それと、この小説についてのちょっとしたアンケートがあるので、良かったらお願いします。
〜紘汰side〜
「あら、目覚めましたね、姉様」
「そうね、目覚めたわね、レム」
3度目の目覚めは、似たような声質をした2人の少女の声から始まった。カーテンの隙間から入ってくる日差しから考えて今は、朝なんだろうと思う。良く眠れた。3度寝だったのに。
「今って何時かな?」
大人な感じで聞いてみた。特に意味は無いけれど。
「今は陽日7時になるところですよ、お客様」
「今は陽日7時になったところだわ、お客様」
2人の少女は親切に教えてくれた。陽日7時がどんな意味かは、分からないけど朝だということは何となく認識できた。
「あぁ…って事は丸1日以上寝てたって事か。やらかしたな…」
「そうですね、それに涎が出てますよ、お客様」
「そうね、涎垂らしてみっともないわ、お客様」
「え!?涎でてんの?早く言ってくれよ!」
2人の少女に指摘?され、急いで涎を拭く。どれだけ気持ちよく寝ていたかがそれだけで想像出来る。
ここで、紘汰は2人の少女を見る為にベッドから身体をゆっくりと起こす。その目線の先には、瓜二つの顔立ちをした双子の少女達がいた。
身長は150センチ真ん中ぐらい。大きな瞳に桃色の唇、彫りの浅い顔立ちは幼さと愛らしさを同居させていて可憐の一言だ。髪型もショートボブでお揃いにしており、違いといえば髪の分け目と髪の色が桃色か青色かという所ぐらいだ。
「メイドって本当にいるんだな…本物初めて見た…」
「ふっ、もっとラムを崇め奉りなさい、お客様」
「お、おう…」
なんと自己主張の激しい子なんだろう。それに、なんか意味わかんねぇし、ドヤーって後ろに見えるし。比べて青色の髪の子はうって変わって静かだし、なんか見たことあるような、無いような…。
「お客様、探し物は見つかりましたか?」
「ん?あ、あぁ。見つかったよ…あっ!君はあの時の子!」
「はい、あの時の子です」
この子もメイドなのか。この屋敷で働くのは大変そうだなぁ…あと、給料良さそう。
「あの時はほんとにごめん!」
「いえ、扉の前でボーっとしていたレムも悪かったのでお互い様です」
なんて、いい子なんだ!こんな子そうそういねぇぞ。俺の周りじゃ、ミッチぐらいだよな〜みんなに会いてーな…。
そんな事を思っていると、扉がガチャりと開いた。そこに居たのは、エミリアと昴だった。
「あれ、3人ともすごーく楽しそう。もう打ち解けたの?」
「あぁ、そんな所かな。ところで2人はどうしたんだ?」
「もちろん、コウタが心配で見に来たのよ」
「そうだぜ、あれはビックリしたからな」
「迷惑かけて、すまん」
そう、謝るとエミリアも昴も気にしないでって、気にすんなって言った。そこからはレムとラムは仕事に戻り、エミリアと昴、3人で庭へ移動し軽い雑談をしようとし、そしたら、パックも出てきて精霊、微精霊の話や紘汰が寝ていた間の出来事などなどの話をした。
すると、双子のメイドがやって来た。そして、俺と昴の前までやってくると厳かに1礼した。
「「───当主、ロズワール様がお戻りになられました。どうかお屋敷へ」」
一瞬のズレもない完璧な2つの声。これにも驚いたが、さっきまでとはまるで態度が違う事により驚いた。この2人から使用人としての貫禄が感じられた。
「そう。ロズワールが。……じゃ、迎えにいかないとね」
「はい。それからお客様方も、ご一緒されるようにと」
パックがエミリアの銀髪の中に入り込み、髪を撫で受け入れたエミリアは表情が少し固く見える。そんな、エミリアの横顔を見ながら昴は聞いた。
「なぁ、ロズワールって誰のこと?」
「この屋敷の持ち主……そっか、まだ2人には説明してなかったのよね」
自分の落ち度に気づいたかのように、エミリアは掌を口に当てる。
「えっと、そうね。ロズワールは……会えばわかるわ。うん」
「説明諦めるのはやっ!そんな特徴ないの!?」
「───ううん、逆」
エミリア、パック、ラム、レムの4人の声が同時に帰ってきた。驚きの四重奏に昴と俺はポカンと口を開けてしまう。そんな昴の口をエミリアが、紘汰の口をレムがそっと下から手で閉じさせる。その隣に立つラムが、屋敷を手で指し示す。
「どんな言葉を並べても、ロズワール様の人となりを表しきることはできません。ご本人に会ってご理解を、お客様方。ええ、お優しい方ですから大丈夫」
何度も念を押すのはとても不信感を煽るのだが、ラムとレムは顔を見合わせ頷き合うのみ。困惑する2人にエミリアがそっと手を伸ばした。
「───きっと、スバルとコウタとは気が合うと思うの。疲れちゃいそうだけど」
疲労申告を受けた2人の肩をぽんぽん叩いて、気の重そうな声でエミリアは呟いたのだった。