DEVIL SURVIVOR 2  You changed my world.   作:ルーチェ

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メインとなる悪魔使いが13人揃いました。
それぞれ思うところがあり、一丸となってセプテントリオンに挑む…ということにはなりませんが、ここから佳境へと入っていきます。





4th Day 変容の水曜日 -1-

 

 

ジプスの全局員と民間人協力者、そしてロナウドたちのレジスタンスグループ全員が東京支局に集合して一緒に健康診断を受けていた。

昨夜のフェクダ戦から一時休戦となっているが、両陣営が同じ場所で整然と健康診断を受けている光景はなんともいえず不思議なものだ。

両者ともセプテントリオンを倒して人類を救うという目的は同じなのだから協力し合うのは良いことである。

しかしそれぞれが目指す世界が違う。

そのせいでロナウドは隙あらばヤマトを倒そうとしているし、ヤマトも目障りなロナウドを排除したいと考えているのは誰の目にもわかる。

そのふたりが同じ場所にいるのだから周囲の人間が緊張しているかと思うとそうではない。

意外と和やかな雰囲気の中で、健康診断は滞りなく進んでいた。

 

所用を済ませたミヤビが健康診断の会場に入ると、フミが笑顔で迎えてくれた。

 

「やー、お疲れさん」

 

「フミさん、身体の具合はいかがですか?」

 

「んー、別になんともないかな。悪魔に操られていたってことだから、脳波とか精密検査しなきゃいけないかもしれないけど」

 

「ともかくご無事でなによりです。でも無理はなさらないでくださいね」

 

フェスティバルゲートでの記憶はまったくないようで、フミは相変わらずマイペースを保っている。

そんな彼女にミヤビが呆れていると、そこにヒナコが現れた。

大阪での負傷で包帯を巻かれている姿が痛々しいが、案外元気そうだ。

 

「ミヤビちゃん、おはようさん」

 

「おはようございます、ヒナコさん。お怪我は大丈夫ですか?」

 

ミヤビが訊くと、ヒナコは笑いながら答える。

 

「こんなんかすり傷や。オトメさんも無理せぇへんならみんなと一緒に戦ってもええ言うとったわ」

 

けっしてかすり傷とはいえない怪我をしているヒナコ。

その原因となったミヤビに気を遣わせたくないとやせ我慢しているのは見え見えだ。

しかし医師であるオトメから戦線復帰の許可が出ているのなら大丈夫だと、ミヤビは安堵していた。

 

そんな会話をしながらミヤビは更衣室で検査着に着替えると、他の人たち同様に検査会場に入った。

そこにも見知った顔がいて、みんな元気そうだとミヤビは安心する。

すると検査を終えたマコトがミヤビたちの方へやって来た。

 

「おはようございます、マコトさん」

 

ミヤビが声をかけると、マコトは彼女たちに気づいて笑顔で応えてくれた。

 

「おはよう。君はこれからか?」

 

「はい」

 

「そうか。ならば終わったら局長室へ行ってくれ。局長が話したいことがあると言っていた」

 

「わかりました」

 

 

 

 

「はい胸見せて。…はい、異常なし。次は口開けてね。…こっちも異常なし、と。見事なくらいの健康体ね」

 

血液採取、心電図、レントゲン、身長・体重測定に視力と聴力検査まで行い、最後にオトメの問診というフルコースでの健康診断である。

 

「健康だけが取り柄ですから」

 

ミヤビが笑って答えると、オトメもつられて笑った。

 

「そうね、人間健康が一番よ。さて、これでおしまい。女性陣はミヤビちゃんで最後かしら?」

 

「はい、そのようです。…どうもありがとうございました」

 

ミヤビがお礼を言って更衣室へ戻ると、微妙な空気が漂っていた。

アイリがフミを見て固まっている。正確に言うと彼女の胸を見て固まっているのだ。

 

「あ、なるほど…」

 

ミヤビは納得した。

フミは検査着を着ておらず、下半身はショーツのみで、上半身はジプスのコートを羽織っているだけ。

胸の大事な部分は隠れているが、谷間は丸見えなのだ。平均以上の大きさがある胸は形も見事である。

アイリは自分と彼女を比べた末にショックで固まってしまったというわけだ。

 

「ミヤビちゃん…着痩せするタイプなん?」

 

冷静に状況把握をしていたミヤビに、ヒナコがそっと近寄って来て後ろから彼女の胸を掴んだ。

 

「うわっ…!」

 

いきなり身体に触れられたものだから、ミヤビは驚いて飛び跳ねてしまった。

 

「ちゃんと引き締まってるやん。しかもスタイルのバランスええし」

 

身体を無遠慮に触られて、ミヤビは涙目で身体を捩らせた。

完全無欠に見える彼女でも「くすぐりに弱い」という弱点があったのだ。

 

「く、くすぐったい…。やめて、ください!」

 

「え、くすぐり弱いん?」

 

ミヤビとヒナコの様子を見ていたアイリがふざけて参戦する。

羽交い締めされているような姿のミヤビの脇腹を思い切りくすぐった。

 

「どうだ!」

 

「ちょっ、アイリさん、やめて、あははは!」

 

「おー、姦しいねぇ」

 

女子校のノリでふざけ合っているヒナコとアイリ。

フミはそれをニヤニヤしながら傍観している。

一方、ミヤビは息も絶え絶えな状態でやられるままになっているが、誰も助けようとする気配はない。

そこにイオとマコトがやって来た。その様子を見てふたりは驚くというよりは半ば呆れた状態だ。

 

「ふたりとも、やめた方が…」

 

「やめないか、ふたりとも」

 

イオとマコトは止めようとするが効果はない。

ますます女子校の教室のようになってきた。

平和な日常の光景に見えるが、ミヤビ本人にとってはセプテントリオンとの戦いと同じくらい必死である。

 

「こらこら、早く服着ないと風邪ひいちゃうわよ」

 

そこへオトメがやって来て苦笑する。

 

しかしそんな中、ドアの向こう側の小さな声がミヤビの耳に届いた。

 

「待って! 今、外で男の人の声が!」

 

ミヤビがそう叫んだことで更衣室の空気が一瞬で冷たくなり、声を潜めて辺りをうかがう。

しかし人の気配は感じられない。

 

「声なんてした? 気のせいじゃない?」

 

アイリが小さな声で訊く。

そんな彼女にミヤビが首を横に振った。

 

「いいえ、います。それもひとりだけじゃありません」

 

外にいた男性の声がミヤビにだけ聞こえたのは、どんな僅かな気配でも気がつくように訓練されていた彼女だからこそである。

女性陣が心配する中、ミヤビはとっさに履いていたスリッパをドアに向かって投げつけた。

 

「そこ!」

 

スリッパはドアにぶつかって床に落ちた。

 

「どうしたん?」

 

「ドアが少し開いています」

 

「もしかして覗き!?」

 

そうアイリが言った瞬間、ドアの向こう側の廊下で男性の声と、続いてドタバタという足音がした。

 

「何者だ!」

 

マコトが勢い良く外へ飛び出して行った。

ミヤビも後を追おうとしたが、検査着のままであることに気がつく。

急いで着替えようとした時、突如地震が発生。

そこに館内の警報が鳴り響き、その騒ぎによってノゾキ魔を捕まえることはできなかったのだった。

 

 

 

 

地震発生の数分前、女子更衣室前の廊下ではジョーとダイチがドアの隙間から中の様子をこっそりと伺っていた。

 

「おおっ…すげぇ…」

 

異性に興味津々のダイチはフミの胸に釘づけになっていた。

 

「ダイチ君は心身ともに健康な青少年だねぇ。大きな胸は母性の証。魅かれるのも無理はない」

 

ジョーもひとりごとを呟きながら、ドアの隙間から中を覗き込む。

 

「ま、大人の俺としてはこの両手にしっくりとくるくらいの大きさがベストだな。大きすぎず、小さすぎず、抱いた時にこう…」

 

「ミヤビちゃんだ」

 

ミヤビがフミたちに近寄って来たところをダイチが目ざとく見つける。

さらに彼女がヒナコに悪戯され、アイリまでもが加わって苛められている姿に興奮し、ダイチは生唾を飲み込んだ。

普段は黒いコートに身を包んでいる彼女が薄い検査着だけになっている。

たしかに彼女は着痩せするタイプだ。

それにフミやヒナコほどではないが、バランスのとれた肢体は少女のものから大人の女性へと変わりつつある。

恋人がいるジョーですらミヤビの姿に目が眩んだ。

そのせいで周囲を警戒していたのも忘れて彼女に見とれてしまった。

ミヤビの検査着の裾が捲れ上げられ、彼女の白いショーツが男性陣の視界に入った瞬間、彼らの背後から声をかける者がいた。

 

「おい、お前たち何やってんだ?」

 

声の主はロナウドで、偶然通りかかったところ不審な行動をしているジョーたちを見つけて声をかけたのだ。

その声が聞こえたのか、女性陣の様子が一瞬で凍りついた。

続いてミヤビの投げたスリッパが飛んで来た。幸いドアにぶつかって落ちただけ。

しかし長居してはバレてしまう。

 

「やべっ…、逃げるぞ」

 

ジョーはダイチの首根っこを掴むと全力でダッシュする。

 

「な、何があったんだ?」

 

事情が理解できないロナウドはその場でおろおろするが、ジョーに急かされる。

 

「逃げろ、クリッキー! 死にたくなきゃ、全力で走れ!」

 

「お、おう」

 

ジョーたちのあとを追って、わけがわからないうちにロナウドも全力疾走を開始した。

そして彼らにとって幸運だったのはセプテントリオンの襲撃があったこと。

この騒ぎのせいで覗きの件はバレることがなかったのだから。

 

 

 

 

第4のセプテントリオン・メグレズは突如東京湾の海中に出現した。

メグレズは地上に現れる気配はないようで、これではジプスも手の出しようがない。

しかし芽のようなものを射出し、地上に被害を与えている。

とりあえずミヤビたちは〈芽〉を処理するだけしかできず、現状待機ということになった。

またロナウドとジョーは名古屋へ戻ってしまった。

被災者支援のためという名目だが、実際は長居して覗きの件がバレるのを恐れたジョーがロナウドを誘って逃げただけである。

ヤマトは彼らを引き留めもしなかった。

名古屋支局の維持管理を任せているという理由もあるが、ヤマトにとってロナウドたちがもはや脅威ではなくなったと判断したからであった。

 

 

 

 

ひとまずはメグレズの出方待ちとなったので、ミヤビは自分の戦力増強のために〈デビオク〉を試すことにした。

悪魔を使役することで得られるポイント、通称〈マッカ〉で自らの能力に応じた悪魔を落札できるオークションに参加できるというものだ。

彼女は本人自身のレベルがすでに80を超えており、マッカも数十万に達していた。

ここ数日の実戦によって急激にレベルアップしていったのだ。

まずレベル54の幻魔カンギテンとレベル56堕天使デカラビア、レベル64の邪鬼グレンデルとレベル66の龍王ヤマタノオロチを落札し、さらに〈悪魔合体〉という機能を利用してそれぞれを合体させる。

〈悪魔合体〉とは〈悪魔召喚アプリ〉の機能のひとつで、文字どおり悪魔同士を合体させてさらに強力な悪魔を作り上げるものだ。

そしてレベル61魔王ロキとレベル74の天使メタトロンができあがった。

これでとりあえずの手駒は揃ったと考えたミヤビは、続いて自分の霊力をさらに高める訓練を始めた。

普通の悪魔使いが同時に使役する悪魔は1体か2体だ。

それ以上になると悪魔をコントロールできなくなるためである。

特に高位の悪魔だと彼らの意思が強くて従ってくれない。

しかしミヤビは同時に3体まで使役できるように訓練を受け、大阪のフェスティバルゲートの時のようにビャッコ、セイリュウ、ゲンブを同時に召喚した。

もっともセイリュウとゲンブには「敵対する悪魔を倒せ」という単純な命令しかできなくて、ゴズキとメズキを相手に少々苦戦したのが現状だ。

それをさらに1体増やし、尚且つそれぞれに別の命令を与えることができるまでに霊力レベルを上げようというのだ。

ミヤビは東京支局の一角にある訓練場へ向かうと魔法陣の中心で瞑想に入った。

 

 

 

 

メグレズ討伐作戦会議で東京支局の司令室には見慣れた面子が集まった。

ミヤビも瞑想し始めて僅か15分で呼び出され、ヤマトの隣の席でメインモニターを見つめている。

メグレズは東京湾の海中にいるはずだったのだが、急に動きを見せ始めたのだ。

 

「状況が変わった。計測によると、メグレズは徐々に移動している。まもなく海面へと浮上するだろう」

 

事実を淡々と述べるヤマト。

 

「さらにメグレズは3体いることがわかった。同時に動き出したようだな。座標は東京・名古屋・大阪。浮上の後、タワーを目指して侵攻するだろう」

 

ダイチやアイリたちの「またタワー?」「どうしてタワーばかりを?」というざわめきをヤマトは視線で一蹴する。

余計なことに時間を割くような余裕はないという意味である。

 

「厄介なことにこのメグレズは互いを補完する性質を持っている。…つまり同時に倒さないと奴らは再生するということだ」

 

ここでヤマトは声を張り上げた。

 

「良いか、我々は部隊を3つに分けて3体のメグレズを同時攻撃する!」

 

そして編成が発表された。

大阪はミヤビ、ダイチ、イオ、ケイタ、ヒナコ。

名古屋はロナウドとジョーの先発隊に加えてオトメ、フミ、アイリ、ジュンゴ。

そして東京は…

 

「私ひとりで十分だ」

 

ということで、ヤマトがひとりで迎え撃つということになった。

そしてマコトが東京支局の司令室で3部隊の連携を見守る役目を負う。

 

「3体同時に倒さなければ意味がない。各都市との連絡を怠らずに必ず撃破しろ」

 

ヤマトの指示で悪魔使いたちは大阪と名古屋へ散って行った。

 

 

 






ゲーム版・アニメ版ともに登場する「健康診断」ネタは外せません。
シリアスな話ばかりなので、少し息抜きになるようなエピソードは必要ですから。

ヒロインが戦力増強のためにデビオクに手を出します。
天使メタトロンと魔王ロキとなれば、最終的にどうなるかはご存知の方は多いはず。
最終決戦では「アレ」を登場させます。


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