異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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たまに<不味いパン><石みたいなパン>出てきますがエドウィンのパン事情を紹介します、時系列は越後屋が異世界で開店する直前くらいです


第37話公爵とパン屋とエピソード1

 異世界はラターナ王国のエドウィンの街に店舗ごと転移した大輔は市場調査を始める事にした、ここで店をやっていく以上人々の暮らしや食文化を知っておく必要がある。案内役は商業ギルド長の(いわば商店街の会長さんみたいなものかなとこの時の大輔は思ってた)ヴァルガスが引き受けてくれた。

 やがて一軒の店に到着した、ベーカリーのようだ。ヴァルガスは大輔を別大陸からきた、昔馴染みの親類でこの街で料理店を開く予定の若者と紹介した。昨日4人で話し合い大輔が異世界人である事は内緒にした方がいいだろうという事になり予め裏設定を決めておいた。

 大方の予想はしていたがこちらの主食はパンだった。鋸らしき道具で薄切りにされている、1つ貰って口に入れようとしたら怪訝な顔をされた、囓ってみると固い!まるで木片のようだ。味はそこそこだったが普段食べ慣れているものと違う。パンというより大きな煎餅かクッキーといった感じである。

 「この世界じゃパンをそのまま食わねえよ、スープや茶につけて柔らかくして食うんだ」周りからクスクス笑われる中ヴァルガスから丁寧に説明を受ける。

 「このパン、どうやって作るかわかりますか?」パン屋の主人に気付かれないようにヴァルガスに尋ねる、

 「ン、異世界のパンは材料とか違うのか?」

 「材料というより加工の仕方だと思うんです。失礼がない範囲で聞き出したいんですが」ヴァルガスからみればこいつらの方がよっぽど失礼だと思ったが大輔の事を礼儀正しい若者と感心もした。同時に異世界のパンを食べてみたかったのもあり妙案が浮かんだ。

 「こいつの故郷のパンは一味違うぜ、みんなで試食に行かないか?もう土地と建物はできてんだ」この言葉に焦る大輔、今は買い置きのパンがない。一昨日使いきっていたのだ、仕方ない、店についたら正直にいって謝ろう。という訳で全員揃って越後屋へ向かう事になった。

 「えっと…本来だったら僕の故郷で専門の職人が焼いたパンを召し上がってもらうのですが、生憎切らしているので代わりに僕が自分で焼いたモノになります。その…失敗作なんですが」手にとるとそのままで綿のように柔らかく甘い香りがする。

 「なんだ?これがパンか?家のとは全然違う!」

 「これで失敗作?成功したらどれだけ美味いんだ?」ふと入口から柄の悪そうな男達が入ってきた、パン屋の主人に駆け寄るといきなり胸ぐらを掴む。

 「オイ!金はできてんだろうな」こいつらも借金取りか、どこにでもいるんだな。嘆息する大輔に対しヴァルガスはパン屋の主人と借金取りの両方を睨み付ける。

 「俺はこの街で商業ギルド長を任されているヴァルガスだ!お前ら誰の許可を得て金貸しなんぞやってんだ?それにパン屋、借金してるのは本当か?」借金取りよりヴァルガスが怖くて涙目で頷くパン屋、一方借金取りもビビりまくっている。

 「こいつは領主様の判断を仰がなけりゃならねえ問題だ、お前ら全員ついてこい!」全員というので大輔もついていく。

 やがて交番を彷彿させる建物につく、ここが衛兵隊の駐屯所だそうだ、ヴァルガスから話を聞いた衛兵達はヴァルガスと大輔以外の全員を縄で縛り上げた。

 「この国じゃ基本的に金貸し業は禁止されてる、必要な場合は商業ギルドが貸すのが習わしだ、異世界じゃどうだか知らんが、あの連中のやり方も違法行為なのは間違いなかろう?」日本の借金取りにムカついた訳を理解した大輔、衛兵に連れられてやってきたのは大層立派なお屋敷だ。

 「執務室で領主様がお待ちだ!」衛兵に煽られ書斎みたいなところへ入るといかにも貴族を思わせる中年寄りだがイケメンの男性が控えていた、この人が領主様だろう。

 「では両者に判決を下す、借金取りは最低2年間牢内にて服役、パン屋の主人は身分証剥奪の上街払いとする」この国では罪人の刑罰は法律に沿って領主の判断に委ねられ、彼らは裁判官の仕事も兼任しているらしい。罪人達が衛兵隊に連行されて大輔とヴァルガスだけ領主様の元に残される。

 「ふぅーっ、国どころか世界の違う人にみっともないモノをみせてしまったな。改めて自己紹介しよう、私はこの街の領主でエスター・コルトンという。爵位は公爵だ、以後宜しく頼む」

 「だ、ダイスケ・エチゴヤです。こ、こちらこそ宜しくお願いします」な、なんでバレてんの?

 「悪ぃが領主様にはお前さんの正体を話しておいた、黙ってたらかえって色々と不都合だからな、ホントは数日後くらいにご挨拶に連れてくるつもりだったが変な状況になっちまってスマン」得心した、どこの馬の骨とも知れない僕にとって権力者の後ろ楯があった方が何かと有利だ。

 「表向きはギルド長達のアイデアでいいだろう、身分証も商業ギルドで発行するといい。だが私は領主として国王陛下には真実を話す義務がある。それだけは理解して欲しい、無論君の事は私にできる限り悪いようにはしない」話の分かる人でよかった、とりあえず一安心だ。

 その晩、大輔は裏口の日本へ行きスーパーで買ってきたパンと自分で焼いたのを公爵とヴァルガスに食べ比べてもらったが、

 「どこら辺が違うのか今一つ分からんな」

 「寧ろお前さんの焼いた方が旨い気がするぞ」

 「砂糖の量を間違えたんです、だから思ったより膨らまなくて」

 「いやいや充分だ、こりゃパンの常識が変わっちまうな」

 「しかし、自分で追い出しておいて言えた義理ではないがパン屋がないのは不便だな、君暫く異世界でパンを仕入れて商業ギルド本部に卸してくれないか、ギルド長は新しく我が街で働くパン屋の手配をしてくれ。それまで街の人々には異世界のパンを販売する事にしよう」大輔は快く引き受けた、店を始められるまでまだ色々手続きとかあるし。それまでパンの卸売りで生計をたてるのもいいかもしれない。

 この1ヶ月後エドウィンの街では越後屋の影響と謎の大豊作でオリゼが主食に成り代わりパン屋の需要が当分なくなる事など3人共予想もしていなかった。

 




思い付いた順に書いてるからいまになって綻びが目立ってきます
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