(∥ ̄□ ̄∥)この頃、脳と手が一致してない気がする…。
ある営業日、ラティファは手が離せないマスターに変わって蝙蝠の獣人のカリーナが営んでいる農場に不足気味の野菜を仕入れにきた、エチゴヤで働いてわかったのだが野菜に関しては異世界とこちらを比べても殆ど違いがない、マスターは今後少しずつではあるが食材をこちらで仕入れると言っていた。より地域に根差した店を目指すらしい、ラティファにはよく意味が分からないが。
「はい、ラトゥールとプラッカがそれぞれ3玉にティナーカが半オイスね、ラティファちゃん今日もよく働くね」カリーナはこの少女を随分前に家出した娘の幼かった頃に重ねていた。酒浸りの夫と別れ女手1つで育てた娘。父親に似たのか、私の育て方が悪かったのか風の噂では悪い仲間とつるんでこそ泥や恐喝といった罪を犯してはよそ様にご迷惑を掛けているとか。できれば1日も早く改心して真っ当な道に進んでほしい。などと考えてたらその日の夜に一人娘リルルが泣きながら帰って来た。頭には金属の輪っかが嵌められている。
「お母さぁん、ヒク、エッグッ」母より身長は高くなったというのにまるで中身だけ小さい子どもに逆戻りしたかのように泣きじゃくる。家出した時の傲慢さが失せきった娘を優しく抱き締めるカリーナ、聞きたい事は色々あるけど後回しにしよう、今は帰ってきてくれただけで充分なのだから。
次の日からリルルは母の農場を手伝い始め、街の人々も次第に受け入れてくれた。あのサルに嵌められた頭の輪っかだけはどうしても外れないが今更恨むつもりもない。
「リルル、ケパとスターキーをエチゴヤに届けてきとくれ」今この街で人気の料理店だ、リルル母娘は客として訪れた事はないが噂じゃ貴族様からならず者まで通い詰めるとか。とはいえ
「今日はあのお店確か定休日のはずでしょ、食材を仕入れてどうするつもりかしら?」
「さあ、でも注文があったからにはお届けしないとね」リルルが野菜を持って越後屋に訪れると商業ギルド長のヴァルガスが店にいた。
「ギ、ギルド長こんにちは。どうしてここに?」一つ目で巨躯なギルド長の迫力に押され強張るリルルに対しヴァルガスは気さくに話す。
「今日は仕事の話があってな。なあマスター、例のモンは出来たのか?」
「えぇ、オリジナルレシピ完成です。あっリルルさん、ケパとスターキーはその辺に積んどいて下さい」
「ホォこいつが"あれ"の材料か。もう一つのは作れんのか」
「僕が店閉めてそれだけに取り組んで1年かかりますよ」
「そうか、当面は諦めるか」真剣な面持ちの2人の会話に己が場違いな気がして帰ろうとしたリルルをマスターが呼び止める。
「今夜、試食会をするのでお母さんといらして下さい」
カリーナとリルルが越後屋に入るとヴァルガスと領主様のコルトン公爵がなにやら難しい話をしている。
「領主様、当ギルドで"あれ"を販売すればエドウィンの名産となり、街に貢献もしましょう。是非許可を頂けませぬか?」
「マスターが良いなら私に異存はないが、先ずは食さねばな」
「お待たせしました、ソース焼きそばです。これが一番ダイレクトに味がわかりますからね」黒っぽいパスタらしき料理が各々に出された、具材は肉とプラッカだけのシンプルなモノだ。
「試食つってんだからタダなんだよね」なぜかビビりながら食べようとするリルルとは対称的にカリーナは
「美味しいじゃない(^o^)!家の野菜が使われてると思うと尚更だね」結構な量があったにも関わらず瞬く間に完食した、一方公爵らは一口ずつ吟味しながらこの料理の調味料について論じている。
「これがウスターソースとやらで作った料理か、うむ甘味、酸味、辛味全て合わせながらも纏まりがある、我が街で売り出すのも良いな」
「これも酒に合いそうだ。マスター、今度店のメニューにも入れてくれ」
「冷やしたビールありますよ、公爵様も宜しければ」
「その前にギルド長、ウスターソースの材料になるケパとスターキーの仕入れルートはどうするつもりかな?」
「農場の女将さんが今ここに来てます。聞いたかい?街をあげての産業だ、アンタも協力してくれ」
「私からもよろしく頼む」公爵様直々に握手を求められ緊張しまくりのカリーナ。突然湧いた大口の仕事に頭がクラクラし、倒れそうになるのを支えるリルル。
「お母さん、私も頑張るよ」今まで心配させた分、親孝行しようとリルルは気持ちを新たにする、あのサルに感謝すべきかはどうかは迷うが。
遂にウスターソースが異世界デビュー?
ウスターって確か地名ですよね、なら〈エドウィンソース〉として売られるのか?!
「異世界西遊記」からまたしてもキャラがお引っ越ししました。
m(._.)m