イギリスにある、いわゆる魔術協会の総本山である『時計塔』。
その『時計塔』の生徒間では、一つの都市伝説が流れていた。
その都市伝説とは、『その者に出会えば人生が狂う』というもの。
ーー曰く、『それ』は夏に現れる。
ーー曰く、『それ』に常識は通じない。
ーー曰く、『それ』に勝つことは出来ず、逃げることも出来ない。
ーー曰く、『それ』は夏の天使である。
ーー曰く、『それ』は筋肉天使である。
そして、ほとんどの生徒が知らないことがあった。
ーー曰く、『それ』は生徒以外の『時計塔』の人間の間では『夏の狂人』と呼ばれている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『時計塔』のとある一室で髪の長い男が電話をしていた。男は電話相手の報告を聞いて、眉間によっている皺を更に深いものにする。
「ジーン、参加出来ないとはどういう事だ? ……何? 直前の依頼でしくじって大怪我だと? どうやっても良くて全治3ヶ月? ……分かった。他をあたるとしよう」
電話を切ると、その男ーーロード・エルメロイⅡ世は大きくため息をつく。
彼は、近々行われる『聖杯大戦』の為にマスターを集めていた。しかし、優秀なマスター候補をピックアップしたはいいが、その中の一人が怪我で参加出来ないというのだ。未知数な戦いである為に万全を尽くしたかった彼としてはこの結果は痛かったが、しょうがないと切り替えて次の候補に連絡しようとした時、電話が鳴り出した。
「?」
画面を見るも見知らぬ番号だった為、首をかしげる。しかし、鳴り続ける以上出ない訳にはいかず、何かの罠である可能性も考えながら慎重に電話に出る。
「……もしもし、誰だ?」
『私だーーー!!!』
いきなりの大音量に眉間の皺をより深くしながら、エルメロイⅡ世は言葉を返す。
「……お前か。今、こっちは忙しい。後にしろ」
『おいおいおいおい。こっちも急用なんだ、見て欲しいものがある』
「見て欲しいもの? ブラジルまで行って直接見なきゃならんのか?」
電話相手がブラジルに向かっていたことを思い出して、げんなりしながら聞いてみる。
『いや、私がそっちに向かってる』
「ちなみに今は何処だ?」
『日本だ』
今の会話でエルメロイⅡ世は、電話を切りたくなったが後々面倒なことになるので会話を続ける。
「何故、日本にいる」
『おいおい……私は夏の天使! またの名を天高く筋肉盛り上がる天使ーー略して筋肉天使! 夏じゃない地域の移動くらい途中で休ませてくれよ』
「私が聞きたいのは、ブラジルからイギリスに行くのに何で日本を経由してーーいや、いい。碌でもない答えが返って来る未来しか想像出来ん。それで、見せたいものとは何だ?」
もうこっちに来させずに、助言だけしてさっさと帰ってもらった方がいいのではないかと思い始めたエルメロイⅡ世は単刀直入に用件を聞くことにした。
『何か赤い痣が出てきた』
「……は?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そこは、『時計塔』の一室。エルメロイⅡ世の部屋とはまた違う一室であった。
そこで、フリーランスの賞金稼ぎである獅子劫界離は、その部屋の主である召喚科学部長のロッコ・ベルフェバンに質問をしていた。
「その『聖杯大戦』におけるこちら側のマスターは?」
「ああ、こちら側は『
それを聞いた獅子劫は疑問を口にする。
「俺を含めても6人だが、最後の一人は? まだ決まってないのか?」
「予定では『疾風車輪』ジーン・ラムが参加する筈だったのだが、大怪我で無理らしいとエルメロイⅡ世から連絡があった」
「それで今は代わりを探している途中……と」
獅子劫の推論にしかしロッコ老は首を横に振る。
「いや、
「……含みのある言い方だな。他に何か問題があるのか?」
「……
「……は?」
奇しくも獅子劫の発した声は、エルメロイⅡ世が数時間前に発した声と全く同じであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
地球の7割を占める大海原。それを凄まじい速さで突き進む男がいた。
厚着をしなければ肌寒いこの季節に、男は事もあろうに青い海パン(ブーメランパンツ)に青いマフラー、光を反射すると虹色に輝くサングラスという目を疑う姿で海を突っ切っていた。サーフボードで。
「さあ、まっていろ! 夏!」
秋のルーマニアに夏が迫る……。
ネタで思いついただけなので、連載の予定は今のところはないです。
サマーソウルを知らない人は、ようつべで見た方がいいです。
全然変態っぽく書けなかった……。