地球の日本からこの世界に誰かを転移させる事ができるのは神々だけとは限らない。
マリオン大陸のベガ王国では国王と宮廷魔術師、各大臣が謁見の間に集まり異世界からの勇者召喚の儀式を行っていた。その結果、
「異世界からの勇者達よ、今世界を救えるのは君達しかいない…」お定まりの口上を述べる国王にこれまたお定まりの反応を示し、勇者たる事を誇らしく思う4人。だがこの国王、実はとんでもない食わせものである。
「クックック、いい手駒が揃ったわい。これで余の世界征服の足掛かりができた」この世界全てを我が物にせんと目論んでいるベガ国王、その為に異世界から呼び出した彼らを言いくるめてまずは大陸内の諸外国に戦を仕掛けようとしていた。
さて、日本から召喚された4人はそんな事はつゆ知らず王宮に用意された自分達の部屋で国王から下賜された武具や鎧を身に付けてはしゃいでいた。
それからしばらく経ったマリオン大陸のベネブ王国。ルカ一行は冒険者ギルドにて、この大陸内の幾つかの国を縦断して荒らし回っていた怪物、リッチを退治してくれる者を探していると聞いた。討伐レベル100.以上というこの化け物を倒せば報酬は10000.ラム(日本円でおよそ一億円)手に入る、他の3人もルカがいれば大丈夫だろうと全員の意見が一致して請け負う事になった。
ゴノーは斧を駆りトロワはレイバーを刺しディーネも宝杖を振るう、しかしリッチといえば魔物の中でもアンデッドと呼ばれる部類。体にどれだけダメージを与えても手応えは全くない、しかもこの辺りにはヤツの手にかかって死んだ者の死体がそこら一帯に転がっている。今の体を消滅させてもヤツの新たな依代はいくらでもあるという訳だ、ルカも如意棒で敵の攻撃を防いでいたが何か思い付いたらしく仲間を一時撤退させる。
「何じゃい、有効な手でも思い付いたのかの?」
「ちょいと当てがある、ちょうど日が昇る時間だしな。3人共休んでてくれ」ルカは觔斗雲に乗り日本へ飛び立った。途中で中学生が4人行方不明だという情報を聞き取るが今はそっちに構っていられない、一刻も早く目的のモノを手に入れなければならないのだ。
その内
「この水切りの太刀は水面に写る月をも斬ったという、ならば呪われたその魂も…斬れ!」バシュッ!片刃の剣で真っ二つに斬り裂かれるリッチ。刹那、二方向に吹き飛んだ体は塵になり魂も新たな依代に取り憑く事もできず消えてなくなった。
「さて、ギルドの職員さんよ。約束通りヤツは倒したぜ」途中で拾ってきた人物に向き合って宣言するルカ、普段の魔物退治なら遺体を丸ごと、或いは部位をギルドに持ち帰れば討伐の証拠になるが今回はそれが難しいと見たルカは戻ってくるついでに冒険者ギルドの職員を連れてきていた。相手はガタガタ震えながらも
「た、確かにこの目でしかと見ました。報酬はお支払いします」約束通り10000.ラムの大金を得るのに成功した。
話の舞台はベガ王国に戻り、例の転移者4人組は国の兵士数百人と出征した。
「ホントにこの国が?」義隆が疑問を口にするが
「国王様がそう仰るのだ、間違いない」兵士がさも当たり前のように返す。
「勇者の諸君は指示に従っていれば良いのです」別の兵士が言う。はっきりと力説されて4人はそれ以上質問はしなかった、正確にはできなかった。
キャンピングキャレッジを街外れに停めた我らの一行。ルカは再び日本へ飛び稀代の名刀、『水切りの太刀』が国宝として納められてる本来の場所に返してから仲間と合流した。
「ルカさん!」トロワが慌てて駆け出してきて抱きつく、美少女相手なので嬉しいが様子が尋常じゃない。
「どうした?一体」
「大変なんです、大変なんです」
「何が大変なんだ?とにかく落ち着け」
「ワシが説明しよう」興奮状態のトロワや頭の良くないディーネには無理と判断したゴノーがルカに解説する。
「この大陸にベガ王国っちゅう国がある。そこの軍隊が何を思ってかここまで進軍しとるんじゃ」
「ハア?」ルカは驚愕した、
「この大陸の情勢をもう一度洗い直して見る必要があるな」その前にこの国の人々を安全な場所に避難させなければならない、まず国王をはじめ国の有力者達に魔法(ルカ自身は'法術'と呼んでいる)で女神様の神託を見せて自らが神の名代であると知らしめる。それから再び觔斗雲でエクレア大陸に飛びジューダ国王に謁見してベネブの全国民を受け入れてもらえないか頼んでみる、ジューダ王は
「ルカ殿はこの国の大恩人、我が臣民がその頼みをナゼ断れよう」
「ありがとうございます、資金は俺がなんとか捻出します」
「それなら私からラターナやルブルックやゴーライ公王、アズル大陸の豪商にも援助を願おう」
「では明日にでもこちらに最寄りの港へお連れします」ルカはジューダ王と別れて今度は
大輔ファンの方々(いるのかな?)はしばしお待ちを
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