異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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こちらは久し振りの更新になります


第98話勇者達と世界征服 中編

 マリオン大陸のベネブ王国から王族を含む全国民が一斉にジューダにやってきた。神託を受けてここまでわずか10日、あまりの迅速さにベネブ王は驚きながら今日までの出来事を思い出していた。

 

 まず国民を港へ集合させるだけでも普通は日にちが要る。

 「お前達はコミケに集まる客にな~る」ルカの催眠術にかかった国民はたった数時間で出港できた。人々はまさに日本のコミケの如く列をなし乱す事もなくさながら軍隊の行進、もといそれ以上に規律のとれた行列になり港へ集まった。因みにこの世界にコミケなぞ当然存在しないがルカはその概念を彼自身が理解していれば、実在しないモノに化けたり今回のように他人に術を施す事もできるのだ。

 次に全国民を乗せる船だがこれは一般的なガレオン船数隻で済んだ。各地域の領主達の協力で街単位でグループ分けした後、再びルカが法術を使いエクレアまで漕ぎ手と見張りを務める一部の衛兵以外人々をブラウニーのサイズまで小さくしたのだ。

 「目的地に着いたら元に戻す、それまでしばらく我慢してくれ」これで新たな船を建造する手間も省かれた。

 

 折しもベガ王国軍はベネブまであと僅かというところまで進軍の足を進めていた。

 「民が一人もいないぞ!どういう事だ?」

 「魔王を恐れて逃げたのか?」中学生勇者達は首を捻る。彼らはこの国に魔王が潜んでいると聞かされていたのもあり、まさか人々が彼ら自身から逃げだしたとは夢にも思ってなかった。

 そして全国民が船に乗り港を離れて数分後、彼らは海沿いの街に火が放たれて燃え盛る様子を目の当たりにした。もしも祖国に残ろうと固持していたら自分達はあの火に焼かれ命はなかったであろう、ベネブ王以下国民全てがルカ達に感謝した。

 

 船は大したトラブルもなく安全で確実な航海を続けていく、このまま何事もなく無事エクレア大陸に辿り着いてほしいと船内の誰もが願っていた。

 何日かすると天候が崩れて海も荒れてきた、すると船はさながら海中エレベーターの如くゆっくり沈み海底までたどり着く。

 「海の()が荒れるならいっそ()を進めばいいじゃない」とディーネの魔法で海底を走る船、勿論船内で呼吸もできるしそれ以外にも海上に比べて過ごすのに支障はない。

 「どうなってるんだ?」船内の人々がパニックを起こすが

 「心配せんでいい、ワシらの仲間が海上での危機を避ける為に魔法で沈めておる。嵐が収まったらまた上がるでの」ゴノーが事の成り行きを説明すると次第にこちらの嵐も落ち着いた。

 やがて空は快晴となるが一難去ってまた一難、上空からグリフォンの大群が船目掛けてその鋭い爪を伸ばしてきた。

 「失せろ!」ルカが一声吠えると一瞬、攻撃を躊躇うグリフォン群だがすぐに臨戦態勢を整え再び向かってきた。

 「ヤレヤレ、しょうがねぇ」觔斗雲に乗って如意棒を構えるとグリフォン群を一羽残らず叩き落としてしまった、開いた口が塞がらないベネブ国民一同。

 そんな感じで大した事件もなし?に無事入国できた、ベネブ王は自らと臣民を受け入れてくれたジューダ王と挨拶を交わし重ねて厚く礼を述べる。

 

 とはいえ流石にこれだけの人々が住む余裕はジューダにもない。そこで大半はエクレア大陸の各国へ移住してもらう事にした、まずは遠方に引っ越しする人々から準備を始める。ルカの指示でゴノーと街の職人達が耐久性の高いゴンドラを数多く造る、それが仕上がる頃上空からドラゴンが何頭もジューダに舞い降りる。

 「ルカ、まさかとは思うがの…」

 「ああ、ベネブの人達を乗せたゴンドラをこいつらに運んでもらう」あまりのトンデモ発言に腰を抜かすジューダとベネブの人々だった。

 実は竜人の国とも親交があるルカは彼らに事情を話し協力を要請していたのだ。これを快く引き受けた竜人の姫、ステラは一旦人型に姿を変えてジューダの王族に挨拶すると再びドラゴンの姿でベネブ王達の乗るゴンドラを後足で掴む。他のドラゴン達もそれに倣い空の大移動となる、ステラは安全に運ぶとゴンドラに乗る人々に約束して自分達の国まで飛び立って行った。

 次に陸路で行ける比較的近く(国境は越えるが)の場所へ移住する人々はルカ達が一度は受け取った10000.ラムをジューダの冒険者ギルドに払い、その金でギルドが雇った冒険者を引っ越しするベネブ国民の護衛につける。最後にラターナへ向かう事になった人々はルカ達自身が護衛する、ラターナを一周して最後にある店に訪れた。

 

 「ナゼだ!どうして街に火を放つ必要がある?」前衛タンクの秀斗は兵士の一人に詰め寄る。

 「黙れ!我が国王陛下のご命令だ!!」

 「それにしても、やっていい事と悪い事があるわよ!」剣士の恵未も突っかかる、回復役(ヒーラー)になった恭子は魔術師の義隆と火を消すのに必死になっている。四人は段々、自分達は騙されているのではないかと国王軍に不信感を持ち始めた。

 

 「いらっしゃいませ。ルカさん今日はまた随分大勢お連れでしたね」旧友を迎えた大輔は足を伸ばせる座敷へ案内する、因みにこの日は定休日だったが領主コルトンを通じて事情を聞かされていたのでルカ達の為に貸し切りにしておいた。

 「とりあえずビールを三つとアルコールなしの飲み物を一つ。後はまた声をかけさせてもらう」

 「はい、すぐにお持ちしますね」パックス以外の従業員もいないので調理から配膳まで一人でこなす、やがて飲み物が運ばれてきて4人はそれを飲み干す。

 「今夜はこの店で英気を養おう、俺は明日にでもベガに戻り国王の野望を打ち砕きに行く」そして翌日、ルカは仲間達を残し觔斗雲に飛び乗りベガ王国へ踵を返した。

 

 

 

 




次回はまたしばらく後になります
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