学校帰り、もう赤くなり始めた空の下。電柱がつないでいる電線の下。
私は歩いていた。足取りは、少し重い。
最近いろいろとあったから、きっと仕方ない、仕方ない。
そうして自分を慰めて歩いていたら、なんだか不思議な空気に包まれた。
でも景色は変わらない、いや、変わってる。
いつもの景色の中心、私の目の前に、少し小柄な女の子が立っていた。
どこにでもいそうな女の子、けれども彼女から出てくる雰囲気は、私が今まで経験した中にはどこにもないものだった。
「お姉ちゃん、お薬いらない?」
永遠とも、一瞬ともいえる静寂の後、そういって彼女は突然青色の小瓶を差し出した。
「お薬?」
そう聞き返すと、彼女は頷いて
「うん、お薬。お姉ちゃん、疲れてそうだから。」
そういって、私の目の前に、スッと薬をさっきよりも近く差し出す
何だか、怪しくない?
もしかして覚せい剤とかじゃない?
不安になって聞いた
「それって、どんなお薬なの?怪しいやつじゃない?」
すると首をふるふると可愛らしくふって
「違うよ、お姉ちゃんのためのお薬だもの。怪しいお薬じゃないよ」
「私のための?」
「そう、お姉ちゃんのための」
やっぱり怪しい。
「じゃ、はい。あげるね」
「あ」
わざわざ、いらない?と聞いてきたのに、最終的にぽんと渡されてしまった。
返そうと追いかけようとして、気づく。
もう、赤い空に黒が混ざってきている。
そしてその黒に彼女は溶けてしまった。
たった数分の出来事だと思ったのに、もう30分もたっていた。
「…変なの」
そしてまた時計を見て、今、学校の帰りだということを思い出す。
家に帰らなくちゃ!
今日はお母さんの特製カレー、早く帰らないと怒られるし、弟に全部食べられちゃう。
この薬は…まあ小さいものだし、カバンにでも入れておこう。
変なことが起こって、少し気味が悪くって、重かった足取りは足枷を引きちぎってしまったように速くなった。
そしてすぐに家につく。なんだかいつもより近い気がした。
「ただいまっ!!」
リビングでは弟が椅子に座って待っていた。お母さんはキッチンかな。
カレーのいい匂いがする。
「あ、姉ちゃんお帰り~。っちぇ、せっかくカレー多めに食えると思ったのになぁ」
中学生になって食べ盛りの弟は少し残念そうだ。
まあ、少し私の分あげてもいいかな。
「じゃあいいよ。母さんにあんたの分多めにしてって言っておくから」
すると弟はぱぁっと明るくなって
「いいの!?姉ちゃんありがと!」
と、嬉しそうに言った。
中学生になったとはいえ、まだまだ子供なんだなぁと思った。
まぁ、そんな私も高校生になったばかりだけど。
「あら、お帰り!」
母さんがひょこっとキッチンから顔を出していた。
「あ、ただいま~」
手に鍋を持っている、丁度できたらしい
「今お皿によそるからさ、運んでくんない?」
「わかった~」
そういって母さんの手伝いに向かう
…そして食べる専門の弟を見る。
「たまには手伝いなよ~!」
「う~い」
返事だけかえってきてこっちには来なかった、なんてやつ!さっきの約束、なしにしよ。
私はカレーをお皿によそう母さんに何も言わず、よそられたカレーを食卓に持っていた。
う~ん、きりがいいようで悪いですなぁ… まぁ、気にしなくていっか