フランドールの日記   作:Yuupon

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七月編3『集団パニック!』

 

 

 

 七月八日

 

 ライブも終わり心機一転!

 罪袋さん達も引き上げて、昨日のうちに細々した片付けも全部済んだことでまた今日からめーりんとの修行が再開した!

 まずは一〇〇Kmマラソン! 続いて感謝の右ストレートとジャブ一万回! それから倒れても即復活の地獄組手! それが終わってから剣で素振り一万回!

 ふぅ、久しぶりにやると疲れるね。多少勘が鈍っていた感じがした。

 特に組手、封印モードでの話だけど掠りもしなかったし。ただその代わりにめーりんの動きはよく見えたし、避けることが出来たとは思う。

 ダンスを覚えたお陰かそれとも妖忌さんとの僅かな修行の成果なのか。無理な動きをしても体は痛まないし何となく次に来る位置が予想出来た。

 でも、それでも避けれない技もあるわけで。その場合は受け止めるか防ぐかモロに受けるかになるけど、防いだところで直ぐに次の攻撃が飛んでくるし受け止めても同じことになる。モロに受ければ大ダメージと色々詰んでるよね。

 ……まだまだ勝てるまでが遠いなぁ。

 

 

 #####

 

 

「……(白目)」

「あぁっ! レミリアさんが真っ白に!?」

「きっとショックを受けたのね。つかそもそも一万回の時点で一日潰れる気がするし腕が使い物にならなくなるはずなんだけど……」

「立て! 立つんだレミリア!! 諦めんなよ! 何でそこで諦めたそこでぇッ!!」

「あしたのジョーからの松岡修造!?」

 

 霊夢が突っ込むとレミリアが僅かに顔を上げた。

 彼女はその小さな唇を動かす。

 

「フランが……フランが魔改造されていく」

「落ち着いて下さいレミリアさん! 大丈夫です、フランさんが魔改造出来るなら姉であるレミリアさんも出来るはずです!」

「早苗早苗、多分そんなこと心配してないと思うわ」

 

 ジト目で言った霊夢は二人の様子からこりゃ駄目ね、と呟いて次のページをめくる。

 

 

 #####

 

 

 七月九日

 

 

 今日は寺子屋だ。

 とは言ってももう少しで夏休みに入るんだけどね。七月二十日から八月二十五日まで。

 で、今日の授業には久々に鈴仙先生がやって来た。

 

「皆さんお久しぶりです。鈴仙です、今日は保健体育の講師として来ました」

 

 そう言って丁寧に頭を下げる鈴仙先生だけど、その拍子にかぶっていた編笠が地面に落ちた。

 今更だけど大抵の妖怪は人里に入るときに変装するらしい。幻想郷は人間が妖怪を恐れ、妖怪は人間を襲うことで成り立っている世界なので、もし仮に人間が妖怪を恐れなくなったらたちまち幻想郷が無くなってしまうからだとか。

 で、そんなわけで変装をしている妖怪にとってその変装が取れるというのはかなりな一大事なわけで。

 編笠の下に隠れていたウサ耳がピョコンと露わになった瞬間、鈴仙先生が物凄い慌てた様子で編笠を拾おうとしてた。

 

「あっ……!」

 

 でもそれが問題だった。さっきも言ったけど編笠が取れた拍子にウサ耳が表に出ていたんだ。で、先生が立つ席の前には大抵教卓があるよね?

 もう言わなくても分かるだろう。

 鈴仙先生は自分から思い切り教卓にウサ耳を叩きつけて気絶した。

 教卓にウサ耳が当たった瞬間、ウサ耳からブチィ! って音が聞こえた気がするけど気のせいだろう、気のせいったら気のせいだ。だって……そんなあり得ないよ。

 いくらうちの寺子屋の教卓が慧音先生の頭突きに耐え切れるものだからって……まさか、そんなの予想出来るわけないでしょ!

 

「先生!?」

 

 私は倒れた鈴仙先生の元に駆け寄った。無事かどうか確かめる為だ。倒れている鈴仙先生の頭を確認して――無い! 一本ウサ耳が足りない!

 慌てて辺りを見回すと鈴仙先生の頭からウサ耳が一本千切れて教卓の下に落ちているのを見つけた。

 いや、教室が大パニックだったよ。他の生徒も。

 

「え、衛生兵!」「知ってるか、ウサギ肉って鶏のモモ肉みたいな味がするんだぜ」「おいどういうことだ説明しろモブ木ィ!」「何故!? 今そんな話を!?」「――頂きます」「食べんなw」「――ご馳走様でした」「食ったなコイツ!?」「なっ! 何をするダァーっ! 許さん!」「誰か一人くらい鈴仙先生のことを心配しろこの馬鹿ども!!」

 

 ……本当に取れてたもん。ウサ耳。

 根元から千切れてた。でもここまではまだ良かったんだ。

 良くないけどまだマシだった。

 ことは、私が慧音先生を呼ぼうと思って教室から出ようとしたときに起きたんだ。

 

「…………ぅ」

 

 急に鈴仙先生が起き上がった。良かった無事か、と私が足を止めたその瞬間悲劇は起こったんだ。

 具体的にいうと――鈴仙先生がその瞳を開いた瞬間。

 鈴仙先生の瞳が紅く染まっていた。目の中がグルグルと渦巻いていて――それを見た次の瞬間には私の精神が狂った。

 いや、思い出したというべきかもしれない。狂気を。私がかつて囚われていたことを。

 私は狂気に囚われていたから、精神が狂わされた瞬間にヤバイと理解した。理解して――その原因を破壊したから幸いにして私はすぐに正気に戻ることが出来た。

 でもクラスの皆は違っていた。

 

「……素晴らしいよ、鈴仙先生は希望の犠牲になったんだね!」

『僕、実は鈴仙先生が好きなんだよね』『でも顔で好きになったのかもしれないから』『彼女の顔面を剥がすことにするよ』

「カカロットォ……カカロットオオオッッ!!」

「諸君、私は戦争が大好きだ」

「ジュラル星人め! 許さないぞ!」

「ヒャッハー! 汚物は消毒だーッ!!」

 

 これだけじゃない。普段遊んでいるチルノちゃん達も大変なことになっていた……。

 

「アハッ、アハハ!! 分かる、分かるぞ! あたい……世界の全てを理解してる!」

「ねぇチルノちゃん……私達友達だから殺していい? それでもって永遠に一緒にいようよ」

「私、全ての人間を狂わせる歌を歌うよ! ミスティアちゃんのオールナイトライブだ!」

「……世界は僕をゴキブリ扱いする。僕は蛍なのに、誰が悪い? 誰が悪い誰が悪い誰が悪い……そっか、そうだ。人間なんて全て殺して仕舞えばいいじゃないか」

 

 上からチルノ、大ちゃん、ミスティア、リグルの言葉だ。皆目の中がグルグルと渦巻いていて、狂っていた。

 そんな時だった。横から辛そうな声が聞こえたのは。

 

「……グッ、これは狂気? ルーミアの意識が持っていかれて何事かと思えば」

「ルーミアさん!?」

 

 大人バージョンのルーミアさんだった。

 どうやらルーミアちゃんの意識は既に狂気に囚われてしまい、代わりに無理やり浮上してきたらしい。彼女は強引に妖力で洗脳を振り払うと、荒い息を吐いて私に説明を求めてきた。

 

「はぁ、はぁ、何があったの? ウサギの先生が倒れたところまでは見ていたけど」

「多分、鈴仙先生は何らかの理由で能力行使してるんだと思います。彼女の能力は波長を狂わせる力で、それを弄られたことで皆こんなことに……」

 

 どうしよう。

 慧音先生を呼んでもこれは……。仕方ない、やるしかないかな。

 私は決心してルーミアさんに声をかけた。

 

「ルーミアさん、私。今回の出来事を無かったことにします」

「相変わらず万能ね。ま、やりなさい。それが手っ取り早いから」

 

 了解ももらえたしやろう。

 とりあえず狂気さえ無くせば後で慧音先生に話して『歴史を変える力』を行使してもらえばそれで終わりだ。

 早速私は『この場に生まれた狂気』と『鈴仙先生の耳が取れた』事実を無かったことにした。

 ……それで一応解決して、慧音先生に話すと多少歴史を弄っておくという返事がもらったことも追記しておく。

 ついでに皆が狂気に染まった事実も消しておいたので多分大丈夫だろう。鈴仙先生も責任を取って人里立ち入り禁止みたいなことにはならない筈だ。

 ……寺子屋の描写って少ないけど書く時は出来事が濃いなぁ。

 

 

 #####

 

 

「集団パニックじゃないですか! え、そんなことあったんですか寺子屋に!? 知らないですよ私!」

「……つか紫は何してんのよ。人里内で複数の妖怪が狂気に染まるなんて大事件よ。異変じゃなくてまとめて退治になる事件よ。というかこれ、普通に考えたら鈴仙を退治するレベルの話なのに私知らなかったんだけど」

「……フランが丸く収まるよう努力したんでしょうね。八雲紫に関しても『無かったこと』に追求はしないししたくなかったと予想するわ。こんなこと幻想郷始まって以来の不祥事だもの」

「紫が意図的に見逃した、か。にしてもこれ、フランが止めてなかったらとんでもないことになってたわね。考えると事の大きさに震えてきたわ」

 

「……というか今更ですけど鈴仙さんの耳が取れた件には誰も突っ込まないんですね」

「いや、だって……ねぇ?」

「ウサギの耳が取れようが知ったこっちゃないもの」

「清々しいまでの他人事!? 顔見知りくらいではあるんですから心配してあげましょうよ! ……というか今思い出すと、去年のこの時期の従者会議に彼女無断で休んでた覚えがあるんですけど、もしかして彼女の師匠に折檻されてたんでしょうか?」

「永琳の薬の実験台ね、まぁいつものことでしょ」

「……どうでも良い話題はこれまでにして次のページ行くわよ」

 

 そう、レミリアが煩わしそうに言って次のページをめくる。

 

 #####

 

 

 七月十日

 

 

 昨日は大変な日だったよ。

 というわけで今日はめーりんとの修行が終わってからは外に出ないで久々にパソコンを長時間弄ることにした。

 デーモンハンターとPSO2と、『いえっさ』さんも久しぶりだね。

 そういえばPSO2でマスターの「☆サナ☆」さんとも会えた。「ぐーや」さんと「天使」さんのとこのリーダーさんだ。

 アバターは緑色の髪の女の子キャラで、無駄に作り込まれてた。

 それから皆でクエストやったりして楽しかったよ、私も寝る前にちょこちょこレベ上げしてたから何とか戦力になれてるし。

 チャットしながらだったからパソコン初心者だというと色んなことも教えてくれた。

 

 ぐーや「2ちゃんねるとか面白いわよ」

 ☆サナ☆「初心者に2ちゃんねる勧めるのはどうなんですかw」

 天使「ニコニコはどう?」

 妹様「ニコ動は見たことあります。コメントが流れてて新鮮でした」

 ぐーや「スレ立てとか面白いわよ」

 ☆サナ☆「まだ引っ張るんですかそれ……」

 

 で、ゲームをログアウトしてからは早速2ちゃんねるとかも調べてみた。どうやら色んな人がチャットするサイトらしい。

 「www」←(笑)って意味らしいけど、こういうネット用語が一杯使われる場所だとか。

 つまり、そこの言葉をおぼえればネットをマスターしたことになるのかな?

 覗いてみたら「氏ねガイジ」とか「萌え豚乙」とかよく分からない言葉ばっかりで頭がクラクラしちゃうけど……ネットを使う以上慣れた方がいいのかな?

 今度またギルドメンバーに聞いてみよう。

 

 #####

 

「覚えないで下さいお願いします! 穢れます!」

「……よく分からないけど私の勘も覚えない方が良いと言ってるわね」

「……運命も囁いているわ。それは悪魔の罠だと」

 

(……そういえば去年の夏に妹様さんがそんなことを聞いて来ましたね。止めて良かったです、本当に)

 

 じゃなきゃ笑い話に出来ませんし、と早苗は心の中で呟く。

 そう。何を隠そう、マスターの『☆サナ☆』とは東風谷早苗のネットネームであった!

 とまぁどうでも良いカミングアウトはともかく、彼女は心の底から思う。

 

(……もし止めてなかったら、クソワロタwwwとか言ってたんでしょうか。素直な子なので……うん、良かったです。本当に、本当に!)

 

 圧倒的安堵を心に秘め、彼女は次なるページをめくる――――。

 

 

 




 

 今回出てきたネタ
・感謝の素振り一万回(ハンターハンターより、2ちゃんねるでも偶にネタで使われる)
・立て、立つんだレミリア!(明日のジョーより)
・諦めんなよ!(松岡修造の名言、彼は炎の妖精とも言われる)
・衛生兵!(万歳エディションより)
・おいどういうことだ説明しろ苗木ィ!(ダンガンロンパより十神白夜の台詞)
・なっ! 何をするダァーっ! 許さん!(ジョジョより)
・素晴らしいよ、鈴仙先生は希望の犠牲になったんだね(ダンガンロンパより狛枝凪斗の台詞)
・『彼女の顔面を剥がすことにするよ』(めだかボックスより球磨川禊の話より改稿)
・カカロットオオオッッ!!(ドラゴンボールよりブロリーの台詞)
・諸君、私は戦争が大好きだ(HELLSINGより少佐の台詞)
・ジュラル星人め! 許さないぞ!(チャージマン研!より)
・ヒャッハー! 汚物は消毒だーッッ!!(北斗の拳より)



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