東方project 誘い血   作:みみたぶ

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目覚め

 

 

 

 今は盆地となり木が生い茂る森の中、"それ"はあった。森の動物達にとっては日常の光景、自らが産まれてきた時からそこに在り続けるもの。それは赤い球体であった。その色は、業火の炎のようにも血のようにも見え、見るものを引きずり込みそうになる深い赤であった。

 

「・・・・・・・っ!」

 

 数百年そこに在り続けた赤い球体に異変がおきる。

 パキンッ

 球体に突如ひびが入る。

 ピキピキピキ

 ひびはすぐ全体に広がっていき、呆気なく砕け散ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「-------------------------ぇっ---------いよ--------------------------------------起きなさいったら!」

 

「っは!?」

 

 視界に眩いまでの光があふれてくる。咄嗟に目をつぶって手で暗闇をつくる。ん?腕?

 

「・・・・・え?腕が・・・・・ある?傷も・・・・・・」

 

「なによ、この私が起こしてやったんだからさっさと起きなさいよ!」

 

 隣で声を張り上げる人物は誰だろう。少女のようにも聞こえる、しかしどこか逆らえないような神聖な空気をもつ声だ。なんとか目を開けて少女の顔を見る。可愛らしい顔つきで目も髪も金色、変な帽子を被っている。

 

「君は・・・・誰だい?というかここは・・・・」

 

 起き上がりながら、なんとか頭を整理しようとする。

 俺は死んだはず・・・・ヤツと戦ってボロボロのまま倒れて・・・・記憶にある最後の瞬間は黒い爆弾と目を閉じても分かる眩い閃光だった。

 

「人に名前を聞く前に、自分が名乗ったらどうだい?」

 

 それもそうだと思いながら答える。

 

「俺は・・・血心。都市に居たはずなんだが・・・・君は都市の人間かい?」

 

「私は洩矢諏訪子よ!都市なんてものは聞いたことがないけど・・・ここは洩矢の国、そしてこの国の支配者!人間なんかよりずっと力のある神様なんだから!」

 

 ちゃんと敬いなさいよね、と少女が自信満々に喋っている。

 

 ・・・・・う~ん、神様といわれたら身にまとうオーラのようなものが滲み出ているような気がする。だけどこんな子供が神様って・・・・まぁ人?は見かけによらないって言うし・・・

 

「え~とじゃあ、諏訪子ちゃん?俺はなんでこんなところで寝てたんだ?」

 

「ちゃん付け!?この私に"ちゃん"なんて言ってきたのはあんたが始めてよ・・・・う~~祟ってやろうかしら・・・・」

 

 諏訪子は腰に手をあて顔を近づけながら、じっとりとした目でこちらを睨んでいる。

 

「・・・・・ハァ~、下の名前で呼ぶのはいいけど・・・・ちゃん付けはやめなさい。諏訪子と呼ぶのを許してあげる。寛大なこの私に感謝なさい!」

 

「あ、ありがとう?諏訪子」

 

 なんだかよく分からないがとりあえずお礼を言っておく。

 

「うむうむ、くるしゅうない。それで・・・・血心だっけ?あんたが寝てた理由なんて知るわけないじゃない。動物達がやけに騒いでたからね、様子を見にきたの。そしたらあんたが寝てたって訳。妖怪も出るようなこの森に寝てるなんて随分と余裕そうじゃない。あんたももしかしたら妖怪かしら?だとしたらただじゃ・・・・・・」

 

 そう言って諏訪子は一気に近づくと、スンスンと鼻を動かした。

 

「あれぇ?あんた何この甘い匂い。それに妖気はないけど霊力も感じないわねぇ?ん~~~?」

 

 そうして諏訪子はずっと俺の首筋に顔を近づけて、スンスンと鼻を動かしている。ちょっと恥ずかしいな・・・・汗臭くないだろうか、相手は少女だというのに少しどぎまぎしてしまった。というかなんで嗅いでるんだ・・・・

 

 

 

 

 一分ほど経っただろうか、そろそろ離れてくれと言おうとした瞬間

 

「ガブッ」

 

「痛ってええええええええええ!!!ちょ、ちょっと止めろバカ!離れろ!」

 

 首筋を噛まれてしまった!かなり強く噛みついており、少女の犬歯が首筋にめり込む。

 なんとか少女の脇を掴み、持ち上げた。少女の口端から俺の血が一筋流れ出ている。

 

 

 

 

抱き上げている諏訪子の目が俺を貫いた。冷たく赤く濁った瞳は蛇のようで、俺は睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。

鼓動がバクバクと速まる。これはまずい・・・・・目の前の少女に警戒もなく近づいたことに後悔し、このまま動けないまま・・・・・・・と嫌な想像が頭をよぎっていると

 

「・・・・・・・・・・・ってあれ?私、何を?」

 

少女の雰囲気が最初に出会った頃に戻った。目も金色に戻り「おーろーせー!」と喚いている。

 

「き、急に噛み付きやがって、お前は犬か」

 

人が変わったかのような反応に戸惑いながらもゆっくりと彼女を下ろす。

 

「いやどっちかというと蛇なんだけど・・・・そうじゃなくて!あなたこそ何者よ!神様を惑わすなんて・・・・・人間じゃないわね・・・・・まさか・・・・・不審者!?」

 

「不審者はお前!初対面の人間に噛み付くんじゃない」

 

「そういえばなんで噛み付いたんだろう?でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(あま-ておい--った)ボソボソ」

 

 いったいこいつはなんなんだ。急に噛み付いて人が変わったかと思ったら元の生意気な少女に戻りボソボソと一人で喋りだした。急に考え込むところは永琳に似てるな、と思ってると

 

「そういえば永琳、無事だよな・・・・・」

 

永琳勝手に行動したこと怒ってそうだな・・・・・・

 

ってそれよりも今はここから離れるべきだろう。まだ昼間とはいえ木々が生い茂り薄暗くなっている。夕方になる頃には真っ暗だろう。

まだ動悸がするが目の前の少女に落ち着けるところまで案内してくれと頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず私の社まで来ないかいと、諏訪子の提案でその場を離れることにした。諏訪子に着いて行く途中、そっと首の傷に触ってみると既に傷はなかった・・・・・・・・・まぁそうだよな・・・・・・・・

 

 歩いてる最中、里の中を見たが明らかに文明が退化している。都市にあったようなハイテクな機械なんてものは何もない。日本の田舎にあるような農村の風景がそこにあった。やはり爆発で全てが吹き飛んだんだろうか。

 

「ふぅ~やっと着いたね。血心にあわせるために、飛べたのにあえて歩いてきたんだから。感謝しなさいよ!」

 

 少女が神様というのは本当なのだろう。通りかかった里の人たちは諏訪子の姿を見つけるとその場で深々と頭をさげていた。こんな少女の姿でも里の人にとっては畏怖の対象なのかもしれない。俺も先程の諏訪子の様子が変わった事を思い出し、このまま着いていってもいいのかと思ってくる。しかし行く宛もなく、状況も分からないままではどうしようもないだろう。そうして俺は気まずそうに諏訪子の後ろを歩くだけであった。

 

社につきやっと腰を落ち着かせる。そしてここまでの道中で気付いたことがあり考え事を始める。

 思い起こすのは俺の寝ていたところからここまでずっと坂道だったということだ。やっと平坦な道が出てきてそこに里があり社があった。坂道が終わって後ろを振り返ると、木が生い茂ってはいたがクレーターのような地形が見てとれた。嫌な想像が頭をよぎる。

 ここは都市があったところじゃないのか、そしてあの爆発で全てを消し去ったんじゃないか。俺がなぜ生きているのか分からないがあのクレーターは爆心地であり、そうなると森の木の太さから相当の時間が経っているということ。そこまで考えていると

 

「ちょっと~、一人で考え事しないでよ。つまんないじゃん!私とお話しようよ~」

 

 やっぱり神様というのは嘘のような気がしてきた。ただの小さな女の子にしか見えない・・・・

 

「はいはい、じゃあ・・・俺のことを話そうか」

 

 そういってこれまで過ごしてきた日々のこと、俺の想像していることを諏訪子に説明していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハハ、血心の作り話はずいぶんおもしろいねぇ。じゃあ血心は私より年上ってことかな?」

 

 ケラケラと諏訪子が笑っている。どうやら俺の話を作り話だと思っているらしい。まぁそれも仕方ないか・・・・高度な文明があってその人たちは月に行った。自分は妖怪と戦って今まで寝ていましたって話なんて誰も信じないよなぁ・・・・けど諏訪子、誰が見ても俺は諏訪子より年上だと思うぞ・・・・・・・

 

「お気に召したかな?じゃあ次は諏訪子の番だ。諏訪子のこと、あと俺が倒れていたクレーターのような場所についてだ」

 

「私のこと?ん~私はえらい神様!・・・・・・・・・終わり!」

 

 胸をはってるが、傍から見ると子供の妄想を自信満々に言っているようだ。

 

「クレーターってあの大きなへこんだ地形のことだよね?あそこは私がいじってああしたんじゃなくて昔からあるよ?少なくとも私が生まれたころからあった」

 

 うーん、やっぱりこの場所は元都市があった場所なのだろうか?でも偶然って事もあるしなぁ・・・・・・・・・というか考えても仕方ないな!今生きてるんだからこれからの事を心配しよう。

 

 

「そういえば俺って家もなくって食べるものもないんだ。だから空き家とかこの近くにないかな?暫くしたら都市の情報を集めに旅に出るから雨風が凌げられればいいんだけど」

 

 今の状況を話しておく。家も食料も無いのは本当のことなので、施してくれなかったらのたれ死んでしまう。もちろん施してくれた分、働いて返すつもりだ。死んだと思ってたら生きてたのに、飢え死にってのは勘弁しだからな・・・

 

すると諏訪子は立ち上がって

 

 

 

 

 

「ここらに空き家なんて都合のいいものは無い。ここで暮らしなさい」

 

 

 

 

 

 

急に諏訪子が真顔になり、有無を言わせない命令口調になった。

「それに旅にでる必要もない。私が情報を集めてくるから血心はここに居なよ」

 

「え?でも・・・迷惑かけるから遠慮するよ」

 

「食料もない、行く宛もない人間が何遠慮してんのさ。ここに居ろ」

 

正直怖い。体は少女の癖に身に纏うオーラが急に威圧感を与えてくる。そして噛まれた事を思い出す。

 ・・・・・・まぁあの時はじゃれてきただけだよな!力加減も人間と神様とじゃ全く違うだろうし、ただのびびりな俺の勘違いさ!

 

それに相手は子供じゃないか・・・・永琳のときは年頃の娘だからと遠慮してたが今回は見た目は小学生。むしろ親代わりとして教育すべきかなと思う。そうして無理矢理自分を納得させて諏訪子の提案を受けることにした。

 

 

「あ、ありがたいよ。しばらく世話になる」

 

 

「うんうん、神様の言うことは素直に聞くのがいい!」

 

 

 そう言って諏訪子はやっとにっこりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クスクスクス

 

 

 

 

蛇って咀嚼して細かくした方がすぐ消化できるのに、なんで丸呑みにしちゃうんだろうね?

 

 

 

 

 

 

多分それは・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

獲物を自分の間近に置いておくため

 

 

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