DEVIL SURVIVOR 2  You changed my world.   作:ルーチェ

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最後のセプテントリオンとの戦いになります。

しかし人間同士の戦いは避けられず、限られた力を集結して戦わざるをえません。

そして道を分かつことになった仲間たちに対し、ヒロインはどういう戦いを挑むことになるのでしょうか…





7th Day それぞれの土曜日 -1-

 

 

ミヤビは大阪本局で目を覚ました。

場所が変わってもやることは変わらない。身支度を整えると、食堂へ向かった。

ヤマトに従う者は多く、殆どのジプス関係者が大阪本局に集まっているものの、彼の強硬な実力主義に納得できずに脱落してしまった者もいる。

よって人員不足が生じていた。

特に食堂の厨房部門の人間は全員辞めてしまったものだから、食事を用意することができず非常食のみとなる。

それでは局員及び民間人協力者の体力が持たないと考えたミヤビは自ら朝ご飯を作ることにした。

大阪陣営のメンバーは総勢16名。

それくらいの人数ならと、彼女はひとりで食事の支度をするつもりで昨夜から準備をしていたのだ。

時間は〇五三〇時、昨夜のうちにセットしておいた米が炊けていて、彼女は味噌汁とおかずを作り始めた。

10分ほどするとマコトが厨房へ入って来た。

ミヤビが前夜に朝食の支度をしていたことを知っていて、その手伝いをしようというのだ。

 

「おはようございます、マコトさん」

 

「おはよう、ミヤビ。何か手伝おう」

 

「それではお言葉に甘えてお手伝いをお願いします。マコトさんは味噌汁の鍋の火加減を見ていてください。わたしはこちらで塩ジャケを焼いていますので」

 

「ああ、わかった」

 

ふたりで厨房に立ちながら、ミヤビはふと思った。

 

(なんだか不思議な感じだわ。本来ならこのふたり組が厨房に立つことなどなかったはずだもの。それなのに今はこうして料理をしている。これもそれぞれの価値観や思想の違いによって仲間たちが分かたれた結果。たぶん東京や名古屋でも同じようなことになっているでしょう。でも東京にはジュンゴさんがいるし、名古屋にはオトメ先生がいるから、食いっぱぐれることはないわね)

 

30分ほどで全員分の朝食の準備が終わった。

あとはヤマト用の食事の用意をするだけである。

彼だけは特別メニューということで、別に作らなければならないのだ。

この非常時だというのに、ヤマトだけはマイペースを貫いている。

ミヤビはメニューを厨房担当者が残していったレシピで確認した。

当然のごとく厳選された食材のみで作らなければならない。

局長専用冷蔵庫には野菜、卵、牛乳といった食材があるものの、そのどれもが○○産の△△△というブランドものばかり。

ロナウドがこのことを知ったら怒り狂うことだろう。

それはともかく、ミヤビはレシピどおりに料理を作った。

これも彼女が峰津院の屋敷で様々な知識や技術を得たおかげである。

そしてワゴンテーブルに料理を載せると、ヤマトの私室へと向かった。

 

 

「ヤマト様、ミヤビです。入ってもよろしいですか?」

 

声をかけると、ドアの向こう側からヤマトの声がした。

 

「かまわぬ、入れ」

 

ドアを開けると、まだネクタイを締めていないシャツとスラックスだけの姿のヤマトがいた。

ミヤビの知る彼はいつもきちんと身なりを整えた姿ばかりなので、その姿が新鮮に見えた。

 

「おはようございます。朝食をお持ちしました」

 

「ああ、すまぬ」

 

ヤマトはそう言うと、料理のワゴンを窓際のテーブルまで運ばせた。

窓といっても外が見えるわけではない。東京支局と同じで司令室に面しているだけだ。

 

(ヤマト様はいつも何を思いながらひとりで食事をしているのかしら? 会話もなくひとりで黙々と食べるだけの食事なんて味気ないものだというのに。幼い頃からそれが当たり前になってしまった彼は哀れだわ。一度くらいは一緒に楽しい会話をしながら食事してみたかったな…)

 

そんなことを考えながらミヤビは配膳をした。

 

「わたしは〇七三〇時に単身東京へ向かい、東京陣営の無力化作戦を遂行いたします。ベネトナシュと名古屋陣営の動きが気になりますので、さっさと済ませて戻ってきます」

 

そう告げて部屋を出た。

 

 

 

 

ミヤビはあえて転送ターミナルを使用せずに高速鉄道を使って東京へと戻った。

東京陣営との決着の場を新橋駅前と決めており、彼女はここにダイチたち4人を集めて、一気に片付けてしまうつもりなのだ。

 

「出でよ、スザク、ビャッコ、セイリュウ、ゲンブ!」

 

ミヤビは四神を召喚した。

彼女は昨夜密かに訓練をし、同時に5体まで召喚することができようになっていた。

複雑な命令はできないのだが、彼女には勝算があった。

そしてぶっつけ本番ではあるが実践投入するつもりでいる。

四神はそれぞれ東西南北の守護を司る神であり、スザクを南、ビャッコを西、セイリュウを東、ゲンブを北に配することでその中に結界を形成する。

この結界の中では彼女よりも強い霊力の持ち主でなければ悪魔召喚はできない。

つまりここにおびき出せば、魔法の使えない東京陣営は為すすべもなく無力化され、彼女に従わざるをえないということだ。

これは自分が懲罰房に入れられた時に、悪魔や魔法を封じられたら何も打つ手がないということで思いついた作戦である。

 

用意ができると、ミヤビは携帯でダイチを呼び出した。

案の定、彼は機嫌が悪い。

 

「ミヤビです。今、新橋駅前にいます。来ていただけませんか?」

 

「君が俺たちと話し合うというのなら応じるけど、戦うというのなら嫌だね」

 

「話し合いで終わるはずです。わたしも不要な戦闘は避けたいと思っていますので。できればみなさん一緒だと一度で済むのでありがたいですね」

 

「わかった。あと15分待ってくれ」

 

そう言ってダイチは電話を切った。

 

 

 

 

ダイチたちはミヤビにおびき出されたとも知らずに新橋駅前にやって来た。

 

「ご足労いただき申し訳ありません。ですがすぐに終わりますから」

 

ミヤビがそう言うと、ヒナコが前に出て言った。

 

「ミヤビちゃんだけやの? 局長さんたちはどこかに隠れてん?」

 

「わたしひとりでまいりました。ヤマト様たちには大阪でセプテントリオンとの戦いに備えてもらっています」

 

そう答えると、ヒナコは不機嫌そうな顔をさらに顰めた。

 

「ウチらなんてあんたひとりで十分だと判断したわけやな。舐められたもんやで」

 

「わたしはみなさんのことを舐めているのではありません。無駄な血が流れることを避けるために、あえてわたしひとりで来たんです」

 

「それって俺たちを説得するということ? 話し合いで解決するなんて綺麗事にはつき合えないと言ったのは君だぞ」

 

ダイチの問いにミヤビは頷いた。

 

「ええ。わたしはみなさんを説得する気はありません。みなさんが自ら降伏してくだされば良いだけですから」

 

「つまり無条件でゲームから降りろと言うんだな?」

 

「そのとおりです。戦いたくないのなら、それしか方法はありません」

 

「でもわたしたちは峰津院さんの考えも、栗木さんの考えも賛成できません。だから ──」

 

「ならばイオさんはこの状況をどう打破するつもりなんですか!?」

 

ミヤビはイオの言葉を遮って強く言った。

 

「それは…」

 

急に口を噤むイオ。

彼女には、いや他の誰にも根本的な解決策などないのだ。

単に仲間と戦いたくないというだけである。

それは正しいことだが、具体的な方針、つまり判然とした《種の意思》がなければ世界が消えてなくなってしまうことを防げない。

東京陣営のメンバーはミヤビに反論できず、悔しくて携帯をぎゅっと握り締めている。

 

ミヤビは続けた。

 

「みなさんは戦いたくはないと言いながらも携帯を握り締めています。それはわたしと戦って、倒してでも自分たちの意見を通そうとしているという意味ではありませんか? 言っていることとやっていることが矛盾していますよ」

 

「そやけど…ウチらは自分の信念を曲げたりせえへん」

 

「ならばわたしも容赦しません」

 

そう言ってミヤビは携帯を握った左手を水平の高さまで上げた。

いかにも悪魔を召喚するといったポーズだ。

それを見たヒナコが真っ先に叫んだ。

 

「先手必勝! ペリ、出番や!」

 

これまでの戦闘経験によってレベルの高い悪魔を召喚できるようになっていたヒナコ。

しかしミヤビの結界の中にいるために、悪魔は呼び出せない。

 

「おかしい…どないなっとるんや!?」

 

様子がおかしいことで動揺するヒナコ。

それを見ていたダイチ、イオ、ジュンゴも慌てて悪魔を召喚しようと叫んだ。

 

「出て来い、ハヌマーン!」

 

「ハトホル、お願い!」

 

「アラハバキ!」

 

それぞれが自分の使役する悪魔の中でもっとも強いものを召喚しようとしたが、もちろん呼び出すことはできない。

 

「どういうことなんだ? どうして悪魔が召喚できないんだ?」

 

ダイチがエラーメッセージの表示されている携帯を睨みつけながら言う。

それに対してミヤビは答えた。

 

「それはこの場所に結界が張ってあり、悪魔を召喚できないようにしているからです」

 

「なんだって!?」

 

「わたしよりも霊力の強い者でなければ、ここでは悪魔を召喚したり、魔法を使うことはできません。この中で一番霊力の高いヒナコさんですらレベル38のペリ止まりですから、このわたしに敵うはずがないんです。…出でよ、ルーグ!」

 

ミヤビの手にある携帯から青白い光が発せられ、ルーグが召喚された。

それを見ていた4人は後退りする。

 

「生身のみなさんに魔法や悪魔による攻撃を防ぐ手段はありません。死にたくなければ降参してください」

 

ダイチたちに選択肢はひとつしかない。

彼らはミヤビが本気であり、彼女の強さを良く知っているのだから。

うなだれているダイチたちを前に、ミヤビは言った。

 

「結果は出ましたね。勝者であるわたしの陣営に加わることができないというのであれば、みなさんにはゲームを降りてもらいます。そういうルールですから」

 

そしてつけ足した。

 

「みなさんの敗因は霊力の強さだけでなく、覚悟の強さがわたしに負けているからです。わたしは自分の信念を曲げず、どんなに卑怯な手段を講じても、また仲間を失おうとも、最後まで戦います。何もかも守ろうとしても、全部守りきることなんてできはしない。ならばどんなことをしてでも守りたいと思うただひとつのもののために、他のすべてを捨てる覚悟がなければ勝てるはずがありません。すべてを投げ打ってでも守りたいもの、成し遂げたいものがあるのか。そしてそのために自分は何ができるのか、何をしてきたのか、何をすべきなのか。それを考えたことはありますか? 考えたことがないというのなら、この機会に考えてみることをお勧めします」

 

そう言って、ミヤビは悪魔たちを全部携帯に戻した。

さすがに霊力の高い彼女であっても一度に5体の悪魔召喚は体力・霊力共に消耗する。

そのせいもあって名古屋陣営との戦いではこの方法は使えないだろうと彼女は判断した。

 

(それにロナウドさんとジョーさんにこの方法を使ったら、素手でも戦いを挑んで玉砕してしまうでしょうね。ベネトナシュ戦もあるから、多少乱暴でも一気に片付けてしまうしかなさそう…)

 

 

 

 

東京陣営の無力化が終わったことを報告しようとした矢先、第7のセプテントリオン・ベネトナシュの顕現反応を探知した。

場所は宮下公園。それは大阪本局でも察知したようで、マコト、フミ、ケイタの3人がすぐに東京へ駆けつけて来てくれた。

 

ベネトナシュは白い円錐の角を取って逆さにした、という他のセプテントリオンに比べて至ってシンプルな姿をしていた。

しかし見た目で判断できるものではない。これが最後のセプテントリオンなのだから。

それに十数体の悪魔を従えており、ミヤビを含めた精鋭メンバーとはいえ4人では苦戦するだろう。

 

「さあ、戦闘開始です!」

 

ミヤビはスザクとビャッコを召喚し、臨戦態勢となった。

しかし携帯の画面を見て困惑する。

 

「…人間不可侵? 何や、それ?」

 

ベネトナシュのスキルを見てケイタが首を傾げた。

それは悪魔の攻撃なら効果はあるが、悪魔使い自身の魔法はまったく効かないということを意味している。

こうなれば召喚できる悪魔を全部投入して戦うしかない。

ビャッコの電撃がベネトナシュを直撃したその直後、バチッと音がしてベネトナシュが召喚していた悪魔が消えていく。

しかしそれだけではなかった。

ミヤビたちが召喚していた悪魔たちも全部携帯に戻ってしまったのだ。

 

「な、何だ!? 何が起きたんだ!?」

 

マコトが慌てて携帯を見る。

ミヤビも同様に見ると「error」の文字が画面に出ていた。

どうやらこのベネトナシュは悪魔を強制帰還させることや、新たな悪魔の召喚を封じることができるらしい。

さすがのミヤビもこの状況を打破する手段が見つからず、撤退の指示を出した。

 

「ひとまず撤退しましょう!」

 

しかしベネトナシュは妨害しようと、メグレズの〈芽〉を撃ち出した。

〈芽〉が起こす地震に耐えつつ、ミヤビたちは撤退する。

人間の攻撃が効かない上に悪魔は強制的に帰還させられてしまう。

さらにこれまでのセプテントリオンと同じ方法で攻撃をしきた。

こうなるとメラクの〈周極の巨砲〉やアリオトの〈毒素の塊〉といった攻撃の可能性も捨てきれない。

ただ幸運なことに、なぜかベネトナシュはそれ以上の侵攻をせずに姿を消した。

おかげで対策を練る時間は得られたようだった。

 

 

 

 

大阪に戻ったミヤビはベネトナシュの件でフミに相談していた。

 

「ベネトナシュのあの攻撃、どう思いますか?」

 

「ん~、簡単に言うとジャミング、かなぁ」

 

フミはパソコンをいじりながら彼女の質問に答える。

 

「ジャミング…通信妨害ということですね?」

 

「そう。多分ベネトナシュは何らかの手段をで召喚アプリとの繋がりを妨害したんだと思う。だから今は悪魔使えるようになってるでしょ?」

 

「はい」

 

ミヤビの携帯はいつの間にか悪魔召喚が可能な状態に戻っていた。

それはベネトナシュの力が及ぶのはある程度の範囲までだということを意味している。

ベネトナシュに近づかなければ悪魔が強制的に帰還させられるということはないのだろうが、それではこちらの攻撃も届かない。

つまり打つ手なしということだ。

 

「対策はこっちでも探すから、ミヤビも何か考えてよ。アリオトの時みたいにさ」

 

「了解です。それにしてもとんでもない敵が現れましたね」

 

「まあ、局長の説明によるとセプテントリオンは北斗七星になぞらえているらしいから、ベネトナシュが最後ってことでしょ? これがポラリスの本気ってことじゃないのかな」

 

「そうですね。敵が段々凶悪になってくるのは想定内のことでしたけど、さすがにこれは厄介です。でもベネトナシュを倒さなければ、これまでの苦労も意味のないものになってしまいますから、どんな強敵であっても倒すしかありません。知恵を絞って倒す方法を考えてみます」

 

そう言ってミヤビはフミの部屋を出た。

ミヤビには解決しなければならない問題が他にもある。そう、名古屋陣営だ。

彼女は東京の時と同様に、名古屋に乗り込むためにひとりで出撃した。

 

 

 

 

名古屋のテレビ塔の下にロナウドとジョー、アイリとオトメ、そしてロナウドを支持するレジスタンスメンバー20名が待ちかまえていた。

ここは30分ほど前に、ロナウドからの電話で指定された場所である。

当然、ミヤビが新橋駅前に結界を張っていたように彼らが何かの仕掛けや罠を用意してある可能性は高い。

それを承知でミヤビは呼び出しに応じた。

ロナウドたちの罠くらいでたじろぐ彼女ではないのだ。

 

「来てくれたか」

 

ロナウドは開口一番に言った。

 

「俺たちに協力してくれ。そうすれば俺たちは君と争わずに済む」

 

東京陣営がミヤビに負けたことは彼らの耳にも届いていた。

戦闘に持ち込まれれば都合が悪い。

よって無駄だとわかっていてもロナウドは説得を試みたのだ。

もちろんミヤビがそれに応じるはずもない。

 

「戦わずに済むのならその方が良いですけど、ロナウドさんたちの考えに賛同できるものではありません。逆にあなたが降伏するというのなら、わたしはみなさんの身の安全を保証しますけど、いかがでしょうか?」

 

「馬鹿な。俺は降伏などしない。自分たちの願いや希望を俺に託してくれている人間がいるかぎり、俺は平等な社会を創るという意思を自ら折ることはありえないのだ」

 

「それはわたしも同じことです。自分の意思を曲げることは絶対にしません」

 

「ならば仕方がないな…」

 

そう言ってロナウドは携帯を構えた。

彼らもまた能力がアップし、さらに強い悪魔を召喚できるようになっていた。

ロナウドの魔神インティはレベル45、オトメの鬼女ハリティーは46だ。

ジョーの神獣カマプアアとアイリの妖獣カイチも侮れない。

また数では圧倒的に名古屋陣営の方が有利で、一斉に攻め込めば勝てるという可能性にロナウドは賭けてみたのだった。

 

しかしミヤビのルーグの前に全員がひれ伏した。

ルーグの〈魔力開眼〉と〈デスバウンド〉のスキルは恐ろしいほど強力で、レベル50未満の悪魔では数がいても太刀打ちできるものではなかったのだ。

 

「あなたたちの負けです」

 

ミヤビは地面に膝をついたロナウドにわざと冷たく突き放した言い方をした。

 

「わたしひとりに勝てないみなさんではヤマト様に勝てるはずがありません。ポラリスと謁見するなんて端から無理なことだったんです」

 

「それでも俺は諦めないぞ。峰津院の野望を阻止するためになら、この命を捨ててもかまわないのだからな!」

 

ロナウドはインティとハゲネの両方を失いながらも、まだミヤビと戦おうとしている。それだけ彼の意思は強いのだ。

しかしミヤビは彼の行為を完全に否定した。

 

「命を捨ててもかまわないですって? あなたの掲げる平等主義は夢物語ですが、信念を曲げずに突き進む行動力は感銘に値します。しかし命よりも大切なものなどどこにもありません。命よりも矜持を大切にするという人もいますが、わたしから見れば愚か者です。人は死ねば終わり。生きているからこそ希望が、そして未来があるんです。自らその希望を断とうとする者がいくら崇高な思想を掲げても、誰が従うというのでしょうか?」

 

「くっ…」

 

「あなたが無茶な特攻で死ぬのはかまいませんが、残された者たちはどうするんですか? 弱者を助けたいと言って立ち上がったあなたが自己満足で何もかも放り出してしまうというなら、それこそ自ら愚か者であると証明したものではありませんか?」

 

「……」

 

ミヤビに負けて、もう自分には何もないと言わんばかりにうなだれているロナウドに、今度は優しく慰めるような口調でミヤビが言った。

 

「ロナウドさん、わたしはあなたに博愛という言葉を贈りましょう」

 

「博愛…?」

 

そう言ってロナウドは顔を上げた。

そんな彼にミヤビは微笑みながら続ける。

 

「わたしは人間が平等になれるとは思いませんが、博愛…すべての人を等しく愛することは可能だと思います。今のあなたがすべきことは自らの信念に殉じて死ぬことではなく、自分が生きて何を為すべきかを考えることです。もしひとりで考えても答えが得られないなら、周りにいる仲間たちと一緒に考えてみてください。きっと未来の人間が『あの時の選択は正しかった』と言ってくれる結果を見つけられるはずです」

 

そう言い残し、ミヤビは大阪本局へと帰還したのだった。

 

 

 






東京陣営と名古屋陣営のメンバーをヒロインがひとりで降参させました。
これでベネトナシュを倒して、ヤマトがポラリスとの謁見に臨むことになるわけですが…
そうならないのがこの物語です。


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