艦隊これくしょん 〜龍騎士提督奮闘記〜【完結】 作:無限正義頑駄無
本作ではトランプ、もといラウズカードのスートは台詞・地の文問わず♠︎・♦︎・♥︎・♣︎と表記します。
ご了承ください。
出撃
春十が呉鎮守府に着任した翌日。
彼は、横須賀提督や舞鶴提督から教わったこの世界の情勢を山城と共に再確認する。
「この世界の2000年8月15日、深海棲艦は世界各地に突如として出現した。各国は各々の軍事力を以って排除しようとしたが特に効果なし」
「日本を含めて海に面している国は、沿岸部の土地を軒並み焼かれ、シーレーンが完全に断たれました。海を越えての物資のやり取りには航空機が必要となり、コストの高い手段にどの国も苦しい思いをしています」
「そして去年こと2015年の7月、横須賀提督がこの世界に転生。長門を建造して指揮下に置き、深海棲艦への反攻が始まる」
「同年末に舞鶴提督が転生。金剛を建造して、横須賀提督と共に一部シーレーンの奪還に成功しました」
「そして翌年の2016年。俺と光莉が転生して山城を建造。俺が呉鎮守府に着任して3人目の提督になる。他国は日本から技術提供があったものの艦娘の建造に一度も成功しておらず、現在の最前線は西方海域、か……」
春十と光莉が最初に居た町は、深海棲艦によって破壊された町だったという訳だ。
横須賀提督や舞鶴提督も、春十たちと似たような状況でこの世界に転生したらしい。
同伴者が居ない分、ふたりは春十以上に苦労しただろうことを考えると、自分はまだ恵まれた方だと春十は思った。
情勢の再確認が終わると、山城が春十に抱きついた。
「どうした、山城?」
「かつては画面越しでしか会えませんでしたが、今はこうして触れ合えるのが、とても嬉しくて、夢みたいです……」
山城の春十を掴む腕に力がこもる。
その姿はまるで、幼子が親に「もうどこにも行かないで」と言っているかのようだった。
春十は山城の頭を撫でる。
しばらくして落ち着いた山城は、春十に自身の装備について具申する。
「提督、わたしそろそろ瑞雲を1個降ろして火力を上げたいんですけど」
「あのな……。千歳型が居たゲームの頃ならともかく、今は偵察ができるのはお前だけなんだよ……」
現状、広範囲の索敵ができるのは山城だけである。
瑞雲は空母には搭載できないのだ。
もっとも、たとえ空母に搭載できる偵察機を開発できたとしても、春十は使わないだろう。
空母の貴重な装備スロットを潰すくらいなら、他の艦に偵察機を搭載させるからだ。
「ブラウザ版だと空母に搭載した偵察機を利用した、『弾着観測射撃』なんてシステムがあるそうだが、アーケードには無かったからな……」
「でも今は現実ですよ?」
「そこなんだよな。確かに実践すれば出来るだろうが、俺は弾着観測射撃の存在は知っていても詳細は全く知らないんだ。横須賀提督か舞鶴提督が知っていればいいんだが……」
そう言う春十に、山城が次の案を出す。
「じゃあ、わたし以外に瑞雲を搭載出来る艦娘が着任すれば良いのでは?」
「艦隊のバランスを考えると、水母や航巡を山城と同時に出撃させる機会は限られるな。だとすると航空戦艦一択なんだが……」
「わたしを含めて航空戦艦になれる4人の艦娘の内、伊勢さんは横須賀に、扶桑姉さまは舞鶴に既に着任していますね」
この世界では、同一の艦娘が同時に複数存在することは無い。
なので、横須賀や舞鶴に山城・赤城・加賀・睦月は居ない。
逆に、春十の元で長門・金剛・那珂・扶桑が今後建造されることも無い。
轟沈した場合だが、横須賀提督も舞鶴提督も轟沈者を出していないので詳細は不明だ。
そして未だ建造されておらず、航空戦艦になれる艦娘は伊勢型戦艦2番艦『
「俺の所に日向は来ないだろうな。来たとしても上手くやれる未来が浮かばない」
「…………」
十分育てたのに改にならないどころか、ノーマルカードがダブりまくった日向に、春十はあまり良い思い出が無い。
山城のように記憶を引き継いだりはしていないだろうが、どうしても前世を引きずってしまうだろう。
「とにかく、俺の航空戦艦は山城だけだ。だからその案も却下だな」
「そうですか……」
山城が春十にとっての『特別』であることを表すかのような発言を、山城は嬉しく思うが経緯を考えると少し複雑である。
山城との話は終わり、春十は執務室から出て海岸に向かう。
そこにはターバンを巻いた長身の男性が居た。
彼の名前は
♣︎のカテゴリーK、タランチュラアンデッドだ。
彼はアンデッドなら誰もが持っている闘争本能が薄く、争いを好まない性格をしている。
彼を始めとして、♣︎の上級アンデッドは皆話が通じる相手なので、こうして解放しているのだ。
例えば♣︎Jのエレファントアンデッド・
当然、♣︎Qのタイガーアンデッド・
「やあ、春十くん」
「嶋さん。ここで何をしていたのですか?」
「他のアンデッドの気配を探っていたのだよ」
「なるほど。それで、どうでした?」
「やはり、この世界には♣︎と♦︎の26体しか居ないみたいだね」
「そうですか……」
安堵と落胆が混ざった声を漏らす春十に対し、嶋は「ただ……」と前置きをして、
「♥︎のアンデッドは近い内に現れそうだけどね……」
そう言って、嶋は数時間前に出撃した艦娘たちが居るであろう方角を眺める。
☆
1-1 鎮守府正面海域。
ゲームならそう呼ばれているエリアを、2人の艦娘が移動していた。
ひとりは睦月。
♣︎の上級アンデッドは解放されているので、所持しているカードは10枚だ。
♣︎J〜♣︎Kのプロパーブランクは春十が預かっている。
もうひとりは、古鷹型重巡洋艦2番艦『
春十が呉鎮守府に着任して、最初の建造によって生まれた艦娘だ。
この出撃は、睦月にカードを用いた実戦を経験させることと、生まれたばかりの加古の育成の意味を込めている。
ちなみに、呉を含めて日本周辺の深海棲艦は横須賀提督と舞鶴提督が、春十が転生する前にほとんど殲滅している。
とはいっても全滅ではないので、はぐれの深海棲艦が偶に出没する。
これは既に奪還した南西諸島海域や北方海域も同様である。
現在、呉鎮守府の艦娘で、最前線で戦力になるのは山城だけだ。
他の艦娘が最前線で戦えるレベルに育つまでは、これらの海域の深海棲艦を掃討することでレベルを上げるという方針だ。
「敵艦発見!準備はいいかにゃ〜ん?」
「もちろんだよ!」
旗艦の睦月の問いに加古が元気良く応じて、戦闘が始まる。
敵の編成は、軽巡ホ級が1隻に駆逐イ級が2隻の、合計3隻だ。
「いっけー!」
加古の最初の一撃が、駆逐イ級の1隻を葬る。
それに対して軽巡ホ級が反撃し、砲弾が睦月に向かう。
睦月は慌てる素振りを見せず、
♣︎《GEL》(1400MP)
『4600AP』
カードの効果で睦月の全身が装備を含めて液状化し、砲弾が睦月の身体をすり抜けて海に着弾して大きな水飛沫をつくる。
当然、睦月は無傷である。
「睦月は怒りの王女、レンゲル・バイオライダーにゃしぃ!」
「何なのそれ?」
睦月が決めポーズを取って加古が呆れている間に、駆逐イ級の砲撃が♣︎7の効果が切れた睦月に襲い掛かる。
「ひにゃあっ!?」
命中して小破する睦月。
春十の指導でカードはちゃんと使いこなしているが、どこか抜けている睦月だった。
「むぅ〜、睦月は怒ったんだから〜!」
♣︎《SMOG》(2000MP)
『2600AP』
相手の視界を奪った睦月は、死角に回り込んでコンボを発動させる。
♣︎《BITE》(1200FP)
♣︎《BLIZZARD》(1200MP)
♣︎《BLIZZARD CRUSH》
『200AP』
イ級とホ級に向かってジャンプする睦月。
睦月の足から冷気が噴き出し、イ級たちが凍りつく。
続けて放たれる睦月の挟み蹴りで、イ級たちは粉々になる。
沈んでいくホ級とイ級の残骸。
「にゃ〜……。睦月、一生の不覚ぅ……」
「ドンマイ睦月。でも提督はこれくらいじゃ怒らないだろうし、あまり気にしなくていいんじゃない?あたしは早く帰ってお昼寝したいな〜」
今回の出撃は、帰還のタイミングを旗艦の睦月に一任されている。
たった今撃破したのは本日2艦隊目であることだし、睦月は鎮守府に帰投することにした。
加古の提督改装先は嶋さんの台詞がヒントです。
彼女を選んだ理由は、図鑑No.を見れば納得してくれるかと。
最近のアーケードの収穫
響改(建造)
飛龍改ホロ(3-3追撃戦)
改を持ってない状態でいきなり改ホロが出たのは、愛宕に次いで2回目です。
あちらは建造で出てきた改中破ホロでしたが。