ー序章[Arch]ー
色とりどりのネオンが照らす街並み。
その薄暗い路地裏で何が起ころうと誰も、何も気付かない。
明滅した街頭が闇に隠れた影を暴き出す
「い、嫌ぁぁあ!」
行き止まりに追い詰められた女が叫ぶ。
その前に立ちはだかるのは、人ではない異形の怪物。その容姿は童話に出てくる狼男に似る。それは、意味のわからない呻き声をもらしながら今にも追い詰めた獲物に襲いかかろうとしている。
そして、呻き声が止んだ次の瞬間、怪物は鋭利な爪をもった右腕を女に振り下ろす。鮮血が飛び散る。
「あ……、あぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!!」
女は身体を袈裟懸けに切り裂かれ、断末魔の声をもらす。
だが、獲物を切り裂いたはずの怪物は首から上が無くなっている。そして、音も無く倒れ込む。
首無し死体の先に立っていたのは、細剣を握った眼鏡の青年の着ている制服には返り血がついている。
「ちょっと遅かったか……」
青年はそう呟き、先程切り裂かれた女を見やる。すると、女は殺した怪物と同じ呻き声をもらしていた。
「おいおい、まじかよ……。聞いてねぇぞ…」
青年が誰もいないはずの自らの背後に目をやりながら言う。
まるで、誰かいるかのように。
そして、彼は武器を構えた…。
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霊、と言われて貴方は最初に何を連想するだろうか。
幽霊?それともポルターガイスト?まあ、何でもいいが、実際には霊というものには三種類ある。
まず、代表的な霊は亡霊。
いわゆるお化けというやつだ。亡霊達は基本的に人々にはたたりだ、心霊現象だ、と言われているが、本当は彼らはただ自分達の存在を皆に認識して欲しいだけなのだ。でも、それが裏目に出て、結局怖がられてしまっている。
そして二つ目、妖《およずれ》。
これはこの世の人々に生前の時の何かが原因で大きな恨みを抱き、毎日人を殺そうと徘徊している。
しかも、一般人に彼らを視認する事は不可能だ。未解決の殺人事件には大抵、この妖が関わっていることが多い。
最後に三つ目は守護霊。
これは主に人に取り憑き、主人を致命傷から守っている。
もちろんいつでも守れるわけではないが、例を挙げれば、マンションのベランダから飛び降りて無傷だったとか、他にも色々ある。それに、大多数の人々は彼らの存在に気付かずに生きている。
しかし、人類の極小数に『 適合者』と呼ばれる人々が存在する。その適合者達は、あることがきっかけで霊達を視認できるようになった者達。
そして、適合者の1番の特徴は、自らの守護霊の力を行使する事ができるという点。
だからこそ、得た力で人々の生活を脅かし、人々の敵である妖さえもてなずける者達がいる。逆に、そういう者達を止め、なおかつ妖と戦う適合者達も存在する。
おそらく先程の青年は後者の存在であろう。
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月の眩しい夜だ。
石畳に下駄が当たり凛とした乾いた音が響く。
音の元は古式の日本庭園を歩き、正面の境内に向かう現代となっては珍しい、袴を着た中年の男の履いている下駄だ。その男の髪は何日も洗っていないのかボサボサだ。
男は境内の前に立つと頭を垂れる。
「ご無沙汰しております。法師殿」
「来たか、聖者」
法師と呼ばれた男が境内の奥から姿を表す。月明かりが照らす屋根の影になり顔は良く見えない。
「久しいな、一体何処で何をしていた」
「いえ…、少し野暮用を……」
「ふっ……、そうか。まあ良い」
法師は今まで袖に隠れて見えなかった腕を差し出しながら、前に進む。屋根に隠れて見えなかった如何にも坊さんといった顔も見える。
「だが、聖者。貴様は我々の計画には不必要だったようだ…。よってここで始末する!!」
獰猛な笑みで法師が吠える。
「殺れっ!"炎蛇"っ!!」
聖者を狙って掌から放たれたのは火の玉。気付けば聖者の身体には業火に包まれた蛇がまとわりついている。
しかし、それは地面から生えてきた泥のような手によって一瞬で四散した。
「流石だな。さあ、お前も守護霊を出せっ!!」
法師は興奮した様に叫ぶ。
「ですが……」
「出せっ!出さないのなら今すぐ殺してやろう!!」
法師の守護霊"炎蛇"が聖者目掛けて襲い掛かる。
「"ならず者"よ……」
その聖者の一言で現出したのは白骨と泥でできた十メートルを超える巨人。それは"炎蛇"を容赦なく捻り潰す。
「はっ、流石にやるなぁっ!だが、これはどうだっ!!!」
守護霊を潰されても尚、法師は諦めようとしない。
「残念です………」
ストンッと音がして、聖者の守護霊が飛ばした泥の剣が法師の腹に穴を空ける。
「な……に…………?」
訳の分からぬまま攻撃を受けた法師はその場に倒れ込む。
「貴方は知らなさ過ぎた。私の守護霊の本質を…。また会いましょう、いつか何処かで」
そう言い切ると、倒れ込んだ法師の身体が"ならず者"の身体に取り込まれていく。
「や……やめろぉぉぉぉおおっっ!!!」
法師は必死の抵抗を試みるがそれは無駄だった。
「私の復讐は誰にも止めることはできない…」
聖者はそう言い残し、その場を立ち去った。
初めまして!
レイヴィアです!
今回が初めての投稿となりました。
良かったら、ここは直した方がいいんじゃないかといった点をコメントで言って下さると助かります!
ではまた次回で。