今はぐたぐた明治維新が始まってますね。また番外編で報告しようと思います。
月一投稿なのに内容が薄いかもしれませんが、あと2、3話ぐらいで序章は終わるんじゃないかな?
そういえばツイッターなる物を始めました。基本ニコ生のリツイート用ですが、これからはそっちでも更新次第、報告しようと思います。
アバター名や作者名と同じ、青眼で検索したら出てくると思います
「……ね。……ろがね。……………起きろ黒鋼!!」
「ファッ!?」
誰かに名前を呼ばれ、眠っていた俺の意識が戻る。目を開いて周りを見れば、自分と同じ制服を男女が、不思議な物を見るように俺を見ていた。それを見た俺は数秒遅れて、自分が元の世界に戻って来たのだと気付いた。
「…どうした黒鋼?早く問題文を読め」
「あ、は、はい。すいませんでした………」
喜んだもの一瞬、俺は机に置かれた教科書に書かれた文を読み上げる。ああそうだ。これだ。ありふれて変化がないようである世界。戦争なんて物と関わりがない平和な世界。それが、それこそが俺の―――
「違うな。間違っているぞ黒鋼」
いつの間に近づいたのか、教卓にいたはずの先生が俺の席近くにまで歩いていた。そして、俺を取り囲むようにゆっくり、ゆっくりとクラスメイトが近づいてくる。
「ここはあなたのいるべき場所ではない」
「ここはお前のいるべき世界ではない」
「ここに貴様は存在してはならない」
一つ、また一つと俺に告げられる言葉。それは、俺という存在を否定する言葉だった。普段の俺なら冗談だろ、と笑って済ませるが、どういうわけか口どころか体さえ動かない。
「ところで黒鋼。一つ聞いておこう」
「……?」
一番近くにいた先生が口を開いて尋ねる。それに釣られて、俺は見上げる形で先生の顔を見る。いや、
「つい先ほどまでお前たちが倒していた骸骨共は………こんな顔をしていたか?」
先生が顔に手を当て、ゆっくりと手を下すと、そこにあったのは見慣れた教師の顔ではなく、肉を削ぎ落した骨の顔だった。
「ヒッ……!?」
突然の事に驚き、情けない声を出してしまう。だが、変化はそれだけではなかった。教師の姿が顔を始めとして、全身が骨の怪物に変わったのだ。それと同時に、クラスメイト達も姿も冬木にいた化け物、スケルトンへと変化していく。
「痛かった」
「苦しかった」
「熱かった」
「眩しかった」
「悲しかった」
「「「「「全てお前のせいだ。黒鋼研砥」」」」」
「――――アアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!?!?!?」
俺に対する恨みつらみが籠った声を聴かされ、体の自由が戻ると同時に、それを忘れようとして声を上げて叫ぶ。だが、さっきの光景と声が脳裏に焼きついたのか、中々気が晴れない。血が出るまで頭に地面をぶつければ忘れれるだろうか。本気でそんなことを考えたその時。
「うるさいぞ。少し黙るがいい」
「グェッ!?」
雑に振るわれた手が頬をたたく。ひんやりと冷たい手に叩かれ、少しだけだが考える余裕が生まれた。
「ここは………?俺は確かセイバーに気絶されられて………それで攫われて………」
「ようやく思い出したか。自分の置かれている状況を」
冷たい女性の声が洞窟に響き渡る。だが、それと同時にもっきゅもっきゅという、可愛らしい音も聞こえる。まさか、と思いながらも、音のするほうに首を向ける。
そこには予想していた通り黒いセイバーがいて、その姿を見て何故か少し安心してしまった。
「…何をしているんだ?」
「見ればわかるだろう。決戦前の食事だ。はむ」
黒い聖剣を地面に突き刺し、手ごろな大岩に腰を下ろしたセイバーが、どこから取り出したのかハンバーガーを黙々と食べていた。ついでに、さっきまで着用していた鎧も解除しており、どこかで見たことのある黒いワンピースを着ている。こちらを気にすることなくハンバーガーを食べていたが、俺の視線が気に障ったのか、じとっとした目でこちらを睨み付けてくる。
「ふぅん。物欲しそうな顔しても無駄だ。これは私のジャンクだ。貴様にはやらん」
「いや、別に欲しくもないし何も言ってないんだが……」
どうやら、俺が腹を空かしてハンバーガーを欲しそうにしていると勘違いしたようだ。というか、あの
それにしても、何故、俺は彼女に誘拐されたのだろうか。サーヴァント戦でマスターを狙うのは道理だが、それは殺した方が良いという意味でだ。マスターを殺してしまえば、それに従っていた
「なぁ、え〜と、セイバーさん?一つ聞いてもいいでしょうか?」
「なんだ、もう一度言っておくがこのバーガーは私の物だ。断じて貴様にやらん」
「いやそれはいいから!いや、そういうのじゃなくてだな……」
目の前に座っている少女を見て、つい言葉が詰まってしまう。あまり女子、というかアルトリア・オルタレベルの美少女と話した事はないし、そもそも出会ったことすらない。いつも画面越しに見るぐらいだったし、知り合い以外の人と話す事だけでも俺にとってハードルが高すぎるのだ。
まぁ、そんな事を愚痴っても仕方がないので、単刀直入に聞いてみることにする。そうした方が彼女にとってもいいだろうし。
「え〜とだな、何で俺を攫ってきたんだ?あの時、何も出来ないまま殺した方が都合が良かっただろ?」
さっきも言ったが、マスターを失えばサーヴァントは消滅する。元々サーヴァントは霊体で、その現界を維持する為にマスターが令呪を通して魔力を供給している。なので、マスターを殺す=サーヴァントを倒すという事に繋がる。
その通りなら、さっきのアルトリア・オルタの行動は本当に解せない。あのまま俺を殺しておけば、二人のサーヴァントと戦う必要も無くなるのだから。それに加え、今の彼女はヘラクレスという最強の味方もいる。後々の事も考えておけば、あの時殺しておけば良かったのは確かなのである。
「ふむ……何、貴様があのブーディカのマスターだと思うと、少し興味が湧いただけだ」
「は?そ、それだけ?」
「ああ。それだけだ。それより貴様……中々面白いな」
金の髪に金の瞳、雪みたいに色白い肌に、漆黒のワンピースを着た騎士王がサディスティックに笑いながら此方に近づいてくる。殺気を全く感じないので、俺を殺そうと近づいて来るわけではないのだが、物凄い美少女がこっちに近づいて来るので、思わず後ずさる。
「む、何故逃げる」
「そ、そりゃいきなりこっちに近づいて来たら離れるだろ!?」
「……ならば命令だ。そこから動くな」
「ッ!?」
面白そうに笑っていた顔が一変。目を一気に細めて殺気をはなってくる。突然の事に体が動かなくなる。多少武道の心得がある分、無駄にその殺気の質を感じ取ってしまう。これは本気だ。動けば間違いなく殺される。そう俺の何が叫んでいる。
「そのままでいい。ふむ……特に変わったところは無いな」
「ちょ、どこを触って……!」
俺が動かなくなったことをいい事に、頭や腕を触って来る。誰かに触れられたことなどあまりなかったので、とてもくすぐったい。
(つーかやばいやばい!!近すぎんだよ!なんかいい匂いするし……というか金髪なんて初めて見たけどやっぱ綺麗だな……)
頭や腕だけでなく、下半身にも触ってくる。とてもくすぐったいがここは我慢する。ここで踏ん張らなければ真剣に殺される、とそこまで考えた時だった。アルトリア・オルタの手が股間にまで伸びて来たのだ。
「ちょ、アンタどこ触ってるんだよ!?」
「どこと言われてもナニだが?」
「いきなりそんなとこ触られても驚くっつーか!!触ってんじゃねぇよ!?」
いきなり股間を触って来たアルトリア・オルタから、思わず一気に距離を取る。というかあれ本当にFateの顔とも言えるあの騎士王なのか!?オルタ化してるとはいえ、女性だろ!?もちっと恥じらいをだな……
「おい、貴様は今何を考えていた」
「別に何も考えていませんからその聖剣黙って下ろしてもらえませんかねぇ!?」
下手なことを考えた直後にこれだ。流石直感スキルランクA。未来視だけでなく読心スキルでも持っているのでは無いだろうか。
「……ふん、まあいい。面倒をかけたな、代わりにこのバーガーをやろう」
「は、はぁ……まぁ、貰えるんならもらっとくけどよ……」
結局何がしたかったんだこの人、小さい声でそう愚痴りながら渡されたバーガーを食べる。俺の元いた世界じゃどこにでもありそうな普通なハンバーガーの味だ。別段変わったところもない。
「……普通に美味いな」
「当然だ。ジャンクフードは全ての料理の中で至高。それが変わることはない」
ドヤ顔で自慢してくる騎士王に、自分が作ったものでもないだろうに、とこれまた小さな声で呟く俺なのであった。それにしても、普通のハンバーガーなのにとても美味しく思える。ここまで何も食ってなかったせいか、余計にありきたりなこの味が尊く思えた。
………さて、これからどうしようか。といっても、俺に取れる行動は何一つない。きっと、ブーディカさん達はヘラクレスを倒す事に必死だ。令呪で契約している二人の内の一人を呼んでもいいが、下手なことをして皆を待ったほうがいい。まぁ、俺が死ななければの話なんだが。
「ふむ………ブーディカのマスターよ、一つ問おう。貴様は何故、あの二人と契約した?」
「何でって……ブーディカさんとは成り行きで契約したし、エミ、あ、アーチャーとはその勢いというかだな……」
「どちらも同じではないか。見た所、何故か戦い慣れた雰囲気を纏っている癖に、動きは初心者のそれだ。貴様、一体何者だ?」
「何者って言われても、唯の一般人っていうしかないんだがな。つい数時間前まで、魔術の魔の字も知らなかったんだし。あれ……俺、もしかしなくても既に一般人じゃない………?」
ふと振り返ってみると、俺も大概常識離れした事を体験してるんだと思った。というか、今更だけど俺は何でこんな所にいんだよ。とっとと帰りたい……
「はぁ………生きて帰れるだろうか、俺」
「少なくとも今は殺さんから安心しろ。貴様を連れ去ったのはあくまでアーチャー達を本気にさせるためだからな。しかし……貴様のその態度は面白い。つい、摘み食いしたくなってしまうな」
動きを止めるだけだったさっきとは違い、獲物を見つけた肉食獣の様に目を細めて笑い、こっちに近づいてくるアルトリア・オルタに寒気がした。殺しはしないと言ったものの。言って間違えば確実に殺されるのもまた事実だ。
「って何でこっちに近づいて来るんですかね!?ってかやめ、やめろっての!勝手に触んないでくれませんかねセイバーさん!!」
「オルタで構わん。ふっ、やはり貴様は面白い。そこらにいる小動物の様だ。そうら、情けなく可愛く鳴くがいい。ブーディカ達が来るまで間、ぞんぶんに可愛がってやろう」
「ちょ、おいバカやめ、あ、あああ、アーーーー!!!」
やたら俺に触れて来るアルトリア・オルタの手を振り払おうにも、圧倒的すぎる筋力ステータスの前に俺はなす術もなく散るのであった。いや、死ぬ羽目にはあってないんだが……それ以上に恥ずかしい思いをさせられました。本当にシリアスが多いあのFGOの冬木かここ、と内心で自分の幸運値の低さを呪った。
「
エミヤの投影した矢がヘラクレスに向かって飛翔する。通常の弓矢ではなく剣を矢に変えて投影して放たれたそれはとても歪な形をしていた。そして、彼が真名開帳して放った剣の名前を私は知っていた。
「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」
「ええいしつこい!一度この宝具で倒してしまっているから、余り効果が無いのが鬱陶しい!」
「おいおい、何とかしろよアーチャー!何もできねぇンなら俺の槍でも投影しろ!贋作でも一撃で殺して見せっからよォ!」
「剣以外の投影はランクが下がるし、余計に魔力を喰う!というか、貴様の方こそしっかり戦え!それでもクー・フーリンか!」
「ばっか、こんなとこで俺の宝具使っちまったら、全員生き埋めでお陀仏だろうが!」
様々な聖杯戦争で遭遇しているためか、根っこの方では互いを認めているからか。エミヤとクー・フーリンが互いに文句を言い合いながらも、しっかりサポートし合っていた。やっぱり気が合うのかもしれない、と口には出さずにいる私だった。さて、残った私が何をしているかだけど。
「◾️◾️◾️◾️◾️!!」
「流石に、貴方みたいな人と正面から戦うつもりはないよっと!」
ヘラクレスが無造作に振るう斧剣を、既に真名開帳した剣で、時には左手の盾で受け止める。だが、ヘラクレスとの筋力値差が圧倒的すぎるのか、均衡するのはたったの一瞬。何度か打ち合っているけど、その度腕が吹き飛びそうな衝撃が飛んでくる。
「ブーディカさん!一度下がってください!ここは私が」
「いいからマシュは下がってなさい!さっきの宝具とヘラクレスの一撃を受けて、戦える状態じゃ、ないでしょ!」
押されている私を見かねたのか、後衛で狭間君と一緒にいるマシュが叫ぶ。けれど、彼女は
私たちは死んでも『座』に戻るだけだが、今を生きている彼女はそうにはいかない。致命傷を受ければ、そのまま死に至るのだからあまり無茶をさせるわけにはいかない。
「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!」
「っ、うわぁーーー!!」
再び振るわれるヘラクレスの一撃。今度は剣で受け止めるも、受け止めた剣ごと後ろに吹き飛ばされてしまう。そのまま壁にぶつかりそうになるも、クー・フーリンがしっかりと受け止めてくれた。
「っと、ありがとね」
「別にいいってことよ。さてと、どうやってあいつを倒す?ここにいる連中に、あいつの筋肉を破れる宝具はねぇと思うんだがよ」
クー・フーリンが油断する事なく前のヘラクレスを見据えながら呟く。私の宝具、『
曰く、ヘラクレスは十二もの試練を乗り越え、神の末席に加わったという。その逸話が昇華され宝具となった物が、彼のみが持つ宝具の能力。
その名は『
エミヤが言うに、防御能力範囲以上の攻撃を連続で放てば、ヘラクレスの命のストックを減らす事ができるらしいが、攻撃が通っているBランク以上の攻撃力を持っている人はいるにはいるが、あのヘラクレスを相手に宝具を当てる隙がない。私の剣も、斬撃を飛ばすだけであまり威力がないのが原因でもあるのだけれど。
唯一の突破口であるエミヤの投影も、弾幕を貼って爆発させる一時凌ぎ程度の物だ。 本当に、どうやって倒したものか。
「………一つだけ、倒す手段はある。以前、私は大英雄と戦ったことだある」
「本当か?んで、テメェは勝てたのかよ?」
「まさか。弓兵如きが敵う相手ではなかったさ。だが、彼のストックを吹き飛ばす武器なら投影できる」
「◾️◾️◾️◾️◾️!!」
何かしようとしている。それを直感で感じ取ったのか、ヘラクレスが雄叫びをあげながらこちらに迫る。また相手をしなくてはならないと思ったその時、クー・フーリンが杖を甲高い音を立てながら叩きつける。すると、あちこちの地面から文字が浮かび上がり、ヘラクレスの動きを制限した。
「俺の師匠が使っていた、冥界の門を召喚する魔術のオマージュってやつだ。一応、俺も師匠ほどじゃねェが、『原初のルーン』が使えるんでね、少しそこで待っててくれや」
してやったりと、イタズラが成功した子供の様な笑みを浮かべるクー・フーリン。それが気に障ったのか、筋力値に物を言わせてヘラクレスが斧剣を何度も叩きつける。連続で攻撃を受けたためか、ルーンを刻んだ陣に皹が入り始めた。
「ちぃ!おい坊主!もっと魔力をよこしやがれ!このままだと陣が持たねぇぞ!」
「わ、分かった!で、でもどうしたらいいか…」
「令呪よ!早く令呪を使いなさい!それで一気に魔力が補充できる筈よ!」
今までただ震えていたオルガマリーが、狭間君に的確な指示を送る。すぐにそ指示通りに令呪使い、クー・フーリンの魔力が増大する。陣に刻まれたルーン文字が輝く。ほんの数秒の間の拘束だったが、その数秒でエミヤの投影は終わっていた。
「投影完了………使えブーディカ!おそらく、君が最もこれを扱うに足る人物だ!」
「……!この剣は………!!」
新たな剣を投影したエミヤが、それを私に向かって放り投げた。黄金に彩られた装飾剣。見て触れただけでこの剣の銘が私には分かった。同時に、この剣に込められた神秘と破壊力も。この剣なら目の前の大英雄も倒せると、私の直感が告げている。
左手に装備していた盾を取り外し黄金の装飾剣を握る。右手に自分の剣を構え、二刀流になった私はクー・フーリンのルーン魔術に囚われているヘラクレスへ立ち向かう。
「これで………終わらせる!」
「◾️◾️◾️◾️!!」
左右の剣を懸命に振り回す。右手の剣、『
その隙を見逃さず一撃、また一撃を叩き込んでいく。今まで防戦一方だった状況が好転した事が少し、いやかなり嬉しかった。
(いける………このままいけば必ず!!)
「◾️◾️◾️ーーーー!!」
「させるかってンだよォ!」
「行け、ブーディカ!!」
最早なりふり構っていられないと判断したのか、ヘラクレスの動きが速く、けれど乱雑になった。縦横無尽に振舞われる斧剣はまさに暴風雨と呼んでも過言では無い。
クー・フーリンの火球にエミヤの投影した剣の一斉掃射。私の二刀で必死に受け切るが、余りの威力に体が吹き飛びそうになる。
「ちぃ!最後の最後でしつけェなァ!」
「黙って手を動かせ!彼女が攻めの要なのだからな!」
「分かってらァ!てめぇこそとっとと剣作って飛ばしやがれ!」
「仲良いなぁ二人とも!」
「良くねェよ!」
「良いわけなかろう!!」
三人がかりで必死に暴風雨と化した斬撃を防ぐ。その衝撃に空洞が耐えきれないのか、心なしか地面が揺れている気がする。
このままだと全員まとめて生き埋めだ。せめてあと一手。ヘラクレスの攻撃を防ぐ事ができれば。
「ーーやぁっ!」
そんな時だった。カァンと甲高い音を立てながら四つ目の音が鳴り響く。短い桜色の髪をした、何故か臍を出した少女。マシュがこの攻防に参加していた。
「な、マシュ!?」
「わた、しなら大丈夫です!それよりもブーディカさん!今です!」
戦う覚悟もできていない戦士など一撃で終わる。そう思っていたのだろう。だが、実際はどうだ。ギリシャ神話で最も有名と言われても過言ではない、あのヘラクレスの一撃をしっかりと受け止め、必死に死の運命から抗っているではないか。
そして、その予想外の出来事にヘラクレスの動きが止まる。それは、この状況では余りにも無防備すぎた。
「ーー分かった。あとはお姉さんに任せなさい!」
斧剣を受け止めているマシュの脇から飛び出し、左の装飾剣をヘラクレスに突き立てる。鉱石の様に硬く黒い肌にしっかりと突き刺した後、後ろに跳びのきながら愛剣を振るい、斬撃を飛ばす。
この剣の名前を私は知っている。でも、エミヤ君の様に使い手の経験を模倣できないから、真名開帳まではできない。だから私の役割はここまでだ。あとはーーー
「エミヤ君!」
「ーー『
黄金剣が眩しい光を放つ。ヘラクレスの体内、ゼロ距離で黄金剣に宿った神秘を起爆剤にして爆発したその光は、体の内側からその命を奪い去る。同時に、咄嗟に後ろに下がったとはいえ、爆発した近くにいた私は爆風で吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。
「が、はっ………!!」
肺の中にある空気が強制的に吐き出される。本来サーヴァントには必要がないものだけれど、生前必要されていた物だから、体がそれを必死に求め、呼吸が荒くなる。
遠くなりそうな意識を歯を食い縛って繫ぎ止める。手元にある愛剣を杖代わりにして立ち上がると、マシュが私の名前を呼びながら駆けつける。
「ブーディカさん大丈夫ですか!?物凄い勢いで吹き飛ばされていましたけど!!」
「あ、あはは…大丈夫大丈夫。ちょっと意識が飛びそうになっただけだから。それより、ヘラクレスは?」
前にいた筈の大英雄の姿を探す。あの一撃で殺しきれなければ、本当に打つ手がない。爆風で巻き上がった土埃が消えていく。視界が良くなった先にあったのは、巨大な男の姿ではなく、奥にある大聖杯へと続く道だけだった。どうやら、あの一撃で残りのストックごと吹き飛ばせたらしい。
「ーーーふぅ。何とか終わった、か」
「ああ。私たちの勝利だ。結構ギリギリだったがね」
「よく言うぜ。っつーかテメェ、本当に何者だ?叔父貴の剣まで投影しやがって。しかもさらっと壊してんじゃねェよ。本人が見たらブチ切れてんぞ?」
「その時はその時だ。何、一番火力と効率が良いのであの剣を使っているだけだ。その気なれば、爆発させずに自分でも扱える」
戦いが終わり、その場で少し会話をして息を整える。研砥から供給されている魔力で感じる限り、まだ無事の様だ。
「あ、そういえばマシュ!どうしてこっちに来たの!!戦ってる時にも言ったけど、あの時は傷ついてたんだから休んでないと!!」
「あ………それは、その、ごめんなさい。でも、あの時は体が勝手に動いたと言いますか…。ブーディカさんが戦って傷ついているのを見ていると、何故か自分の胸が締め付けられたとい言いますか」
自分でも何を言っているのか分からないと、戸惑いながらマシュは謝りながら顔を俯かせる。
(ヘラクレスと戦う前にアルトリアが言ってたけど、マシュにち力を貸してくれた英霊は、私と同郷なんだよね。その中で盾を使ってたりしてるとしたら、それはきっとーーー)
頭の中にある英霊の名前を思い浮かべたが、追い出す様に頭を振る。誰が力を貸したかなんてのは重要なことじゃない。大切なのは、託された
「ーー分かった。でも、これからはあんな無茶な事はしないでね?マシュは私たちと違って、生きているんだから」
「はい……本当に、申し訳ありませんでした」
「あーもう、謝らないでよ。私が悪いみたいじゃないか」
まだ暗い顔をしているマシュを見るのが辛くて、娘たちにしていた様にマシュの体を優しく抱きしめる。急な事におどろいたマシュが手をあたふたとしたが、それを無視してより強く抱きしめる。
今はまだ非力で、戦う覚悟も余り強くないけれど。私と同じ護る覚悟を持っている貴女が愛おしいから。
堕ちた騎士王の遣わした大英雄を倒した今、特異点F、本当に最後の戦いが始まろうとしていた。
ここまでの既読、ありがとうございます。
感想・誤字脱字・設定の食い違い等がありましたら指摘をお願いします。
今回エミヤが投影したのはあれです。一度にヘラクレスを7、8回殺したあの化け物みたいな剣です。まぁ、黒化して『十二の試練』のスペックも落ちている事にしたので、あれを爆破させたら何とかなると思いました。
鶴翼三連でも良かったんだけどなー。