東方project 誘い血   作:みみたぶ

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幸福の味

 大学生にもなって年下の女性の胸でマジ泣きをしてしまった・・・八意さんの包容力に全力で甘えてしまって目を合わせるのが恥ずかしい・・・けど前向きに考えよう!八意さんは力を貸してくれると言ってくれた。泣いて逃げ出してばかりじゃいられない。とりあえず今は情報を集めなくては・・・

 

「八意さn「永琳」えっ?」

 

「他人行儀みたいで嫌いなの。私も血心と呼ぶからあなたも永琳って呼んで?」

 

「・・・永琳(ちょっと照れ臭いな)、早速なんだけど自分が出会った狼みたいな化物はなんなんだ?」

 

「妖怪よ。それも都市周辺の山を治めていたヌシ。アレに出会って生き延びたのは極少数しかいないわ」

 

 「妖怪」俺がいた世界では絵本や御伽噺でしかでてこないが、この目で見た以上信じるしかないだろう。確かに本能で感じた生物としての差。狩る側と狩られる側の絶対的な差が記憶に肉体に刻み込まれている。

 

「私を含めた精鋭部隊が妖怪の勢力を抑えるためにヌシを退治しようとしたの。その捜索中に、既に息絶えたヌシと瀕死のあなたを見つけたわ。」

 

「アレを退治しようとしていたのか・・・」

 

「実際は偵察みたいなものね。正直あの兵士達がまともに戦えるとは思ってなかったわ」

 

 事実、死体のヌシを見ただけで震え上がっていた兵士達なのでその評価は間違っていなかった。

 しかしふと疑問に思う。目の前の少女が、銃を持った兵士達に混じって妖怪退治とはどういうことなのだろうか。その視線に気付いた永琳は

 

「私はあなたが思ってるより何倍もすごいんだから!私の発明品が都市にどれだけ貢献したか!それに並の妖怪の百匹や二百匹片手で充分よ」

 

 ふふんっと手を腰にあてて胸を張るえいりんの様子に頬が緩む。やはり行動の節々に年相応の反応が見てとれる。その行動に恥ずかしくなったのか、赤面しながら話を変えてきた。

 

「あなたのいた世界は妖怪はいなかったみたいね?それに話を聞く限りここの都市の方が技術レベルは高いようだし・・・別世界から来た?それとも過去から来た?いいえ、この都市以前に文明は無い・・・もしかして・・・未来?だとしたらーーーーーーーーー」

 

 質問しておいて顔を伏せ考え事に没頭し始めた。その間に血心は目を彷徨わせて永琳の自宅を観察した。自宅というより研究所?簡易ベットとソファー、それ以外は大量のガラス瓶に入った液体や錠剤、赤い薬液のようなものがフラスコの中で輝いていた。相当広い部屋で全部永琳が作った物らしい。都市イチの頭脳というのも本当のことなのだろう。そこで永琳の考えがまとまったようで顔をあげて口を開いた。

 

「希望を持たせないように可哀想だけどはっきり言うわね。あなたは元の世界には戻れないわ」

 

 その言葉を聞いてショックを受けると思ったが、自分でもなんとなく分かっていたのだろう。「そうか」と言って溜め息をつくだけであった。

 

 もう家族や友人たちに会えない・・・大学で三人しか居ない部活も自分が居なくなったことで解散するのだろうか・・・いや蓮子ならメリーを引き連れて今まで通り活動してそうだな、と友人たちとの思い出が脳裏にすぎる。

 

「一応仮説の一つとしてあなたは未来人かもしれないわ。過去にタイムスリップしてきたの。でもあなたがいた世界とこの世界は同じとは限らないわ。難しい話になるけど世界線っていうのかしら。小さい差異かもしれないけど全く同じ世界ではないのよ」

 

 これが元の世界に戻れない理由よ、っと言って永琳は口を閉ざした。永琳がここまではっきりと言ったのだから、自分がいくら考えても違う答えはでないのだろう。さあ、これからどうしようと途方にくれてしまう。帰れないならこの世界で生きていくしかないのだろう。まずは職と住むところを探さないと・・・と考えたが今の自分に身分を証明する物がない。これはさっそく詰んでいるんじゃないかと考えていると

 

「提案があるんだけど」

 

と永琳が続けて、

 

「私の助手としてここに住まない?ちゃんとお給料もだすわよ。それに衣食住を保障するし、助手といっても簡単なことしかさせないから、ね?ね?そうしましょうよ、それが一番いいわ!」

 

 提案と言っておきながら有無を言わせぬようにぐいぐいと詰め寄ってきて、少し身が引けてしまったが断る理由はないだろう。永琳といっしょに住むというのは男女的に不味いんじゃないかと思ったが、年下の高校生くらいの女の子に手を出さないモラルくらいは持っているつもりだ。

 

「ぜ、是非こちらからお願いしたいくらいだよ。よろしく頼むよ永琳」

 

 と返すと、顔一面に花が咲いたかのような笑顔で血心の手を取り

 

「こちらこそよろしく頼むわね血心!」

 

 そう言って手を握り上下に激しく振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元々永琳は笑わない人間だった。何かを発明するたびに、都市の連中は媚びる様な笑みで近寄ってきて賞賛の嵐を送ってきた。実際はその頭脳を都合よく手に入れられないかと画策し、永琳を便利な道具としてしか見ず、永琳自身のことを見てくれる人間は誰一人居なかった。今は知識や富の分配という名目で軍に所属させられている。実際は飼い殺しにして管理するためだろう。幼い子供の頃からそんな生活を続けてきたせいで人間というものに興味なんて湧いたことがなかった。しかし血心と出会い一緒に住み始めてから、永琳は心から笑うことができるようになったのだ。なんとか一緒に居られる時間を増やし、常に血心の隣にいるようにしてきた。

 血心も妹が出来たみたいでうれしかった。永琳の手伝いや一緒に料理を作ったりと、他の人間が見たら仲の良い兄弟にも見えただろう。そして一週間ほど経った夕方、永琳と夕食の準備をしていると

 

「イッ---つぅぅぅ」

 

 やってしまった。どうやら血心が包丁で指を切ってしまったようだ。

 

「ごめん永琳、絆創膏持ってきてくれない?」

 

 そう頼んでも永琳は返事もせず立ったまま、指から流れる血に目が釘付けとなっていた。その顔からは普段の聡明な目つきが消え、呼吸も速くなっていた。

 

「え、永琳?」

 

 異様な雰囲気にどうしたのかと続けようとしたら、駆け足で近づいて来て指ごと口の中に咥えこんだのだった。

 

「!?」

 

 ペロペロと舌が傷口を舐めて痛痒いような痺れる感覚が広がる。突然のことで驚き恥ずかしくなって指を口から引き抜いた。指から口に糸が引き、永琳の「あっ・・・」という甘い声が聞こえた。

 

「きゅ、急に何をするんだ!?」

 

 思わず叫んでしまう。

 

「えっとなななんていうか、しょ、消毒!消毒のためよ!舐めてばい菌が入らないようにしたの」

 

「そ、そうなのか・・・で、でも女の子が男の指を軽々しく舐めるもんじゃないぞ。自分を安売りするもんじゃない」

 

 そう言って赤面しながらその場を離れて絆創膏を取りに行った。恥ずかしくて早歩きになってしまう。

 全く、永琳は時々驚くくらい積極的だ。朝起きたときに永琳が目の前で見つめていたときは心臓が止まりそうになった。起こしに来たが気持ちよく寝ていたから寝顔を見つめていたらしい。勘違いしてしまうじゃないか。

 ドキドキしながら絆創膏を取り出し指に巻こうとする。

 

「え?」

 

 さっきまであったはずの傷は跡形もなく消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちゃった・・・嫌われたかも・・・」

 

 永琳は泣きそうになりながら離れていく血心を見つめて呟いた。どうしてだろうか彼の近くにいる時も甘いような離れたくない香りがしていたが、彼の血からは濃厚すぎる香りがただよっていた。舐めたいという気持ちで頭が一杯になりそれ以外考えられなくなってしまった。体が勝手に動き彼の血を舐めた時は、絶頂のような幸福感多幸感が感じられた。今の永琳の頭の中は後悔と幸福感が交じり合って、まともに考えられない。

 

 

 

 ただ「もう一度あの血を味わいたい」それだけが永琳の頭の中で強く残っていた。

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