異世界料理店越後屋   作:越後屋大輔

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やっと…やっと、目標達成しました


第50話常連達とバイキング

 大輔が日本とこの世界で二重生活を送るようになって一年が経とうとしている。こっちにきてお客もそれなりに増え金物屋夫婦を始め街の人々にもかなりお世話になった。

 「せっかくだからメモリアルイベントを開催しよう」予算の相談を経理を手伝ってくれているロティスと話し合って次の定休日に商業ギルド長のヴァルガスの元へ相談しに行く。

 「給仕なしで料金は普段より高め、その代わり酒以外は好きなだけ食い放題か。悪くねえな」

 「向こうじゃそれほど珍しくもないんですよ、それに1日限りですから」

 「採算は取れんのか?かなり損失が出そうな気もするが」

 「いつもの営業で充分儲けがありますからご心配には及びません」

 「そうか、マスターがいいんなら許可出すしかねーな。その代わり当日は俺も客で呼ばれるぜ」

 「勿論、是非ご来店下さい」

 

 前日になると大輔と4人のスタッフは店内の改装にとりかかった、これが中々骨の折れる仕事になる。パックスがいなければまずむりだったろう、当日はお客が自分で料理を運ぶので邪魔になるカウンターの椅子をどかして代わりに長テーブルをおいて料理の皿をのせるスペースが必要になる、そこに人が歩ける通路も確保する、それから当日の注意というかお客様へのお願いを書いたプレートをセットしたスタンドを立てる。夜になり何とか作業が終わった。

 

 翌日は朝から料理作りに追われる。大輔とマティスは勿論、この日はロティスとラティファも厨房に入り野菜を切ったりお米を研いだりしている。パックスは麺類に使う生地を懸命に練っている、やがて開店時間になると常連客でごった返す。一番乗りはヴァルガスだ。

 「まずは肉だな。ウン、なんだ注意書きみたいのがあるな」

 『料理は好きなだけお手持ちのお皿にどうぞ、ただし取るときは食事で使うフォークはご遠慮頂きます。備え付けのトングをご利用下さい』

 『一度取った料理は元のお皿に戻さないようお願いします』

 「なるほどのぉ、最低限の礼儀をわきまえさせて清潔さを保つという事じゃな。確かに守れんモノがいたら他の客はいい気はせんな」アルバートがしきりに感心している。尚、文字が読めないお客にはそばについてるロティスとラティファが説明している。幸い越後屋にはマナーのなってないお客はあまりいないのでそれほど問題ない。

 

 「すまねぇ、ピスキーは座って待っといてくれや」

 「通路が荷車が通れるほど広くねぇだよ、お前ぇの分も俺らがとってくるでの」

 「イヤ却って申し訳ない、じゃあ俺は魚のフライと野菜の煮物を頂こうか」ディーン、フンダーの友人コンビに人魚のピスキーを加えたトリオは今日も仲良く来店した。

 

 「プリンも食べ放題なんですか?」

 「菓子は最後、まずはちゃんと食事をしてからだよ。酒だけはいつも通りかい?まあそれでも安いモンさね」薬師のガーリンはデザートから取ろうとする弟子リベリを諌めながら自身は秘かに酒の肴を選んでいる。

 

 「オリゼ食い放題だぜ♪せっかくいつもより高い金だしたんだ、普段の倍は食わねぇとな」

 「アッシは食えるモンが限られてやすがこれなら元が充分とれるっモンでさぁ」食事の好みも生まれ育った環境も今の職種も違うワーウルフのロボと河童のトゥーンだがナゼかよくつるんでいる。

 こちらに店が転移して最初のお客である冒険者の一行は随分賑やかだ。

 「パンもお肉も食べ放題ニャー!あ、あっちに私の好きなフライドポテトもあるニャッ」飛び付きそうないきおいのルビィを制止する仲間達。

 「そんなに慌てなくても料理は逃げないわよ」

 「みっともない真似はよせ、街の有力者も来ているんだぞ」

 「んだ」

 「フニャン(´,`)」

 山奥の炭焼き一家も来ている、イアンも山を降りて久し振りに街へでてきた。

 「どれも旨そうだな。旦那ぁ、本当に好きなだけ食っていいのかい?」老人の問いに大輔は料理の手を休めず告げる

 「はい、今日は本日限りの食べ放題。心行くまでお召し上がり下さい」

 「リッキー母ちゃん、届かない」チルはつま先を一生懸命伸ばしてる、リッキーが手を貸そうとしたらチルの体が誰かの手によって浮き上がる、ヴァルガスの妻で同じサイクロプスのシンシアである。この店に夫婦でよく食事しにくるので大輔達にもお馴染みのお客の1人だ。

 「おばちゃん、あいかとー」チルとリッキーはこの女性とも顔見知りだった。

 「いいのよ、チルちゃんはどれが食べたいの?」

 「このヒラヒラぁ」チルが差したのはファルファッレだ。

 「これ何かしら?」シンシアの問いにラティファが答える、

 「これもパスタの一種です、長くないからチルちゃんにも食べ安いと思います」このやりとりの間チルをずっと抱き上げていたシンシアは

 「チルちゃん、いっそうちの子になる?」と聞いてみたが

 「いい」とだけ返してリッキーの元に戻る。

 「あらあら、フラれちゃったわ」因みにヴァルガス夫妻は3人の子供に恵まれたが既に成長しみんな独立したので今は2人暮らしだ。

 

 やがてドアが開いてまたお客が1人入ってくる、旅人なのか街の新参者なのか見慣れない顔だが店員一同にこやかに迎える。

 「「「「いらっしゃいませ‼‼」」」」

 




内容が最終回っぽいですが50回達成の節目です、サブタイトル「~と~」は無くなるかもですが物語は続きます。

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