ーーー戻る、戻るーーー
ーーー時がーーー
ーーー世界がーーー
ーーーすべてがーーー
ーーーそしてーーー
ーーーゼロからーーー
ーーー始まるーーー
「ヴぁあ!」
「ハァ……ハァ……ハァ」
おかしい、という言葉が頭の中でグルクルと回転している。
(さっきまで……夜だった……よな?)
学園都市、level5の第二位である垣根帝督の頭でさえ、理解不能。
先程まで帝督はスバルとサテラと猫(名前は盛大に忘れている)と一緒に盗品蔵の扉前にいたのだが。
(なんだ?何か忘れている様な………………………ッ!)
思い出した。
先程までの事。
それは残酷な思い出。
『腸』を切られた。
ただ、それだけ。
それならば、何故ここにいるのか、大抵の人間は死ぬし実際、目を閉じる寸前見てしまった。
二人が腸を切られる一瞬を。
やめてしまおう。
考えるのを。
「チッ!んだよ…………」
帝督はとりあえず考えるのをやめて街を歩く事にした、
暫く歩いていると、見覚えのある場所へ到着する。
「ここは…………あの路地裏か」
少し、進むと話し声が聞こてくる、聞き覚えのある声だ。
「お前ら……ひょっとして、俺の知らない所で頭でも打った?」
その声がした時、少しはや歩きして現場へ向かったが、着いた時はすでに事は終わっていた。
「おい」
「ん?俺は急いでってぇ!!ていとくん!!」
「よぉ、これテメェが殺ったのか?」
「いや、流石に殺してはねぇよ」
「そうか…………テメェも気づいてるか?」
帝督はスバルに真剣な顔をして質問した。
「ん?まぁな、俺はまだ少し混乱してるっていうのが本音だけど、急がねぇとサテラが死んじまう!」
「とりあえず盗品蔵へ行くか…………………」
帝督とスバルは走りながら貧民街へ向かい到着したのだが。
「やべぇ、覚えてねぇ」
「んだよ、テメェもか?」
「いや、その、サテラの顔に見とれてたら」
「そんなくだんねぇ言い訳してんじゃねぇよ」
スバルはニヤニヤと笑っていたが、帝督は「使えねぇ~」などと言っていた。
「じゃ、じゃあ!そんなていとくんはなんで道を覚えてねんだよ!」
「考え事だ、考え事」
「考える事?」
その時の帝督は。
ーーー回想ーーー
(あぁ~、第一位、殺してぇな、滅茶苦茶に殺してぇ、目の前で『最終信号(ラストオーダー)』殺して、苦しませて…………やべぇ、元の世界に帰るのが楽しみで仕方ねぇ………フッフッフ)
ーーー回想終了ーーー
などと、帰ったらどうしようか、と考えていた。
「つか、もう面倒くせぇし、二手に別れるぞ」
「お、おう」
「テメェはあっちを、俺は逆の方を、じゃあな」
とりあえず、二手に別れて数時間が立った。
(あぁ、もう跳んで行くか?……いや、いくら貧民街とはいえこんな公の場でポンポン能力使うのはやめといた方がいいか)
そんな事を考えてると。
「ん?着いたな」
一歩、踏み込む。
次の瞬間、身体に悪寒が走る。
(んだ!これは!)
喋れない、動けない。
次第に背後から黒い靄が自身の身体に纏いつくように広がる、そこから黒い手が出てくる。
(おい、なんの冗談だ?畜生)
その黒い手は帝督の心臓を握りしめた。
(ヴぅ!あぁぁ!!)
マブタが自然に閉じる。
「ヴぁあ!」
「ハァ…………ハァ……ハァ……」
意識が覚醒した時、そこは最初にいた場所だった。
意味が分からない、理解が出来ない。
(何なんだ!一体!?何なんだよ!畜生!?)
「ふざ……けんな!」
ボソリとそう呟く。
怒りの感情に浸っている時、ザワザワと近くに人の溜まり場が出来ていた。
今は適当に八つ当たりしたい気分だがどうも溜まり場にいる人たちの顔が真剣だったので、帝督はその中へと入っていった。
(あれは…………ムシケラとサテラ、か)
サテラの方は、非常に怒った顔をしていたがそれに対しスバルは絶望的な表情を浮かべていた。
そして、サテラが去ろうとしたその瞬間。
金髪の髪をした小柄な少女が降りてきた。
(誰だ?あいつ……………………ッ!)
驚いた、その小柄な少女は凄いスピードで走り、サテラの衣服に触れる。
(なるほど…………あぁやって盗られたのか、となると、アイツが例のフェルトか)
「まさか…………!」
サテラが驚愕の声を上げ、己のローブの内に手を入れる。
が、そこに目的の物がないのか見開くサテラの目が追うのは急速に遠ざかるフェルトの行方。
フェルトの手の握られてたのは竜を象った徽章、そして後ろ姿を見てとっさにスバルは叫ぶ。
「フェルト!?」
がもうそこにフェルトはいない。
サテラは先程よりも険しい表情でスバルに言った。
「やられたっ。このための足止め……貴方もグル!?」
サテラはそう叫び、とっさに走り出す。
「おい、待て!誤解だ!俺は…………っ」
とスバルも走り出す。
帝督はそれを追って、路地裏に入るが。
まただ。
喋れず、動けず。
黒い靄が広がる。
(な、に!?)
黒い手が帝督の心臓を握りしめる。
(ヴぁあ!あぁぁ!!クソっ!な、んなん、だ…………)
「ヴぅう!」
「ハァ…………もう本当に理解、できねぇ」
「んぁ?ここはさっきの」
辺りを見渡すがそこは一番最初にいた所ではなく、人だかりが出来ていた場所だった。
「とりあえず、ムシケラを探すか」
歩いて10分、いつの間にかあの路地裏に来ていた。
そこには思った通りスバルがいたがどうやら一人ではない、そこにいたのは赤毛、青目で腰には装飾が施された剣だった。
「よぉ、随分と探したがやっぱここにいたか」
「ていとくん!?」
「おや?知り合いかい?」
(誰だ?なんか凄い爽やかな奴だな)
帝督はスバルに事情を聞かされた。
「『剣聖』ラインハルト、か」
「そういえば、さっきも『剣聖』って呼ばれてた気がするが…………」
「家が少しだけ特殊でね、かけられた期待の重さに潰れそうな日々だとも」
肩をすくめて気軽さを見せる。
「二人とも珍しい髪と服装、それに名前だけど、二人はどこから?…………王都ルグニカにはどんな理由で来たんだい?」
「ここより、東の小国だよ」
「同じく」
二人の答えにラインハルトは眉を上げて驚く。
「ルグニカより東………まさか、大瀑布の向こうって冗談かい?」
知らない単語が出てきた。
「大瀑布?」
「誤魔化してるってわけでもないようだけど、そこはいいか。とにかく王都の人間じゃないのは確かなようだけど、なにか理由のあっての事だろう?今のルグニカは平時より少し落ち着かない状況にある。僕で良ければ手伝うけど」
「いやいや、休日なんだろ?それに返上してまで俺達の手伝いなんてすることねぇよ。さっきので十分……だけど、ついでにちょこーっと聞きたい事がある」
ラインハルトの申し出には首を振って断ったが、スバルは指を立てる。
「なんでも聞いてくれ。世間には疎い方だから、答えられるかわらないけどね」
「いや、聞きたい事ってのは人探しだから大丈夫、ってなわけで聞きたいんだけど、この辺りで白いローブを着た銀髪の美少女って見てない?」
「白いローブに銀髪の美少女…………すまない、心当たりはないな、けど、会ってどうするんだい?」
「落とし物、ではないな探し物を届けたいんだ」
「良ければ、手伝うけど」
「大丈夫だ、あとは俺達で探すから」
「そうかい」
スバルは付け加えたようにラインハルトに言う。
「あぁあと、その銀髪の美少女に会ったら伝えて欲しいんだけど…………」
「なんだい?」
「『絶対に貧民街の盗品蔵には危ないから行くな、探し物は必ず俺達が届ける』って」
「ん?よくわからないけど会えたら伝えておくよ」
「うん、じゃあな!……この礼はいずれ」
「あぁ、また会おう、スバル」
「話しは終わったか?」
「あぁ、それじゃあ行こう」
最後にラインハルトは二人に「気をつけて」と言っていた。
その言葉に押されて、二人は無傷の阻害ゼロで路地裏から脱出を果たす。
その背中を青い双眸が、値踏みするように見ていることには気付かずに。
その後、帝督はスバルに状況を知らされた。
二人は死ぬとタイムリープする『死に戻り』を有している事。
だが帝督は一番最初の盗品蔵でしか死んでいない、帝督が推測するにこれは片方が死ねばもう片方も戻ってしまうということ。
そして、サテラという名は偽名である事。
最後に盗品蔵での死因はエルザという女が仕出かした事。
だが、帝督はそれどころではない、帝督は今、内心怒りで満ちている。
何故なら最初の死因が女に殺されたという事、帝督は学園都市に七人しかいないとされるlevel5の第二位に君臨する男だ。
あの時は、完全に油断していたとはいえ帝督はそれが一番許せなかった。
場面は代わって貧民街。
二人はフェルトの寝床を住民に聞き、今はその寝床に向かっている途中。
そんな中、スバルは前を見てなかったのか誰かとぶつかった。
(何やってんだ?こいつは)
「あら、ごめんなさい大丈夫かしら?」
その質問にスバルは回答するが。
「大丈夫大丈夫。こう見えても俺って丈夫なのが取り柄……………ッ!?」
(んだ?ムシケラの野郎、何びびってやがる?)
「ふふ、楽しい子ね。それで本当に大丈夫?」
(まさか、こいつが俺を…………)
今、二人の前にいるのはエルザだった。
「そんなに恐がらなくても、何もしないのだけれど」
「こわ………恐がるとか、してねぇよ?何を根拠にそんなこと」
「臭い」
「「?」」
「恐がってるとき、その人からは恐がってる臭いがするものよ。貴方は今、恐がっている………それから、怒ってもいるわね。私に対して……………そして、隣の貴方も私に対してものすごく怒っているわね………………少し気にかかるのだけれど、いいわ。今は騒ぎを起こすわけにはいかないから」
「お、穏当じゃない発言だな。あんましビビらせると美人が台無しだぜ?…………ッ!」
「あら、お上手。…………敵意が隠せればもっと上出来よ」
(ムシケラの野郎、相当びびってやがるな)
帝督は今、怒り心頭だった。
それは、自分を殺したからなどではなく。
自分がこんな格下に殺られたのかと怒っていたのだ。
「それじゃあ、失礼するわ。また会えそうな気がするわね」
そう言ってエルザは去っていった。
二人はフェルトの寝床の着くとそこは寝床、というよりホームレスが住んでるかの様な小さ過ぎる小屋だった。
(んだよこれ?まるで『無能力者(スキルアウト)』の住処みてぇだな)
「誰だ?兄ちゃん達」
後ろを振り向くとそこにはあのフェルトがいた。
その後、いざこざがあったがフェルトを説得し、盗品蔵へと向かった。
今、現在は盗品蔵の室内。
帝督はエルザと出会ってからものすごく退屈であった。
フェルトは関係者だの、騙されねぇだのと騒いでいて、それに対してスバルは困ったような徽章を渡すよう説得している。
(つまんねぇ)
交渉は失敗、だがその時ロム爺は表情を変えて入り口を睨んだ。
「…………誰じゃ?」
(やっと、来たか?あの格下は)
「アタシの客かもしれねー。まだ早い気がするけど」
その時、扉はノックされた。
(ムシケラの野郎、まだびびってんのか?)
「………開けるな!殺されるぞ!!」
だがスバルの忠告を無視してフェルトは扉を躊躇なく開ける。
現れたのは。
「…………殺すとか、そんなおっかないこと、いきなりしないわよ」
二人がよく知る、銀髪の美少女だった。
「よかった、いてくれて。…………今度は逃がさないから」
「本当にしつけー女だな、アンタ。いい加減諦めろっつーのに!」
「残念だけど、諦めらめられない物だから。…………大人しくすれば、痛い思いはさせないわ」
と銀髪美少女は両手を前にかざし氷の氷柱を出した。
「私からの要求は一つ、あの徽章を返してただそれだけ」
「…………ロム爺」
「動けん、厄介事を厄介な者と一緒に持ってきたなフェルト」
「ケンカやる前から負け認めんのかよ!?」
「ただの魔法使いなら儂も引いたりせん…………だが、この相手はマズイ!…………お嬢ちゃん、あんた、エルフじゃろ?」
「正しくは違う。…………私がエルフなのは半分だけだから」
「ハーフエルフ、それも銀髪!?まさか…………ッ!」
「他人の空似よ!私だって迷惑してるもの!」
(つまんねぇ)
そして、フェルトはスバルの方を見て。
「兄ちゃん、はめたな?」
「なに?」
「持ち主に返すとかおかしな事を言いやがるから怪しいとは思ってたんだ!」
とばっちりをうけたスバルは困ったような顔をして、帝督はつまんねぇと見ただけでわかるような佇まい。
銀髪美少女が首をかしげて。
「?……どういう事?貴方達、仲間じゃないの?」
「小芝居すんなよ。」
スバルははぁとため息をつき。
「まぁまぁ、ややこしくなるからいいじゃねぇの盗った徽章、返してやれよ」
「なんで急に親身になってくれてるの?私、すごーく釈然としないんだけど…………」
「納得いかねぇのはアタシも一緒だよ」
「フェルト、早まるでないぞ」
スバルは女性陣から痛い目を向けられるのだが。
スバルは気付いた。
「ッ!!パック!防げ!」
繰り出された攻撃は氷の盾によって守られた。
「なかなかどうして、紙一重なタイミングだよ、助かったよ」
「助かったのはむしろこっちだ、ありがとうパック」
その時だった。
悪党が動き出す。
「クククク」
「帝督?」
「アッハッハッハ!!」
笑う帝督。
笑う悪党。
「あらあら、私は笑う様な事なんてした覚えはないのだけれど」
「いやいや、十分笑えたぜぇ…………格下ぁ?」
「随分となめられた者ね」
「頭にのってるな、よほど愉快な死体になりたいらしいな?悪党さんよぉ」
「確かに私は悪党だけれど、見る限り貴方も…………よほど凄い悪党なのね」
「あぁ、そうだな…………いいぜぇ見せてやるよ『新人』!」
「『最高の悪党』をな!」
そこにいる誰もが驚いた。
『最高の悪党』を名乗る。
垣根帝督の背中にあるものが現れたからだ。
「す、すげぇ」
「あらあら、貴方、面白い物をつけているのね」
「なんと!」
今、『未元物質(ダークマター)』が発動した。
「次回はついに決着か!?今の心境をどうぞ!」
「あの、いきなりそんな事言われても、私すごーく困るんだけど」
「何、やってんだ?テメェらは」
「だって、ハーフエルフに銀髪美少女がいるんだから!普通はこういう事聞くでしょ!ていとくん!!」
「くだんねぇ」
「じ、次回『悪党の翼』」
「とりあえず、ていとくんって呼ぶのやめろ」