DEVIL SURVIVOR 2  You changed my world.   作:ルーチェ

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4th Day 変容の水曜日 -2-

ミヤビたちは大阪港に到着するが、メグレズの姿はまだない。

 

「まだ来てへんのか」

 

ケイタは早く戦いたいのか不服そうだ。

イライラしている様子で、両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、足元にあった石を海の中に蹴り込んだ。

 

「みんなで力を合わせてがんばりましょうね!」

 

ミヤビがギスギスした空気を変えようとして明るく振る舞うと、ヒナコもそれに合わせてくれた。

 

「そやな。しっかりやらんとあの局長さんに雷落とされそうやわ」

 

しかしケイタは周囲の空気など気にせず、トゲトゲしい態度は変わらない。

 

「志島、俺の邪魔すんな。自分、弱い悪魔しか呼び出せんのやからな」

 

ケイタが手持ち無沙汰でうろうろしていたダイチに忠告する。

ケイタは一匹狼のようなタイプで仲間に打ち解ける気配はない。

ヤマトと同じように強い者が偉いという考えを持っており、ビャッコを使役するミヤビには一目置いているが、レベルの低い悪魔しか召喚できないダイチは眼中にないといった態度だ。

たしかにベルセルクを使役するケイタとアガシオンやヘケトのダイチではドーベルマンとチワワくらいの差がある。

今度はうなだれているダイチにミヤビが声をかけた。

 

「ダイチさんは後方にいてください」

 

「俺だって戦いたいよ。俺だっていちおうサマナーなんだからさ」

 

戦力外通告されたのだと落ち込むダイチ。

しかし自分が弱い悪魔しか使役できないとわかっており、それ以上強くは言えないでいる。

ミヤビはしょげている彼に言った。

 

「ダイチさんにはダイチさんらしい戦い方というものがあるとわたしは思います」

 

「どういうこと?」

 

「あなたの仲間を想う気持ちはとても強い。それはあなたとイオさんが名古屋までわたしを助けに来てくれたことで証明済です。ですからまた何かあっても必ず助けてもらえるとわたしは信じています。今は弱い悪魔しか召喚できないかもしれませんが、いつか強い悪魔を使役できるようになるはずです。わたしの勘ってけっこう当たるんですよ」

 

そう言ってミヤビはウィンクした。

これは単に彼を励ますだけのものではない。

彼女は悪魔のレベルというものが、個人の戦う意思や信念の強さに比例しているという仮説を持っていた。

もちろん生まれつきの身体能力や訓練の有り無しにも関係するだろうが、最終的には生きる意思の強さだと思っているのだ。

その根拠は彼女が名古屋でスザクを使役できるようになったこと。力が欲しいと心から願った時にスザクが届いた。

そうなればこの仮説も根拠のないものとは言えず、ダイチの「生きたい」「仲間を守りたい」という気持ちが今以上に強くなれば、きっと強い悪魔を召喚できるようになるだろうと励ましたわけだ。

 

「そうかな? …たぶんそうだ。いや、絶対にそうだ! ミヤビちゃんの言うことなら、俺、信じられる!」

 

「そう! その調子ですよ!…それにメグレズだけじゃなくて悪魔も出現するはず。その時はわたしたちの背後をよろしくお願いします」

 

「ああ、任せろ!」

 

元気を取り戻したダイチの姿をイオとヒナコが離れた場所から微笑みながら見守っていた。

 

 

 

 

前触れもなく海から衝撃音がしてメグレズが浮上した。

 

「うわっ、デカッ!」

 

ヒナコが思わず声を上げる。

巨大な球体のところどころに棘のような芽が生えているような形で、その〈芽〉を射出して攻撃をしてくる。

さらに大量の雑魚悪魔の群れが湧いて出て来た。

 

「みなさん、行きますよ!」

 

「よっしゃ、いくで!」

 

「おう」

 

「はい!」

 

「雑魚は俺に任せろ!」

 

ミヤビの合図で、全員が手持ちの悪魔を召喚した。

まずはメグレズまで辿り着かなければならず、二手に分かれることになった。

 

「雑魚悪魔はわたしとダイチさんで片付けますから、みなさんはメグレズを!」

 

ミヤビはスザクを従えて雑魚悪魔を焼き払っていく。

ダイチもヘケトで奮闘中だ。

その隙にヒナコたちはメグレズまで辿り着き、攻撃を開始した。

 

激しい攻撃を加えると、メグレズが震え出して移動を始める。

 

「ミヤビちゃん、そっち行ったで!」

 

「はい、任せてください!」

 

ヒナコの声を聞いて、ミヤビは目標を雑魚悪魔からメグレズに変更する。

雑魚悪魔はほぼ片付いていたので、後はダイチに任せることにした。

一方、メグレズへの攻撃に一段落ついたヒナコは状況確認のために携帯で話をしている。

話の内容だと東京のマコトに確認をしているらしい。

続いてミヤビの携帯が鳴った。

 

「こちら、ミヤビです!」

 

「やっほ~」

 

ミヤビへの電話はフミからだった。

戦闘中だというのにマイペースを崩さない彼女に、ミヤビは苦笑する。

 

「こっちはなんとかやってるけど、そっちはどう?」

 

「メグレズが移動を始めて、今からわたしが攻撃するところです」

 

「そっか、気をつけて。あいつの衝撃属性の攻撃は強いからさ」

 

「はい、それではまた」

 

フミと会話をしながら、ミヤビはメグレズの眼前までやってきた。

 

「行くわよ!」

 

ミヤビはビャッコを召喚した。

ビャッコ、スザク、そしてミヤビの3方向からの攻撃でメグレズが震え出す。

その時嵐が巻き起こった。

 

「きゃっ!」

 

強風で吹き飛ばされたミヤビを、スザクが咄嗟に掴んで上空へと舞い上がったので、彼女はダメージを受けることがなかった。

 

「大丈夫か、主?」

 

「ありがとう、スザク」

 

ミヤビが礼を言うと、スザクはゆっくりと地面に着地して彼女を下ろした。

そして再びメグレズが動き出し、同時に〈芽〉を射出した。

 

「芽は俺がやる。本体は任せた!」

 

ケイタはそう言って芽まで走って行く。

ミヤビは再びメグレズを追うが、先にヒナコとイオが攻撃していた。

リリムとキクリヒメが〈芽〉を避けながら空中を飛ぶ姿はまるで天女が舞いを舞っているかのようだ。

そこにスザクが加わり、〈芽〉を一気に焼き払った。

 

「…止まった?」

 

そしてようやくメグレズの動きが止まったところでミヤビの携帯が鳴る。今度はアイリからだ。

 

「ミヤビ、大阪はどう!?」

 

「今メグレズの動きが止まりました」

 

「名古屋も同じ。東京はどうかしら?」

 

ここでヤマトからの一斉通信が割り込んできた。

 

「準備は整ったようだな。各員ご苦労。…奴の息の根を止めろ!」

 

一気に畳み掛けた総攻撃に、メグレズは霧散した。

静まり返る現場に、ヤマトの声が告げる。

 

「作戦終了…」

 

戦いが終わったことを知り、悪魔使いたちは一斉に歓声を上げた。

 

「みなさん、お疲れさまです。さあ、凱旋しましょう」

 

ミヤビがそう言うと、大阪組は皆で勝利を喜びながら全員で大阪本局へ帰還したのだった。

 

 

 

 

ミヤビたちが大阪に到着したほぼ同時刻、名古屋ではフミたちがロナウドのグループに合流していた。

アイリとジュンゴはロナウドたちをあまり快く思ってはいない。

フェクダ戦では共闘したものの、両者の間には互いに相容れないものがあるのだ。

とはいえ目下の目的はメグレズを倒すことであり、それは誰もが心得ている。

 

「ふん、別にあんたの部下になったわけじゃないけど、協力はしてあげてもいいわよ!」

 

アイリのツンデレっぽいセリフにオトメとフミは苦笑しながら、そしてジュンゴは相変わらず無表情のままで見つめている。

ロナウドとジョーは大人らしく「金持ち喧嘩せず」という態度だ。

彼女だってこんなことさえなければ普通の女子高生として友人たちと楽しい学校生活を送っていたのだと思うと、ロナウドたちは彼女が哀れに思えてきてしまうのだ。

 

「今は互いの確執など忘れ、目の前の敵にだけ集中しろ。俺たちは自分の身を守るだけで精一杯だ。自分の身は自分で守れ。いいな?」

 

「言われなくてもわかってるわよ!…あたしは余裕があったら、あんたたちが危ない時に助けてあげてもいいけど」

 

「フッ…それはありがたいな」

 

ロナウドがにやりと笑うと、アイリも明るく微笑んだ。

 

それから間もなくメグレズが現れ、ロナウドのハゲネとアイリのケットシーとジュンゴのネコショウグンを前衛、ジョーのオーカスとオトメのサラスヴァティを後衛に布陣。

フミは全体の把握並びに大阪・東京との連絡役を買って出た。

大阪湾に出現した個体と同じくミサイル状の〈芽〉を乱射し、同時に雑魚悪魔が市内各所で湧いて街を攻撃していく。

市内の雑魚悪魔はレジスタンスの悪魔使いが対応しているが、いくら雑魚とはいえ数が多すぎて対処しきれないでいた。

すると一部の悪魔が「芸術劇場」というコンサートホールを攻撃し始めた。

その光景を見たアイリの様子が一変する。

そこは彼女にとって思い入れの深い場所であった。

ピアニストを目指す彼女が何度もコンクールで演奏した場所であり、また自分の家族や友人の住んでいた街でもある。

それを破壊する悪魔に彼女は叫んだ。

 

「神だろうが悪魔だろうが、そんなことはさせない! みんなを殺すなんて、あたしは絶対許さないから!」

 

次の瞬間、彼女の前に魔方陣が出現し、新しい悪魔が現れた。

その名は妖精ローレライ、彼女の怒りのパワーが新しい悪魔を召喚したのだ。

 

「行け、ローレライ!」

 

ローレライは彼女の命令で飛んで行くと、あっという間に雑魚悪魔を片付けてしまった。

そして戻って来ると、今度はメグレズに攻撃を加える。

 

「ブフダイン!」

 

地上から無数のつららが出現し、メグレズを串刺しにする。

すると外皮が破壊され、コアが剥き出しになった。

致命傷を与えられたメグレズは沈黙した。

 

 

 

 

そして東京。

東京タワーの前ではヤマトがひとりでメグレズの出現を待っていた。

司令室にいるマコトから大阪と名古屋の状況が逐一届けられている。

現在のところ大阪も名古屋も善戦していた。

 

「フッ…ここまでは予定通りだな」

 

ひとりほくそ笑むヤマトの携帯にマコトの連絡が入る。

 

「まもなくメグレズが上陸、侵入経路は変わらず。このままのスピードですと、180秒後にミサイルの射程距離に入ります」

 

「了解した。あとはこちらに任せろ。一気に片付けてやる」

 

ヤマトは手袋をきちんと嵌め直すと、メグレズが現れる方角をきっと睨みつける。

そしてケルベロスを召喚した。

 

「準備は整ったようだな。各員ご苦労。…奴の息の根を止めろ!」

 

ヤマトの号令で3体のメグレズは同時にコアを攻撃されて霧散した。

 

「東京、大阪、名古屋のメグレズの反応、消失していきます。作戦成功です!」

 

司令室ではマコトの報告と同時に局員たちの歓声が上がる。

 

「作戦終了…」

 

ヤマトが作戦終了を宣言し、メグレズ戦も人間側の勝利で終わった。

とはいえまだセプテントリオンの侵略は続くのだ、手放しで喜んではいられない。

 

(ここまではシナリオ通りに進んでいるが、本当の戦いは明日からだ)

 

脇で控えているケルベロスの頭を撫でながらヤマトは西の空を仰いだ。

 

(やはり勝利への鍵はビャッコとスザク、そしてミヤビのサマナーとしての能力だ。明日からの戦略は彼女をいかに上手く使うかにかかっているといって良い。これからは常に私の目の届く場所に置き、不測の事態にも備えなければならぬな。もう二度と勝手なことはさせぬぞ…)

 

 

 

 

ロナウドとジョーは名古屋に残り、他の悪魔使いたちはすべて東京支局に戻った。

明日のセプテントリオン戦に備えるためだ。

そしてミヤビはヤマトに呼び出され、大阪で手に入れたお土産を持って彼の私室へと向かっている。

その途中、廊下でフミに出会った。

 

「お疲れさまです」

 

「ミヤビもお疲れさん。で、どこへ行くの?」

 

「ヤマト様のお部屋です。用事があるらしく、呼び出されました。たぶんお茶を淹れてほしいのだと思います」

 

「そうか…。そういえばあんたってジプスに入る前は峰津院家の使用人だったっけ」

 

「はい。入局後もお屋敷ではヤマト様のお世話をさせていただいていました」

 

「いろいろ大変だね。セプテントリオンと連戦の上に、さらに名古屋支局の面倒まで見なきゃならないって。身体がいくつあっても足りないんじゃない?」

 

「慣れていますから平気です」

 

明るく振舞うミヤビにフミは彼女が無理をしていると感じていた。

 

「ところでさ…局長の作戦についてどう思う?」

 

「はい?」

 

「素人同然の民間人まで使ってやっと生き残っているっていう現実。正直なところあんたはどう思ってる?」

 

ミヤビがヤマトを否定するようなことを言うはずがないと知りながら、フミは続ける。

 

「大阪で局長の命令に逆らったのも、局員や民間人サマナーの犠牲者を出したくなかったからじゃない? このままだといつか犠牲者が出るんじゃないかなぁ…」

 

フミの問いにミヤビは言葉を慎重に選びながら答えた。

 

「ヤマト様のやり方はたくさんの犠牲を出しているように思えますが、結果的には最小限の犠牲で済んでいます。1万の犠牲を出さずに済むなら、10や20の犠牲は仕方がない。わたしもこれまではそう自分に言い聞かせてきました。でも10や20のであっても犠牲を出さずに済む方法もあるはずで、その時の状況を冷静に判断し、選択肢の中から最善だと思える答えを選んでわたしは行動しているつもりです。メラク戦ではわたしが最前線に出ることをヤマト様は無策で投入できないとおっしゃいました。ですがあの時はそんなことを言っている余裕なんてありませんでしたから、わたしは自分の力を信じ、あの方の命令に背きました。逆らうと言うより、より良い選択肢があって、それを選んだだけです」

 

「まあ、結果的にメラクは倒せたし、あんたも無事だったんだから良かったけど、いつでも同じように勝てるって確証はないんだからね。自分の力を信じるのもいいけど、もっと自重しないとダメだよ」

 

「はい。重々承知しております。あの…お話はこれだけでしょうか? そろそろヤマト様の部屋へ行かないとご機嫌を損ねることになってしまいますので」

 

ミヤビは話を切り上げようとすると、フミが何かを思い出したようにミヤビの頭をポンポンと軽く叩いた。

 

「え?」

 

「助けてくれてありがと。…大阪でのこと、お礼言うの忘れてたから」

 

フミはそう言ってさっさと立ち去って行ったのだった。

 

 

 






メグレズ戦も無事終了。

戦いの合間にはいろいろな人間ドラマが繰り広げられます。
それは次回へ。


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