異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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思いの外、外伝その2がすんなり書けたので続けて投稿しました


外伝その2私の履歴書 マティス編

 今から8年前、私は両親はじめ大勢の人達から祝福されて結婚した、3年後には息子をその2年後は娘を授かり慎ましくも幸せな日々を送っていた。

 ある日仕事から帰ってきた夫が頭痛がするといって早めに床につき、そのまま翌日には亡くなっていた。突然の事にどうすればいいか分からなかった。お葬式の最中はただ泣き通した以外に記憶はない、夫には身寄りがなかった事もあり子供2人を連れて実家に戻った。両親は孫と暮らせるのを喜んでくれたけど、兄を半ば追い出す形になってしまったのは申し訳なかった。

 それから3年は夫の遺産を切り崩したり父さんと兄さんを手伝ったりして子供達を育てていたが蓄えも底を尽きこれから親子3人どうやって生活していこうか悩んでたある日の事、母さんの所有地に突如奇妙な家が表れたと聞いて朝早く家を空けていた両親が帰ってきた、なんと家の主は異世界からきた料理人で当の本人も知らない内にこの世界に引越してしまったそうだ。母さんから一緒に立ち会った商業ギルド長のヴァルガスさん以外には秘密にするよう釘を刺される、土地もそのまま使わせる事にしたと言っていた。

 1ヶ月くらい経つとそのお店が大忙しになり、私も臨時で給仕を手伝う。お昼から夕方まで働いて異世界人のマスターから日当をもらう、中にはアル硬貨が5枚入っていた。働いた時間の割に大金だ、これだけ貰えるならいっそ本格的に雇って欲しいと願ってたら従業員の募集を始めたそうだ。

 「母さん、私を雇ってもらえるように頼んで。子供達のためにお金がいるの!」

 願いは通じて今日から仕事をして欲しいとマスターに頼まれてた日、ナゼか私と妹のロティスを迎えにきた。母さんに何かお願いがあるのでそのついでだそうだ、この日お店は休みだがその分掃除をしっかり行いたいらしい、マスターは用があると裏口から出ていった。異世界に興味はあるがそもそも彼以外誰も行き来できないそうだ。ロティスがふっ飛んだ気がするが多分目の錯覚だと思う、ウン。その後私は元主婦だった事もあり給仕ではなく調理補助担当に選ばれた。

 これから先は余り語る事もない、エチゴヤは他の飲食店より夜遅くまで営業してるが、保育所に子供を預けてる私とまだ12歳のラティファは早めに帰らして貰っている、閉店後の片付けまで残って仕事するロティスは逆に出勤するのは私達より遅い。

 夏を向かえたある日の夜、保育所の帰り道の途中、どこか娘の様子がおかしい。呼吸は荒いし足下もおぼつかない、どこかで見た事ある状態だ。そう3年前死んだ夫と同じ、今度は娘まで失うの?

 「イヤァァァァー!」錯乱して大騒ぎしまくる私にラティファが駆け付けてマスターとロティスが店から飛び出してきた。

 「ハイ、これ飲んで」マスターだけが冷静を保ち水を飲ませる、彼の指示に従い療養所の戸を叩いて医者を引っ張り出して娘を診てもらう。

 「夜とはいえこの暑さじゃ、体内の水分が枯渇したんじゃろう、こうなると普通は手遅れになりがちだがマスターの応急処置が良かったんじゃな」

 翌日出勤の時両親もついてきた、2人はマスターに会うなり孫を助けてくれてありがとうと涙を流して感謝していた。あの時飲ませたのはたまに賄いについてくる赤いピクルスと砂糖を混ぜた水だったそうだ、汗をかいて失った水分を補給して、酸味が体力を付けさらに砂糖を加えてより体に浸透しやすくしたという、なお異世界でもこの病で亡くなる人は多いが素人でも対処の仕方は知ってるという。一方で当人に自覚がないのも特徴だから夏の暑い日や鍛冶仕事をする者などはかかりやすいので水筒を持ち歩くとかすぐに水を飲める状況を用意するのが大切とのこと。

 少し逸れましたが私の話はこれで終わりです。

 




マティスの夫の死因も熱中症でした、アナフィラキシーショックとどちらか迷いましたが異世界側からすればこっちの方が説得力があるのではないでしょうか?

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