異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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 今回の主人公、ルッコラ。実は最初に考えたキャラでした、やっと出せた。(^▽^:)ゞ


第23話ブラウニーと羊羹

 突如発生した竜巻によって生まれ育った村から吹き飛ばされたブラウニーの子供、ルッコラは幸運にも死ぬ事なく、果てしなく広い大地に降ろされた。草木一本生えない大地の両脇には幾つもの洞窟が立ち並ぶ。

 「ここはどこ?」辺りには家族も友人もいない、ドシン!大きな足音が聞こえる、回りでは彼を優に越える大きさの怪物達がところ狭しと歩いている、身長3センチ程のルッコラなどあっという間に踏み潰されそうだ。

 「ハワワワッ!」一頭の2本足の怪物の足を見つけそこにしがみつきどうにか難を逃れる。

 時は夕方、既に日は落ちそうでこのままでは今夜寝る場所もない。怪物の足は洞窟の1つを目指している、中に入れば眩い明かりに目を覆ってしまう、両手を放してしまい地面に転げ落ちる。

 「ア痛タタタ」漸く明るさに目が慣れて改めて洞窟内を見渡すとルッコラ達が使う物に比べかなり巨大ではあるがテーブルと椅子があり怪物達は何かをバクバク食べている。よく声を聞くとルッコラ達と同じ言葉を話しているのに気づく。

 「マスター、ドブロクの追加じゃ」真っ黒な池を食べる白い髭をした年寄りの怪物が叫ぶ。比較的小さい女の怪物(尤もルッコラよりは圧倒的に大きい)はキラキラした塔の屋根をほじくり返して食べていた。彼が足にしがみついてた怪物はさっきから火山に蓋をしたり銀色の湖に手を突っ込んだりしている。

 「逃げなきゃヘ(・・ヘ)」本当ならじっとしていた方が安全でそうする方が利口なのだがまだ子供のルッコラにそこまで考える知恵はない。ふいに巨大な皺の多い手が伸びてルッコラを捕まえる。

 「なんだい、鼠かと思えばブラウニーの子供じゃないか。1人っきりかい?こんなとこに迷い混んでよく死なずにいられたねぇ」聞き覚えのある声の方に向くと顔馴染みの人間がいた。ルッコラが怪物だと思っていたのもよくよく見ると大半は人間で洞窟も彼らの家だった。

 ブラウニーの村がある山に自生する薬草をよく採りに行くガーリンは彼らとも面識がある、人間では入れない狭い箇所の薬草摘みを手伝って貰ったりしてる事もあって親しい付き合いをしていた。ガーリンは幼い友をカウンターに座らせると越後屋一同と店の客達に紹介した、ルッコラはその可愛らしさであっという間に皆の人気者になりその夜の酒の席は大いに盛り上がった。

 店を閉める時間になり、ガーリンが明日薬草採りのついでにルッコラをブラウニーの村に送って行く事になった、大輔はこれも何かの縁だからと試作した物を土産に持たせる。

 「ルッコラ!無事でよかった、ガーリンさん、わざわざすまなかったね」ルッコラの両親は首が痛くなるほど頭を上げ感謝の言葉を述べる。因みに歴とした大人である彼らも身長は10センチくらいである。

 「もののついでさ、おかげで私も御相伴に預かる事ができたからね、こっちが礼を言いたいくらいだよ」酒も好きだが甘党でもあるガーリンは腰を上げリベリと一緒にブラウニー達が傷付かないよう藁を敷いた荷車に彼らを乗せて家路へつく。

 村中のブラウニーがガーリンの自宅の机に乗せられ渡された土産の箱の1つを囲む、村長をはじめ大人達数人で箱の蓋を開けると四角くて黒い塊が出てきた。

 「これは一体なんだい?」

 「見た目は不気味だがなんとも甘い匂いがするよ」

 「食べ物だって」人間でいえば4、5歳くらいにしかならないルッコラに聞いても要領を得ない。

 「ヨーカンとかいう甘い菓子だそうだ、この黒いのがスタンダードで赤や緑のもあるとさ。リベリ、お茶を淹れとくれ。お前も一緒に食べよう」お茶を運んできたリベリは机の上のブラウニー達を挟んで師匠と向かい合わせに座りもう1つの四角い菓子をフォークで崩して口にする。

 「先生、甘いです!でもプリンとは全然違う、あっちは柔らかいけどこっちは歯応えが楽しくて。あれ?私、変な事言ってますか?」

 2人の様子を見たブラウニー達は一斉にヨーカンに群がる。

 「甘いけど後味がすっきりしてる」

 「なんとなくヒスピの風味があるよ」

 「こいつはラクや卵が使われてないらしいね、これを作った料理人がヒスピの親類に海藻を主な材料にしていると言ってたよ」ガーリンの説明を受けて女性陣は更に詳しくレシピを請うが、 

 「それ以上は私も知らないよ、薬師や料理人にとってレシピは命も同然、本人に聞くか金を払って現物を買うしかないね」彼らの社会には貨幣は流通しておらず手に入れるには人魚みたいに物々交換するしかない。そんな中、村の長老は自らが子供の頃、当時の大人達に出入りを禁じられていた山奥の森を思い出していた。成人した後訪れたその森には山賊らしき人間の白骨死体が数人分、確か今でもあのままになっているはず。その全員が死んで尚、大事そうにしていた布の袋に詰まっていた白や黄色の丸くて固い物。あれこそがこの友のいう「カネ」であろう。持ち主は死んでるしワシがもらっても構うまい、あれさえ持っていけばこの旨い菓子がたらふく食える。山を下りる方法は幾つかある、ガーリンらに頼むのも手だろう。

 「問題は独り占めできん事じゃな」長老は苦笑する、何せ村中100人全員が腹一杯食べても四角い塊は半分残っているのだから。

 

 




 ホントはルッコラとブラウニーがメインの話にしたかったのにいつの間にか薬師師弟中心になってしまいました。この2人何気に準レギュラー化の予感(°〇°)
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