DEVIL SURVIVOR 2 You changed my world. 作:ルーチェ
ヒロイン一行は大阪へ向かいます。
ゲーム版よりアニメ版に近い内容で物語は進んでいきます。
アニメ版の大阪本局のシステムがハッキングされていくシーンが大好きで、それを取り入れたかったからです。
でも登場人物が次々と死んでいく部分はやるせないので、最後まで誰も死なせない予定です。
〈ニカイア〉と〈悪魔召喚アプリ〉を解析した結果、〈悪魔召喚アプリ〉はジプスが使用する悪魔召喚システムよりもはるかに性能が高く、試験的にヤマトとミヤビとマコトの3人が使用することにした。
昨日は繋がらなかった〈ニカイア〉だが、なぜか今朝になって利用できるようになっていた。
地震発生によって一時的に大量の死に顔動画が配信されたためにサーバーがパンクしてしまったが、一夜明けて復旧したのだろうということになった。
そしてミヤビの推測どおり、死に直面して強い生きる意思を示さないと〈悪魔召喚アプリ〉はダウンロードできず、よってダイチたちの携帯から抽出したデータを元に〈悪魔召喚アプリ〉を複製し、それを各自の携帯にインストールした。
元々ジプスで使用していた悪魔召喚システムがあるといっても、この短い時間で正体不明のプログラムを再現したジプスの技術力は驚嘆ものである。
〈悪魔召喚アプリ〉には他にも悪魔をオークションで競り落とす機能や、スキルクラック・合体機能まで付いている。
優れたものなのだが、大きな問題があった。
それは使用者と召喚した悪魔の力関係である。
ジプスの悪魔召喚システムは使用者の霊的レベルに応じた悪魔を召喚するように調節されているので、よほどのことがないかぎりトラブルは起きない。
しかし〈悪魔召喚アプリ〉は少々面倒だ。
使用者の霊力レベルよりも出現する悪魔の方が高レベルになるという場合もありうるようだ。
契約戦で勝てずに死んでしまった者が多く、それゆえに主を持たない野良悪魔が多量に発生したという結論に達した。
昨日のダイチとイオに関しては例外と言えよう。
彼らが戦うべき悪魔をミヤビが倒してしまったことで、正確には契約戦で勝利したとはいえない。
しかし結果的に人間側の勝ちとなったために、ダイチたちに使役されるしかなかったと判断するのが妥当だ。
そして霊的素質のない者が悪魔の入った携帯に触れると暴走し、触れた者は死に至る。
これによって死亡した者も多少なりともいることだろう。
また一部の民間人が暴徒と化し、悪魔を使って窃盗やATMを破壊するなど強盗行為も行われている。
それについてはある程度想定はされてはいたが、ジプスの主たる目的がセプテントリオンを倒して人類を救うことであるため、ヤマトは対野良悪魔や治安維持のために特別に人員を割くようなことはしなかった。
ジプスの行動に邪魔となる場合のみ排除するという消極的なものでしかなく、民間人の悪魔による被害は今後増えるだろうと予測される。
しかしそれは仕方のないことである。
ジプスは時の為政者に規模を縮小され続け、最低限の人員で運営せざるをえず、イレギュラーなDケースに割ける人員がいないのが現実なのだ。
現状でわかっていることはここまでである。
なぜならそれを調べるのに適任である人物が昨日から行方不明になっているからだ。
フミは連日大阪本局で転送ターミナルの調整をしていたのだが、調整途中で突然消えてしまったという。
正午頃には見かけたという局員がおり、《神の審判》による地震の直後に消えたと思われる。
外出した形跡もなく、捜査は難航しており、彼女がいなければジプスの活動に多くの支障が出るのは誰の目にも明らかだった。
◆
ヤマトは大阪本局で行われる幹部会議に出席することとなった。
ミヤビもヤマトに同行するのだが、会議に出席するのではない。
ヤマトはフミの捜索を彼女にさせることにした。
フミがいなければ転送ターミナルの調整だけでなく、様々なシステムの管理など不都合が発生するからだ。
もちろん大阪の局員に探させているものの成果が出ていない。
そこでミヤビに大阪市内を捜索させようと考えた。
地元の人間ですら見つけ出せない行方不明者を土地勘のない彼女に捜索させるというのは無茶なようだが、ヤマトには勝算があった。
ミヤビがタダの17歳の少女ではないことを一番良く知っているのはヤマトだ。
難度の高い問題を与えればそれだけやる気を出す彼女の性格と、これまでに蓄えた知識や技術などを駆使すれば可能であると判断したからである。
未だに大阪本局の局員はミヤビの東京支局長就任を快く思っていない。
大阪本局の責任者は局長代理という肩書きを持つ40代の男性だが、ヤマトが自分の留守を任せるだけあってそれなりの人物である。
大阪本局の局員たちも彼を尊敬しており、そのため自分たちより若い経験の少ない小娘が自分たちの上官である局長代理と同じ権限を持つことが気に入らないというのだ。
よってミヤビの実力をその目で確認させ、黙らせるには良い機会である。
さらにヤマトはダイチとイオには大阪の様子を視察させるという名目で同行させることにした。
真の目的は悪魔使いとしての素質がある人間に経験を積ませ、実戦投入することである。
当然、ダイチとイオは反論するが、それをヤマトは却下した。
「ジプスを出てどこかの避難所で膝を抱えて震えている方が良いとでも言うのか? 自ら行動せず、このまま誰かがすべて解決してくれるなどと考えているようでは生き残ることなどできぬ。今何が起きているのかをその目で確認し、自身の置かれている現状を把握することで、自分のすべきことが見えてくるはずなのだ。別に私は強制しているわけではない。自分で考え、自分で答えを出せ。自ら行動して生きる道を選ぶか、何もせずに怯えながら死を迎えるか…。出立は30分後、それまでに結論を出しておけ。お前たちの判断に任せる」
ヤマトはダイチとイオにそう言うと去って行った。
ヤマトの言い分はもっともである。
悪魔やセプテントリオンは人間の有する火器や武器が一切効かず、悪魔のみによって倒すことができる存在である。
だから悪魔使いとして少しでも資質があれば徴用したいというヤマトの考えは当然なのだ。
ダイチとイオは自分が未成年であり民間人であるから、正体不明の敵と闘うのはジプスに任せておけば良いと考えていた。
しかし何もせずにただ怯え、逃げ惑っているだけでは助かる可能性はゼロに近い。
ならば生きるために抗うべきである。
実際、大阪や名古屋ではダイチたちのような若い民間人がジプスに協力して悪魔と戦っていた。
彼らはヤマトに強制されたのではない。彼らは自分の意思でジプスに協力することにしたという。
それをミヤビから聞かされると、ダイチとイオは不安げな顔して考え込んでしまった。
そして考えあぐねた挙句に、ダイチがぽつりと言った。
「あいつの言うとおりだ。どうせ避難所にいたってやることもないし、あいつの言ってることもわからなくない」
「わたしも…お父さんやお母さんに会いたいけど、もし何かあったらと思うと不安でたまらない。ふたりが見つかるまで他のことをして気を紛らわせていないと、気がおかしくなって死んじゃいそう…」
イオの気持ちはミヤビにも良くわかった。
現実を直視するのは恐ろしい。でも見て見ぬふりもできないし、何もしないでいるとますます不安が募って居ても立ってもいられなくなる。
「それなら一緒に大阪へ行きましょう」
ミヤビはふたりに呼びかけた。
「ヤマト様のおっしゃったように現状を知り、様々な情報を集めて、その中で自分がすべきことを見つけて行動する。何もしないでいて後悔するよりも、やれることをやって悔やんだ方が良いはずです」
無言でしばらく考えた後、今度はイオが先に口を開いた。
「わたし、大阪へ行くわ。わたしが役に立つとは思えないけど、何もしないよりはマシだと思うから」
「新田さんが行くなら俺も行くよ。俺にもできることがあるかもしれないしな」
ダイチは頭をぽりぽりと掻きながら言う。
「ダイチさん、イオさん、ありがとうございます。では一緒に駅へまいりましょう。でも、その前にやっておくことがあります。こちらへ来てください」
ミヤビは技術班の部屋へ行き、ふたりの携帯の番号を登録し、ジプス関係者同士なら通話ができるように設定してもらった。
こうしておけばGPSによって、彼らの居場所はミヤビの携帯で確認できるという仕組みだ。
◆
ミヤビたちは地下通路を使って新橋駅の真下にあるジプス専用駅へやって来た。
天井の高いかまぼこ型ドームの下には新幹線と同じ車両の高速列車が停車している。
ホームや天井の照明やベンチなど、明治時代の停車場の雰囲気を漂わせていて、ジプスがかなり前から非常時にも本局と支局を結ぶ手段を準備していたことがわかる。
あらゆる交通機関がマヒしているのにここだけ無事なのは、線路が龍脈の上に建設されているからだ。
ダイチとイオは物珍しそうに周囲を眺めている。
ミヤビ自身も初めて利用するので興味深げに見ているのだが、暢気に見物している時間はない。
「来たか…」
ホームの中央付近にヤマトがいた。
「人を待つのは何年ぶりかな」
棘のある言い方ではなく、なぜか楽しそうだ。
「お待たせして申し訳ございません。志島・新田両名とも、同行の意思を示してくれましたので、わたしの判断で彼らの携帯をジプス専用回線に登録させていただきました。その手続きで遅くなってしまいました」
「いや、気にするな。こいつらに大阪で迷子になられても面倒だ。お前の判断は正しい。…では出発する」
ミヤビたちはヤマトの後に続いて高速列車に乗り込み、一路大阪へと発ったのだった。
◆
車中、ヤマトはミヤビを呼び寄せると幹部専用の特別車両でふたりきりになった。
それはダイチたちや他の局員に聞かせたくない話があるという意味で、ミヤビも話の内容についてなんとなく想像がついていた。
「ニカイアの件だが、やはり奴が犯人だった」
ヤマトの言う「奴」がアルコルだということを知っているミヤビはゆっくりと頷いた。
「やはりそうでしたか。他に思い浮かぶ人物がおりませんから、わたしもアルコルの仕業だと考えていました。彼は一昨日の夜にわたしの前に現れ、道を改めるよう説得していきました」
その言葉にヤマトの表情が僅かに歪んだ。
「あのような人外に惑わされることはなかっただろうな?」
「はい。ヤマト様の目指す世界と彼の望む世界は違うものですから。彼は人類にとって恩人ではありますが、だからといって彼の言いなりになる義務はありません」
「ああ、そのとおりだ。奴は私の前にも現れ、勝手なことをほざいて帰って行ったよ。ニカイアを使って我々に対抗する駒を作り出そうとしたようだが、愚民どもでは我々のような崇高な志を持つ人間に敵うはずがない」
「彼がにわか悪魔使いを増やしたところで、組織的な力を持つヤマト様に戦いを挑んで勝てるはずがありません。しかし彼がその程度の妨害だけで済ますとは思えません。やはりフミさんの行方不明には彼が関わっているとみて間違いないでしょう」
「お前もそう考えたか。菅野はジプスのセキュリティや召喚システムの管理を任せているからな、彼女がいなければ今後の作戦遂行にも大きな支障となる。本人の意思で消えたとは思えぬし、本局を出たという記録もない。だとすればあの人外の仕業だと考えるのが当然だ」
「はい。アルコルはわたしたちと戦いたくないと言っていましたから、ジプスの活動を妨害することで、ヤマト様の進む道を遮ろうとしているのでしょう」
「戦いたくない…か。しかし所詮セプテントリオンと人間は相容れない関係。奴がどんな手段に出ようとも、我々は全力で戦うまでだ。そのためにも菅野を探し出し、一刻も早くジプスの機能を万全なものにしなければならぬ」
「だからこそ東京支局をマコトさんに任せ、わたしを大阪へ向かわせるのだということは承知しております。そして次のセプテントリオンが出現する場所が大阪であるということも…」
ミヤビの言葉にヤマトは笑みを浮かべた。
「お前の洞察力にはいつも感心する。そうだ、2体目のセプテントリオンは大阪に現れる。それまでに菅野を探し出せ」
「了解いたしました」
ヤマトはミヤビの返事を心強く感じていた。
彼女が自分の期待を裏切ることのない唯一の人物だと信じているからだ。
そのせいか彼女にだけは労いの言葉をかけたくなる。
「大阪へ着くまでまだ時間はある。それまでゆっくりと休んでいろ。ドゥベの報告書はあとでかまわぬというのに、お前は夜遅くまでかけて書き上げたらしいな。今朝、局長室の机の上に置かれていた報告書は読ませてもらった。それにニカイアの解析にも加わっていたというではないか。徹夜明けではいざという時に困る。少し寝ておけ」
「はい…ありがとうございます」
ミヤビは立ち上げって一礼すると、少し離れたボックスの1席に腰掛けた。
そしてリクライニングシートを深く倒すと、またたく間に深い眠りの中に落ちていったのだった。
一方、ヤマトは物思いに沈んでいた。
(ミヤビが真面目な人間であることは私自身が一番良く知っている。報告書は急がないと言っても、彼女なら徹夜してでも書き上げるくらい容易に察することはできた。ニカイアの解析もまた然り。無理をさせたくはないが、私はミヤビに期待をせずにいられない)
ヤマトらしからぬ反省を促したのは、ミヤビの寝姿だった。
(私は知っているのだぞ。私の期待に応えるために、寝る間も惜しんで常に自分を磨き続けていることを。それは昔から全然変わらぬな)
目を瞑ってミヤビの姿を思い浮かべるヤマト。
(峰津院家への恩返しが彼女の原動力となっているようだが、どうしたらあそこまで身を削るような献身的な行動ができるというのだ? 私にはそこまでする理由がわからない。訊けば教えてくれるのだろうか…?)
ヤマトにはわかるはずはないのだ。
ミヤビは自分の命のピリオドを定めており、それまでの間にやらなければならないことがたくさんある。
その強い意思が今の彼女を動かしているのだということを。
◆
「お帰りなさいませ、峰津院局長!」
出迎えた大阪本局の局員たちが一斉にヤマトに敬礼をする。
その一糸乱れぬ行動が、本局局員の意識の高さというか、彼らのプライドの表れであるとミヤビには感じられた。
そして彼女が想像していたとおり、局員の冷ややかな視線が彼女に向けられた。
その視線に耐えながら、ミヤビはヤマトの斜め後ろの定位置で指示を待つ。
「ミヤビ、志島と新田を連れて菅野の捜索にあたれ。会議は15時には終わるだろう、それまでに本局へ戻って来い」
「了解しました」
「ああ、念のために大阪での案内人を用意させた。…どこにいる?」
ヤマトは大阪本局の男性局員に訊いた。
「もう来ているはずなのですが…。どこへ行ったんだ?」
男性局員はホームの周辺をキョロキョロと見回す。
すると彼は視線の先に目的の人物を見つけた。
15-6歳くらいの少年で鋭い目つきをしており、両手をポケットに入れ仁王立ちになっている。
「和久井、遅いじゃないか」
「さっきからおったわ、このボケ」
年上の人間にボケと言い放つ少年。彼は民間人協力者のひとりらしい。
なんだか扱いが難しそうなタイプだとミヤビは思った。
男性局員の方は怒りもせず、やれやれといった顔で言う。
「じゃあ、和久井、後は頼んだ」
「…ああ」
ひと安心とは言いがたい状況だが、ミヤビは自分たちのために案内人を用意してくれたヤマトに感謝した。
ヤマトたちが去ったホームにはミヤビとダイチとイオ、そしてと和久井少年が残された。
気まずい雰囲気が漂う中、ミヤビが挨拶をした。
「わたしは東京支局の支局長の紫塚雅です。あなたのお名前は?」
「俺は和久井啓太(わくいけいた)。よぉ覚えとけ」
そしてぷいと横を向き、自己紹介しようとしたダイチたちを無視し、さらにミヤビたちを残して歩いて行く。
「ああ、待ってください!」
ケイタを追いかけながらミヤビが言う。
「街を案内してくれるんじゃないんですか?」
するとケイタは振り向きもせずに答えた。
「悪いがヒマやない。お前らと群れる義理もないわ。俺は悪魔を殺せるからジプスに協力してるだけや」
「……」
「大阪は東京みたいにややこしい街やない。視察したかったら自分らでせぇや。ジプスのおエライさんなら本局の場所くらい知っておるやろ? もしわからんかったら14時半にビッグマン前に来たら連れてったるわ。ほなな。まぁ、悪魔には気ぃつけや」
そしてケイタは行ってしまった。唖然とするミヤビたちを残して。
◆
大阪も東京と同じく地震と悪魔の出現によって街は壊滅状態となっていた。
たぶん名古屋や福岡・札幌といった都市も同様の惨状を呈していることだろう。
瓦礫の山と化した街も、昨日までは大勢の人々で賑わっていたはずだ。
しかし今は人影が殆どなく、きっとどこかの避難所で身を潜めていると思われる。
悪魔が出現して人を襲っているのは東京の状況と変わらないということだ。
しばらく歩いているとミヤビたちの前方に大きく傾いた大阪城が現れた。
このまま行くと大阪城公園に着くらしい。
ミヤビがそんなことを考えていた時、突然彼女たちの数十メートル前方の道をものすごい勢いで駆け抜けて行くものがあった。
「悪魔!?」
それは人型をしてはいるものの、間違いなく悪魔だ。
ミヤビはとっさに携帯をかまえ、ビャッコを召喚する。
「出でよ、ビャッコ!」
魔方陣の中から現れたビャッコにミヤビはさっきの悪魔を倒すように命じる…つもりだった。
しかし標的の悪魔はビャッコが魔方陣から出る前に霧散してしまったのだ。
消える前にはるか前方で悪魔召喚の際の青白い光が発せられ、翼のある人型の悪魔が召喚された。その翼のある悪魔が倒したのだ。
つまりそこには悪魔を召喚し使役できる人間、悪魔使いがいるということになる。
「行ってみましょう!」
ビャッコを従えたミヤビが走り出すと、それを追ってダイチとイオも走り出した。
すると翼のある女性のような姿の悪魔 ── 鬼女リリムが確認でき、その隣には露出度の高い衣装に白い布を纏ったポニーテールの女性がいた。
携帯を握っているところを見ると、彼女がリリムを使役する悪魔使いであろう。
「その服…あんた、ジプスの人なん?」
先にポニーテールの女性がミヤビに声をかけてきた。
「はい。ジプス東京支局長、紫塚雅です」
そう答えた。
すると彼女は大袈裟に言う。
「支局長!? そやからそないなえらいもんを使役しとるんやねぇ」
「そないなえらいもん」とはビャッコのことだ。
昨日まで悪魔の存在など知らなかった民間人であっても、悪魔使いとなった今ならビャッコが高位の悪魔であると理解し、それを使役するミヤビに一目置くのは当然である。
「ところであなたのお名前は?」
「ウチ、九条緋那子(くじょうひなこ)っていうねん」
「九条さんもニカイアで悪魔召喚アプリを手に入れた口ですか?」
ミヤビがそう訊くと、彼女は笑顔で答えた。
「そうや。あ、ウチのことはヒナコでええねん。年、そう違わないはずやから」
ミヤビは彼女のナイスバディと度胸からマコトと同じくらいの20代半ばだと思っていたのだったが現実は違っていた。
「ウチ、19や。あんたらは高校生くらいやろ?」
「はい。わたしは17歳で、こっちのふたりは18歳です」
そこでダイチとイオもヒナコと挨拶をした。
ヒナコは非常に人懐っこくて社交的だ。
おかげでミヤビたちはすぐにうち解けた。
「ミヤビちゃん、ウチをジプスに連れてってくれへん?」
突然ヒナコが言い出した。
「ミヤビちゃんほどやないけど、ウチもそれなりに戦力になると思うんや」
「ええ、レベル18のリリムを使役しているほどのサマナーならジプスでも歓迎してくれると思います。しかしここ大阪ではわたしの人事に関する権限は及びません。15時までに本局へ行くことになっていますから、一緒にいらっしゃいますか?」
「もちろんや。でもまだ約束の時間には早いな。せっかく大阪へ来てくれたんやさかい、いろいろ案内するわ」
「でしたらお願いがあります。実はわたしたち、人を探しているんです」
ミヤビが事情を説明する。
「ようわかったで。ほな、行こか」
ヒナコに案内されて、ミヤビたちはフミの捜索を再開した。
◆
「さて、会議を始めよう」
ヤマトの一声で会議が始まった。
出席者は局長であるヤマトの他は大阪本局の局長代理、名古屋支局長、大阪本局で現場の統括をしている戦闘隊長と、そして技術班の局員。
彼は責任者であるフミが不在のために駆り出されたのだった。
また移動手段のない福岡支局長と札幌支局長はモニターによる参加となっている。
東京支局長のミヤビがいないことに顔を顰める者もいるが、それはヤマトの判断によるものなのであからさまな非難はない。
まずは各支局の状況、そして〈悪魔召喚アプリ〉悪用者と対処と民間人協力者の対応についてである。
各支局がある都市はかなりの打撃を受けて壊滅状態であり、〈悪魔召喚アプリ〉悪用者の影響もあってかかなり混沌とした状況である。
さらに〈悪魔召喚アプリ〉によって悪魔を召喚する者はいても、その殆どは呼び出した悪魔と契約できずに死亡し、悪魔は野良悪魔となって人々を襲っている。
気になるのは名古屋の報告で、こちらは悪用者というよりは暴徒であるということだ。
医療品や食料品をジプスが独占していることが気に食わないと言って、ひとりの青年が暴徒をまとめているという情報が入っている。
そしてフミは依然として見つかってない。
光明の見えない、その時だった。けたたましく非常警戒のサイレンが鳴った。
会議に出席していた幹部局員たちは慌てるが、ヤマトだけは落ち着いている。
こうなることを予測していたようで、冷静な口調で言った。
「何事だ?」
彼の問いに司令室の女性局員が答える。
「何者かによってサイバー攻撃を受けています! 外部からの結界システムへのハッキングです!」
「急いでサーバーのある地点を確認しろ」
ヤマトの指示で局員たちは個々に動き始めた。
彼も立ち上がると会議室を出て司令室へと向かった。
(ジプスの回線には考えうるあらゆるプロテクト技術の他に魔術による防御が施されている。こんなことができるのは奴のみ。フッ…奴は我々の心臓を止めに来たということか。面白い、受けて立ってやろう)
司令室では防御プログラムをフル稼働させ、さらに侵入経路ネットワークの逆探知をしてハッカーの居場所を探索していた。
しかし状況は悪化の一途を辿っている。
第1層を突破され、魔術式による暗号も解読されていく。さらに第2層もと第3層も突破されてしまった。
数分後、ヤマトが司令室に到着するやいなや、男性局員が探査結果を報告した。
「サーバー特定、浪速区・フェスティバルゲート跡地内部です! 直ちに現場に向かいます!」
数名の戦闘班の局員が現場に向かおうとするが、それをヤマトが制止する。
「待て。ミヤビを向かわせる」
そう言って携帯を取り出すとミヤビを呼び出した。
ケイタとヒナコが登場しました。
ケイタはすでにジプスに協力する民間人ですが、ヒナコはゲーム版のように大阪の街の中で出会うようにしました。