旅の楽隊である4人は貯えが少なくなったので次の街で演奏しておひねりを貰って食い繋ぐ事にした。
「あーお腹が限界、早くご飯食べたい!」太鼓を
「ミラちゃん、あとちょっとの辛抱だよ」管楽器担当でハーフリングのジュニが宥める。
「もう少しでエドウィンって街につくわ」ヘレンが地図を見ながら説明する。
「結構大きな街だからそこそこ儲かるかもね、それまで我慢しなさい」同じく管楽器を務めるこのチームで唯一の人間、サリーがミラを諌める。
最近では荷物の積み降ろし以外に配達も任されるようになったサイモンはその日の仕事を終えてエドウィンの街に帰ってきた、すると路上で演奏している女子4人組の楽隊をみた。その内の1人、竪琴を弾いているのはサイモンがよく知っている同じパーンの少女である、
「おーい、ヘレーン!」遠くから呼びかける。
「サイモン!えっ、なんでこの街にいるの?」直後商業ギルドの職員が彼女達に駆け寄ってきて何やら4人を叱っている。
「どうかしましたか?」サイモンは職員に尋ねる。
「ああ、この
「ヘレンも村をでたのかい?」
「えぇ、楽隊を結成して色んな場所で演奏して日銭を稼いで過ごしてきたわ。そうだ仲間を紹介するわね」突然ミラが倒れそうになる、仲間達とサイモンが体を支える。
「もう空腹で動けな~い」仲間達は呆れ返るがサイモンは笑いながら
「僕もこのあと何もないし、みんなで食事に行こう。一番安いので良ければ奢るからさ」
「わ~い、お兄さん気前いい!」
「サイモン、大丈夫なの?」
「ああ、安くて旨い店があるんだ」こうして5人はエチゴヤの客となった。
「マスター、こんばんは。あっ商業ギルド長」サイモンが話しかける相手にビクッとなる4人、さっき職員の人に怒られたのとその巨体に二重の意味で怖がるが
「あ~部下から報告のあった嬢ちゃん達か、二度とやらなきゃいいんだから気にすんな。俺ァメシついでに呑みにきただけだからよ」ヴァルガスと4人の間に挟まれる形でカウンターについたサイモンが料理を作っている男性に注文しようとすると給仕の女性がすぐに水の入ったコップを目の前に並べる。
「あの…お水は頼んでないんですが」
「こちらは無料です、足りなかったら水差しもお持ちしますからお声をかけて下さい」女性にそう言われて恐る恐る水を口にする4人、
「えっ、水が美味しい?」
「驚いたろ、僕も最初は信じられなかったよ、あの時は金もなくて料理までただで食べさせてもらったし」
「日替わりを5人分下さい。付け合わせはパンで」
「はい、すぐご用意します」
「マスター、今日の日替わりはなんだ?」
「フライドチキンです」
「チキンナンバンとは違うのか?」
「あれは鶏の唐揚げにタルタルソースを乗せてます、フライドチキンの南蛮風もできますよ」
「それじゃ今日はそっちをもらうか」ギルド長はこの店の常連らしい。
「お待たせしました、フライドチキン定食です」赤カプシンやアリューム、ジベリの香りが鼻をくすぐる。ミラはよだれを垂らしかけものすごい勢いでかぶりつく。
「美味し~い、こんな鶏料理初めて食べた~」
「パンがふわふわ~、」
「皮はサクサク、中は柔らか。サリーあの鍋見て」
「油をあんな沢山使ってるの?これで一番安いって1人何ラムよ?」
「1人6アスですから5人分で3アルです」マスターと呼ばれる男性から知らされる。
「「「「安っ‼」」」」このあと商業ギルド長にビールとかいうお酒も一杯ずつご馳走になり安宿で一晩過ごして今度は改めて許可を得て路上演奏でお金を稼いだ、それにしてもここはいい街だった。次の街へと先に進む道中みんなしてヘレンをからかう、
「ヘレンはサイモンさんとあの街で暮らすっていうと思ってた」
「私達なら気を使わなくていいのよ」
「ホントは好きなんでしょ?」
「も~!みんなやめてよ、それよりもっと曲を作って練習しないと。あんなラッキーな事絶対二度とないわよ」
後に演奏が人気小説家で劇作家のマージンの目に留まり彼女達は大劇場で腕前を披露して一躍有名になるがそれはまた別の話。
同時進行は頭を悩ましますが意外に楽しかったりします、書くペースは落ちますが
今回の異世界語
・アリューム→にんにく
・ジベリ→生姜