異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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10月1日「リュゼ」を「オリゼ」に変更しました、ご了承下さい


第15話鬼と長崎チャンポン

 ラターナ王国にある牢獄付きの鉄鉱山では今日も奴隷達が過酷な労働を強いられている、その中には以前越後屋での騒ぎの原因になったあの男、ラティファを奴隷にして虐めていた奴もいる、今では自分が奴隷に堕ちて獄卒に厳しく監視されている。まぁこいつの事はどうでもいい。

 「う~ん、鶏ガラだけじゃ弱いかな」大輔は定休日に行うもう1つの恒例行事である新メニュー開発に取り組んでいた、しばらくして店には従業員の他ヴァルガスと金物屋夫妻、お客様1号であるアラン達4人が集まってきた。彼らに新しくメニューに載せる料理の試食をしてもらおうと大輔本人が呼んだのだ。何回か試行錯誤を繰り返し納得いくものが完成したのでみんなに振る舞ったら想像以上に好評であった。

 話は変わりその翌日。(オウガ)の獄卒カラバにとって最悪の朝だった、奴隷の1人が重労働から逃れようと一瞬の隙をついて馬車を盗んで監獄から逃げ出したのが判明したからだ。この国で奴隷はいずれも大罪人ばかり、そんな奴が逃げたとあらば俺が上司にどやされる、いやそれ以前に何をしでかすか分かったもんじゃない。幸い鬼は鼻が利く上、馬(この世界で馬とは地球でいうダチョウ、ただし大きさは数倍サイズ)より早く走れる。一刻も早く捕まえよう。

 集落を3つほどすっ飛ばし、エドウィンに着いた、脱走犯の匂いがする。この街にいるのは間違いない。街の衛兵隊にも協力を頼んでしらみ潰しに調査した結果、日が暮れる頃廃屋に潜んでいるのを発見した。その後法律上の手続きを済ませ盗まれた馬車はカラバが駆り、脱走犯の身柄は今夜衛兵隊の駐屯所で拘束して翌日彼らが鉱山へ送り届けてくれる事に決まった。

 一安心したら腹が減った、今朝の騒ぎで朝から何も食ってない。この辺にメシ屋がないか衛兵隊に聞くと一風変わった凄くウマい店があるらしい、教わった場所へ行くとあまり大きくない店だが外へ漏れてくる賑わいから繁盛してるのは間違いない。

 「いらっしゃいませ」もう夜の帳も落ちたのに明るい店内、誰が演奏してるのか聞き慣れぬ音楽がひっきりなしに流れている。実に奇妙な店だったが客達は楽しそうだ。ウエートレスがメニューとやらを持ってきた、この中から食いたいモンを選ぶのか。しかし一見の客である俺にはよく分からん、悩んでると自分と同じくらいの体格をした常連らしきサイクロプスが話しかけてきた。

 「今日からマスターの新作料理が御披露目だそいつを食ってみな、味は保障するぜ、まぁこの店の料理全部にいえるけどな」どうやら酔っぱらい気味だな。しかし常連の進めるモンなら間違いないだろう。そいつを注文することに決めた。

 「お待たせしました、ナガサキチャンポンです」パスタ料理か、スープに浸してるのは初めて見るがさほど変わってるとは思えない。フォークで麺を巻き取って食べる。

 「ム、パスタとは違うな、波うっている麺がスープに絡んでくる。少し塩辛いが旨いスープだ、今日はあちこち駆けずり回ったからな、このぐらいが丁度いい」麺の次はスープに浮かんでいる肉とプラッカをスプーンで掬ってみる、肉は結構大きめの塊にも関わらず歯を使わず舌と唇だけで噛みきれる程柔らかい、プラッカも火がしっかり通してあるのにシャキシャキした歯ごたえがある。混ぜてある白いのはなんだ?味からして魚のような気もする。あっという間に麺と肉とプラッカが腹に消え最後にスープを飲み干そうとすると男の店員がチャンポンより一回り小さなボウルを差し出す。

 「こちらのオリゼは無料です、お嫌いならお下げしますがいかがなさいますか?」茹でられて温かいオリゼからは甘い香りが漂っている。このスープに合いそうだ。

 「いや、食うぞ!むしろもう一杯くれ!」

こうしてたらふく食った俺は馬車を御して鉱山のある監獄へ戻った。この店の料理は確かに旨い、だが勤務地から遠いのが残念だ、エドウィンに獄卒の仕事はないし。鉱山近くに支店が出来ないものか、それとも今の仕事を辞めちまうか。

 とりあえず上司に掛け合って今度3、4日休暇を取ろうとカラバは考えていた、エチゴヤでメシを食う、ただそれだけの為に。




越後屋の長崎チャンポンはチャーシューが丸々1枚乗ってます。後キャベツに混ざってるのはかまぼこです。
 ラターナのある大陸ではお米(オリゼ)を「炊く」という概念がありません。
 リクエストお願いします。今後登場させたい料理、それを食べる人物(亜人含む)のアイデア募集します、可能な限りお答えするつもりです。感想欄にお願いします

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