このところ2次モノにかかりっきり&アイディア枯渇気味で更新がスローペースです
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毎度お馴染み越後屋の常連であるディーンとフンダーがこの日の仕事を終えて夕食ついでに越後屋で一杯呑った帰りに奇妙な一行と遭遇した。カラスの頭と翼に人間の手足を持ちアズル大陸風の装いの獣人、フンダーによく似たリザードマンとケットシーの男性とそれだけなら珍しくもない。
「冒険者でねぇだか?」
「こんな夜更けから仕事だべか?」首を捻る2人。ナゼなら一行の唯一の人間が年端のいかない幼子だったからだ、それも苦しそうに息が上がっていてケットシーの背中におぶさっている。
「失礼、少し尋ねたいが」カラス獣人が2人に話しかける。
「我々は冒険者だがひょんな事から子連れで旅の途中、その子供が熱を出してしまい難儀している。この街に医者はいないだろうか?」このエドウィンの人々は基本、初対面の相手にも友好的に接する事が多いので2人はこの一行をザンディーの診療所まで案内してやった。
「疲れと環境の変化によるモノじゃの、小さい子にはよくある。だがこんな幼い子供に旅暮らしはきつかろう」子供を診察した医者のザンディーは連れの3人へ諭すように伝える。
「分かっているニャ、実は事情があるんだニャ」ケットシーが自分達が子連れの旅をしている理由を語りだした。
元々3人で拠点を持たず流れの冒険者をしている彼ら。カラス天狗のクロウ、リザードマンのヒーチャ、ケットシーのアメジの3人はある街のギルドで山賊の退治を請け負った。他にも冒険者パーティーが7、8組雇われていた、その中にこの幼子ミロの両親もいたらしい。
山賊はかなりの大規模で闘いは熾烈を極めた、どうにか依頼を果たす事に成功したがミロの両親は山賊の手にかかり悲しい最期を遂げたという。
「という訳でそこの冒険者ギルドに調べてもらったら夫婦がこの国の生まれだと称していたらしくて。もし親戚でもいれば引き取ってもらえないかとこうして訪ねてきたのだ」カラスの説明を聞いたディーンとフンダーは顛末を聞いて大いに泣いた。
「今夜はもう遅い、狭苦しいトコだがこの診療所に泊まっていきなさい。明日ワシから街の有力者に相談しよう」
「俺らもできる事はするでな、のぉフンダーよ」ハンカチ片手に鼻声で励まそうとするディーン。
「んだんだ、同族のよしみだ。遠慮すんごたねぇぞ」フンダーはヒーチャの肩に手を乗せた、こちらも鼻を啜りながらハンカチを手放せないようだ。
翌朝、ザンディーの案内で商業ギルドを訪ねた4人。事情を知ったヴァルガスは部下と共にこの数十年間にどれだけ街に人が出入りしたか調べ出した。
結局それらしき人間はこの街にいなかった、泣きそうなミロの様子にクロウ達まで悲しくなる。
「冒険者、児童教育ギルドにも協力してもらってラターナ全土に捜索範囲を広げよう。ご領主様には俺から話しておく」
「何から何までご協力感謝します」礼を述べるヒーチャ、そこに誰かのお腹の音がグゥ~と響く、既に昼時は過ぎ陽が傾きかけていた。
「そういえば腹が減ったな、メシに行くか。奢ろう」ヴァルガスを先頭に全員夕食を食べようと越後屋に行く。
彼らもまた、内装の珍しさに目を泳がせるがヴァルガスが穏やかに諌める。幸い混雑のピークが過ぎていたのもあり次第に落ち着きを取り戻す冒険者達。
「いらっしゃいませ。ヴァルガスさんどうなさったんですか?」手透きになったこの店の店主である大輔は事情を聞かされるとロティス以外に休憩を取らせて冷蔵庫を確認する。
「今日はランチ用の食材をほぼ使いきってしまってます、賄いと同じモノしかお出しできませんがよろしいですか?」ヴァルガスはこれに対し
「構わん、というより俺も一度この店の賄いを食べて見たかったんだ。是非ともお願いしよう」それを聞くと大輔は鍋を火にかけて調理の仕上げにとりかかった。
「お待たせしました、クラムチャウダーです。ごゆっくりどうぞ」ウェイトレスが付け合わせのパンと一緒に真っ白なスープを一同に配膳し、頭を下げて奥へ下がっていった。
「ほう、ソリーア入りのスープか。このところ寒くなってきたからな、こういうのがありがたい」湯気の立つ熱いスープを旨そうに啜るヴァルガス。一方パンを手に取りスープに浸けようとしたアメジは
「あニャっ!パンがあっさりスープに沈んだニャ」
「これ、このまま食っても柔らかいぞ。こんなパン初めてだ!」ひたすらパンを貪るクロウをみたヴァルガスは
「若いってのはいいな。ロティスちゃん、パンをもう2、3個くれ」本人の代わりにヴァルガスが追加注文した、照れ臭くなりながらも新しくきたパンに夢中になるクロウ。
「スープもほんのり甘い、細かく刻まれた野菜もとろけそうだ。ソリーアも煮込まれてるのに味が全然抜けてない!」ヒーチャもしばらく食事に没頭していたが
「ハフハフ」スプーンで一口掬う毎に息をかけて冷ましているミロの姿にハッとして手が止まる3人。
「お嬢ちゃんが一番お行儀がいいな」苦笑いするヴァルガス。
食事を終えた冒険者達はヴァルガスに改めて礼を述べてから冒険者に代わる新しい仕事として酒蔵の従業員を勧められてこのエドウィンでミロを育てる事に決めた。昼間、仕事の間はミロをシンシアに預けて夜はアパートで4人暮らしをしている。そしてミロは街のアイドル的(この世界にアイドルの概念自体ないのだが)存在になっている。
シチューとチャウダーの違いって結構曖昧ですよね…