異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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 流石神様、ネタに困った時意外に使えるキャラです。
(^人^)最近こっちに入り浸ってますね、地球はほったらかし?


第22話殺し屋とすいとん

 ロックウィルの街で暮らす殺し屋のピコリーノがエドウィンにやってきた。依頼によるとターゲットはこのところ繁盛しているエチゴヤとかいう酒場、いや料理店だったか、そこの主人だ。殺し屋の業界では依頼主が直接彼らに殺しを頼んだりはしない、全て仲介人が間に入り話が通される。今度の仕事もピコリーノは誰の依頼かは知らない、彼がよく知る仲介人が話を持ってきたのだ。ピコリーノは義賊であり殺るのは悪党と決めている。自分の信念を曲げてまで引き受ける気はない、対して仲介人は金になるならターゲットがどんな相手でもお構いなしだ。だから依頼を受けるのは己の目でターゲットを見極めてからにしようと思ったのだ。

 正体を悟られぬように行商人風の出で立ちで店の中へ入る。今日は生憎の豪雨にみまわれ、コートも傘も役に立たない、こんな濡れ鼠では追い出されるのが関の山ではなかろうか、

 「いらっしゃいませ」パンツスタイルのウエートレスに向かえられる、眼鏡が邪魔をして気付きにくいが中々の美人である。

 「コートと傘、お預かりします」ピコリーノからコートと傘を受け取ると店の隅に備えてある衣紋掛けとスタンドに納める。やけに親切な待遇だ、常連客らしき衛兵に聞いてみるとここでは普通の事だという。勧められるまま空いているカウンター席へつくとなにやら薄い書物らしき物が置いてあった。

 「そちらはメニューになります、お好きな物を選んでお申しつけ下さい」今回のターゲットとなるこの店の主人が説明してくれた。今日は雨に打たれて体が冷えている、こんな日は暖かい物が食べたい。ついでに酒でもあればありがたいところだ。この辺、否この世界にメニュー自体存在する店は他にないので越後屋でも一見の客はメニューを見ても結局店のお任せにする事が多い、ピコリーノも例に漏れず暖かい料理と酒を、とだけウエートレスに伝える。

 「さて、どんなものがでてくるか」店内を見渡すと、さっきの衛兵に加え金のネックレスに色つきの眼鏡をかけ、髪を香油で後ろに撫で付けている派手な服装の男、揚げ物と一緒に褐色の酒をカパカパと呑むドワーフの2人組にスターキーを使った菓子を食べる身なりの良い、年かさながら美しい貴族の夫人とその娘。顔を付き合わせて食事をする鏡合わせのようにそっくりな男女、やたら白い料理を旨そうに食べるパーンと客も個性的な面々である。こういった店は大抵気のいい者が仕切っている、悪党には真似出来ぬモンだ。

 「お待たせしました、スイトンとニホンシュです」褐色のスープに色とりどりの野菜と肉、小麦か何かの粉を練って丸めた白いものが浮かんでいる。

 「ウン、スープは旨い。この白いのはオリゼの粉を練った物か、スープがいい感じに染みている、野菜も柔らかく煮てありながら食感が残してある」酒の肴にするよう肉だけ残して一緒に運ばれてきた酒に手をつける。ガラスの瓶から取手のない陶器製のカップに移して呑むのか。見た目より強い酒だ、飲み過ぎないようにしなければ。

 料理と酒を平らげたピコリーノは主人をじっくり観察する。どう見ても悪党には思えん、今回の仕事は断わらせてもらおう。

 店を出ると同時にさっきの派手男に取り押さえられる、殺し屋を長くやっていれば逆に命を狙われるなんてのはよくある事だ、ピコリーノも殺されかけたのは一度や二度なんてモンじゃない、それでも相手の気配を察し全て躱してきた。危険を察知する力は自然と身に付いている、その俺が全く気付けなかったとは。相手はかなりの手練れの同業者なのか(;゚;Д;゚;;)?

 「あの店には手を出しちゃダメよ。いいわね、嫌だといえば容赦しないわよ」男の癖に女口調で話すケッタイな奴だが隙のない態度に素早い身のこなし。腕は侮れない、勝負になれば俺は間違いなく殺される。

 「わ、分かった」冷や汗を垂らして頷き降伏する。男はいつの間にか消えていた。

 しばらくしてピコリーノは件の仲介人と依頼主らしき人物が謎の変死を遂げたと聞き、間もなく何処かへ行方を眩ました。その後の彼がどうなったかは誰も知らない。

 




 池波正太郎先生の作品では〈仕掛人藤枝梅安〉が一番好きです。
・スターキー→林檎。第3話では大輔視点の文面だった為、日本語でした。

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