まだ明るい空を、青葉は楽しそうに見上げている。
鳥海が双眼鏡を手にあちこちを見渡すが、敵艦隊の影は見えない。
あれほど黒々とした装甲を持っているのだから、青い空と海の狭間で見えないなどということはない。
しかし手で日除けを作っただけの青葉が、ふと何の変哲もないように見える水平線を指差して、何度目かの報告をした。
「あっちに敵がいますねー。十時の方角です」
一瞬だけ、鳥海はムッとしながらそちらへ双眼鏡を向ける。その方角は確かに、鳥海が見たはずのところだ。双眼鏡もつけていない青葉が軽々と見つけられるのか――そう思いながらも、鳥海はそこに目を凝らすのをやめられない。
そして――
「あ」
海面に浮かぶごくごく小さな黒点を、ようやく見つけた。
綺麗な複横陣を組んだ複数の黒点が、それぞれ白波を立てている。
一般船舶の立ち入りは禁じられている海域だ。何かしらの密漁船にしても、命知らずが過ぎる。
となれば、やはり深海棲艦だと考えるのが妥当だろう。
「まだ気づいていないみたいようですね。進路が逸れています」
「ひゃー。私にゃ見えねぇぜ」
加古は両手の親指と人差し指で丸を作って眼鏡のようにしていたが、それで遠くが見えるわけでもない。
「これで三度目の発見ね。さすが青葉。相変わらず目の良さは変わらないのね。何か秘訣でもあるのかしら?」
「スクープを見逃さないためですね」
「あ、なるほどそういう……」
衣笠が青葉に近づいて、返答に困った。
自らの姉が好んでしていることだ。否定もできないし、むしろそういったことに熱心に取り組んでいる青葉は、輝いて見える節すらある。
しかし衣笠も同じ興味を抱いているかといえば、そうではない。写真選びや記事の文章など、ちょうど部屋も一緒だからかよく見る上によく手伝わされるが、青葉のように、完成した瞬間にキラキラした笑顔は浮かべられなかった。
だからこそあまり積極的に話題を振られても、衣笠には答えられなかった。
……この艦隊で答えられそうなのは、暇潰しに新聞を見ている夕張ぐらいのものだろう。
会話が止まり、そのまま距離を開けていく青葉型姉妹を見やって、鳥海は双眼鏡から目を離す。
「確認できましたね。じゃあ面舵を――」
ふいに、その肩を青葉が掴んだ。
「そっちにも敵がいるよ。それも大きなのが」
青葉がまた指差したのは、鳥海が今しがた舵を切ろうと――艦隊を差し向けようとした、一時の方角。
双眼鏡を向ければ、青葉の言葉通りの黒点が見える。
距離こそ後者の方が開けているとわかるが、それでもなお大きく見えるシルエットとは即ち、それほどに強力な艦がいることを意味する。
「……」
鳥海の眉根にしわが寄った。
十時と一時。左右どちらに進んでも敵がいる。
「間を抜けるのは、厳しそうですね」
揚々と、他人事のように語る青葉。
どちらに攻撃したところで、他方が応援に駆けつけてくる可能性は高い。十時――左方は小さな敵だから会敵次第撃退も可能だろうが、一時――右方の敵はより奥まったところにいる。
右方の敵を先に叩こうとしたところで、左方の敵も小さいながらの速度を持っている。挟み撃ちにされる可能性も高まる。また左方の敵を倒して進もうとしたところで追いかけられる可能性が非常に高く、その後に控えているだろう敵を迎えた時に同じく挟み撃ちになっている可能性が高い。
「どうしますか?」
古鷹の質問に、鳥海は顔を上げた。
「進路、面舵! 一時の敵を、気づかれる前に一気に叩きます!」
「よしきた!」
加古が艤装を構えなおし、砲を動かす――大仰な稼働音が、艦隊全員の耳に入った。
「青葉、気づかれたと思った瞬間に砲撃を。全員、砲撃は青葉に倣うように!」
鳥海の号令を皮切りに全員が黙り込む。ぴんと張り詰めた緊張が六人を包んだ。
鳥海たちが持っているアドバンテージは敵に気づかれていないことだ。敵が強力であろうとなかろうと、不意を衝ける優位性は大きい。ならばそれをより大きく活かせる、強力な敵を選んだのだろう。左方の敵は気づかれていたとしても、重巡洋艦ばかりが割を占めるこの艦隊で脅かされることはないと、鳥海は判断した。
鳥海の指示で、鳥海が考えていたであろう計略までもが理解できる。
皆が、鳥海の計算に誤差がないと信用することができ、また鳥海が、二連戦となっても皆なら切り抜けられると信頼しているからこそ、異論を唱えるなど誰もしない。
進みは決して速くない。それだけに早鐘を打つ心臓が、今にも引き金を絞ろうと迫る。
波の音と心臓の鼓動しか聞こえない深閑。
そして図らずも、それぞれの有効射程内に捉えた瞬間だった。
青葉の砲声に皆が続いた。
立ち込める砲煙を潜り抜け、一斉に躍り出る。
「敵、戦艦一、重巡二、駆逐三! 複縱陣!」
断続する砲音の中でも、通信を介した青葉の声が叩きこまれた。
「単縦陣! このまま押し切ります!」
号令に艦隊はすぐさま列を作り、敵に左舷を向けるよう鳥海が進路を取る。
陣形のすぐ後ろに水柱が立ち上る。そして手前にも。
夾叉――敵に距離を測られたと判断。
「次の砲撃後、散開!」
先程まで突き進むつもりだった命令がいきなり変わっても、文句を言う者は一人もいない。
そして衣笠が前へ躍り出た。鳥海が加速。加古は後退。青葉が衣笠の背中を見守るように迂回。古鷹は減速。夕張が進路を逆に取る。
一瞬で単縦陣がばらばらになり、ちょうど先ほどまで艦隊があった場所を、いくつもの水柱が噴き上がる。敵の全門斉射――もしそのまま単縦陣を維持していれば、被害は一人だけではなかっただろう。
それでも皆は、敵側に立ち上る爆炎を狙っていた。
距離も狙いも、目に浮かぶ表示枠が教えてくれる。敵側の攻撃とは違う。そうそう外れることなどありはしない。
だから敵に当たっているかどうかも気にせず、我武者羅に砲弾の雨を撃ち降らし続けた。
やがて敵側に朦々と噴き出る黒煙で全てが見えなくなった時だ。
鼓膜を打ち震わせるほどの砲撃をやめ、こちら側も水柱が立たなくなった。
じっと皆が爆煙を凝視して静まり返る中で、夕張が呟く。
「やったんですか?」
「まだわかりません。でも……」
鳥海の振り向いた先――ふと全員も同じところを見つめた。
もう他方にあった艦隊。あれほどの砲撃の応酬で、こちらに気づかないはずなどないだろう。双眼鏡越しでなくても、黒い点と白波が見えた。
砲弾はまだ余っているが無限ではない。
初戦が連戦となってしまっては、比叡たちが先行していた強行偵察の弾切れと損害による撤退と同様……まさしく二の舞になる。
だからといって対処せずに済むはずもない。
「青葉と私で、生き残りを監視します。それ以外は応戦を――」
鳥海が目配せしようと振り向いた先で、当の青葉は中空に視線を彷徨わせていた。
「青葉! こんな時に上の空だなんて……!」
空なら鳥海だけでなく全員が、偵察機の有無をしっかり確認していることだろう。
だが戦闘の渦中で、目前の敵を倒すことに注力しなければいけない今、偵察機に目を配っている時ではない。
しかし青葉は囁きかける。
「いえ。違うんです……何か、聞こえませんか?」
鳥海の眉根に、再び皺が寄った。
偵察あるいは監視において、青葉より優れている重巡はいないだろう。
無論、偵察機を飛ばせば話は変わるが、その目と耳の良さは、青葉は群を抜いて秀でている。戦いの臭いを嗅ぎつける鼻の良さとでも言うべきだろうか。
その青葉が、すぐにでも近づいてくる敵に気づいていないはずがない。もしかしたら黒煙の向こうで敵がどうなっているのかもわかっているかもしれない。
しかしそれを差し置いてでも、青葉が神経を尖らせなければいけないことがあるのだとしたら――。
鳥海が黒煙から目をそらさないままに、未だに空へうろつかせる青葉にたずねる。
「……どんな音ですか?」
「海を走る音です。でも私たち艦娘の主機じゃない。深海棲艦でもない。
……船です。小型の、でもかなり大きなエンジンを積んでいます」
「船? この海域に船なんて……」
次の瞬間だった。
鳥海が見つめていた黒煙が、さらに内側から大きな爆発と飛沫を散らした。
砲弾のそれではない。
「雷撃? でも誰が?」
第一、魚雷を放てる装備を持っているのはこの艦隊で夕張ただ一人であり、当の夕張はこちらに迫りくる敵に砲を向けたままでいる。
夕張の放った魚雷が今さら命中した? 魚雷がそれほど遅いはずがない。
頭に浮かんでくるいくつもの候補を順を追って潰しながら、沈没していく敵だった残骸を見届けた。
「来ました! こっちに向かっています!」
青葉が身構えた先は、敵が沈んでいった場所――まだうっすらと残っている黒煙の向こう。
黒煙を突き破って現れたのは、真っ白な船だった。
プレジャーボート。
駆逐艦娘に相当する速さで駆け抜けていくそれから、影が見えた。
プレジャーボートから飛び降り、青葉たちと面するようにそいつは海に立った。
黒い装甲。青白い肌。纏っている赤の瘴気。
雷巡チ級。
「どうして、深海棲艦が船から……?」
古鷹のぼやきは小さなものだった。だが他の誰かが同じことを口にしてもおかしくはなかった。
深海棲艦とは元より、海底にいるものだと思われていた。地上に拠点を設けているものの、突如として海に現れるのだから、そう考えられてきた。
だがプレジャーボートなどという人類の乗り物を用いる深海棲艦は、今まで聞いたこともなかった。
すぐさま鳥海は記憶をひっくり返す。
深海棲艦に関する今までの常識を覆すような新しい情報――比叡たちの強行偵察。雪風からの報告に一つだけあった。
チ級が口を開く。
『貴様ラノ争イニ 興味ハナイ 私ハ使命ヲ果タスノミ』
――喋る深海棲艦。
雪風の報告には、今まで見てこなかった種別とはいえ、たった一体の深海棲艦にほぼ全員が損傷を被ったとある。
思わず鳥海は奥歯を噛みしめた。
チ級を見た機会は少なくないが、喋る深海棲艦は鳥海のデータにない。本来とは違う計算結果になるリスクが多きすぎる。それも真っ赤に全身を光らせているとなれば尚更だ。
しかし鳥海の気を引いたのは、その発言。
「私たちの……争い?」
言葉の意図が理解できなかった。
艦娘と深海棲艦。艦娘の敵は深海棲艦であり、深海棲艦の敵は艦娘である。争いといえばそれしか存在しない。
「使命って……」
言語を発する。まともに意味の通った言葉であるなら、理性が宿っていることは確かだ。
その時点で鳥海の知る深海棲艦とは一線を逸する特殊な存在であることになる。
「鳥海さん!」
古鷹の通信が飛んできて、視線を向ける。
さらに二体。プレジャーボートから飛び降りたのだろう赤色の深海棲艦が、攻撃を行っていた。
……本来なら古鷹たちが交戦するはずだった、敵のもう片方の艦隊に。
同士討ち。味方への誤射ではない。明確に攻撃の意図を持って、そいつらを事もなげに蹴散らしていく。抵抗する余地すら与えられないまま、意識の外から向けられた砲撃に、深海棲艦たちは跡形もなく沈んでいくばかりだった。
重巡リ級、そして、空母ヲ級。
……やがて海上に残ったのは、深海棲艦だった残骸と、六人の艦娘と、三体の赤色の深海棲艦。
「味方を殺すなんて、どういうこと!?」
衣笠の動揺が伝播する。
深海棲艦の同士討ちなど見たことがない。むしろそれができるほどの知性を揃えていることが、驚きだった。
遅れて鳥海は思い至る。彼らが担っている〝使命〟……おそらく、鳥海の予測や理解が追いつかないだろうことだけが、よくわかった。
それこそ味方を殺してしまってもいいという〝何か〟であることが。
戦慄が冷たく胸を絞めつける。
数ではこちらの優勢であるはずだが、戦うための一歩を踏み出せずにいた。
『素ノママノ艦娘ゴトキ! 小細工ナド不要!』
リ級が吠え、ヲ級が頭部の大きな口を開いた。
空に撒かれる艦載機の群れ。
「対空戦闘準備!」
鳥海の指示が遅れれば一網打尽にされていたことだろう。
降り頻る弾丸の雨を青葉が走り抜けた。
「青葉!」
衣笠がヲ級へ砲口を向け、撃つ。だが羽虫のように飛び交う艦載機の一つを落とすに終始し、ヲ級へ至らない。
衣笠が舌打ちと共に、向かってくる艦載機の群れを火の粉に変えていく。
「青葉、被弾は!?」
「ないですよ。ちょっと掠ったぐらいです」
「なら良かったわ」
視線を降ろさないままに軽口を叩く。
羽音のような、空を飛び回る艦載機の音。
後ろに近づいてきたそれへ振り向く前に、衣笠は砲を持ち上げる青葉の姿を見た。
自らに迫るはずの艦載機よりも、青葉の背中に浮かぶ黒い羽虫へ砲を向ける。
二人の砲撃は同時だった。
そして衣笠の背後で、羽音が爆発音へ変わるのを聞き取る。
確認しなくてもわかる――青葉が迎撃してくれたのだ。
そして青葉の背中に接近していた羽虫も、火玉になって海に落ちていく。
驚異的な相手ということはわかっている。今までの常識が通用しないだろうことも。
だが衣笠にも青葉にも、その緊迫を跳ね除けられる依り代があった。
Vサインを見せる青葉に、衣笠はウィンクで返し……どちらともなく、互いを狙う艦載機へ向かった。
チ級が放り投げた魚雷へ砲撃を重ね、水柱を作っていく夕張。
「その艤装、扱いにくくないんですか?」
鳥海が腕を伸ばして、チ級へ狙いを定める。
之の字を描くチ級へ命中させるのは、ひどく難しく思えた。
「これはこれで良いところがあるんですよ」
夕張の艤装は、軽巡にはあまりない形状をしている。
缶と砲身が一体化し、腰に接続されている。鳥海が今しているような手持ちの砲が、夕張には一切ない。そのため標的を狙うには、体の向きを変えなけれならない。
戦艦ともなれば、いくら艦娘といえども、大きすぎる砲の反動に腕が耐え切れないからこその形状だというのは理解できる。
だが軽巡である夕張はそうではない。
「やっぱり手持ちも取り回しがいいんですけど、やっぱり重いものは重いんですよ」
艤装の内側にあるレバーに砲が連動している。体と缶が繋がっている艦娘なら、わざわざ手動にする必要はない。
夕張が引き金を引いて、放たれた砲弾が、白い雷跡を引く魚雷を確実に打ち抜いていく。
一方で鳥海の砲弾は、動き回るチ級の後ろを掠めて消えた。
「もう一丁!」
夕張の声と共に発せられた弾がチ級を貫いた。
それも、単なる胴体部分ではない。魚雷が吐き出されていた口――砲弾では狙いにくいだろう、その小さな穴の奥。今にも発射されようとしていた、魚雷の頭。
合点がいくものが一つあった。
腰に直接繋がっている艤装は反動を相殺し易い。手持ちの砲はどうしても腕が反動に負ける場合が多く、そして目に表示枠があるのに、肝心の砲塔が照準の邪魔をするというジレンマがある。
例え戦艦級の大砲でなくとも、狙いを定めることに関しては、効率的な形状をしている。
誘爆にチ級が内側から膨れ上がり、爆炎を噴き出してバラバラに飛び散った。
「よし、良い感じ。やっぱり改良を重ねた結果はあるものね」
燃え盛る炎を背景に、夕張が鳥海を振り向いて笑顔を作る。
「どう? 体は鈍っているけど、まだまだ現役よ?」
夕張の笑顔は、戦火を眼前にしても尚、自らが手がけた艤装への誇りで満ちていた。
鋼鉄の塊を纏った右腕の表面を火花と衝撃が散った。リ級が、両手の砲口から弾を次々と吐き出している。
一方的な猛攻。同じ重巡という枠に定義されていながらも、古鷹と加古は防戦一方を強いられる。
巨大な艤装を前に構えた二人の顔に浮かんでいたのは、しかし笑顔だった。恐れが汗となって頬を伝っていても、顔を見合わせれば怖くないと思えた。
例え未だ見たことのない赤色の深海棲艦だったとしても。
「行こうか、加古」
「わかった」
互いを見つめて、頷き、一斉に踏み出す。
前にかざされた右腕。他に例を見ない、一つの塊となった巨大な艤装。重巡の中でも比較的小柄である二人が、防御力と攻撃力を兼ね備えるための手段。
次々と放たれているはずの砲撃が鋼鉄の艤装に阻まれ、二人に届かない。
艤体。機械の身体――それが成せるのは、他の艦娘よりもより艤装との連携を密にできることだ。
衝撃に体を押されても二人は突き進み、被弾に形を歪ませても尚、設置された砲塔がリ級を捉える。自分の目に確認をしなくとも、捉えていることが見えているかのようにわかる。
……そしてリ級の砲撃が止む。いや、距離を詰められすぎて砲撃できなくなったのだ。
両腕の砲口――二人の砲身が挿し込まれた。
身を寄せ合い、加古の背中から呼吸を感じる古鷹。差し出した左手を、加古はそっと握ってくれる。その手がわずかに震えていても、古鷹は心強さを感じていた。
握り合う手が、双方とも機械でできていたとしても。
リ級の表情が驚嘆に歪む。
「撃てーっ!」
二人の一斉発射が、リ級を吹き飛ばす。
血と肉体の欠片――海に飛び散るそれらを見やり、古鷹は息を飲む。
「……ね、ねえ加古」
「あぁ……」
古鷹と同じものを、加古も見ているようだった。
バラバラになった深海棲艦を見ることはとっくのとうに慣れている。
それは一つの戦果だ。まじまじと見る必要はないにしろ、戦い続けていく中で必ず目にするものだ。
だが、二人はそれから視線を逸らせない――。
空に浮かぶ艦載機群が数を減らしていくのがわかる。
既に二体の深海棲艦を倒し、残った一体へ青葉と衣笠は視線を向ける。
「さあ、追い詰めたわよ」
「意外と楽ちんだったね」
いつの間にか遥か遠くへ距離を置いた、空母ヲ級。
何の表情を浮かべることもなく、ただ淡々と、仲間たちが沈んでいく様を眺めていた。
『……上出来ダ』
ヲ級が背を向けた。
「ちょっと、逃げるの!?」
追いかけようとした衣笠の肩を掴んで引き止めた青葉が、通信を飛ばす。
「追いかけますか?」
「……やめましょう。もしかしたらまた敵が増えるかもしれないし、状況を整理しないと」
鳥海の返信に、衣笠も動きを止めて、青葉と共に振り返る。
戦禍はごく軽微に抑えられた。だが古鷹と加古の様子が、一時とは言え敵をいなした喜びではないことを悟る。
敵の残骸らしきものを拾い上げる古鷹を見て、衣笠は疑問符を頭に浮かべた。
……そんなもの、何で気にする必要があるの? と。