だが、またまた頭をもたげる大人の事情って奴かと、チアキは鼻であしらう。

 「船長、辺境星系連合から通信が入ってます」

 「どーせ降伏勧告でしょ」

 憮然としたチアキに、グリューエルはクスリとした。

 回線を開くと、定型文のように決まりきった文言が並ぶ。

 チアキは通信文を読み上げた。

 『白鳳海賊団とやらに告ぐ。

 お前たちは連合政府の財産であるステラスレイヤーを破壊した。一方的に連合を攻撃する暴挙に出た。宣戦布告と言っているが、領土も国民も居ない集団は只の野盗に過ぎない。辺境星系連合はそのような存在を断じて認めない。

 しかし、辺境星系連合は、広大無辺なる慈悲の心を持って、海賊ギルド及びオリオン腕海賊に提案しよう。

 徒党を解散し降伏せよ。そして白鳳海賊団の首謀者たち、リーゼ・アクア、加藤茉莉香、セレニティー姉妹、ジェニー・ドリトルを引き渡せ。そうすればお前たちの罪は問わない。

 今からでも遅くない。既に包囲は完了し戦力は当方に利がある。抵抗は無意味だ。』

 それを聞いてグリューエルは、ぽっと頬を赤らめた。

 「まあ♡ 茉莉香さんと名前が並ぶなんて、光栄ですわ」

 「奴ら、数にものを言わせて、その上動揺を誘ってきたか!」

 「リーゼやグリューエル達を使って、帝国との外交カードにするつもりね」

 「私の名が乗ってるのは、帝国経団連に和平工作を依頼するためね」

 ジェニーの名が登っているのを見て、リンが敵対心をあらわにしている。チアキも海賊ギルドが一枚岩出ない所を衝いて来たと思った。

 そこに茉莉香から通信が入った。

 『リーゼやセレニティーのお姫様やジェニー先輩の名があるのは解ります。でも、どーして私の名前があるんです!? 一介の女子高生なんか、取引材料になんないでしょ』

 その素っ頓狂な声に、周囲から冷たい視線。

 「茉莉香。それ気付かずに言ってるんだったら、もう罪だから――」

 チアキが呆れて言い返す。

 降伏勧告を聞いていたヨット部員たちが、口々に文句を言った。

 「どーも向こうさんは、私たち白鳳海賊団を知らないようだね」

 「ただのプレゼンだと思ってるみたい――」

 「海賊ギルドはまだしも、オリオン腕の海賊は違うのにね」

 「私たちの歴史を知らなさ過ぎる」

 ヨット部たちは怒っている。

 「ここは、しっかり教えとくべきだと思う!」

 「じゃあ、名乗りやっちゃう?」

 「やっちゃう、やっちゃう!」

 「辺境でのご当地初御目見え! いくよー」

 「さんせー」

 緊張感のないやりとりにチアキは手を上げて、グリューエルは通常回線を開いた。

 そしてみんなが一斉に声を上げた。

 

 『『『知らざア言って聞かせやしょう!』』』

 

 全員の言葉に続いて、部員それぞれが台詞を継いでいく。

 『浜の真砂と五右衛門が、歌に残せし盗人の――

 『種は尽きねえ七里ヶ浜、その白浪の海賊働き

 『以前を言やあ白鳳で、ヨット部通いの女生徒が――

 『クルー代わりに弁天を、あてに義賊の真似仕事

 『一つが二つと営業の、コスプレ姿も段々に

 『悪事はのぼる上の宮

 『ファンテンブローで辺境の、実戦相手も度重なり

 『強面部活と札付きに、とうとう入部を控えられ

 『そこから看板(表)は海賊部

 『時空超えでの統合戦争で、ちと関わったステラスレイヤーの

 『似た使い道での強請りたかり

 

 『『『ぜってえ許せぬ白鳳海賊団たぁ、私等のことだぁ!』』』

 

 オデットから入った返答に、連合艦隊は面食らっただろう。

 「ははは…。みんな、ノリノリだねえ…」

 茉莉香が乾いた笑いを浮かべた。

 『他人事じゃないよ。私たちもやるんだから』

 高飛車な声で、クォーツから通信が入った。

 「えー、ホントにやるんですかぁ?」

 渋る茉莉香。

 しかし続くミューラからとどめの一言。

 『この業界、見栄えで劣ちゃあ負け組なんだよ。それともこの私の顔に泥を塗るつもりなのかい?』

 長命種の目がすっと細くなる。

 「いえいえいえいえ、決してその様な!」

 茉莉香は慌てて被りを振った。

 「――でもなあ…」

 なおもブツクサ言いながら、立体投影のスイッチを押す。

「聞きもの、いや見物かな」

 

 一〇〇〇隻余りの海賊船に覆いかぶさるように、宇宙空間に雪を被った霊峰が立ち上がる。その麓には吉祥の松竹梅。荒波が打ち寄せ、霊峰が髑髏マークに代わって、日輪のように光条が走る。

 場面がフェードアウトして行き、音もなく宇宙空間に舞い散る、桜吹雪。

 そして――。

 高らかに拍子木の響きが強制入力され、居並ぶ五人の女海賊の姿。

 みな唐笠を差している。

 衣装は当然、金襴緞子の超ド派手なものだ。電飾まで入って眩しい。

 

 『問われて名乗るもおこがましいが 産まれはくじら座たう星系

 いきなり見知らぬ父と別れ 身の生業も見習いの

 宙(そら)を越えたる船長働き 盗みはすれど非道はせず

 人に情けを弁天から ドンパチかけて星々で

 義賊と噂高札に 回る配布の時空越し

 危ねえその身の境涯も 最早高校卒業に 不可侵協定もあとわずか

 銀河帝国に隠れのねえ 賊徒の張本加藤茉莉香。』

 

 『さてその次は海森の バルバルーサの通信士

 平生着慣れし作業姿から 髪も墨田に由比が浜

 セーラー服にしっぽりと 女生徒に化けた探り入れ

 油断のならぬ小娘も 加藤茉莉香に身の破れ

 勢い乗りも龍の口 身代わり船長も二度三度

 だんだん増える黒歴史 黒髭野郎の身内にて 

 海賊無頼と肩書きも 宙に育ってその名さえ

 娘海賊、チアキ・クリハラ。』

 

 『続いて次に控えしは 銀河の海賊メトセラ育ち

 幼児の折から手癖が悪く 掃討戦争からぐれ出して

 旅をかせぎに帝国を 回って首尾も吉野山

 まぶな仕事も大峯に 足を留めたる辺境の

 ギルドと言って星系や 企業へ入り込み盗んだる

 金が御嶽の罪科は 蹴抜の塔の二重三重

 重なる悪事に高飛びなし 後を隠せし海賊の

 御名前存知の、ミューラ・グラント。』

 

 『またその次に列なるは 以前は侯帝の姫育ち

 勝手気儘な騒動に 親勘当の腰越や 砥上ヶ原に身の錆を

 砥ぎなおしても抜け兼ねる 高飛車心の深翠り

 田舎のくじら座 私掠御免の切取りから 黄金髑髏と名も高く

 忍ぶ姿も人の目に 月影ヶ谷神輿ヶ嶽

 今日ぞ命の明け方に 消ゆる間近き星月夜

 その名も、クォーツ・クリスティア。』

 

 『さてどんじりに控えしは 波風荒き皇宮の

 磯慣れ松の曲がりなり 人となったる深窓育ち

 仁義の道も白鳳の オデットに乗り込む大首領

 波にきらめく稲妻の 免状に脅す船殺し

 背負って立たれぬ罪科は その身が重き聖王家

 反逆上等というからは どうで終いは星屑と

 覚悟は予て髑髏星 然し哀れは身に知らぬ

 皇位無用な、リーゼ・アクア。』

 

 各々傘を差し上げて振り返り、白波五人娘は大見栄を切る。

 ――どん どん どん どん どおーん――

 鮮やかに五色の爆発が背後で巻き起こる演出付きだ。勿論、大音響での強制入力で。

 「まあ、茉莉香さん素敵ですわー」

 グリューエルは手を胸元に組んで、目をハートにしている。

 「チアキちゃんも決まってるよねー」

 「効果は抜群だ!」

 「私たちも負けてらんない! 締めに掛かるよー」

 再び、ヨット部員たちのナレーション。

 

 『五つ連れ立つ雁金の 五人娘にかたどりて、

 『案に相違の顔ぶれは 誰海賊の五人連れ。

 『その名もとどろく白鳳の 音に響きしわれわれは

 『千隻あまりのその中で 極印打った頭分。

 『太えか布袋か盗人の 腹は大きな肝玉。

 『『『ならば手柄に からめてみろ!!!』』』

 

 打ち鳴らされる拍子木に、艶な姿で龍田川。

 五色の瑞雲背に纏い、大音声の名乗り揚げ。

 すわ威勢熱たき心意気、

 降魔折伏の霊験あらたかに、辺境連合押し黙る。

 これ以上ないというほど顔を真っ赤にして、チアキが文句を言って来た。

 『なんで、私が出なきゃなんない訳? 海賊団の代表ならあなただけでいいでしょ』

 「そーなんだけど、植民星の海賊達って事で、私とチアキちゃん――」

 『なら、他にもいるじゃない。女海賊って言うんなら、ビラコーチャのカチュアさん。あの人船長だしピッタリじゃない!』

 「娘海賊五人衆だから…」

 『それじゃあミューラはどうなのよ! あの人一二〇年前からギルドの頭目やってるけど四二〇歳よ! オバサンすら過ぎてるじゃない』

 「あの、それ言わない方がいいよ…。ミューラさんの耳に入ったら…」

 フンと、鼻を鳴らしてそっぽを向くチアキ。

 「長命種の人って私たちの二〇倍の時間を生きてるでしょ。だから換算するといま二一歳だそうよ」

 チアキは、え?という顔になった。

 「そうなのよ。凄く大人っぽい人だから、もっと年上だと思ってた。梨理香さんと同じ位に見えてたから」

 そりゃブラスター・リリカが若作り過ぎるからよ、とチアキは思った。とても高校生の娘がいるようには見えない。

 そこまで言ってから茉莉香は気付いた。一二〇年前のミューラさん、今より齢若に見えていたけれど、いま四二〇歳で一二〇年前という事は、あの時は三〇〇歳。

 自分らの年齢にすると…一五歳?? グリューエルと同い年だ! でもグリューエルを見ていると、妙に納得してしまう自分だった。

 

 娘白波五人衆の顔見世興行に、辺境星系連合の総司令は言った。

 『お前たちの料簡は解った。折角の最期のチャンスを、みすみす見逃すという訳だ。ならば、最早情けは掛けない。辺境海賊ギルドも少しは使える奴だと思っていたが、とんだ間抜けの集団だったという訳だ。皇女という肩書に縋った愚かさを悔いるがいい、そいつは只の反逆者だ。謀反人だ。我らに加わればそれなりの地位を約束してあげたものを。

 ――先ずは帝国への手土産に、用無しのお前たちを血祭りにあげてやる!』

 しかしそれを聞いてるヨット部員たちは、いたってのんきだった。

 「それって、悪役の決まり文句」

 「大抵、やられる前の台詞なんだよね。」

 「ね――」

 辺境星系連合の艦隊群が、一斉に横一列に並び全砲塔を海賊団に向ける。

 砲口がエネルギーをチャージしていく。

 『攻撃用意。全砲口開け!』

 総司令が艦隊に命令を下すと同時に、艦隊の背後が爆発した。

 

 

 

 

 




第51話を投稿するに当たり、一部を改稿しました。原作で出ていた「白紙免状」を出すためです。
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