ベガ王国に舞い戻ったルカは早速国王を拘束する、このまま殺してもいいが民衆の為にもまず晒し者にしてやろうとベガに首輪を巻いてマリオン大陸の各国でこれまでの悪企みを吹聴して回った。
真実を知った民衆は怒り、わめき散らし国王に石を投げる者までいた。そうして噂が噂を呼びベガ王国政権は事実上壊滅、国は暫定的に反王国派の領主達が何名かで治める事になった。
「この大陸に呼び掛けて地球に倣った国連的な団体を設立させるか、そうなると女神様にも協力してもらった方がいいかな」やがてこのマリオン大陸から『大陸同盟』なる団体が発足して更には海を越えた別大陸それぞれの国の代表も名を連ねる『世界同盟』となって協議を交わすようになるのだがそれは未だ遠い遠い未来のお話。
さて、散々ベガ国王を連れ回して国中に醜態を晒したルカはその首輪を掴んで觔斗雲に乗り天界へ昇る。どんどん足が地から離れて恐怖に震えるベガ王は最後、成層圏に達すると寒さと酸素不足で気絶した。
目を覚ますと天界にいたベガ、その目の前にはこの世界の最高神たる女神様がいらっしゃる。
「あなたの業はあまりにも深いでちゅ、よって地獄行きとちまちゅ。
「これでベネブを始めマリオン大陸は救われるだろう、後はあの坊っちゃん、嬢ちゃんを日本に帰すだけだな」下界に戻り彼らを探すルカ、勿論簡単に見つかった。ルカは真実を話して聞かせる、ベガを段々と訝しく思っていた4人はアッサリ納得した。そしてルカは用意した馬車に彼らをラターナまで走らせる、そして馬車はエドウィンの街に入った。
閉店後の越後屋についた一行、座敷へ上げられた中学生4人は一斉に土下座した。
「俺に謝っても仕方ないんだがな。まあお前さん方も被害者だし、今日これからでも地球へ帰してやるとしよう」ところが四人は意外な事を言い始めた。
「僕達、帰りたくありません」
「これから一生、ここで暮らしたいです」この言葉に目をパチクリさせるルカ。
「本気か?」
この四人、過程はそれぞれ異なるものの実は揃って親なし子達の集まりである。今は養護施設に引き取られそれなりに生活も保証されているがやはり回りの視線は痛いし、変に気遣われるのも空しい、今回の事件を機会にこの世界に移住したいと少しずつ考えるようになっていた。
「もう少し経ってからでも遅くないと思いますよ」さっきから黙って話を聞いていた大輔が口を挟んできた、先代から我が子同様に育てられたとはいえ彼も幼くして両親を失った親無し子である。故に気持ちも分からなくはないが彼らが現代文明から急に離れて生きるのは難しいだろう、大体こちらの世界では既に働いてるのが一般的な年齢である。
「お説教する気はありません、今夜は食事をして泊まっていくといいでしょう」そういうと彼らの目の前にホットプレートを差し出す。
「ヨセフさんからいい肉を仕入れる事ができたので焼き肉にします、各自で焼いて下さい。代金はお気になさらず、ルカさんに請求しますから」
「オイコラ、ちょっと待て」相変わらずの漫才調子の二人。そこに狙い済ましたかの如くトロワ、ゴノー、ディーネがやってきた。
「事情はルカさんから聞きました、とんだ災難でしたね」同年代のエルフ少女が慰めの言葉をかける、その可憐さに男子二名は顔を赤くする。
「みんな、落ち込んじゃダメだよぉ。お姉さんがお話聞いてあげるからね~」もう一人の女性も手足は人間のそれではないが美人である。しかも胸が大きい、ニヤケそうな男子の背中をつねる女子二名。
「ホウ肉料理か、ならば酒は欠かせんのぉ。マスター、ワシらにもこの鉄板のをだしてくれんか?後ビールもな」
「私も~」早速酒を注文するゴノーとディーネ
「そんじゃせっかくだからみんなでで食うか。このホットプレートデカいしな」ルカの提案に全員賛成した。
「え?じゃあ、百年も閉じ込められてたの?」肉を焼きながらトロワと話していた恭子と恵未はその身の上を聞いてショックを受ける、義隆と秀斗はどういう訳かゴノーと意気投合して鍛冶や大工仕事のレクチャーを請うていた。後はただひたすら肉とご飯を食らう中学生達、その健啖ぶりに
「あっはっは。若いっちゅーんはいいのぉ、ワシも負けておれんわい」ゴノーも肉と酒をチャンポンしている。
「すいません、私もオリゼ下さい」中学生達と同年代で当然酒を呑めないトロワもモリモリ食べる。
「こっちにビールお代わり~」ディーネは早くも酔いが回ったのか上機嫌だ。
「お前ら肉ばっかり食ってねえで野菜も食え!」結局突っ込み役はルカであった。
「最低でも高校には通う事。その合間にこっちで働くなら僕が仕事を紹介する、身元引き受け人にもなるよ」こちらへの出入口になる2号店へ話を通しておくと大輔は中学生達に約束した、今回はルカに送られて地球へ帰る。
日本へ帰ってきた四人は施設の院長に何て言って詫びようかと考えていたが、ふと町中のショッピングモールに輝く電工掲示板を見ると
「日付を見て、私達が召喚された日のままになってる」
「嘘だろ?あれから結構な日数経ってるよな」
「あの店を出た時は夜だったよな、今この空はどうみても昼間なんだけど」
「一体何がどうなってるの?」とにかく施設に帰った四人、院長に何て言って詫びようかと思ってたら
「アラお帰り」まるで何事もなかったように普段通りの出迎え方だった、首を捻りながら裏口の戸一枚を隔てて両世界を往復しているという大輔に電話する。
「あー、ルカさんタイムワープも出きるから」あまりに簡単な答えを返されて
((((あのサル、チートすぎるだろ…))))四人仲良く茫然とするしかなかった。
いよいよ百話到達にあと一歩、ですがいつ投稿するかは分かりません。
m(._.)m