異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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似たような話をどっかで聞いた気もしますがその辺りはご容赦を
m(>_<)m


第46話ジューダ王と食品サンプル

 ある日の店の定休日、大輔は日本某所にある調理道具で有名な商店街に来ていた、パックスも同行している。目的の店を見つけると中に入りそこのオーナーと交渉してなんとかそこの工房を見せてもらう事に成功した。

 「マスター、これ食べ物じゃない。なんでくる?」(つたな)い言葉で問うパックスに

 「依頼を果たすのに必要だからさ」工房の職人達はその姿に震え上がっていたが大輔がフォローしてパックスには優しく答える。

 「材料は向こうで手に入るからあとは作るだけだな」

 

 事の発端は昨日の夜、コルトン公爵が大輔に頼みがあるといってきたのが始まりだ

 「先日レックス国王陛下がジューダ王国の新国王の戴冠式に出席なされた、そこで会食があってな。そこでの両陛下の対談は政治的なモノからごく私的な話まで大いに盛り上がり食事の方もメインディッシュの七面鳥の丸焼きが運ばれてきたのだが」公爵は話を一旦切り、出されたビールで喉を潤してると大輔からこう返された。

 「ジューダ王国って確か最近まで王妃による悪政で財政も逼迫していたんですよね」

 「いかにも。で、その七面鳥だが城のメイドが緊張からかテーブルに乗せる直前にひっくり返してしまい料理をダメにしてしまった」その先は大輔にも見当がつく。

 「直後に新しい七面鳥が運ばれてきたんですね、それも最初のよりも立派なヤツが」

 「その通りだよ、マスター。よく分かったな」

 「王公貴族の逸話としては有名な話ですからね、ジューダとしては心からもてなすと共に自国の財力をアピール、つまり復興した事を示そうとする意味を込めたパフォーマンスだったのでしょう。個人的には食材を無駄にするのは感心しませんが、政治に関わる側としてはそんな場合じゃないでしょうし」公爵は大輔に感心した、この若者は教養もそれなりにあるようだ。

 「それで今度はジューダ王国の方々をラターナにお招きして何らかのサプライズを仕掛けたいと国王陛下から仰せつかったのだが同じ事をしても意味がない、かといって私には何も思い付かずこうして君を頼ってきたのだよ」話を聞いた大輔の頭に突如ピンとあるモノが閃いた。

 「時間がかかりますが妙案が浮かびました、明日は店が休みなので向こうで下準備してきます」

 「おぉ、いっ」慌てて口をつぐみ声を潜めて会話を続ける。

 「異世界の技術か、正にうってつけだな」

 翌日、日本から帰ってきた大輔はコルトン邸を訪れて公爵と打ち合わせを始めた。

 

 しばらくしてジューダ王国ご一行がラターナを訪れて二度目の会食が行われる日がやって来た。コルトン公爵は大輔から城の門前で例のモノを受けとりあとを任された。

 

 「それではメインの料理をお出ししましょう、こちらでございます」執事が皿に乗せた料理を運ぶ途中手を滑らせ皿を落とす、料理は床の上でぐちゃぐちゃに…なっていない!なんと逆さまに落ちたにも関わらず形を崩す事なく始めの姿を保ったままであった。よくみると周りにかけられたソースまで固まっている。ジューダ側は全員開いた口が塞がらない。

 「こちらは蝋でできた偽物でございます、先日の会食では見事に驚かされましたので我々もお返しのサプライズを仕掛けさせて頂いたのです。勿論食べられる本物の料理もご用意してあります」

 「そういう事でしたか、いや驚きましたが楽ませて頂きました。これなら食材を無駄にしなくて済む。しかしまあ、よくできてますな。みただけではとても蝋とは思えない」ジューダ王はその素晴らしい細工にじっと見入っていた。

 (こっちにきて結構色々あったけど食品サンプルまで自作するとはなぁ、蝋製だけど)現在では主に合成樹脂が使われているが日本でも購入は難しい為こっちで手に入れた蝋で作ったがそれでもインパクトがあるだろう、ジューダの王様が沢山欲しいとか言わなきゃいいけど。それより余った材料どうしよう?今になって処分に悩む大輔であった。

 




ジューダ王国の悲劇について知りたい方は「異世界西遊記」をお読み下さい

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