異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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出来の良し悪しはともかくとして今日一気に2話書きました、
サブタイトルが今までで一番長い…σ( ̄∇ ̄;)


第41話流れ者夫婦とかぼちゃのマカロニスープ

 バズとマデリーンは傭兵をやめる決意をして生まれて間もない我が子を連れ安住の地を目指していた。まだ若く実力もある2人だったが子供の将来を思い危険な仕事から足を洗う道を選んだのだ。

 バズは生まれつきのいかつい顔と右目にかかった古傷のせいで見目麗しいマデリーンと並ぶとまるで娘を売り飛ばす女衒に見えなくもない、しかしこの2人歴とした夫婦である。マデリーンもバズもお互いに相手を誰よりも愛しているし、信頼しあっている。マデリーンが抱いている赤ん坊がその確固とした証だ。

 翌日の夜になってようやくエドウィンの街へたどり着いた。出産後すぐに旅だったせいでマデリーンは疲れがピークに達してるようだ、子供はバズが背負っている、一刻も早く休ませてあげたい。こんな時は冒険者ギルドに立ち寄り情報を集めるのが得策だ。中に入るとバズ以上に強面の職員がいた、恐る恐る自分達の事情を話すと意外に気さくに教えてくれた。

 「腹は減ってるか?そんなら近くにエチゴヤってメシ屋がある、ここらじゃこの時間にやってる店は他にないからすぐ分かるぜ。メシ代がなきゃ俺にツケとけ、貸しにしといてやるからよ、冒険者ギルド長のゴドノフって言やあ分かる。あそこのマスターはいい奴だから素泊まりなら寝床も貸してくれるだろう」子供を背負ったバズを嘲笑する者もいたがゴドノフが睨むと忽ち大人しくなる。親切なギルド長にお礼を言って、マデリーンが倒れないよう体を支えつつその店を目指す事にする。

 「見かけによらずいい人(鬼だが)だったわね」

 「俺ぁ、自分より怖い顔初めてみたな」少しだけ歩くとその店が見えた。

 「いらっしゃいませ」2人共土と埃で汚れているにも関わらずウェートレスがにこやかに迎える、厨房にいた男が彼女に目で合図したかと思うと、

 「それじゃ、ザシキへご案内します。足も伸ばせますのでお(くつろ)ぎ下さい」ウェートレスについていき個室へ入ろうとすると

 「履き物を脱いでお入り下さい、そこに鍵付の箱があるのでしまっておきますね」テーブルの上に水の入ったグラスと筒状の蒸した布を置き2人の靴を所定の箱にしまう、バズは彼女から靴箱の鍵を受け取り中に入ると床板は干し草を編んだモノでクッションも備えてある。これなら直接腰を下ろしても大丈夫そうだ。戸がノックされてこれまたバズ以上に怖い顔した大柄な店員が足のない椅子を2つ持ってきた。

 「ざ、座椅子お持ちしました。お使い下さい」座椅子は骨組みはしっかりしてるが中身は綿のように柔らかく座り心地が良さそうで赤ん坊を抱えていて疲れぎみの彼らにはありがたい配慮だ。料理はマスターと呼ばれる店主に任せる事にした、教わったように布で手を拭き脚の短いテーブルの下に足を伸ばしているとさっきのウェートレスがパンと料理を運んできた。

 「お待たせしました、ペポのマカロニスープです、ごゆっくりどうぞ」バズはスープを一匙掬う、ペポの優しい甘さが疲れた体に染み渡るようだ、マデリーンばかり気にかけていたが彼も疲労が貯まっていたとみえる。マデリーンは短いパスタみたいな麺を食べてみようとフォークをとるがバズがスプーンで代わりにマデリーンの口に入れる。

 「熱くなかったか?」ぶっきらぼうに聞きながらもその顔は照れて真っ赤になっていた、マデリーンは思わず吹き出してしまう。

 「貴方ってホントに優しいのね、バズ。だから大好きよ❤❤」

 「止せって」しばしイチャつく2人だが美味しい料理に再び腹の虫が疼き出す。それから全ての皿が空になるまで食事に没頭する、パンはそのままで充分に柔らかくまたスープに浸けても相性がいい。粒のやたら目立つ野菜と薫製肉もパスタやパンに良く合う、すっかり満たされたところで赤ん坊が目を覚まし元気に泣き出した。

 「ゴメンなさいね、あなたを忘れていたわ」バズは店主が個室を使わせてくれた理由にようやく気づいた。マデリーンが赤ん坊に食事を与える間にマスターに代金の事などを相談しようと一旦個室をでる、ゴドノフさんがたてかえるといってくれたがそこまでお世話にはなれない。

 「お代ならツケでいいですよ」マスターは支払いはバズに金が入った頃で構わないと言ってくれた、更に仕事を探しているというバズに商業ギルド長へ紹介状も書いてくれるそうだ。その夜バズ達はザシキに布団を借りて泊めてもらった。

 翌日朝食までご馳走になって3人で冒険者ギルドに立ち寄りギルド長に昨日のお礼を言って商業ギルドに行く、ここのギルド長のヴァルガスも見た目は恐ろしいサイクロプスだが紹介状を見せると笑顔で相談にのってくれた。

 「昨日エチゴヤでパンを食ったか?ならパン屋をやってはみないか、そこらのモンじゃなくあの店でだすやつをさ。実は前にいたパン屋が廃業してな、店舗がそのまま残ってるから仕事はいつでも始められるし作り方はエチゴヤマスターが教えるって言うから問題ないぜ。今年はオリゼが大豊作だったからなくてもどうにかなったが来年は分からんしな」若夫婦はこの話を受ける事にした、明日から2人の、イヤ3人の新しい日々が始まる。

 




今後しばらく投稿ないかもです、(終わりにはしません)\( ̄O ̄)/

ペポ→かぼちゃ。粒のやたら目立つ野菜はブロッコリーでした

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