DEVIL SURVIVOR 2  You changed my world.   作:ルーチェ

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3rd Day 不穏の火曜日 -2-

荒子川公園に近づくと、レギオンの群れがミヤビの視界に入ってきた。

その下には救援を求めてきたレジスタンスメンバーの悪魔使いと、彼らが召喚した悪魔がいる。

しかし召喚したのはレベル16の霊鳥モー・ショボーやレベル20の鬼神ウルベリなどの弱い悪魔なので、レベル39のレギオンには敵わない。

おまけに数も圧倒的にレギオンが多い上に、地上には妖獣ガルムや堕天使フラロウスといったレベル20を超える悪魔も数多くいるので、焼け石に水といったところだ。

このままでは民間人の犠牲は増える一方で、ロナウドたち援軍が到着するまでに被害はさらに拡大してしまうだろう。

 

(少しでも犠牲は減らしたい! 誰も危険に晒したくない! これ以上誰も死なせたくない!そのための力が欲しい!)

 

ミヤビがそう強く願った次の瞬間、携帯がメールの着信を報せる。

 

「新しい悪魔が届いたよ☆」

 

ニカイアのナビゲーター・ティコがミヤビに告げた。

どういうことだろうかと携帯の画面を見ると、悪魔リストに霊鳥スザクが追加登録されていた。

スザクは炎による攻撃魔法を得意とする悪魔だ。

彼女にはどうしてスザクが?…などと考えている余裕はない。

 

「出でよ、スザク!」

 

ミヤビはスザクを召喚すると、空を舞うスザクに命令した。

 

「レギオンを焼き尽くせ!」

 

するとスザクは「承知した」とばかりにコウとひと声啼き、数十を超えるレギオンを一気に焼き払った。

さらに地上ではビャッコが活躍し悪魔の数を徐々に減らしていく。

ミヤビも〈万魔の乱舞〉を放ち、雑魚悪魔を蹴散らした。

その場にいた民間人はビャッコとスザクの出現及びレギオンの消滅を茫然と見ていた。

しかしこれで終わったわけではない。

まだレギオンは発生し続けていた。

スザクに乗って上空から見てみると、公園の各所から湧いて出ているのが確認できた。

どうやら暴走携帯がレギオンを吐き続けているらしい。

ミヤビは発生するレギオンの対処で手がいっぱいでいたが、そこにロナウドたち援軍が到着した。

 

「ロナウドさんたちは地上の悪魔と暴走携帯の処理をお願いします。わたしはスザクで上空のレギオンを始末しますから」

 

「おう、任せておけ!」

 

ロナウドに指示をすると、ミヤビはスザクと空中を飛び回ってレギオンを殲滅した。

地上も援軍の数が功を奏し、暴走携帯をすべて破壊したことで、悪魔の出現は止まったのだった。

 

 

民間人の人的被害は深刻なものであった。

悪魔に追われて逃げ遅れたのは老人や幼い子供とその母親が殆どで、彼らは見るも無残な姿で横たわっている。

生き残った者も目の前で起きた惨劇で心神喪失状態に陥り、生きる意思を失った者は虚ろな目をしていた。

これはこの公園だけで起きた現象ではない。

日本の各地で同様のことが起きていることは事実で、何も打つ手がなく失われた命の数は数万に及ぶことだろう。

しかしそれをいつまでも悲しんでいることはできない。

生き残った人間はこれから先も生き延び、戦い続けなければならないのだ。

ミヤビはレジスタンスメンバーに後始末と被災者の心のケアについて依頼すると名古屋支局へと戻って行った。

 

 

 

 

荒子川公園から戻ったミヤビが名古屋支局の司令室で休んでいると、彼女の側へロナウドとジョーが近寄って来た。

ロナウドは紙袋を持っている。

 

「君の分だ」

 

ロナウドはそう言ってミヤビに紙袋を手渡した。

 

「これは?」

 

「昼飯だ。腹を減らしたままでは、いざという時に困るだろ? 俺は無学だから基礎代謝量だとか身体活動レベルがどうとか良くわからないが、少なくとも悪魔と戦った君にはそれ相応の食料を渡さなければフェアではないからな。俺も鬼じゃないから昼飯抜きで悪魔と戦わせるようなことはしないさ」

 

ミヤビが中を覗くと、おにぎりがふたつ、筑前煮の缶詰、ペットボトルのお茶が入っている。

 

「それからミヤビちゃんには荒子川で活躍した分のご褒美。あ、これはジプスから奪ったんじゃなくて、前に俺がパチスロで手に入れたやつだから」

 

ジョーはそう言って、ポケットから箱入りのチョコレートを出して紙袋の中に入れた。

 

「あ、ありがとう…ございます」

 

思いがけないことが起きたものだから、ミヤビは戸惑ってしまう。

 

「ロナウドさんたちもちゃんと食事をするんですよね?」

 

ミヤビは訊いてみた。

 

「ああ、もちろんだとも。サマナーである俺たちが戦わなければ、もっと多くの人間が危険に晒されるからな。…たしかに君の言うとおりに戦ったり作業をする連中には十分とは言えないまでも多めに食料を分け与えるべきだと感じた。食料が足りないなら、子供も年寄りもみんなで同じくらいずつ我慢しよう、ということで良いのだろ?」

 

「はい、そうです! わかってもらえて嬉しいです」

 

ミヤビは自分の努力が無駄ではなかったと感じていた。

賛同してくれなくても、他人の意見に耳を貸し、理解をしてくれるということがわかってとても嬉しかった。

 

「だが、それならジプス…峰津院大和にも同じように我慢してもらわねば公平ではない」

 

「つまり物資を渡せ…ということですね?」

 

「そうだ」

 

やはりロナウドはミヤビを使ってヤマトと取引をするという計画は変更しないようだ。

 

「…仮に物資を手に入れたとして、それをあなたは被災者に全部配布してしまうつもりですか?」

 

ミヤビがロナウドに訊く。

 

「当然だ。必要としている被災者が大勢いるんだぞ。ジプス局員だけに物資を独占させるものか」

 

その答えにミヤビはため息をついた。

 

「物資の中にはジプスの活動に必要ではないと思われるものがいくつもあったということに気がついていないようですね?」

 

「何だと?」

 

「食料品や医薬品の他に居住性の高いテントやプレハブ住宅の資材が地下の一番広い倉庫に山と積んであったはずです」

 

「ああ、そういえばあったな。悪魔やセプテントリオンとの戦いに使うにしては妙だと思っていたが…。しかしそれが何だというのだ?」

 

「この戦いの後に訪れる世界…それがどのような世界かわかりませんが、普通の生活に戻るまでには想像もつかないほどの時間がかかるでしょう。そして生きていく上で必要なのは衣・食・住。衣はともかく、食と住を欠かすことはできません」

 

そこまで言うと、やっとロナウドは気がついたようだ。

ジプス局員だけで消費するよりはるかに多い物資。

それはこの試練を乗り越えて生き残った者がさらに生きていくために必要なものが保管されていたということなのだ。

 

「しかし今この時に食糧を求めている被災者が大勢いるんだ。後のことは後で考えれば良い」

 

「そうでしょうか? わたしはこう考えます。ここで物資を全部分けてしまえば100人生き延びられるとしましょう。ですがその100人はこの先どれだけ生き残ることができるかわかりません。後で考えれば良いなどと言っていて、何も手に入れることができなければ100人全員が死んでしまいます。ですがジプスに保管されている物資を温存したことで20人しか生き延びることができなかったとしても、その20人は必ず生き残ることができる。すべての人間を救うことができない以上、最大限に効果のある方法をとるのが当然ではありませんか」

 

「しかし死んでいく80人と生き残る20人をどう選別するんだ? 弱者には生き残る資格などないというのか?」

 

ロナウドの語調が強くなる。

 

「弱者に生き残る資格はないとは言いませんが、その弱者を生かすために誰かが犠牲になるのは明らかです。すでに億単位の人間が死んでしまったことでしょう。世界は滅びに向かって進んでいますが、それを防ぐのがジプスの使命。そして生き延びた者たちの命を繋ぎ、困難を乗り越えて行かなければならない人類を導くのもジプスの役割なんです。セプテントリオンとの戦いが終わってからが大事なのだとわかっているからこそ、あなたたち恨まれ、狙われるほどの大量の物資を保管しなければなりませんでした。なにしろ日本国土の中でもっとも安全な場所がジプスの本局と支局です。ここにはどんな災害でも耐えうる措置がしてありますから、セプテントリオンとの戦いの後に生き延びた人のための物資を蓄えておけるわけなんです。そもそもセプテントリオンとの戦いの間に被災者に配布する物資は自衛隊で確保していたんですが、ニカイアによる想定外の悪魔の出現によって予定が大幅に狂ってしまいました。ニカイアによって悪魔と戦う手段を得たのは良いのですが、おかげで物資の多くが悪魔の襲撃によって失われ、被災者に十分な物資が配給できなくなってしまったんです。はじめから民間人を飢えさせよとしていたのではないんですよ」

 

「……」

 

「生きる者と死ぬ者を選別することなど人間には誰にもできません。ポラリスによるこの試練に耐えて生き延びた者こそ、新たな世界で生きていく資格を得られるのだとわたしは考えます。これまで生物はすべて様々な状況において淘汰されて、その中で生き残った個体によって進化をしてきました。たとえばキリンは首の長い個体がより多くの餌を得られ、短い個体は餌が十分に得られずに消えていきました。だから現在のキリンはあのようにとても長い首を持つに至ったわけです。サバンナに棲む草食動物は肉食動物に襲われても走って逃げられるほどのスピードを持つ個体が生き残り、また肉食動物も足の早い草食動物を上回るスピードを持つ個体や、知恵や技術を使って狩りのできる個体は生き残り、できないものは消えていきました。人間も同じです。力を持つ者が生き残り、そうでないものは消えていく。それが自然の摂理というものです」

 

「君の言っていることは正論だ。しかし君には人情というものがないのか? それとも自分が生き残る側の人間だと確信しているからか?」

 

「わたしが生き残る側の人間だとはかぎりません。むしろセプテントリオンとの戦いにおいて最前線で戦っているのですから、避難所にいる被災者よりも死ぬ確率は高いはずです。ですが生きようとする意思は誰よりも強く、その意思の力が生きる力になるのだと信じています。何もしないで嘆いているだけの人間にはこの試練を乗り越えて生き残ることなど不可能。逆に自分の持つ力や知恵を活かして行動すれば生き残ることができる可能性は生まれます。死んでいく80人と生き残る20人のどちらになるかは本人次第ということです」

 

ミヤビの巧みな論述についていけないジョーはずっと黙ったままで、ロナウドも反論するのだが逆に彼女に丸め込まれそうになっていた。

そこでロナウドは主導権を取り返すべく言った。

 

「君の言いたいことはわかった。ジプスの隠匿物資にもそれなりの理由があることもだ。しかし俺たちは当初の予定どおり大阪の峰津院と交渉し、名古屋だけでなく東京と大阪の物資も被災者支援に回すよう要求するつもりだ」

 

「……」

 

「まあ、そんなわけだから、食事をしたら俺たちにつき合ってもらうよ」

 

ジョーに言われ、ミヤビはおとなしく従うことにした。

それが彼らとの約束なのだから。

 

 

 

 

ロナウドとヤマトがモニター越しに睨み合っていた。

ロナウドの隣にはミヤビの姿がある。

わざとらしく彼女に猿轡を噛ませ、身体もロープで縛って身動きできないようにしてある。

こんな馬鹿げた演出をしたのはジョーだ。

 

「貴様の要求は何だ?」

 

低く怖ろしい声でヤマトが訊く。

それと同じくらい凄みのある声でロナウドが返した。

 

「我々の望みはお前の野望をぶっ潰すこと。…だが、とりあえず被災者に配る食料品・医薬品及び生活必需品だ。貴様の大事な駒と引き換えにジプスの倉庫に眠っている物資の半分をいただこうか。全部と言いたいところだが、お前らの事情も考慮すればそんなものだろ」

 

居丈高な態度で言い放つロナウド。

ミヤビから保管物資に関する話を聞いていたため、半分は残してやる気になっていたのだ。

しかしヤマトは顔色ひとつ変えずに平然と言った。

 

「フッ…そんなことができると思うのか?」

 

「できるさ。紫塚雅…彼女はタダの局員ではない。ドゥベとメラクを倒したビャッコのサマナーだ。おまけに霊鳥スザクまで召喚したのだからな。そんな彼女を失うことはお前にとってどれだけ大きな損失になるのか…それと比べれば物資の半分など物の数ではないだろ?」

 

「笑止。交渉は決裂だ。名古屋支局は我々の手で取り戻す。以上だ」

 

ヤマトは一方的に通信を切るが、その直前に指をパチンと鳴らした。

それを合図にして司令室にジプス局員たちが十数名なだれ込んできた。

想像もしていなかったロナウドたちは慌て、あっという間に一網打尽となってしまう。

そしてミヤビは東京支局の男性局員によって救出された。

 

「これはいったい…!?」

 

状況が掴めないミヤビに男性局員が説明した。

 

「これは局長の作戦です。我々は局長の指示で朝のうちに名古屋支局に潜入し、隠密行動をしていたんです」

 

「隠密行動?」

 

「はい。暴徒たちをひとりずつ潰していき、一気に司令室へ攻め込む計画でしたが、少しシナリオが狂いました」

 

「シナリオが狂ったというのはどういう意味ですか?」

 

「予定外の悪魔の出現です。暴徒たちは戦力外の数名を残して全員が出動してしまいました。おかげで局内の鎮圧は滞りなく済み、あなたの無事が確認されたものですから、局長の合図で最終行動に出たというわけです」

 

「……」

 

ミヤビは自慢げに説明する局員の顔を直視できなかった。

 

(この人が悪いわけじゃない。彼はヤマト様の決めた作戦に従っただけだもの。でも…荒子川に出現したレギオンをレジスタンス任せにして、自分たちは作戦を遂行していたなんて酷い。全員とは言わないまでも一部の局員が出撃してくれたなら、民間人の被害を少しでも減らせたかもしれないのに…)

 

誰が悪いわけではない。各々が必死になって自分のなすべきことをしただけなのだから。

しかし結果が悲しいものとなってしまった事実は変えられない。

そんなことを考えていると、ダイチとイオが司令室に飛び込んで来た。

 

「ミヤビちゃん!」

 

「ミヤビさん!」

 

ふたりはミヤビの名を呼びながら駆けて来る。

 

「ど、どうしてこんな場所にいるんですか!?」

 

ミヤビはそう言ってからすぐに気がついた。

自分がロナウドたちに捕まったことを聞いて、助けるために来てくれたのだということを。

 

「助けに来たに決まってんだろ?」

 

そう言うダイチにイオもそうだと言わんばかりに首を縦に振る。

 

「ありがとうございます。でもこうして無事に解放されましたから安心してください」

 

ミヤビは笑顔で答えたが、ダイチたちは明らかに動揺したままだ。

 

「違うんだ! これを見てよ。今さっき届いたんだ」

 

ダイチが携帯をミヤビに見せた。

 

「……」

 

ミヤビは絶句した。

ダイチの携帯には彼女の死に顔動画が届いていたのだ。

再生するとミヤビがセプテントリオンらしき怪物にビームで貫かれて息絶えていた。

イオの携帯にも同じものが届いている。

背景からするとこの名古屋支局の司令室であることは間違いない。

つまり次のセプテントリオンはこの場所に現れ、そしてミヤビを殺すということだ。

 

ミヤビは逡巡していた。

 

(セプテントリオンがここに出現するとなれば、名古屋支局の機能は完全に失われる。それは名古屋という街が消え、人類がまた一歩滅びの道を進むことになるという意味を持つ。ここから避難すればわたしは死を回避できるけど、ロナウドさんたちにだけ戦わせてわたしだけ逃げるなんてことはできない)

 

ミヤビは自分が死ぬという現実に恐怖を覚えた。

しかしそれ以上に自分が何もなさないままに死ぬことが悔しくて我慢ならない。

 

「早くここから逃げよう。そうすれば助かるんだ」

 

そんなダイチの言葉にミヤビの心は動いたが、大きく首を横に振った。

 

「…うん、そうですね。でもわたしは逃げません。ここでセプテントリオンを迎え撃ちます」

 

「ダメよ! そんなことをしたらミヤビさんは死んじゃう」

 

イオはミヤビの身を案じてくれて必死になって止めようとする。

 

「大丈夫です。こうして死に顔動画を見せてもらったことで、覚悟ができました。死に顔動画は回避できます。たとえこの場所にいても死なずに済む方法はあるはずです」

 

ミヤビに迷っている時間はなかった。

死に顔動画は死の直前に送られてくるもの。

ならばまもなく第3のセプテントリオンがここに現れる。

まずは局内の非戦闘員の避難と悪魔使いによる迎撃の準備だ。

当然のことながら名古屋支局長が指揮をすべきなのだが、局内にセプテントリオンが出現するという情報を耳にしたとたん、名古屋支局長は恐怖のあまり腰を抜かして使い物にならなくなってしまった。

そこで急遽ミヤビが名古屋支局の局員及びレジスタンスメンバーを取りまとめることとなり、司令室の発令塔から支局内全部に届くよう指示を出した。

 

「まもなくセプテントリオンが司令室に現れます。非戦闘員は居住エリアの安全な場所へ退避してください。レベル30以上の悪魔を使役できるジプス及び民間人サマナーは司令室へ集合。それ以外のサマナーは司令室及び居住エリアへの悪魔の侵入を防いでください。みなさんの健闘を祈ります」

 

 

 

 

「ゲームはまだ始まったばかりだ…アルコル」

 

名古屋支局奪還作戦完了の報告を受けたヤマトは局長室でしばしの休憩をしていた。

彼は背後に現れたアルコルに背を向けたまま言い放つ。

 

「そうだね。でもここにはもう輝く者はいない」

 

アルコルはヤマトの背中に呼びかけるが、やはりヤマトは背を向けたままで答える。

 

「貴様の望むそんな概念は端から存在しない」

 

「どういうことだい?」

 

「世界を形作るのは強さだ。能力に長けた者が支配すればいい」

 

少し寂しそうに見えるアルコル。

 

「他の可能性はないのかい?」

 

「ない。それを証明してやろう」

 

ヤマトは振り返ると、挑戦的な顔でアルコルに宣言した。

 

「…ヤマトは変わらないな」

 

昔、幼いヤマトと出会った頃のことを思い出したのか、アルコルは微笑みがら言う。

 

「貴様も呆れるほどに」

 

ヤマトも同様に答えた。

 

「もうすぐ時間だね」

 

「そうだな。…ん?」

 

メールの着信音を耳にしたヤマトはポケットから携帯を取り出した。

 

「友達の死に顔動画が届きました」

 

執事風のナビゲーター・ティコがアナウンスする。

 

「友達…だと?」

 

有用であるということから〈ニカイア〉に登録しただけであり、自分に死に顔動画など届くはずがないと訝しむヤマト。

しかし念のために確認しようとメールフォルダを開くと、そこには『死に顔@紫塚雅』の文字が並んでいた。

 

「何…!?」

 

急いで再生すると、名古屋支局の司令室でミヤビがセプテントリオンのビームで貫かれてしまい、真っ赤な血の海の中に横たわり絶命している動画が流れた。

ダイチやイオに届いたものと同じ動画だ。

 

「アルコル、これはどういう…!?」

 

ヤマトは顔を上げるが、そこにはもう誰もいなかった。

 

 

 

 

アルコルはヤマトの前から姿を消すと、名古屋のテレビ塔の鉄骨に腰掛けて沈みゆく太陽を眺めていた。

 

(すべてが運命の歯車によって定められているというのなら、なぜ人は考える意思を持ってしまったのだろう。…哀しいね)

 

 

 






ヒロインの死に顔動画がヤマトの携帯に届きました。
ヤマトにとって彼女の存在はどういうものなのでしょうか?

前回に続き、ヒロインの正論口撃にお付き合いいただきありがとうございました。





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