DEVIL SURVIVOR 2  You changed my world.   作:ルーチェ

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Intermission 改心の水曜日 -2-

再び少女らしい雑談を始めたミヤビたちであったが、新たな問題が発生した。

それはアイリのひと言が原因だった。

 

「最初にメグレズが現れた後に、ロナウドと秋江さんってすぐに名古屋へ帰ったでしょ? その時、ターミナルへ行くふたりの会話を聞いちゃったんだ。ロナウドが秋江さんに『二度とあんなことをするなよ』ってすごく怒ってたんだけど、『あんなこと』って何だと思う?」

 

「怒るような…あんなこと…? 何かしら?」

 

イオは真剣に考えるのだが、ヒナコは特に気にしていないようだ。

 

「そんなこと、どうでもええんとちゃう? どうせジョーがロクでもないこと…」

 

そう言って急に黙り込んだ。

 

「どうかしましたか?」

 

ミヤビが訊くと、ヒナコは険しい顔をして言った。

 

「そう言えば、今朝の健康診断の時や。みんなで更衣室にいた時、不審な気配感じてミヤビちゃんがスリッパ投げたやん? そん時、男の声が聞こえた気がしたんやけど、それがロナウドやったような…。みんな、どう思う?」

 

3人は今朝の記憶を遡る。

イオとアイリは良く覚えていないと言うが、ミヤビははっきりと答えた。

 

「はい。わたしもそこにロナウドさんがいたと思います。あの時の声は彼のものに間違いないです」

 

「じゃ、ノゾキ魔はロナウドなの!?」

 

アイリが声を上げるが、ミヤビは首を横に振った。

 

「いいえ。彼は違います。もし犯人の一味なら、声を出して女性陣に見つかるようなヘマはしないでしょう」

 

「せやな。覗きしてたんならバレるような声は出さん」

 

ヒナコが同意した。

 

「それにしてもあの状態でよく声が聞こえましたね? わたしは全然気がつきませでした」

 

イオが尊敬するような目で見るので、ミヤビは答えた。

 

「わたしはどんな場合においても冷静に周囲の状況判断ができるようにと訓練されてきましたから。まあ、あの時はこちらも必死で、冷静ではいられませんでしたけど。それでも聞こえた声の主ははっきりとわかりました。聞いたことのある声なら、だいたいは区別できます」

 

「へえ…」

 

感心する3人。

さらにミヤビは続けた。

 

「話を元に戻しますが、ロナウドさんはその性格上、覗きをすることは考えにくいです。仮に誰かに誘われたとしても、彼の正義がそれを許さないはず。彼は偶然居合わせてしまい、真犯人に注意をしたと考えるのが妥当です」

 

「それじゃ犯人は誰なんでしょうか?」

 

イオが身を乗り出して訊いた。

そこでミヤビが答える。

 

「スリッパを投げた後に聞こえた声の主が犯人だと思われるのですが、こちらはとても小さな声だったので、個人は特定できません。ですがあの場所には監視カメラが設置してありますから、保安部に頼めばVTRを見せてくれるでしょう。それで犯人がわかります」

 

「ホント?」

 

「誰やの?」

 

アイリとヒナコは乗り気だ。

 

「その様子ですと、犯人探しをして罰を与えたい…という感じですが、本当に真犯人を見つけたいですか?」

 

「ノゾキ魔に天誅下すのは当然や。バン子もイオちゃんもそう思うやろ?」

 

アイリとイオは頷いた。

 

「もし犯人を暴いて、そのせいで仲違いするようなことになってでもかまいませんか?」

 

「「「……」」」

 

ミヤビの言葉にヒナコたち3人は少し悩み始めた。

覗かれたことは腹立たしいが、そのせいで仲間同士の団結が緩むのであれば自分が我慢した方が良いのかもしれない…と考えていたのだ。

そんな彼女たちにミヤビが言った。

 

「わたしはここで白黒はっきりとさせてしまった方が良いと思います。仲間の誰かがノゾキ魔であるかもしれないなどと疑いながら戦うより、犯人にはそれなりの罰を与え、そこでスッキリさせておいた方が後々良いはずです」

 

彼女の言葉にヒナコたちは決心した。

 

「そやね。泣き寝入りするのは嫌やし、けったくそ悪い。やりまひょ」

 

「これで恨みっこなしにしようってことね?」

 

「それならわたしも賛成です」

 

と、全員一致で犯人探しをすることとなった。

 

 

「監視カメラの映像を見れば犯人はすぐにわかってしまいます。それでは面白くないですし、事を荒立てたくないので推理ゲームをしましょう。容疑者を絞り込んでいき、最後に残った人間が犯人となります。消去法というやつですね」

 

ミヤビはそう言って机の引き出しの中からA4サイズ数枚の書類を取り出した。

それには今日一日の東京支局内の各部署からの報告が時系列に沿って記載されている。

 

「あの健康診断は局員のシフトの都合もありましたので、男性の時間を先に、その後に女性の時間を設けました。ですからあの時点では男性局員は全て健康診断を終えて自分の仕事に就いていました。これは確認済みです。つまり局員は除外して、民間人協力者の男性が怪しいということになります」

 

「でも局員の誰かが仕事をサボってこっそり覗きに来たってことはないの?」

 

アイリが訊く。

 

「可能性がないとは言い切れませんが、限りなくゼロですね。局員の数が足りなくて困っている状況ですから、複数の人間が席を外すことは考えられませんし、他の局員に気づかれるはずです。少なくとも大阪と名古屋にいる局員ではありません。この時間に該当するターミナルの使用履歴がありませんから」

 

「複数というのはどうしてわかるんですか?」

 

イオの質問にミヤビが答えた。

 

「ふたり以上の人間が更衣室のドアの隙間から覗きをしていて、それを見つけたロナウドさんが『おい、お前たち何やってんだ?』と声をかけたという流れが自然です。この『お前たち』という言葉から複数犯と推定されます」

 

「なるほど…。もしひとりだったら『お前』ですものね。すごいです、ミヤビさん」

 

イオはミヤビの推理に目を輝かせている。

 

「また局員ではないという推理の根拠は他にもあります。ロナウドさんが声をかけただけでなく、そのまま逃走したという点がポイントです」

 

「うんうん…」

 

アイリが頷きながら身を乗り出してきた。

 

「ではなぜ犯人だけでなくロナウドさん自身もいなくなったのか…。それは犯人が自分と親しい間柄にあり、女性陣に捕まって制裁を受けたら可哀想だと思う人物であったからだと推測できます。もし犯人が自分と無関係な人間なら、元刑事の職業柄逃げる犯人を『待て!』と言って追いかけるはず。しかしその声はしなかった」

 

「犯人と一緒にこっそり逃げたということね?」

 

「ええ。もし犯人だけを逃がして自分がその場に残ったら、自分が罪を着せられる。それは嫌だし、真犯人の名前を言うこともしたくない。ならば一緒に逃げるしかない…となります」

 

「ロナウドが庇いたくなるような人間…、つまり真犯人はジョーってことやな」

 

ヒナコが言う。

 

「じゃ、『あんなこと』っていうのは覗きのことだったのね。絶対に許せない。何か罰を与えないと気が済まないわ!」

 

アイリは両手の拳をぎゅっと握って、その怒りをあらわにしている。

そこでミヤビは彼女を宥めるように言った。

 

「待ってください。ジョーさんが主犯なのはまず間違いないでしょうが、少なくともあとひとりは共犯者がいるはずです。そこで民間人協力者の男性の中から容疑者を絞っていきましょう」

 

「じゃあ、まずジュンゴはどうや?」

 

ヒナコがジュンゴの名を挙げた。

 

「彼にはアリバイがあります。彼は該当する時間に厨房にいました。厨房担当の職員が足りず、わたしが彼に手の空いている時に厨房の手伝いをしてほしいと依頼をしていたからです。メグレズ出現の警報を聞き、慌てて厨房から飛び出していったそうですから、彼が覗きをすることは不可能です。ちなみに厨房担当職員から『彼のおかげで仕事が楽になった』という報告を受けています」

 

「なるほど…。となると残りはダイチとケイタやな。どっちも怪しいな」

 

「ねえ、ヤマトはどうなのよ? ヤマトにはアリバイがあるの?」

 

ヤマトは局長室にひとりだけでいる時間が長い。アリバイ証言する者がいないのは確かだ。

彼が男子である以上、疑惑をかけられるのは仕方がない。

しかしミヤビはアイリの疑問を一刀両断にした。

 

「いいえ。ヤマト様が犯人である可能性はゼロです」

 

「どうして言い切れるんですか? 峰津院さんだって男子ですから、女子の裸に興味を ──」

 

ミヤビはイオの言葉を遮る。

 

「あの方が覗きをしないというのではなく、あの方が誰かと一緒に行動するということがありえないということです」

 

ミヤビの言葉に3人とも頷いた。

あのヤマトがジョーと一緒に悪巧みする姿が誰にも想像できないからだ。

 

「そやね…」

 

「うん、ありえない」

 

「そうですね…」

 

3人が納得する。

そこでミヤビは次の推理に移った。

 

「今のところダイチさんとケイタさんにはアリバイがありません。ですがケイタさんは一匹狼的な行動が多く、これも複数犯であるこの状況にはそぐわないと言えます。覗きをするなら単独で行うでしょう。ジョーさんとケイタさんが親しくしているという情報もありません。一方、ダイチさんとジョーさんが連れ立って歩いているところを目撃したことは何度かあります。親しいというほどではありませが、行動を共にしているという事実に変わりはありません。ダイチさんにはアリバイがなく、更衣室には意中のイオさんがいる。ジョーさんに誘われたら断れないという精神的な弱さもあり、これらの状況から判断すると彼が共犯となった可能性は非常に大きい、ということになります。黒ではありませんが、限りなく黒に近い灰色といったところでしょう」

 

「じゃ、秋江さんとダイチを捕まえてとっちめてやりましょうよ」

 

アイリはやる気満々だ。

 

「そやけど状況証拠だけでは犯罪を立証できるとは思えへんけど」

 

「これからどうするんですか? やっぱり証拠になる写真とか手に入れるとか?」

 

イオに訊かれ、ミヤビは黒い微笑みを浮かべる。

 

「出頭してもらいます」

 

そう言って彼女は携帯を取り出した。

 

「えっと…ロナウドさんのアドレスは、と…。件名、軽犯罪法第1条23号について。…上記の件について心当たりがあるかと存じます。被疑者の逃走を見逃した貴殿には、彼らに出頭するよう勧めることを進言いたします。事を荒立てたくはありませんが、もし出頭しないようであれば、当方は証拠物件を揃え、事件を公にし、それなりの制裁をするつもりでおりますので、あしからず…っと」

 

ミヤビはそう呟きながらメールを打った。

言葉遣いは丁寧だが、それが逆に「制裁」がどのようなものになるかを想像させて恐怖心を誘う。

 

「あ、…追伸、転送ターミナルはロナウドさんとジョーさんに限って使用できるようにしておきますので…っと。これで良いわ」

 

そしてメールを送信した。

追伸でジョーの名前を出したのは、犯人が彼だとわかっているのだと匂わせるためだ。

 

「さあ、これで面白いことになるはずですよ。彼らが来るまでわたしたちは制裁の方法でも考えておきましょう」

 

とても楽しそうに言うミヤビに、ヒナコたちは少しだけ怖れを抱いた。

そして全員が思った。ヤマトがミヤビのことを一番頼りにしているのは当然で、彼女は絶対に敵に回したくない人物である、と。

 

 

 

 

それから20分ほどしてダイチとジョーとロナウドがミヤビの部屋を訪ねて来た。

3人とも憔悴しきったような顔をしており、ミヤビのメールは相当効果があったように思える。

ミヤビは彼らを部屋に招き入れ、床に正座させた。

そしてヒナコたちと一緒に彼らをぐるりと取り囲む。

一番に口を開いたのはロナウドだった。

 

「みんな、すまない。彼らのしたことは許されない行為であり、俺は犯行に加担はしていないが犯人蔵匿したのは事実だ。だからこうして謝りに来た。…ほら、お前たちも謝れ」

 

そう言ってダイチとジョーの頭を押さえつけて無理やり下げさせた。

 

「ごめんなさい! もう二度としません!」

 

「ごめんね、みんな。悪気があったわけじゃないんだ。許してよ」

 

ダイチは必死だが、ジョーは相変わらず不真面目で反省している様子が見えない。

 

「そんなんでウチらが許すと思ってんの?」

 

「あたしは許さないわ」

 

「わたしも罰は受けてもらうべきだと思います」

 

ヒナコ、アイリ、イオが腕組みをしながら、彼らを見下ろすようにしてそれぞれ言う。

そこでミヤビが居丈高に続けた。

 

「現在、ジプスは災害措置特別法第404条によって警察と同等の権限を持っております。ダイチさんとジョーさんの行為は軽犯罪法第1条23号に該当し、おふたりを拘留又は科料に処する権限がジプス東京支局長のわたしにはあります」

 

「「……」」

 

「ですが、わたしたちはおふたりを拘留したり科料を徴収する気はありません。そんなことをしても無意味だからです。そこで『ハンムラビ法典』の『目には目を、歯には歯を』を引用させていただきます」

 

「それって…どういうこと…?」

 

ミヤビの大げさな演技にビビるジョーが訊く。

 

「裸を見たものは、裸にひん剥かれる…に決まってるじゃありませんか」

 

そう言ってにっこりと微笑んだ。

彼女の背後に黒いオーラが見えたような気がしたのは惨めな男たちだけではなかったようで、ヒナコたちも少し怯えたように一歩退いた。

 

「わたしは男性の服を剥ぐという趣味は持っておりませんので、自ら裸になっていただきます。おふたりに拒否権はありませんよ。逃げようとすれば罪が重くなるだけですから、おとなしく従ってくださいね」

 

「そ、そんなことでできないよ! それに『目には目を、歯には歯を』だなんて野蛮だ! ここは現代の日本だぞ。絶対反対!」

 

ダイチが叫んで反抗しようとするが、ミヤビはピシッと言い放った。

 

「それはあなたの勉強不足です。『目には目を、歯には歯を』という言葉は『やられたら、やりかえせ』の意味で使われたり、復讐を認める野蛮な規定の典型と解されたりすることが一般的ですけど、『倍返しのような過剰な報復を禁じ、同等の懲罰に留めて報復合戦の拡大を防ぐ』という、あらかじめ犯罪に対応する刑罰の限界を定めることが本来の意味とされています。ちなみにこれを『罪刑法定主義』と呼びます」

 

「……」

 

ここでダイチは自分がミヤビに絶対に勝てないことを悟った。

しかしジョーは諦めていない。

 

「だけど俺たちは自首したんだぜ。罪一等減じてくれてもいいんじゃない?」

 

しかしここでもミヤビの完璧な理論で彼を打ち負かした。

 

「法律上の自首が成立するためには『罪を犯した者が捜査機関に発覚する前』に自首することが必要です。しかし犯行は既に発覚し、こちらは被疑者を確定しております。よっておふたりがここへ来たことは、わたしの警告メールを見たロナウドさんによって出頭させられただけ。自ら謝罪したことで罪を認めただけですから、自首にはなりません」

 

「……」

 

ダイチとジョーは覚悟を決めたようで、シャツのボタンに手をかけた。

そして上半身だけ裸になると、恥ずかしそうに俯いた。

しかし女性陣は許してはくれない。

 

「パンツ一丁になるのが筋ってもんやないの?」

 

「あたしたちは着替えているとこを見られたのよ。そんなことだけじゃ許さないわ!」

 

ヒナコとアイリの言葉にミヤビとイオが頷く。

腕を組んで仁王立ちになっている女子4人に囲まれて、ダイチとジョーは青菜に塩の状態だ。

 

「なあ、君たち。それくらいにしてやってくれないか…」

 

ロナウドが助け舟を出そうとするが、ミヤビに睨まれた。

 

「お得意の弱者救済ですか? ここで懲罰をやめることはできますが、それではここにいる女性たちの気が収まりません。明日以降も悪魔やセプテントリオンが襲来します。その時に覗きの件のわだかまりが残っていて協力し合えなかったらどうなりますか? 想像してみてください…みなさんが悪魔の集団にボコられている時、女性陣の助けが一切なかったらどうなるでしょうね。わたしは助ける気はありませんけど、ヒナコさんたちはどうですか?」

 

ミヤビがヒナコたちに訊くと、それぞれが答えた。

 

「あたしは絶対に助けない。ノゾキ魔なんて悪魔よりタチが悪いもの」

 

「同感や」

 

「わたしもです」

 

「ご覧のとおりです。ならばむしろここですっきりさせてしまった方が良いとは考えられませんか? わたしたちはジョーさんとダイチさんを辱めたいのではありません。女性が裸を見られるということがどれだけ恥ずかしいか、またそれが心の傷になるのかを身をもって知っていただきたいだけです」

 

「そうや。女子が裸見られたんやで。どんなに傷ついてしもたかわからんやろ?」

 

「そーよ、そーよ」

 

ヒナコとアイリが口々に言い、最後にイオが止めを刺した。

 

「志島君…あなたがそんな卑怯で弱虫な人だったなんて…幻滅しました」

 

「新田…さん…」

 

イオに気のあるダイチにとってこのひと言は心臓をえぐるだけの効果があったらしく、がっくりとうなだれてしまっている。

それを見たミヤビはヒナコたちに言った。

 

「ダイチさんはこのくらいにしておきましょう。深く反省しているようですし、なにしろ未成年です。彼はジョーさんという悪い大人に唆されただけでしょうから」

 

「そやね」

 

ヒナコの言葉にアイリとイオも頷く。

そして視線をジョーに向けた。

 

「な、何する気だ!?」

 

「別にウチらはあんたのきしょい裸なんて見とうない。そやけど『目には目を、歯には歯を』ゆうたら他に方法はあらへん」

 

「そーよ。男なら根性出して脱いじゃいなさい。できないならあたしたちが脱がしてあげるわ」

 

「乱暴なことはしたくありませんけど、自分でやらないなら仕方がありませんね」

 

ヒナコたちはジョーを追い詰めるが、ここでミヤビが女性陣を制止した。

 

「ちょっと待ってください、みなさん」

 

「へ?」

 

ジョーが唖然とする。

これまでずっと自分を責めてきたミヤビが守ってくれようとしているからだ。

しかしそんなはずがあるわけない。

 

「ジョーさんは自分の犯した罪が裸になるという程度で許されるようなものではないと考えているのかもしれません。彼はすべての弱者を救い、平等な世界を創ろうとして奔走しているほどの人物です。きっと自らにもっと重い罰を与え、それによって贖罪としようと考えているのでしょう。彼自身が罪の重さに相応しい罰を自らに与えるのを、わたしたちは生暖かい目で見守りませんか?」

 

ミヤビの言葉は慈悲深いものに聞こえるが、その言葉の裏には「これだけで済まそうなんて思ってないわよね? わたしたちが納得しないと、相応の報復をするから承知しておいて」という意味が含まれている。

さすがのジョーも彼女の氷のオーラに怯え、慌ててスラックスを脱ぎだした。

そしてトランクス1枚になって土下座をする。

これ以上彼女を怒らせたら、裸になる以上にとんでもない罰を与えられると察したからだ。

 

「ごめんなさい! もう二度としませんからお許し下さい!」

 

大の男がチワワのようにプルプル震えている姿は滑稽だ。

もうこれくらいで勘弁してやろうと、ミヤビがヒナコたちに目配せした。

 

「もうこれくらいで結構ですよ」

 

「ホント?」

 

ジョーがミヤビを見上げた。

 

「これで手打ちにしましょう。わたしたちはジョーさん、ダイチさん、ロナウドさんに対してこの件を根に持って嫌ったりしませんから、ご安心ください♡」

 

ミヤビがこれ以上ないというくらいの作り笑顔で微笑むと、ダイチとジョーは顔面蒼白となり、脱いだ服を抱えて脱兎のごとく部屋から飛び出して行った。

それをロナウドが追いかけて行く。

その様子を見たミヤビが不機嫌な顔で言った。

 

「まるでセプテントリオンに遭遇したみたいな顔をして逃げて行きましたね。失礼だと思いませんか、ね、みなさん?」

 

するとヒナコが答えた。

 

「そ、そうやね…。さて、もう夜も遅いし、帰ろか?」

 

「そうだね。早く帰って寝よ」

 

「ええ。ミヤビさん、遅くまでお邪魔してすみませんでした。おやすみなさい」

 

女子3人も逃げるように部屋を出て行った。

そしてミヤビがひとり取り残される。

 

(何か気に障ることでもあったのかしら?でも楽しい女子会ができて良かった。良い気分転換になったもの♡)

 

ヒナコたちの真実をミヤビは知る由もなかった。

 

 

 






「健康診断覗き見事件」は犯人も見つかり、改心したようなのでいちおう大団円ということになります。

ヒロインが黒いオーラを出しまくっていますが、本人はまったくの無自覚です。
けっして悪い子ではありません。誤解しないでやってください。


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